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仮面をつけた女王の名は『エキドナ』だ。名前が赤く、レベルが???だ。
長い髪をつけ、女王のような豪華な朱色のフードをまとっていた。
彼女の登場で、K・シューターの態度が変わった。銃を構えるのをやめて、かしこまっていた。
僕はその名を結衣から聞いていた。
「ドラゴンプラネット・トルース版の開発者、『エキドナ』」
「そうだ。ノーマル版もトルース版も開発している。もちろん管理も行う。
さながらわらわはゲームマスターというべき存在だろう」
エキドナという女王は、扇子を持ったままハルヒメとK・シューターの間に入っていった。
威圧感のある女王が、仮面越しに僕とK・シューターを交互に見返した。
「K・シューターわらわが『休戦申請』を出したぞ。承認せい」
「でも……」
「わらわの言うことが聞けぬのか?
わらわはプレーヤーに対して、K・シューターの『レベルドレイン』もできるのだぞ」
「分かりました」
そういいながら、K・シューターは渋々攻撃をやめた。
僕は唖然としたまま二人のやり取りを見ていた。
「エキドナ……あんたは一体?」
「さて、ハルヒメよ。お前は新しいプレーヤーだな。
最近のログインの状況で、こちら側でも調査させてもらった」
「はい……」
「『ドラゴンプラネット・トルース』のメンバーは全部で五人だ、いずれも君が知っている人間だ。
かつて玉第三地区団地にて、配布した五つのスマホを持つ人間。
スマホの配布をした人間だけが、当ゲームのプレーヤーとして認められていた」
エキドナの言葉に、ハルヒメの姿で僕はじっと見ていた。
「前プレーヤー、『鐙塚 晴海』は残念ながら死んだ」
「うん……晴ねえは死んだ。僕は彼女からスマホを託された」
「『休戦申請』が受理されるのに五分かかる。その間、話をしようじゃないか。
お前に覚悟があるのか、わらわが試してやろう」
仮面をかけていて素顔は見えないが、ゆっくりと僕のそばに来ていた。
青い髪のエキドナは、かっこつけて長い髪をかきあげた。
「何の話ですか?」
「新入りは『ドラゴンプラネット・トルース版』を知っているか?」
「ええ、ドラゴンと戦うゲーム。武器が効かない天災ドラゴンを唯一倒せるゲームって聞きました」
「ならば……目的は分かるな」
「はい、『ドラゴンコイン』を探すことです」
ハルヒメである僕が言うと、頷いて見せたエキドナ。
「大体あっているが、正しくは『ドラゴンコイン』は『竜器』の一つだ」
「『竜器』?」
「竜生成器……略して竜器だ」
では聞こう。なぜドラゴンがこの世にあらわれているかわかるか?」
「ええっ、うーん……天災だから?」
「違うぞ、ドラゴンは人なのだ。元は人間だ」
エキドナの言葉に、僕はショックを覚えた。
いきなり鈍器で頭を殴られたかのような衝撃を覚えた。
「どういうこと?」
「ドラゴンは竜器によって欲望が肥大化した人間の姿、そう言うのが正しいだろう。
つまり竜器を見つけて始末しない限り、ドラゴンは永遠に生まれてくる仕組みだ。
ましてやドラゴンのレベルは欲望レベルによるものだ。
このスマホでカメラを覗くと、それが『竜器』であるかを調べることができる機能があるのだ」
「うそ……」
エキドナの言葉は説得力があった。
今までただ何となく現れていた災いが、人間が元だったとは思わなかったから。
それを知っていたのか、K・シューターは顔をそむけた。
「K・シューター、いや弘明お前は知っていたのか?」
「……ああ」
「だったらさっき、お前が殺したのは人間か?」
僕は単純に疑問だった。
僕はドラゴンと戦うためのゲームだと思っていた。
突然現れた侵略者のようなドラゴンを倒すことで、正義の味方だと信じていた。
だけど、僕がやっているのは人殺しと変わらないじゃないか。
「覚悟はあるか、新入りよ。どうやら申請の時間は迫ってきておる。
次戦うまでに覚悟を決めよ、でなければお前は永遠の臆病者だ」
エキドナが話を止めようとする、背景が白くなっていく。
僕の、ハルヒメの体が薄くなっていく。だけど僕は叫んでいた。
「もしかして僕は人殺しをしなければならないのか!」
何度も白い空間に僕は叫んでいた。
次第にその叫びさえ消えて、周りは真っ白に包まれた――




