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カラオケボックスの中ではずっとサイレンが鳴っていた。
だけど結衣は全く動かない。落ち着き払った顔で右手にリモコン、左手にスマホを持っていた。
カラオケ機器のモニターには、生放送のニュース画面に切り替わっていた。
そのニュース画面に見えたのが上野駅、ここからそんなに離れていない。
「ねえ、知っている?」
「何が?」
「カラオケ機の最新機能について」
結衣がそう言いながら、メニューを開くとそこには『ドラゴン情報』と書かれていた。
ドラゴン情報のページを開くと、画面が二分割された。
リアルのドラゴンを写すカメラと、上野地区の地図。地図には赤いドラゴンアイコンも見えた。
「どういうことだ?」
「太もナツもおそらく『真ドラプラ』に入ったはず、あたしたちも入りましょ」
「待って、結衣。行かせていいのか?太もナツも?」
僕の質問に結衣の顔が一瞬曇った。
でもどう考えても腑に落ちない、ドラゴンが街中に現れたのに。
「ドラゴンが現れたんだろ、生身の人間を生かせたら死んじゃうよ!」
「分かっているわ!」
「だったら今すぐ避難して、呼び戻して……幸いこのカラオケボックスにはシェルターもある」
「逃げたら誰が倒すの?」
静かな声で結衣は僕に言ってきた。
相変わらずスマホを持ったまま、腕を振るわせていた。
「逃げないと……殺される!僕は見たんだ、ドラゴンに殺された晴ねえを」
「あなたはそうやって弱気になるのがいけないのよ、誉!」
「なんで僕が……」
「いい、『ドラゴンプラネット・トルース版』はドラゴンを倒せる唯一無二の人類最後の希望。
もし、あたしたちが負けたらドラゴンを止める術はない。
天災ドラゴンは永遠に人間を殺し続ける。だから……」
「それでも太や棗が犠牲になっていいわけがない!」
「馬鹿じゃない!あたしたちはそういう運命なの。
それに、このカラオケボックス内ならあたしたちは彼等を救えるから」
泣き出しそうな結衣が、顔を赤くして言い捨てた。目元を隠してため息を大きく吐いた。
「どういうことだよ?」
「時間がないわ、今すぐ『ドラゴンモード』でゲームに入って!今なら出ているはずよ」
結衣がカラオケ機の画面を見ながら、スマホを操作していた。
僕はスマホを見ると、『ドラゴンモード』と書かれた赤い文字を見つけた。
僕が押そうとしたときに結衣が声をかけた。
「言っておくけれど、あたしは守れないから。
自分の身は自分で守って、そうしないと死ぬわ」
そう言い残して僕はスマホを見ていた。
スマホには『ドラゴンモードに入りますか?』という無慈悲な文字が見えた。




