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コインを額に抱えた赤いドラゴンは南下してきた。
『コインドラゴン』っていう名前でレベルは25、前回よりさらに弱い。
レベル40台のヴァルキリアとジャイアント・キリングはほとんどダメージを受けない。
ほぼ完勝に近い、すでに半分以上ドラゴンの体力が減っていた。
僕は太……いやジャイアント・キリングからもらった武器で役目が変わった。
弓は、離れたところからでも攻撃てきたのは強み。
攻撃アイコンをタッチして、相手をタッチすれば攻撃ができた。
ダメージは常に0だけど相手を鈍足状態にして、必殺技ゲージが……少しだけ溜まっていく。
「いい感じじゃない、楽勝ね」
ヴァルキリアや、ジャイアント・キリングもドラゴンに接触して攻撃を続けていた。
順調な戦いぶりに、僕は安心と不安があった。
何より二人ともダメージをほとんど受けていない。
相手の攻撃力が低くて、体力ゲージも目に見えるほどの減りがない。
でも戦っているドラゴンが、人だと思うとなんだかやりきれない気になってしまう。
「ヴァルキリア……」
「ハルヒメは撤退してもいいわよ、ドラゴンモードだと撤退ができるから」
「いや、それはダメだ。今後のために見せておこう。
これからのためだ、僕たちが戦うドラゴンとはなんなのかを」
ジャイアント・キリングとヴァルキリアがしゃべりながらそれでも戦っていた。
順調にコインドラゴンの体力ゲージを減らしていく。
さらに僕たちに追い風が吹いた。
「お待たせしました」
すると、僕たちの背後に二つの光が見えた。
一人は棗だ。金ぴかの鎧を着た棗の『ナツナイト』。
盾を持って凛々しくしていた、小動物系の棗らしくない強そうな少女。
そしてもう一人が、
「来たぞ、ここだな」
それは『K・シューター』、弘明のキャラだ。
二丁拳銃をもって前を向いて、ロングヘアーの顔は弘明にそっくり。
かっこつけてか藍色のジャケットを着ていた。
「今回は優勢だな」
「そのようね、K・シューター。残念だけど出番はないかもよ」
そんなナツナイトが黙ったまま、僕のハルヒメに近づいてきた。
盾を構えて、ハルヒメの前に仁王立ち。
「護衛します」
「あ、ありがと……」
やっぱりナツナイトがたくましく見えた。ハルヒメはドラゴン相手に遠隔攻撃。
K・シューターの一撃で、ドラゴンの体力の減りがさらに早くなった。
それとほぼ同時に、体力ゲージが三分の一以下になったドラゴンが何かを叫んでいた。
咆哮モーションへと変わっていく。
「ブレス?」
「奴の必殺技だ。技が発動される前に、あいつを倒せ!
いくぞっ、『驚愕射撃』」
K・シューターが光り輝く。これは必殺技だ。
二丁拳銃を構えて、ためらうことなく銃を撃ち放つK・シューター。
K・シューターの必殺技で、一瞬でドラゴンの体力を削った。
ドラゴンは体力ゲージがゼロになった。
「倒した……」
「うん、倒したね」僕とヴァルキリアがドラゴンの体力ゲージを見ていた。
完全にコインドラゴンの体力が無くなって……死んだんだ。
つまりはこのリアルで誰かが死んだ。
ドラゴンになった見知らぬ誰かの死を、僕はぼんやりとみていた。
「これって人なんだろ」
「だったら、お前が見つけろよ。竜器を。
人殺しをこれ以上俺たちにさせたくなければ」
冷たく言い放つK・シューターに僕は詰め寄っていた。
だけど次の瞬間、K・シューターは僕のハルヒメに銃を向けた。
「K・シューター……」
「前にも言った、これは生存戦争だ。戦いをやめれば人間は死ぬしかない」
「どうしてそうまでして……」
「守りたければ戦え!お前は本気を出さなければ俺たちは全滅だ!」
K・シューターは銃を腰にしまおうとしたとき、ナツナイトが前を向いた。
「死んでいないです!気をつけてください」
ドラゴンは死んだ、体力ゲージがゼロになったから。
だけど、咆哮のモーションはやめなかった。上を向いて叫ぶ姿が断末魔の叫びに見えたから。
そして、その咆哮をしているコインドラゴンの中から出てきたのがいかにも黒幕っぽい黒い姿が見えた。
それは真っ黒で六つの赤い目が腹にあるドラゴンだった。
「ようこそ、『ドラゴンプラネット』のプレーヤー諸君」
それは突然現れた。
漆黒なドラゴンが、まるで区役所から出て来るかのように現れたのだ。




