28
結衣は初めから、太と合流する計画だった。
ジャイキリ作戦……つまりドラプラの太を呼んだことらしい。
ジャイアント・キリング、略してジャイキリというわけだ。
509の六階にいたベンチで僕と結衣、それから太の三人でアイスを食う。
509にある数少ないアイスクリームショップ、前のベンチは数少ない休憩スペースだ。
太は、カップに入った山盛りのアイスをおいしそうに食べていた。
それにしても本当に509の中は女子の割合が多い。
僕と太以外全員女子なんじゃないかと思えるほどに。
「太、どうだった?」
「ええ、いろいろおかしかったですよ」
「どういうこと?」
「ん~、なんか空き家になっていましたよ」
「空き家?」
「よくわかりませんが空き家でしたよ。中に入れましたし」
太の言葉に、結衣は難しそうな顔を見せていた。太はいつも通りの穏やかな顔でアイスを淡々と食べていた。
「入れたってどういうこと?」
「何もありませんしたよ、これが画像」
「……これは」
太が見せたスマホ、そこにはもぬけの殻のマンションの部屋が見えた。
まるで不動産の紹介写真の様だ。紹介写真を何枚もスライドショーの様に見せていた。
「誰もいないし……生活感がない」
「どうやらここには……」
「待って!」
だけど僕は太が撮ってきた写真の一枚を見て驚いた。
「どうした、誉?」
「彼……どこかで見たような」
それはマンションの入り口あたりで歩いていた若い男性。
だけどどうしても思い出すことができない。
「思い出せないの?」
「うん……あとちょっとなんだけどな」
太がほかにも見せるけれど、結局分からなかった。
隣では結衣が山盛りのアイスを食べながら、じっと太のスマホ画像を見ていた。
「それにしても、ここは空き家なのね」
「どうやらそうですね。洗濯物も干していないし、カーテンは閉まっているし」
「うーん、ますますおかしいわね」
結衣もアイスのスプーンを持ちながら、自分のスマホを見ていた。
「住所は間違いなくそこなんだけどね、逆に怪しくない」
「さすがに入るのは難しいよ、鍵がかかっていたし。セキュリティもしっかりしているよ」
「分かったわ、そこはいったんおいておきましょ。
ん~、じゃあもう一か所をみんなで調べましょ」
「もう一か所って……」
「そりゃあ、あたしのよ」
結衣がそう言いながら、太に負けじとカップに入ったアイスをほお張っていた。
急いで食べたのか、ちょっと頭がキーンとしたらしい。
「結衣?大丈夫か」
「大丈夫よ、あたしは。あたしの場所は渋谷区役所だから、少し離れているわね」
結衣がスマホを僕と太に見せてきた。
「ここって地下?」
「そう、渋谷区役所地下シェルター。アイコンは下の方を指しているでしょ」
「そういえば地下室……ってドラゴン視アターで……思い出した!」
「何が?」
「さっきの人物……もう一回、太のスマホを見せて」
「お、おう」太がスマホの写真を僕に見せてきた。
唯一人物が通行人として映りこんだ写真を見て、そこにいた若い男性が見えた。
「この人、初めて見たドラゴン視アターにいた男の子にそっくりだ。ほら、目元とか顎のラインとか」
「分かんないわよ、あたしたちは」
ふてくされ気味に結衣が声を返してきた。
逆に太は、うーんと返事を返していた。
「この人って……分からないか」
「ええ、確かに髪の色が藍色っぽく特徴的ではありますね」
「それじゃあ近づいているのね、ドラゴンに!いや金森会長に」
結衣は急に嬉しそうな顔へと変わっていく。
「嬉しそうだな、結衣!」
「嬉しくないわよ……でもずっと戦ってきたから」
「今回は長かったですね、半年以上。区役所ですね。
いい方法がありますよ。ちょうどここは509ですし」
「えっ?」
太はなぜか自信たっぷりに言い放った。
普段はおとなしい太が、自信たっぷりなのも珍しい。
僕たちと離れて二年近く、彼の成長が垣間見られた気がした。
そんな時、結衣の携帯が突然震えていた。
それと同時に彼女の顔が、真剣な表情に変わった。
僕もピンク色のスマホを見て、震えを感じてはため息をついた。
「チャンスよ、これは!」
いつの間にか山盛りのアイスを強引に食べきった結衣は、スマホを持って笑顔になっていた。
それはスマホの画面が赤く光る『ドラゴン警報』だったから。
スマホの『ドラゴン警報』の後、509でサイレンとアナウンス。
『ドラゴンが出現しました、至急地下シェルターに避難してください』そう聞こえてきた。
「僕たちも向かいましょう、渋谷の地下へ」
太の一言で、僕たちは行動を始めていた。




