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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
四話:ドラゴンの切り札
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渋谷は東京のど真ん中と言っていい場所。

交差点一つをとっても民族の大移動みたいな人の流れが見えた『ザ・大都会』。

週末の土曜日午前中で授業を終えた僕は、制服姿のままで結衣とこの渋谷に来ていた。


僕と弘明の告白の話を、隣を歩く結衣に渋谷に向かう電車の中でしていた。

何度も恋バナをせがむ結衣に根負けした。

あれだけ聞きたがっていたし、弘明はやはり話さないだろう。


それを聞いた結衣の感想は、「あたしもそんな恋がしてみたいわね」だった。

それ以上もそれ以下もなく、サバサバとして結衣は強い思い入れもなかった。

まあ、結衣には関係のない話でもあるから。


そんな僕が結衣と一緒にいるのは、渋谷509というビル。

大型のファッションビルで、ビル全体が女性モノのファッションビルだ。

渋谷駅に降りるなり、すぐに僕の手を強引に引っ張ってこのビルに連れてこさせられた。

もちろん周りの客は女子ばっかり。僕たちと同じように制服で来ている女子も結構いた。


509の五階にある店の前で、結衣は叫んでいた。

「これ、すごくかわいい!」

満面の笑みで、黒と白のパンクなカラーのシャツを見ていた。

結衣の後ろにいた僕は疲れた顔でそれを見ていた。


「また~結衣?」

「いいじゃない、渋谷はあたしたち女子の憧れの町なんだから」

嬉しそうにウィンドウショッピングを楽しんでいた。


「ここに来たのは……」

「分かっているって、固いことを言わないの」

「そうはいっても……」

「誉だって、ちゃんと生徒会長を調べていなかったじゃない」

「それは……」

「でもあたしは違うわ。ちゃんと手は打ってあるから。ジャイキリ作戦よ」

「ジャイキリ?なんだそれ」

「ひみつよ」

結衣に言われると、痛いところを突かれていた。

華やかというか賑やかな店内を見回って、結衣は黒いシャツを持って僕を見てきた。


結衣と呼んだあの日から、僕は金森会長をいろいろ調べた。

三年の教室にも行ったし、聞きこみもした。


だけど金森会長は普通の学生だ、人望が厚くて穏やか。

少し離れた渋谷から通っているのは、元々渋谷で暮らしているだけみたいだ。

それ以外の情報を調べることはできなかった。

本人に確認すればいいけど、それが違っていたら警戒される恐れも真犯人に自分たちをさらすことにもなる。


「誉は何かわかったの?ドラゴンコインの場所とか」

「う~ん、分からない」


いくつか気になることがあった。

直接聞くことはできない、金森会長の周りにそれとなく聞くしかない。

勇気を出して三年のクラスで何人かに話を聞いた。


成績は優秀で、穏やか、それでも彼はいつも学校のことを考えていた。

ゲームはオンラインゲームにはまっていたらしく、『ラグナカンド・オンライン』が好き。

どうやら『ドラゴン視アター』の情報は間違っていない。

だけど『ラグナカンド・オンライン』のキャラ名までは調べられなかった。


「う~ん、金森会長は見たところ怪しいところはなかったね」

「ちゃんと調べたの?」

「調べたよ、クラスメイトに聞き込みをしたし」

「それだけでしょ、誉は」

「なんだよ、結衣は……」

「あたしは考えているわ、すでに実力行使で動いているの。名付けて『ジャイキリ作戦』」


何だ、実力行使って?結衣は何を考えているかわからない。

そんな結衣はパンクな黒のシャツを元の位置に戻して、軽快な足でエスカレーターを上っていく。

先走りする結衣に、僕はゆっくりと追いかけた。

エスカレーターの上で待っていた結衣は、少し恥らった顔を見せた。


「ねえ、知っている?」

「なにを?」

「ここだけの話だけど、弘明に好きな人ができたらしいの」

「ふーん」

「あんまり興味ないのね」

結衣はつまらなそうな顔を見せながら、そばにある店に入っていく。

そこはピンクを基調とした服が売られていた、かわいい系の服だ。


「こっちが似合う?」

「いや、どっちでも……」

「誉は晴ねえの時もそうだったの?」

結衣が明らかに不満そうな顔で、ピンクシャツを持ちながら僕を見てきた。

結衣の顔が僕から近いんだけど。


「いや……晴ねえは……もっと大人っぽいし」

「あー、つまんないの。あたしだってもう子供じゃないんだから!」

ポニーテールがなびいた結衣はそのまま、店内のハンガーにピンクのシャツを戻していった。

いそいそと走り回る結衣に、僕は困った顔を見せていた。

そんな僕に結衣が指を立てて合図をしてきた。


「誉、このことは弘明に内緒ね」

「えっ……内緒って」

「絶対に絶対よ!弘明から内緒に相談受けたんだから!」

さらに念を押してきた結衣は、じっと僕を見つめてきた。

「だったら初めから話すなよ」と心の中で突っ込んだ。

僕は結衣の圧力に圧されていた、どう見ても結衣のペースだ。

そんな僕が苦し紛れの末に出た言葉は、あまりにも唐突な言葉だ。


「結衣は好きな人とかいるの?」

「えっ……いない……と思う」

結衣は何かを考えたフリを見せたけどすぐに口にした。


「なんだよ、中途半端だな」

「いいじゃない、あたしは一回失恋しているんだからね!」

「あれ……そうなんだ」


結衣とは生徒会で会う前には、一年ほど空白な時間があった。

クラスだって違うし、マンションも少し離れていた。

僕の知らない結衣がいても不思議ではない。


そんな時、ショップの奥の通路から一人の男がやってきた。

ガールズファッションビルに、とても似あわないオーバーホールの大男だった。

「太、やっときたのね」

それは結衣が呼んだ太だった。

「ええ、来ましたよ。僕に任せてください」

余裕の笑顔を見せていた太は、アイスをモリモリ食べていた。


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