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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
五話:傷つく者の戦う意味
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僕はくたびれた顔で自宅にいた。

自宅に戻っても、僕はピンク色のスマホを見ていた。

『たまだん』チャットルーム、そこには僕がハルヒメになっていた。

ハルヒメの僕の前には、結衣のヴァルキリアと棗のナツナイト。


昼間に金森理事長室を捜索しようとしたが、立ち入れなかった。

最近息子の死で、金森理事長室に入ることさえできなかった。

大人であってもふさぎ込むのは仕方ない、ましてやドラゴン疑惑もあったし。

金森会長を調べるのは、この日は断念せざるを得なかった。


学校から家から帰る途中、僕は近くにある結衣が住んでいるマンションを見ていた。

結衣はあのマンションに今はいない。

結衣の部屋にはカーテンが、閉まっていたから。

そんな僕が見ているスマホのコミュニティルームにいたのはヴァルキリア。

そばにはナツナイトの姿もあった。


「今は兄さんのとこ。人が嫌いになる……助けて」

結衣は今、年が離れた兄のところに避難していた。

ネットに流れたのは、結衣や棗の情報。だけど男子以上に深刻なのは女子。

住所、年齢、趣味、嗜好に略歴まで。

それは弘明が言うことよりよっぽど深刻だった。


自宅には謎の郵便物が毎日届いていた。

二十四時間、どこかで監視されているような自暴自棄になって他人の目が怖い。

謎の電話、変質者のビデオ、町を歩いていてもつけられる恐怖。

とてもじゃないけれど、結衣や棗の精神はまともでいられない。

普通の学生が、普通じゃないゲームをやっているだけのどこにでもいる女子。

特別な訓練も、精神を持っているわけでもない。だから彼女たちは傷つきやすい。


「今……ナツも一緒なの」

「結衣、そっか……」

「私、もう耐えられない!」ナツナイトが叫んだ。錯乱しているようにさえ見えた。

「ナツ?」

「私たちはみんなのためにドラゴンと戦って、なんでこんな目に遭わないといけないの!」

チャットルームのナツナイトのモーションは泣いていた。

隣のヴァルキリアも体を震わせて泣いていた。


「そうだね、僕たちは……」

「誉、あたしはどうしたらいいの?」と、ヴァルキリア。

「僕が何とかする、弘明と約束したんだ」

「誉……そうね。こういう時はちょっとだけ頼りになるからね」

「ちょっとって……ヴァルキリア」

「私は頼りにしています」

ナツナイトの言葉に、泣いたままのモーションの彼女の声色が幾分かおさまったようにも感じた。

ヴァルキリアの『ちょっと』の言葉に僕は微妙に心が傷ついたけど。


「そうね、挫折したり失恋したりすると強くなるものなの……だから」

「ヴァルキリア……」

「あたしだって強くならないと」

「何かあったのか、兄さんとか……」

「うるさい、そんなんじゃないわよ!あたしはブラコンを卒業したの」

なぜかふてくされた結衣、じゃなくてヴァルキリア。

分かりやすく、泣きモーションから怒りモーションに変わった。


「私も強くなれますか?」

「大丈夫よ、ナツは強くなっているわ」

「そう……かな?」

ナツナイトが落ち込み、ヴァルキリアが励ます。昔は何度も見た光景だ。

昔と変わらない二人の関係性を見ると、僕たちしか知らない二人だって思えた。

だから、暴露された「たまだん」メンバーの情報を他人に知られてしまうのが嫌だった。


「それにしてもハルヒメ……いや誉と話してすっきりした。こういう時の誉は効果あるわね」

「なんだよ……それって僕が頼りないみたいじゃないか」

「ううん、人にはそれぞれ役目があるでしょ。なんか誉は愚痴が話しやすいから」

「あの……ハルヒメは行動値が足りていますか?」

いきなりのナツナイトの申し出に、僕は素直に話しだした。


「ううん、行動値が全然足りなくてストーリーが全然進まらない」

「そうね、ハルヒメのは行動値が使うみたいね。あたしはクリアしたから、ナツもでしょ」

「はい、ナイトは少ないです。情報も大したことないですし。

私のGPSはここです、そんなに役に立ちませんが」

ナツナイトがメールで送ったGPS情報は、渋谷区にある中学校の座標。


「ハルヒメのは、ストーリーまだなんですね」

「うん、半分もいっていない」

「私は、行動値46マックスまでたまっていますよ」

「へえ、いいなぁ」

自分のステータスを見て行動値0を知った。行動値は一時間で1回復する。

ストーリーを進めるのに使う行動値は、レベルと同じ数値になっている。

レベルが上がって行動値は回復した、が足りなかった。


「そういえば、ドラゴン視アターって行動値が増えるんじゃなかったっけ?」

何喰わない顔で言うヴァルキリア、僕は憮然とした顔になっていた。


「それは初耳だぞ、ヴァルキリア」

「それはごめんなさい、でも行動値って戦闘じゃ重要じゃないし」

「戦闘の事ばっかり、だから弘明に……」

「アイツはK・シューターよ!」

なぜかそこは注意されてしまう僕だった。

ヴァルキリアも、K・シューターもゲーム内ではゲームの名前で呼んでほしいこだわりがあるようだ。


「大丈夫です、私の行動値をハルヒメに受け渡すことができますから」

「ええっ、本当に?」

「ナイトの特殊スキルです。はい、私の行動値を20ポイント受け渡しますね」

「そりゃあ助かるよ」

そんなナツナイトは僕のハルヒメのキャラに重なった。


「プレゼントで譲渡のアイコンが出るから、譲渡許可を出してください」

「うん、分かった」

それから間もなくして、僕のストーリーが進むことになった。

一時間後、僕は『渋谷ドラゴン』一匹目のストーリーをクリアした。


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