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ゲーム画面・・・『ドラゴンモード』上野エリア・上野駅周辺区域
僕の初陣はこうして始まった。
『ドラゴンプラネット・トルース版』、このゲームはリアルの世界が映されていた。
正規版『ドラゴンプラネット』のエリアだと『ドラプラ』内の架空の世界が見えるらしい。
だけど、結衣が言う『真ドラプラ』は全く違う。現実世界がエリアだ。
画面の上には『上野エリア』と書かれていた。上野のアマヤ横丁の画像、それから北の方に上野駅が見えた。
駅の南の方で、一人の女神のような穏やかな女性。
羽衣を身にまとった、晴海と瓜二つの大人の女性。『ハルヒメ』って名前を知っていた。
僕はそれを見入っていると、そのキャラクターの隣には鎧を身にまとった女のキャラクターも見えた。
「ログインしたようね」
そばにいる結衣が僕に声をかけてきた。
下の方に小さい字で台詞がログとして出てくる。
どうやらここのログも、脳内で思ったことが台詞になる便利なシステムだ。
「えと……ここがドラゴンモード?現代と変わらないけど」
「違うわ、あたしは『ヴァルキリア』、この世界だとこの名前だから、『ハルヒメ』でしょ。
ここではリアルに似ているけれどリアルじゃない、ゲーム内なの。
だからキャラ名で言うのがあたしたちのルールよ」
「ごめん」
「遅いぞ、ヴァルキリア」
すぐに出てきたのが大柄な男のキャラクター。上半身裸で筋肉質だ。
やっぱり顔は太に似ていた、見た目は格闘家……というより相撲取りっぽいかも。
彼の目の前には巨大なドラゴンの姿が見えた。
頭にはコインを乗せた、緑色の鱗に包まれたトカゲのようなドラゴン。
大きさはジャイアント・キリングより大きいが、アニメ絵っぽく描かれていた。
「待たせたわね、『ジャイアント・キリング』」
「すでに戦闘開始していますよ」
「ハルヒメっ、紹介するわね。
彼は『ジャイアント・キリング』。見たままの太よ、カテゴリーは『格闘家』
隣で戦うのが『ナツナイト』、棗なの。カテゴリーは『ナイト』
格闘家は素手での攻撃が得意で、ナイトは盾役……まあそのままね」
ヴァルキリアの説明通り、ドラゴンに攻撃をしていたのが金ぴかの鎧を着た少女。
顔は棗にそっくりだ。名前は『ナツナイト』、棗のキャラの下にそう書かれていた。
片手剣と盾を武装した西洋風の棗な騎士は、普段と出で立ちが違って凛としていた。
「もう始まっているのね、『ナツナイト』」
「いくってどこに?」
「あのドラゴンを倒すわ。あたしたちで」
「まってよ~」僕の考えを代弁したのが、意外にも太のジャイアント・キリングだった。
「なによ?」
「この様子だとチュートリアルはまだしていないよね」
「できるわけないじゃない、シュツェルビッツもまだよ!」
不機嫌そうなヴァルキリアは、ドラゴンの方に近づいた。
「あんたのせいよ。たっぷりお礼しないとね」大きな剣をドラゴンに向けたヴァルキリア。
「ねえ、ゆ……じゃなくてヴァルキリア」
「何?ハルヒメ?」
「このログってもしかしてドラゴンに聞かれているの?」
「このログはメンバーの中だけで展開中よ。そういえば、『K・シューター』は?」
「まだよ、インできないんじゃない」
「そっか……」
「K・シューターって?」
「あいつはレベル30ね、これならチュートリアル代わりになるじゃない」
ヴァルキリアは勝手に納得したようで、ドラゴンめがけて上に動いて行った。
なんか勝手にスルーされたみたいだ。僕の喋りが弱かったのか。
「ハルヒメ。いきなりだけど初陣の中で戦い方を教えるわ、すぐ覚えて」
「えと……分かった。教えてくれ」
「まず、キャラクターを動かす。ドラゴンに近づけば攻撃を勝手に始めるわ。
あたしの戦乙女をよく見ていて」
結衣がそう言うと、スマホ画面内の女戦士ヴァルキリアが動いて行った。
ヴァルキリアがドラゴンの背後に移動していくと、鎧を着たナツナイトと戦うドラゴンの背後を切り始めた。
攻撃をすると、ドラゴンの下にある体力バーがかなり減っていた。
「一撃がつよいな、さすがアタッカー」これはジャイアント・キリング。
「近づけばオートで攻撃するわ、出来れば背後の方がいいわね」
そういうと、すぐにドラゴンがくるりと振り返ってヴァルキリアの方を向く。
当然反撃として爪で攻撃してきた。ヴァルキリアの体力ゲージも少し減っていく。
「守ります」
ナツナイトが反応し、ヴァルキリアの前に阻む。
「大丈夫よ、ナツナイト。こいつの攻撃力はレベル差がかなりあるし大したことないわ」
「でも一応です」
ナツナイトとヴァルキリアの会話。ナツナイトがダメージを喰らうと、ダメージは0だ。
「ほら、ハルヒメも攻撃して。画面上をタッチして動くの。
ドラゴンのそばに来れば勝手に攻撃を始めるわ。ナツナイトがいることだし、大丈夫よ」
「う、うん」ログで流れるヴァルキリアが、僕に指示を出してきた。
結衣の言うとおり、晴海そっくりのハルヒメを動かすとドラゴンの方に向かっていった。
近づけるとオートで攻撃を始めていた。
「ダメージ低い……」
「まあカテゴリー『神官』だから」
「いいんですか、ハルヒメに攻撃させて?」
