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地下鉄駅に鳴き声が木霊した。僕も、結衣も、棗も、大声で泣いていたから。
そばにいた愛子が、首を横に振った。
それは魂の抜けた弘明、愛子が前に言っていた。
ドラゴンプラネットのプレーヤーは戦闘で負けると、脳に電気が大量に流れた。
脳に電気が流れると心臓や肺の機能が失われる。それが、現実に起きてしまった。
これで三例目だ、起きては欲しくないのに二人も起きてしまった。
心臓が動かない弘明を見て僕は泣いていた。
「弘明!」
僕は声をかけて、体をゆすった。だけど弘明は赤いスマホを見ていた。
外傷はない、だけど心臓も動いていない。
間違いなく脳死だった。
「弘明っ、起きなさいよ!」
結衣も一生懸命弘明の体をゆするが、弘明は目を覚ますことがない。
「弘明……太……なんで」
棗は少し離れて倒れている太を見ていた。
こちらの太も脳死だった。ニーズヘッグに体を乗っ取られた太も、最期を迎えていた。
「無駄じゃよ」愛子の残酷な一言。
「お前が、お前が開発したんだろ!」
僕は詰め寄っていた、枯れた声で愛子を激しくゆすった。
「すまない、わらわがいけなかったのだ」
「全くだ!なんで人類のために僕達だけが犠牲に……」
「やめて、誉!」
怒った僕に、結衣が背後から抱きついていた。
背中から結衣の涙をはっきりと冷たく感じた。
「それを知ったうえで……あたしたちは戦っていたんだから」
「結衣……」
「うん、結衣の言うとおり。私たちはドラゴンと唯一戦う力がある。
力があるということは、そういう責任を負うこと……」
棗も泣いていた。当然親友の死を受け入れるのはきつい。
それでも棗が泣いたまま前を向いていた。
「だとしたら理不尽だ!ドラゴンの苦労は皆が背負って……」
「欲望とは案外そういうモノなのかもしれぬ」
「どういうことだ?」
「欲望は強くなればなるほど、人を傷つける。
だから人間には理性があるのだ。その理性のタガが外れた姿が、ドラゴンになってしまう。
それでも、人は今まで積み重ねてきた歴史がある。
人は歴史で欲望にまみれた過去を学び、悔い改めることができる生き物だとわらわは信じている」
愛子の言葉に、僕と結衣、棗は心を打たれた。
「じゃあ、愛子……お前はいったい……」
「少なくとも人ではない。さながら人の管理人というところだろうか。
それより今は急ごうぞ。まだ戦いは終わっていない」
「でも、弘明と太はどうするの?ここに……」
結衣の質問に、地下鉄にさらに来客が来ていた。
それは棗と別れた冬規だった。
「冬規、どうしてここに?」
「棗と別れて、ボクは帰ろうとしたけど何かできないかって、思ったらいてもたっても……」
そんな冬規には数人の男が集まっていた。
「彼らは?」
「『パンタシスタ』のオフ会連中。悪い奴らじゃない。
一緒に棗を助けようと……」
そんな冬規の周りにはオタクっぽい成人男性がいた。
痩せたのから、太ったのまで、でもサラリーマン風の真面目な成年もいた。
様々な男性たちを引き連れて、現れた冬規は少し凛々しかった。
「ねえ、頼めないかしら?」
「あっ、そうだ……」
結衣の言葉に棗はすぐに冬規の方に動いていた。
かくして僕たちは冬規たちに頼んで、弘明と太をまかせた。
冬規は弘明と太の死に、悲しんだ様子を見せた。それは致し方ないことだ。
そして、走り出した僕たち。結衣も足をくじいていたが気合で走った。
時刻はいつの間にか夜の二時を迎えていた。
タイムリミットまで後三時間少々だ。僕たちは立ち止まる暇がなかった。




