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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
二話:戦う意志と逃げる勇気
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カラオケボックスのカラオケ機は、新譜情報が流れていた。

四人もいるのに、誰もカラオケを歌っていないカラオケボックス。

僕は結衣のスマホをずっと見ていた。

そこに書かれたGPSは上野駅のあたり、つまりここから徒歩五分圏内。


「これって?」

「『ドラゴンコイン』が動いた場所よ。今までもこのあたりに動いているわ」

「いったい何なんだ?ドラゴンコインって」

「『真ドラプラ』の最終クリアって分かりますか?」

そこで言ってきたのは棗。おどおどした小動物の棗は、この時は少し凛としていた。


「ドラゴンを倒す……じゃないの?」

「それは一つの目的でしかないです、本来はドラゴンを生みだす『ドラゴンコイン』を探すのが目的です」

「ええ、『ドラゴンコイン』を探して、ドラゴンを増やすのを止める役目があります。

それが私たちの戦い……強いボスもいるんですけど……」

「とにかく、ドラゴンコインを見つけて処分しないといけないんだ」

太はジュースを飲みほして、満足そうな顔を見せていた。


「そう、だからドラゴンを討伐すると出てくるストーリーを攻略するの。

あたしは上野のあたりにGPS表示されるわ。

太とナツの方はGPSの場所に行ってきたでしょ」

「私の方は三週間前の上野公園……人が多かったです。怪しい人物を特定するのは難しい」

「僕は上野の民家あたり、どうやら怪しいところはなかったですね」

「そう、やっぱり駄目ね」

結衣が落胆した顔を見せていた。太も棗も残念そうな顔を見せていた。


「二人とも『ドラゴンプラネット・トルース版』のプレーヤー……なんだよね」

「うん」

「……はい」

僕の質問に太と棗は迷いなく答えていた。

当然のことながら、僕は聞かなければいけなかった。


「怖くないの?」

「うん、よくわからないんだ。このゲームで負けると本当に死ぬって……」

「でも……晴ねえのことで……怖くなった」

太は相変わらずマイペースだけど、棗は怯えているようにも見えた。

カラオケボックスではどこかのアーティストの新曲が流れていた。

この曲はどうやらバラードか。


「だから、だからよ!」

隣でいきなり立ち上がった結衣は、右手を力強く握っていた。


「だから……」

「『ドラゴンコイン』を見つけて、『アジ・ダハーカ』を倒す。

悲劇を繰り返さないためにも、あたしたちは前に進まないといけないから!」

「うん……そうだね」

結衣の言葉に太が同意した。さっきまでおどおどしていた棗も、顔を上げて結衣を見上げた。

ん?『アジ・ダハーカ』って名前、どこかで聞いたことあるような。


「誉、あたしたちのコミュニティに参加してくれるよね?」

結衣の言葉に、太と棗が驚いた顔を見せた。

二人の視線が同時に結衣に向けられて僕も見られていた。


「晴ねえがいなくなって、『エキドナ』が次の参加者を探すって言っていたけど……

まさか誉が……」

「『エキドナ』?」

「ええ、このゲームの管理者ね。メッセージが着ていたけれど……関係ないわ。

スマホは五つしかないからね」

「新規ユーザー認証されたからしょうがないじゃない、導いたのは晴ねえのスマホよ」

「でも、僕のキャラというより晴ねえのキャラだけど……」

「いいのよ、誉はあたしたちの仲間よ」

そんな僕はスマホの画面を覗き込んだ。太と棗はお互いのスマホを見ながら話を続けた。

棗のスマホは青か。このゲームをやる人は、スマホがみんな同じ機種なんだろう。


「そろそろ話を戻しましょ。今のGPSでこれから近い場所は?」

「上野地区だと……一か月前から上野商店街で数件あるね」

「ああ、『アマヤ横丁』ね」

「そっ、行ったことないけれどなんか有名な場所らしいわね」

「そこだと多数のGPS反応あるし、行く価値はあるんじゃないかな?」

太の提案に、結衣は難しい顔を見せた。


「でも人が多そう」

「ですね」棗も同意した。僕も『アマヤ横丁』を知っていた。

ニュースや正月特番でよくテレビに出て来るし。確かに人は多いイメージがあるな。


「まあ、人が多いところの方がドラゴン出やすいしね。

それじゃあ、ナツと太はアマヤ横丁を捜索してもらっていい?誉はここに残ってね」

「うん」

「了解」

棗と太は頷いて、そのまま棗と太は立ち上がっていた。


「じゃあ一回りして、だいたい三時ごろ一度戻ってくるよ」

「よろしくね、太と棗」

そう言いながら結衣が、太と棗に手を振っていた。

二人が部屋を退出すると、このカラオケルームも広く感じていた。


「あれ、僕は?」

「誉はあたしに『シュツェルビッツ』をくれるんでしょ。プレゼントの仕方を教えるわ」

「あっ、ああ……それで僕を残したのか?」

「それだけじゃないわ……戦い方を教えないとね。

でもまずはプレゼント。隣……座るわね」

鼻歌交じりに結衣はにこやかな顔で、僕の隣に座ってきた。

それにしてもいい匂いがするな、結衣は。二人きりのカラオケルームに、僕は緊張が走った。


「結衣……近い」

「でね、ここにプレゼントってあるでしょ」

結衣が僕のピンク色のスマホを見て、指をさしてきた。

メニューのプレゼントのところを指さそうとしたとき、スマホがいきなり揺れた。


間もなくして、画面が赤く点滅した。

すぐにスマホ画面中央に現れた文字が『ドラゴン発生』という文字。


「結衣、なんか鳴っているぞ!」

すると、結衣の持っているスマホも赤く点滅していた。

僕から離れた結衣は、すぐに自分の青いスマホを見て険しい顔に変わった。


「『ドラゴン警報』よ!なんてことなの!タイミング悪すぎ!」

結衣が叫んだ瞬間に、カラオケボックス内で大きなベルが鳴った。


『繰り返します、ドラゴンが上野駅方面に出現しました。

至急カラオケボックス内の地下シェルターに避難してください!繰り返します……』

それは一瞬の出来事だった。すぐに結衣が僕の手を掴んだ。


「ここで見ていましょ」

「結衣……どういうこと?」

「大丈夫よ、ここが一番いい場所なの」

そう言いながら、結衣はカラオケ機のリモコンに手を伸ばした。


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