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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
三話:命を懸けた喧嘩
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結衣と帰るのは、こっち(有明)に来て初めてだった。

たまだんを出たのが、中学卒業とほぼ同時期。

同じ有明高校に入学したけれど、クラスは結衣や弘明と二年間とも別のクラス。

それでも二年になって、生徒会で一緒になったのは一か月前の四月からだ。

距離を置いていたわけじゃないが、新しい環境になじもうと自分のクラスに重点を置いていたから。


二年で初回の生徒会の会合で、いきなり結衣が生徒会副会長に就任したのは驚いたけど。

成績優秀な結衣とは、結局のところ無意識のうちに距離を置いていたのかもしれない。

それが晴海の死によって近づいたのは皮肉なものだ。


僕と結衣はコンビニに来ていた。生徒会の会合が長引いて夜七時を過ぎて周りが暗い。

学校とマンションと反対側にあって利用したことがないコンビニ。

夜のコンビニは、サラリーマンや学生が立ち読みして、主婦が買い物かごを持って歩いていた。

何より、商品補充をしていたのは……


「弘明、バイト?」

コンビニの制服を着て弘明はバイトをしていた。結衣がにこやかに話しかけた。

有明高校は学校に届け出さえ出せばバイトができた。もちろん、深夜は禁止されてはいる。


「ああ、バイトだ。ノーキン」

「ちょっと、その言い方!ゲーム内だけでリアルは禁止でしょ」

指さす結衣が不機嫌な顔に変わっていても、弘明は淡々と仕事をしていた。


商品の補充を終えた弘明は、商品棚を見ていた。

レジでは別のバイトがレジ打ちをしていた。

そんな僕と弘明は視線を合わせらるわけもない。

弘明は僕を殺そうとしたんだ、当然の結果だ。そんな弘明の方からいきなり僕の方に向いてきた。

そのまま、僕の目の前で頭を下げた。


「ごめん、誉」

「弘明……僕は君を許せない。君に殺されかけたんだぞ!」

「謝るだけでは済まないのは分かっている、だけど誉の覚悟が分かったんだ!」

「君とは……できない」

「二人とももう、仲直りしてよ!」

目をそむける僕に、結衣が割って入った。

悲壮な結衣が右手で僕の左手を取ってきた。

すぐにバイト中の弘明の手を取ってくる結衣。

どうやら結衣が全てを仕組んだ。ここに連れてきたのも、誘ったのも。


「結衣?」

「二人とも喧嘩はダメ!あたしが手を握らせたら絶対だから」

半分泣き出しそうな結衣は僕と弘明の手を握らせていた。


それは『たまだん』にいた時からあった、僕たちの仲間内で喧嘩した時の仲直りのルール。

晴海が真ん中に入って、喧嘩した二人の手を握らせて仲直り。


「喧嘩はダメ、絶対だから!」と言うと、不思議と喧嘩をやめる暗黙のルール。

弘明が晴海を取られた立場もあった。

それでも弘明はやりすぎだと感じたのだろう、でも僕は命を奪われそうになった。


「あたしじゃ上手くできないけれど……でも仲直りしてよ」

「僕は彼に……」

「誉はね……争いが嫌いでしょ。弘明も反省しているんだから」

結衣の晴れやかな笑顔は、僕の怒りを無理矢理抑え込む力があるようだ。

落ち込む弘明も、やはり結衣に言われたのだろう。同じクラスだし。


「分かったよ、しばらく休戦する」

「さすが誉、分かっているわね!あたしはそんな誉が好きよ」

「なんか、うまく丸め込まれた気がする。だが誉、ごめんな」

「うん……いいよ。もう」

僕はふてくされながら、弘明を半ば強引に許した。


「結衣……この時間に来るってことは理由があるんだな」

そんな中、弘明が再び商品補充をしながら話を聞いていた。


「うん、クリアしたから。ストーリー」

「どうだ?どっかでてきたか?」

「GPSが出たから、早速送るね」

結衣はそう言いながらスマホを操作していた。

それから数秒後、僕と弘明のスマホが結衣のメールを受信した。

弘明は赤いスマホを見ていると、バイトの手が止まった。


メールの内容を見て弘明が一言。

「なんだ、結局上野じゃないか」

「えー、だって出てこないじゃない!」

「しゃあねえな、俺の送るぞ。誉も……見ろよ」

そう言いながら今度は弘明がスマホを操作、間もなく送られたのが別のGPSの地図。


「これって?渋谷じゃない」

「ああ……渋谷だ。新しい情報だろ。下からもらったのは太からもらったやつだ」

「渋谷が二か所」

青いスマホを、結衣が興味深そうに見ていた。


「そこに『ドラゴンコイン』があるといいわね」

「それが竜器か」僕は感情を押し殺して言っていた。

「ええ、ドラゴンコイン。エキドナと会ったんでしょ、この前」

このGPS情報は、コインの場所を探しとめる情報だということ。

そしてそこにはドラゴンがいる。だけどドラゴンコインで変化したのは人間だ。

そんなジレンマの中で、僕はまたドラゴンと対峙した時に戦えるのだろうか。


「渋谷っておしゃれよね、何度か言ったことあるけど、あたしはあの町が好きよ。

ファッションとか、いい感じじゃない。おしゃれできれいで、かわいいし」

「まあ、闇も多いけどな」

「何よそれ。どういう意味?」

「そのままの意味だ、ノーキン」

さりげなく弘明が言うと、結衣が不機嫌な顔へと変わっていく。


「あー、また言った。あたしより弘明の方が馬鹿でしょ!

あたしは成績なんか学年トップなんだからねっ!」

「うるさい、俺はまだ本気を出していないだけだ!」

相変わらず二人の掛け合いが続いていた。

コンビニで言い合い、店長らしき男が近づいてきた。


「おい、木田!」

「す、すいませんっ」

弘明は店長に叱られて、すぐに仕事に戻っていく。

結衣も不機嫌な顔で、僕の手を引っ張っていく。


「帰ろう、誉」

「えっ、でも……」

「いいのよ、次の目的は決まったし」

結衣は僕を見ながら、背中を向けてコンビニを出ていく。

だけど僕はずっとスマホを見ていた。


弘明にもらったメールにはGPSがあった、だけど僕にはメッセージもついていた。

そんな僕は、書かれた弘明のメッセージを見ていた。


『俺はまだお前を認めていない。本気を出さないお前を俺は許さない』

そう弘明のメールには書かれていた。

スマホを難しい顔で見ている僕は、怒りを押し殺しながら見ていた。


「ねえ、誉は『ドラゴン視アター』を見られたの?」

コンビニの外で、結衣が僕に聞いてきた。

数秒間僕は、うつむいたのちにコンビニの外に出た僕は口を開いた。


「結衣……無理だよ」

最後にため息交じりの顔で、僕は結衣につぶやいた。結衣の顔が曇ったのを知らずに。


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