勇者の、その後。
勇者が魔王を倒し、故郷の街に帰ると、以前とは比べ物にならないほどに街が活気に満ち溢れていた。
街中に笑い声が響き、大人も子供も笑顔だった。
「勇者様だ!」
「勇者様が帰ってきたぞ!!」
勇者が街に入った途端、街が歓声に包まれる。
自然と、街中の人が勇者の周りに人だかりを作っていた。
「まさかあんたが魔王倒すなんて……」
「お前はこの街の誇りだ!!」
「冒険のお話しきかせてよ~!」
そこにいるすべての人が、彼を祝福していた。
「皆の支えがあったから、俺は魔王を倒せたんだ。ありがとう」
「水臭いこと言うなよ!」
「そうだぞ。ほら、早く王様のところに行きなさい」
「ああ」
勇者は、街の中央にある王城に向かった。
その間にも、街の人はどんどん声をかけていく。
「よっ!勇者様!この世界の恩人!」
「勇者様~!」
勇者は照れ笑いを浮かべながら街の通りを進み、やっとのことで王城にたどり着いた。
「ようこそ、わが国の勇者様。王様が待っておいでです」
勇者は、早速謁見の間に案内された。
「よくぞ、魔王を倒してくれた。国の代表として、礼を言う」
「……いえ、当然のことをしたまでです」
「そんな謙遜をしなくてもよい。もう、世界の脅威は去った。街全体で、宴を開こう」
「ありがたき幸せです」
こうして宴は三日三晩続き、勇者のところには絶えず人が来て祝福の言葉を投げかけた。
勇者を一目見ようと、隣の街などからも人がたくさん来た。
しかし勇者は決して舞い上がることも無く、笑顔を浮かべながらただただ、座っていた。
────誰も、その笑顔の裏にあるものを気づくことなく。
勇者がこの街を出る前、彼は周囲の人から虐められていた。
暴言を吐かれ、物を投げられ、ボコボコに殴られた日もあった。
彼が魔王を倒しに行くと言った時も、誰もが鼻で笑い飛ばした。
どうせ無理だ。お前なんかが魔王にかなうはずも無い。と。
だから、彼は誓った。
必ず魔王を倒し、街の連中を見返してやる。と。
そしてつらい道のりを乗り越え、やっとのことで魔王を倒して街に帰ってみると────街の人の態度は、まったくもって変わっていた。
昔彼を虐めていた者達が、何食わぬ顔で「お前ならやると信じてた」などと声をかける。
彼は宴の間中も、怒りや嘲りで頭の中が一杯だった。
そして、彼は考える。
「復讐」を、しようと。
宴から3日後。
誰もが寝静まった夜に、勇者の姿があった。
昼間とはうって変わって静まり返った大通りを抜け、1人王城へと向かう。
「これはこれは勇者様。こんな時間に────ぐはッ!」
「な、何をっ……うがッ!」
城の門番をしていた兵士を、剣で斬り捨てる。
魔王を倒した彼にとっては、兵士など相手ではなかった。
勇者はどんどんと城の中を進み、時には巡回の兵士を斬り捨てながら王の寝室までたどり着いた。
「……」
王は、寝息を立てて寝ている。
「……平和なもんだな」
ためらうことなく、勇者は王の心臓に剣をつき立てた。
一夜明け。
街中は大騒ぎだった。
王が殺されたことは、すぐに街全体に広まっていた。
「王様が殺されたって……」
「犯人はまだ捕まってないらしい」
「どうしてこんな時期に……」
街中で、そんな言葉が飛び交う。
そしてその後の問題であげられたのは、誰が次の王になるかということ。
王には、跡継ぎがいなかったのである。
「勇者様。大臣が至急王城に来てくれと」
「分かった。すぐ行こう」
使いのものが勇者を訪れ、勇者は深刻な表情をつくり急いで王城へ向かった。
「今回お呼びしたのは、他でもありません。先日の件です」
王のいない謁見の間で、大臣は勇者にこう言った。
「ああ。非常に残念だ」
「はい……。それで、今、王には跡継ぎがいらっしゃいません」
「らしいな」
「だから……この国を救った勇者様に、この国の王になっていただけないかと」
「俺がか?」
「はい。勇者様ならば、国民は皆納得するはずです。……どうか!」
大臣は、頭を床にこすりつけながら頼んだ。
「……わかった。引き受けよう」
「本当ですか!?」
謁見の間にいた大臣と兵士たちの表情が、途端に明るくなる。
そして、大臣は兵士たちに向かって叫んだ。
「お前たち!すぐに国民にこの事を伝えろ!!」
「はい!!!」
兵士たちが、城の外へ駆けて行く。
────勇者は、ニヤリと笑った。




