表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
二話:戦う意志と逃げる勇気
11/106

11

土曜日、僕は久しぶりに街に繰り出した。

そしてやってきたのが、上野のカラオケボックス。

結衣に呼び出された僕は、カラオケボックスの大部屋にいた。

何故有明より離れた上野で、ここのカラオケボックスなのかわからないが。

しかもここを指定したのは結衣だ。


カラオケ機器は、新しい音楽のPV(プロモーションビデオ)が流れていた。

結衣に待ち合わせたこのカラオケボックスに入って、すぐに懐かしい顔を見つけていた。


「誉、久しぶり」

そこにいたのが、かつて玉第三団地にいた『壬生(みぶ) 太』だ。

オーバーウォールを来てさらに大柄になっていた太は、やはりポテトチップスを食べていた。

僕よりも一つ年上でおおらかな男だ。まあ見た目通りに食べるのが好きだけど。


「太か……相変わらずだな」

「すまない、誉……」太の顔が一瞬、曇った。言おうとしたこと分かったから。

「これは僕のせいだ」

「誉さんのせいではありません……たぶん」

カラオケ機のそばににある小さな椅子に、ちょこんと座っていた少女がいた。

ショートカットに地味なワンピースの少女は、やや落ち込んだ顔で僕を見ていた。

彼女は『親園(ちかその) (なつめ)』。通称ナツ、僕の一個下だ。


「ナツも元気そうで何より。

このあたりって、ナツの家が団地公団から移ったところか?」

「えと……そう……かな」

やっぱり最後の方が聞き取りにくい、自信がなさそうなナツがちょっとかわいく見えた。


「いや、違うぞ」とすかさず否定する太。

「じゃあ、なんで上野に?」

「それはあたしが説明するわ」

そう言ってカラオケボックスのドアが開いて、呼びつけた結衣が最後に入ってきた。

学校のブレザーと違い、ラフなシャツとジーパン姿の結衣が現れた。

腕を組んで自慢げに見ている結衣は、不敵な笑みを浮かべていた。


「みんな揃ったわね」

「ああ、結衣。今日は上野だな、まさか観光じゃないだろ」

「もちろんよ。それよりまずは、誉!」

「ああ……」

「紹介……しなくてもわかるわね。彼が『真ドラプラ』の新しいプレーヤー、『野高谷 誉』よ」

「よろしく」

「じゃあ早速だけどスマホ見せて」

にこやかな顔で手を出してきた結衣。

結衣がピンクのスマホを見ると、太と棗も体を乗り出してみてきた。


「あっ、『女神の衣+3』いいね」

「すごいな、ハルヒメってスキルポイント1000を越えています」

結衣とナツが口々にスマホを見ながら感想を言う。


「ストーリーモードは……やってあるじゃない」

「『シュツェルビッツ+3』いいわね~『斬り』属性必殺技ダメージ150%欲しい~」

「いいよ、別に」

「ホントに、早速あたしに頂戴っ!」

結衣の顔が途端に明るくなった。

僕にはこの武器の良さは分からないし、結衣が欲しがっているならいじわるして拒む理由もない。


「そのまえに……そうか」太が何かを見つけて納得した。

「どうしたの?」

「ストーリーはちゃんとクリアさせたね、誉は」

「うん」僕はスマホを持った太に頷いた。


「前から晴ねえが疑問だったんだ」

「疑問?」

「晴ねえがいつも言っているGPSの場所が、なんか曖昧だったし。

それに、『ドラゴン視アター』が買えないから」

「あっ、そういえばGPSが出てこないってどういうこと?」

「結衣、自分の『真ドラプラ』で課金のエキストラ項目を見てみるといい」

太に促されて、結衣はスマホをいじりだす。間もなくして納得した。


「なるほど……そうね。だから『ドラゴン視アター』買えないのか」

「そっ。ハルヒメは『ドラゴン視アター』を買ったから、GPSが出てこないんだ」

「一体何の話をしているんだ?」

太の話に納得している結衣と棗。蚊帳の外の僕は口をはさんだ。


「うん、ハルヒメ……じゃなくて誉は逆に貴重な戦力っていう意味よ」

「どういうこと?」

「ねえ、『ドラゴン視アター』で見た画像ってどんなのだった?」

「画像?ああ、変なネットゲームが出ていた。

ファンタジーの世界で、お金とザイルとかどうとか……」

「ザイル?もしかして『ラグナカンド・オンライン』?」

「何それ?」

「これだよ」そう言いながら、太がポケットから自分の緑色のスマホを見せてきた。

太のスマホもやはり晴海や結衣のと同じ型だ。

そのスマホ画面には、『ドラゴン視アター』で見た画像と同じ西洋風の街並みが広がっていた。


「『ラグナカンド・オンライン』ああ、そうだね。どこかで見たことがあると思った」

「ザイルは、ラグナカンドシリーズの貨幣通貨だよ。

超有名RPGのネット版で、ユーザーも五十万ともいう。

昔、ゲーム機時代のオフゲーでは徹夜組がいたらしいよ」

「そう言えば子供のころに、なんかニュースになっていたね」

「で、ザイルがリアルマネーとか……」

「ゲームの話はいいわ、その画像にはどんな人物が写っていたの?」

「えと……『アジカ』と『ドン』。アジカはこんな感じ」

僕はラグナカンド・オンラインの小さな男の子のキャラを見つけて、指さした。


「これってプレーヤーキャラよ、全く参考にならないわ」

「ご……ごめん」

「『アジカ』と『ドン』。残念ながら僕の鯖と違うみたいだ」太もがっかりした顔を見せた。

「鯖?魚の話はしていないけど」

「サーバーの事、オンラインゲームは参加者が多いとサーバーをいくつも分けるんだ」

太が流暢に説明してくれた。太ってそういえばPRG好きだっけな。

ピンクのスマホを太は僕に返してくれた。


「そんなことより、この画像が何か意味があるのか?」

「あるわよ、あたしたちは『ドラゴンコイン』を探しに旅に出ているから」

「『ドラゴンコイン』?」

こちらも初めて聞く名前だ、いろんなことが多すぎて僕は訳が分からないよ。


「ねえ、誉。もしかして『真ドラプラ』の目的はドラゴンを倒すだけだと思っているんでしょ」

「違うの?」

「違うわ、これを見なさい」

結衣は僕に青いスマホを差し出してきた。それはある地図が描かれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