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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
十二話:最高のデスゲーム黙示録
105/106

105

あれから二週間が過ぎた。あたしは黒いブレザーを着ていた。

あたしの名は、『蓼沼 結衣』。ドラゴンプラネットのプレーヤーの一人。

有明で唯一の斎場で、お経が読み上げられていた。斎場にすすり泣く声が聞こえた。


ここでは、あたしのクラスメイトの弘明の葬儀が行われていた。

弘明と違う学校の棗も愛子も、参列していた。

だけど人知れず英雄となった男は参加していなかった。

お経を読み終えて、お坊さんが「最後のお別れです」と言いながら飾られた花を取り分けていた。


いつの間にか夏休みに突入し、時間はあわただしく流れていた。

二週間前に東京はユグドラシルという一本の巨大樹で、たった一夜で半壊した。

でもユグドラシルは消滅し、カオスホールに取り込まれた人間はほぼ全員帰ってきた。

それは一人の英雄の行動がもたらしていた。


彼がかつて持っていた赤いスマホを見ながら、彼のやすらから顔を見て泣いてしまった。

花を手向けるときにはあたしは、やっぱり泣いていた。

涙があふれて花をなかなか飾れないあたし、それでもなんとか花で彼を飾って棺桶は閉められた。


「弘明……」

嗚咽にむせる棗、普段はあまり感情を出さない棗も大泣きしていた。

あたしも涙を流していた。晴海の時も、太の時も泣きまくったのにやはり涙が出てきた。

いつになっても悲しい時には涙があふれてくる、あたしはやっぱり人間だと自分を確認できた。

棺桶が霊柩車に運ばれて、車を見守ってもあたしは棗と抱き合って泣いていた。


「棗……あたし……弘明……」

「誉さん……こなかったわね」

棗の言葉にあたしははっとしてしまった。

そう、この場所に誉はいない。

誉はユグドラシルとの一戦の後、ずっと眠っていた。全く起きることもなく。


「結衣ちゃん……ありがとね」

そんなときあたしは、背後から声をかけられた。あたしはすぐにわかった。

それは弘明のお母さん、意外と若いお母さんは黒い服を着て涙をこらえていた。


「いえ……あたしは弘明君の……」

「結衣ちゃんや棗ちゃんが最後に来てくれて、弘明もよろこんでいるわ」

「おばさん、本当にごめんなさい」

棗は何度も頭を下げて謝っていた。彼女は申し訳なさそうな顔を見せていた。


「いえ、弘明は仕方ないわ。棗ちゃんお願いだから……顔を上げて。

結衣ちゃん、それで弘明の机を調べたらこんなものが出てきたんだけど……

どうしても結衣ちゃんに見せたくて……」

弘明のお母さんが渡した手紙を見て、あたしは驚いていた。


(嘘……でしょ)

それはラブレターだった。しかも差出人があたしになっていたのだ。

弘明のお母さんが見せたラブレターに、あたしは手を震わせながら受け取った。


三年前、弘明が晴海に告白してフラれた。

失恋した時に、あたしは弘明の相談を受けた。

失恋した弘明は相当ショックだったらしく、相談は半年にも及んでいた。

そんな彼はようやく立ち直った理由は、好きな人ができたから。そこまであたしは相談を受けた。


でもそれがあたしだったなんて思わなかった。

あんなにあたしのことを『ノーキン』とか茶化していたのに、弘明はあたしのことが好きだった。


感傷に浸るあたし、それを慰める棗。

「弘明が……あたしをずっと好きだったなんて……」

「結衣……」


棗の胸にいつの間にか大泣きしていたあたしがいた。

弘明のお母さんもあたしを見て、やっぱり涙があふれていた。

そんな時、あたしのブレザーのスカートを引っ張る手があった。

ふりかえるとそこには愛苦しい小さな女の子、涙目で愛子ちゃんの顔が曇って見えた。


「愛子……ちゃん?」

「結衣、頼みたいことがある」

それは明らかに子供じみていない小さな女の子、愛子がいた。

スマホを持ちながらあたしをじっと見ていた。

彼女だけは斎場の中で唯一、泣いていない淀んだ目をしていた。


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