2 ◆ 人としてかなり駄目なこと
初っ端からヒロインの水着姿を覗きたいって妄想する主人公とか...最低だ!(笑)
徐々にかっこいい男の子になっていってくれたらなぁと思っているんですが。。。当分はヘタレのままでいきそうです。
「俺の迫真の演技のおかげで、来週から男子もバレーボールになるかもな」
十分後。岡元に気圧されたまま彼の『言うとおり』にしてしまった俺は、校舎の屋上にいた。あの後、岡元は突如白目をむいて倒れてみせ、俺が保健室まで彼に付き添うと名乗り出て二人で授業を抜けてきたのである。
岡元の演技は、日常的に卒倒するフリの練習でもしているのではないかと勘ぐってしまうほどに上手かったため、疑うものは誰もいないようだった。
「なぁ、やっぱりやめよう」
結局は素直に彼についてきてしまったにも関わらず、先ほどから胸を締め付けられるような罪悪感に苛まれていた俺は思わず言った。しかし、望遠レンズを装着したデジタル一眼レフを覗き込み、床に寝転がってスナイパーのようにプールのほうを狙う岡元には、どうやら俺の言葉が聞こえていないようだ。
「後で見せてやるから、ちゃんと見張っとけよ」
「あのさ。俺たち、人としてかなり駄目なことしてる気がするんだけど」
岡元から見張りの役目を言い渡されていた俺は、彼とは少し離れた場所でフェンスに寄りかかり屋上の出口を見つめながら呟いた。そう言いつつも彼からカメラを奪いとりまではしないのは、やはり多少以上の下心が間違いなく自分にもあるからだろう。
「おい、周防。神様っているな」
「は?」
「開いてるんだよ、更衣室の窓が。今、有栖川が入ってきたぞ」
岡元が声を潜めて言った。授業終了まであと十五分余り、そろそろプールから上がった女子たちが更衣室に入ってもおかしくない時間だ。
有栖川が更衣室に入ってきた、その言葉の意味するところはたった一つである。
俺は思わず彼に走りよった。動機が激しくなるような感覚があり、同時になぜか無性に腹立たしくなる。
「……うっわー、やばいってこれ。見るか?」
カシャカシャとシャッターを切りながら呟く岡元。ファインダーを覗きたい気持ちが自分の中にないとは間違いなく言えなかったが、幸いそんな下心より良心が勝っていた俺は岡元からカメラを取り上げた。
「ちょ、何するんだよ」
「やっぱやめろって、かわいそうだろ」
さすがに岡元も油断していたらしく、カメラを奪うことは簡単だった。とりあげた時、偶然再生ボタンを押してしまったのかカメラ後背部のディスプレイに先ほど彼が撮影した写真が映し出される。
それを見て、俺は思わず息を呑んだ。
「これ、って……」
誰か、の背中だった。見たことがないくらいに白く、綺麗な。かなりのズームで撮影したのか、映りこんでいるのは背中のみである。しかし俺が驚いたのは、それに対してではなかった。
「それ、有栖川だよ。火傷か何かじゃねぇ?」
岡元が言う。彼の言うとおり、その白い背中の肩甲骨のあたりに、火傷の跡のような大きな痣が二つあった。肩の付け根から斜めに細長く走る、まるで皮膚を切り裂いたような痣。
何か、見てはいけないものを見てしまったような気がした。
「お、おい。何やってるんだよ、周防」
カメラの側面部を開き、フィルム代わりのSDカードを取り出す。同系のカメラを操作したことがあるから、その位置はすぐにわかった。
その小さく薄いプラスチックの板を床に転がし、そして片足で思いっきり――
「待て!」
岡元が必死の表情で俺の足にしがみついたが、時すでに遅かった。SDカードは屋上のコンクリートの床の上で、すでに無残に真っ二つになっていた。