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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

勇者の、その後。

作者: 双月 空音
掲載日:2013/01/27

 

 勇者が魔王を倒し、故郷の街に帰ると、以前とは比べ物にならないほどに街が活気に満ち溢れていた。

 街中に笑い声が響き、大人も子供も笑顔だった。


「勇者様だ!」

「勇者様が帰ってきたぞ!!」


 勇者が街に入った途端、街が歓声に包まれる。

 自然と、街中の人が勇者の周りに人だかりを作っていた。


「まさかあんたが魔王倒すなんて……」

「お前はこの街の誇りだ!!」

「冒険のお話しきかせてよ~!」


 そこにいるすべての人が、彼を祝福していた。


「皆の支えがあったから、俺は魔王を倒せたんだ。ありがとう」 

「水臭いこと言うなよ!」

「そうだぞ。ほら、早く王様のところに行きなさい」

「ああ」


 勇者は、街の中央にある王城に向かった。

 その間にも、街の人はどんどん声をかけていく。


「よっ!勇者様!この世界の恩人!」

「勇者様~!」


 勇者は照れ笑いを浮かべながら街の通りを進み、やっとのことで王城にたどり着いた。


「ようこそ、わが国の勇者様。王様が待っておいでです」


 勇者は、早速謁見の間に案内された。


「よくぞ、魔王を倒してくれた。国の代表として、礼を言う」

「……いえ、当然のことをしたまでです」

「そんな謙遜をしなくてもよい。もう、世界の脅威は去った。街全体で、宴を開こう」

「ありがたき幸せです」


 こうして宴は三日三晩続き、勇者のところには絶えず人が来て祝福の言葉を投げかけた。

 勇者を一目見ようと、隣の街などからも人がたくさん来た。

 しかし勇者は決して舞い上がることも無く、笑顔を浮かべながらただただ、座っていた。


 ────誰も、その笑顔の裏にあるものを気づくことなく。






 勇者がこの街を出る前、彼は周囲の人から虐められていた。

 暴言を吐かれ、物を投げられ、ボコボコに殴られた日もあった。

 彼が魔王を倒しに行くと言った時も、誰もが鼻で笑い飛ばした。

 どうせ無理だ。お前なんかが魔王にかなうはずも無い。と。

 だから、彼は誓った。

 必ず魔王を倒し、街の連中を見返してやる。と。


 そしてつらい道のりを乗り越え、やっとのことで魔王を倒して街に帰ってみると────街の人の態度は、まったくもって変わっていた。

 昔彼を虐めていた者達が、何食わぬ顔で「お前ならやると信じてた」などと声をかける。

 彼は宴の間中も、怒りや嘲りで頭の中が一杯だった。


 そして、彼は考える。

 「復讐」を、しようと。






 宴から3日後。

 誰もが寝静まった夜に、勇者の姿があった。

 昼間とはうって変わって静まり返った大通りを抜け、1人王城へと向かう。


「これはこれは勇者様。こんな時間に────ぐはッ!」

「な、何をっ……うがッ!」


 城の門番をしていた兵士を、剣で斬り捨てる。

 魔王を倒した彼にとっては、兵士など相手ではなかった。


 勇者はどんどんと城の中を進み、時には巡回の兵士を斬り捨てながら王の寝室までたどり着いた。


「……」


 王は、寝息を立てて寝ている。


「……平和なもんだな」


 ためらうことなく、勇者は王の心臓に剣をつき立てた。






 一夜明け。

 街中は大騒ぎだった。

 王が殺されたことは、すぐに街全体に広まっていた。


「王様が殺されたって……」

「犯人はまだ捕まってないらしい」

「どうしてこんな時期に……」


 街中で、そんな言葉が飛び交う。

 そしてその後の問題であげられたのは、誰が次の王になるかということ。

 王には、跡継ぎがいなかったのである。


「勇者様。大臣が至急王城に来てくれと」

「分かった。すぐ行こう」


 使いのものが勇者を訪れ、勇者は深刻な表情をつくり急いで王城へ向かった。



「今回お呼びしたのは、他でもありません。先日の件です」


 王のいない謁見の間で、大臣は勇者にこう言った。


「ああ。非常に残念だ」

「はい……。それで、今、王には跡継ぎがいらっしゃいません」

「らしいな」

「だから……この国を救った勇者様に、この国の王になっていただけないかと」

「俺がか?」

「はい。勇者様ならば、国民は皆納得するはずです。……どうか!」


 大臣は、頭を床にこすりつけながら頼んだ。


「……わかった。引き受けよう」

「本当ですか!?」


 謁見の間にいた大臣と兵士たちの表情が、途端に明るくなる。

 そして、大臣は兵士たちに向かって叫んだ。


「お前たち!すぐに国民にこの事を伝えろ!!」

「はい!!!」


 兵士たちが、城の外へ駆けて行く。






 ────勇者は、ニヤリと笑った。

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