「いいのよ、ハルヒメはレベル49でしょ。レベル差補正がかかっているし、大丈夫よ。
後はウィンドウの使い方ね」
「ウィンドウ?」
「そう、ウィンドウ。ゲーム画面下の方にチャットログの隣かな、いろんなアイコンあるでしょ」
「ああ、ある。弓のやつとか、星マークとか、薬とか」
「弓は遠隔攻撃、星はスキル、薬はアイテムですよ」
ジャイアント・キリングがログで丁寧に説明してきた。
こういう役目は昔から太の役目だな。
「遠隔は『狙撃手』ぐらいだし、薬はハルヒメの場合、神官だからあまり関係ないから。
大事なのはスキルかな、簡単な話RPGなんかで言うところの魔法ですね。
スキルポイントというのがあって、それを使ってスキルを発動します。
早速、スキルウィンドウを開いてください」
僕はジャイアント・キリングに言われるがままに、スキルウィンドウを開いた。
そこにはいくつものスキルが書かれていた。
「なんかたくさんある」
「まあ、『神官』ですからね。回復とかありますか?」
「うん、これかな?『治癒』」
「そう。このスキルはタッチする相手を選んで回復することができます。
キャラクターの下に体力ゲージがあると思うけど……」
「あっ、ある!」
「その体力が減っている人間に回復すると、回復ができます。
ちなみにドラゴンを対象にすることはできないので……」
「ドラゴンを回復する理由なんかないわよ!敵なんだから!」
ヴァルキリアが戦闘を続けながらたまに口を挟んできた。
そんなヴァルキリアのプレーヤーであるリアルの結衣は、時折カラオケ機を見ていた。
「まあ、スキルポイントはハルヒメが一番多いからよく使うコマンドだよ。
時間が空いたら、スキルをいろいろと見てみるといい。
基本的にはドラプラのノーマルと同じだから。ネットで検索もできるよ」
「ありがと、ふと……ジャイアント・キリング」
「いいえ、当然ですよ」
ジャイアント・キリングは殴りながら話をしてくれた。
まあ、僕も持っていた両手の杖で殴っているんだけれど。ダメージが無いな。
そんな時、急にジャイアント・キリングが叫んだ。
「いけない、くるぞ!」
「えっ?」
ドラゴンがブレスモーションだったのだ、ジャイアント・キリング、ナツナイトが離れようとする。
ヴァルキリアも離れるのを見て、僕は離れようとした。が、間に合わなかった。
吐かれたドラゴンのブレス、画面が赤く光って揺れた。
ブレス範囲が、僕のハルヒメの体力ゲージを一気に減らしてきた。
「結構減った……」
「ごめんね」回避をうまくしていた結衣は寂しそうな顔を見せていた。
「ブレスはドラゴンに離れると、ダメージが緩和しますよ」
「うん、今度は気をつける」
上手くよけたナツナイトとジャイアント・キリング、体力ゲージはあまり減っていない。
ヴァルキリアは体力が少し減っていた。
逆にハルヒメの体力は一気に半分以下になっていた。
だけどドラゴンの体力もすでに半分を切っていた。
「言い忘れたけれど、ドラゴンにもあたしたちにも必殺技ゲージがあるの。
体力の下にあるでしょ、黄色いゲージ」
ヴァルキリアのセリフに、僕は名前の下のゲージを見てみた。
細い小さなゲージは確かに黄色い。
「これがあると必殺技を使うことができる」と、ナツナイト。
「そうね、注意してみておくといいわ。後は体力ゲージの下にある必殺技を使うことぐらい」
「必殺技?」
「ええ。でもこいつは弱いし、ゲージは次の戦いに持ち越しもできるから、つかわないのも手ね」
ヴァルキリアが言う中で、画面のドラゴンの体力ゲージがさらに減っていた。
「必殺技って強いの?」
「そりゃあもちろんよ!使いこなせれば格上のドラゴンにも渡り合える一発逆転技よ」
「なるほどね」
「それ以上に、ハルヒメを回復したほうがいいんじゃないかな?
スキルあるから、早速タッチして」
ナツナイトに言われて、僕はスキルウィンドウを開いた。
スキル項目から『治癒』をタッチして、さらにハルヒメをタッチする。
するとハルヒメの体力ゲージが全快まで回復した。
「これか……」
「あっ」だけど僕の回復と間もなくドラゴンの周りに、いくつものコインが浮かび上がった。
「動いたわね」
「出てきたな!」
ヴァルキリアとジャイアント・キリングが、ほぼ同時に叫んだ。
それと同時に無数のドラゴンにコインが重なった。
「これって、このドラゴンのスキルじゃないわ!ヤツよ」
「動きは?」
「えと……だめね。人が多いわ」
ヴァルキリアの結衣は、リアルでカラオケ機の画像を見ていた。
僕も一瞬ちらりとカラオケ機の画像を見ていた。映っていたのは上野駅の生放送。
多くの人が逃げ回っていた生映像を流していた。
「結衣は、一体何を探しているんだ?」
「そりゃあ、『ドラゴンコイン』と『アジ・ダハーカ』よ」
「アジ・ダハーカ?前も言っていたけど一体それはなんだ?」
「あたしたちが倒すボスよ、ドラゴンコインの生みの親。
誉も余裕があったら……いいや無理ね」
カラオケ画面には、僕が晴海の最期を見た時と同じようなドラゴンがそこには映っていた。
そう、結衣はカラオケ機の生映像から『アジ・ダハーカ』を探していた。
だけど、その姿は全く分からなかった。




