表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】左手にティアラ、右手に…?!  作者: 慧依琉:えいる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

左手にティアラ、右手に…?!【後編】



ストラーダ帝国の皇帝が崩御し、新しく皇帝が即位をする。その式典に征服された国の姫であるヘーゼルが招待された。新皇帝から式典への出席のためのドレス一式が贈られたのだ。ヘーゼルも16歳の少女だ。綺麗なドレスに宝飾を見るとやはりドキドキ胸が躍るようだ。通常であればもうデビュタントをしてもいい年齢なのだ。だが捕虜として塔での軟禁生活の身、叶わぬ夢であった。

だからその分、式典に参列するのが楽しみになっていた。




ある日のこと


いつものようにブラントと森の外れにやってきていた時のことだった。



「なあ、ヘーゼル。これからは今までみたいにあまり会いに来れないんだ。」


「え?そうなの?ブラント、どこかへ行っちゃうの?」


ヘーゼルはブラントの袖をつかんで聞く。


「お前っ、袖掴む癖、直した方がいいぞ?」


ブラントにそう言われてハッツとするヘーゼル。


「わ…わかった、気を付ける。」


「どこかに行くんじゃなくて、やらなきゃならない事が出来たから忙しくなるんだ…。」


「ふぅ~~ん。ブラントってもうお仕事とかしてるの?」


「お?初めて俺に興味を持ったみたいだな。ハハッ。」


そう言って答えをはぐらかされたような気分だった。いつもひょいっと現れては遊びに誘ってくれて、初めこそはぶっきら棒な喋り方をしてたけどこうして話してるとそこそこの貴族じゃない?ヘーゼルは本当にブラントに興味を持ち始めていた。それは〝もうあまり会えない〟という言葉がきっかけだ。



「ねえ、ブラントって貴族なの?」


「ん?まあ、そんな感じだな。」


「ふーん、私の事は知ってるの?」


「あ?ヘーゼルだろ。」


「もう!私がここにいる理由とか!」


「………………。あぁ、知ってる。」



ブラントが珍しく低い声で返事をした。その声の低さにヘーゼルはビクッツとした。



「知ってて、ここに来てても大丈夫なの?」


「ん?お前、罪を犯したのか?」


…。いつもの声のトーン…。


ヘーゼルは首を横に振った。



「だったら気にしなくていいよ!」


ブラントがそう言うとヘーゼルは笑顔になった。



「明日ね、新帝の即位式なんですって!ブラントも行くの?」


「ん…まあな。」


「じゃあ、どっかで会えたらいいね。」


「そうだな…。」


「あ。もう陽が暮れてきちゃう。戻ろう、ブラント。」


「ああ。」


そう言ってヘーゼルとブラントは東の塔へと戻って行った。




「じゃあ、また明日な。」


ブラントがそう言った。


「ふふっ、〝会えたら〟だよ。」


ヘーゼルがそう言うとブラントはニコリと笑って手を振って森を抜けて行った。




〝ブラントといるとすぐに時間が過ぎちゃう…。ブラントはお仕事してるのなら私と一緒にいて大丈夫なのかなぁ…。〟


ヘーゼルはブラントの事を考えると胸が温かくなるのを感じた。






翌日


準備を済ませて塔の入口へと向かうと馬車が聞いていた通りに迎えに来ていた。御者の手伝いで無事に乗り込むことが出来た。

お城までは馬車で20分くらいだろうか…。この森を抜けると少ししたらお城がある。つまり、ヘーゼルが捕らわれている塔は皇帝の居住地である城の城壁の中にあるのだ。



馬車は式典が行われるホールのある会場へと到着した。

すると「遣いの者」と名乗る執事らしき人物が馬車の扉を開けて会場までのエスコートをしてくれた。


ヘーゼルは「参加」するのは初めての経験だ。いつも主催者側だったのでただ父母の後ろで立っていればよかったからだ。




会場にヘーゼルの名前が響き渡る。



「ヘーゼル・ドゥ・モンテ・マデレーテ様ご入場です。」



その名前が会場を駆け巡ると所々でヒソヒソと話声が聞こえてくる。

そりゃそうだ。侵略された国の王族の名前だからだ。


執事に案内されて何故か一番前の席に到着した。


「え…私はここで合ってますか?」


ヘーゼルは執事に小声で尋ねた。ここでは一番身分が低いから立ち見だと思っていたからだ。しかし執事は


「はい、そちらがヘーゼル様のお席になります。」


ヘーゼルは人質であり捕虜であると思っていたから、その一番前の席に違和感を覚えた。



茫然としていると新皇帝が入場するという知らせが入る。

スカートの両端をつまんでお辞儀をした。新皇帝が教皇の前で宣言を受けるまでずっとこの姿勢でいなければならない。俯いて目を閉じた状態でバランスを崩さずにいるのは並大抵では出来ないことだ。

しかし10歳まで淑女教育を受けていたヘーゼルは6年間塔の中で生活をしていてもその訓練は欠かさずしていた。それは彼女と彼女の侍女、ガレッタの意地でもあったのだろう。それがこの場で発揮出来たのだから何が役に立つかはわからないものだ。




ズカ、ズカ、ズカ……………。


新皇帝が歩いてくる足音がする…。



ヘーゼルはここでへまをすると命がないかもしれないと思って必死で耐えていた。その指先は微かに震えていた。


新皇帝はヘーゼルが案内した席にいるのを見て口角が上がっていた。

そしてそのまま教皇の前まで歩み、膝をつく。



「これより第67代目皇帝:ブラント・フォイ・デ・ストラーダを新皇帝としてここに定めます。」



教皇が高々と宣言をした。周囲は歓声を上げた!




その中で一人だけ戸惑った声を上げた者がいた。ヘーゼルだ。




〝────え?〟



そしてヘーゼルが顔をあげて目の前の新皇帝の顔を見た時更に驚いた!



〝────ブラント!?〟



あのいつも遊んでいた青年ブラントが今目の前にいるのだ。



〝どういうこと?ブラントは私を監視していたの?〟


ヘーゼルは訳がわからずガクガクと身震いをしていた。だがそんなヘーゼルとは無関係に式典は続いていく。



「新皇帝よりのお言葉です。」


進行係がそう言うと歓声が収まり、静かになる。ヘーゼルもどんな言葉を発するのか気になってゴクリと生唾を呑んだ。



「我、第67代目皇帝ブラントは皆が安心して暮らせる治世を行う事をここに約束しよう。そして先代皇帝の謀略による被害者であるマデレーテ皇国の王女を我の婚約者とし、その身分と命の保証をしよう。さあ、マデレーテ王女、こちらに……………。」


そう言ってヘーゼルに向かって手を差し伸べた。



ヘーゼルはビックリしすぎて動けないでいる。


その様子を見てブラントは小さく息を吐いて、ニッコリと笑って舞台から降りてきた。どうやらヘーゼルが来ないから迎えに来たのだろう。



ヘーゼルのそばに寄って来て耳元でヘーゼルに囁く。


「どうした?会えたらいいねと言っていたではないか。こうして会えたんだ。俺の隣は嫌なのか?」


その言葉にヘーゼルはハッと我に返る。


「だって…まさかブラントが新皇帝だなんて…。」


「俺は俺だろ?ま、あんな姿はお前以外に見せる気はないがな。」


そう言ってブラントは痺れを切らしたようでヘーゼルを抱き上げた!



「キャッ!陛下……………。」


「ハハハッ!」



そしてそのまま舞台へと戻り再度招待客の前で宣言をした。



「皆の者、この姫は俺の大切な女性だ。彼女に何かしたらそれは俺に対してしたものとして処罰が待っていると思え!ヘーゼルには城内に部屋を用意させよう。」



〝え…え……………!〟


ヘーゼルは抱き抱えられたまま、どこまでがブラントの本心なのかを計りかねていた。



その後、式典はお開きになり、あれからずっとブラントの隣にいるヘーゼル。



「ねえ、ブラント。私今16歳だけど?ブラントって…。」


「ん?俺?21だ。」


「結婚なんてまだ先の話よね?」


おずおずと尋ねるヘーゼル。ニッツと笑ってブラントは答える。



「そうだな、お前がこの国をもう少し知るまで出来ないな。」


「………………よね。」


「ま、俺はいつだって構わないが!?ハハッツ」


「冗談よね???そんな……………!」



二人の息はピッタリだ。


だが、ブラントは突然静かになった。



「ブラント?」


「………………。なあ、ヘーゼル。お前、両親と兄の事、どこまで知ってる?」


「え?拘束されてるって聞いてるから解いてくれるの?」


ブラントは首を横に振った。



「俺だってそうしてやりたいが、無理なんだ。」


「どうして?」


「もう既に亡くなっているからだ。」


「──────────嘘っ!」



ヘーゼルは力なく床へとへたり込んだ。そしてポロポロと涙が溢れてきた。


「い……………いつかは、いつかは会えると思っていたのに……………。まさか……………もうっ……………!」



肩を震わせて泣きじゃくるヘーゼルにブライトは静かに肩を抱き寄せた。

ヘーゼルはブラントの手を払おうとしかけたが、彼には罪がないことは理解していたのでそのまま彼の腕の中で泣き崩れた。


ブライトはヘーゼルにかける言葉が見つからず、ただ静かに彼女を抱きしめていた。




最初に彼女に近付いたのは父からの指示だった。「彼女を監視しろ」だ。だが彼女の背景を知っていた俺は監視をするふりをして彼女に少しでも寄り添ってあげたいと思った。

彼女の境遇に対して彼女自身は受け入れて立ち向かっているのを見てどんどん惹かれていった。




その後、ヘーゼルは暫く泣いてばかりいてほとんど食事を口にすることもなかった。そのせいでどんどん身体はやせ細っていくばかり……………。ブラントも心配している。


どうにかしてヘーゼルを元気にする方法はないかと思案するが……………。


そこで侵略される前のマデレーテ皇国の事を調査した。


結果、国王夫妻は住民に混じって畑仕事をしていたこと。それに兄たちも参加していたこと。でもヘーゼルは幼すぎた事と女である事が理由で参加出来なかったことがわかった。

その調査報告書を呼んだブラントはこれだ!と思った。



ヘーゼルには内緒で城の中に畑を作ることにした。そしてそこにはマデレーテの住民も出入り可能とした。畑仕事を通して住民から父母たちの話を聞ければまた気持ちが前向きになるかもしれないと考えたのだ。






数日後


「ちょっと…。ブラント、いきなり来てどこに連れて行くのよ?」


ブラントはヘーゼルの手をギュッツと握って畑へと連れて来た。



「な…なに?ここ…。」


「お前のために畑を作った。あの勝手口から住民の出入りを許可している。今日からここはお前のための畑だ。」


「な…、そんなものもらってどうしろと?!」


「お前の父母や兄たちがしていたことだ。お前も住民に指導を受けてやってみるがいい。そしたら〝そんなもの〟だなんて言えないはずだ!」


ブラントはヘーゼルを敢えて突き放した。



住民がヘーゼルに優しく語りかける。


「姫様……………。明日の同じ時間に我らここでお待ちしております。ぜひ、一緒に王様と王妃様、そしてお兄様方のお話をさせて下さい。」


そう言ってペコリと深くお辞儀をして住民たちは勝手口から帰って行った。




ヘーゼルは口をギュッツとつぐんで


「どうしてこんな勝手な事をしたの?!」


ブラントを問い詰めた。護衛兵がパッツと皇帝であるブラントを守ろうと動きを構える。

だがブラントは手を上げて静止した。



「ヘーゼル。悲しむのはいつだって出来る。だけど君がそんなにいつまでも哀しんで何もしないんじゃ皆が悲しむんじゃないかな。」


「………………。」


「俺はまだ権力がなかったから父のする事に反対も出来ず、結果、お前たちの国が滅んでしまったのだが、俺はそれでも後悔しているよ。だがな、後悔したって元には戻らないんだ。だったらお前に少しでも償いたいんだ。」


「ブラント……………。」


「お前への気持ちはそれだけじゃないぞ?ちゃんとお前を見て来てお前の事を好きになったんだからな。」


そう言ったブラントは顔を真っ赤にしていた。


「………………う…ん。」


ヘーゼルも真っ赤になっていた。



「とにかく!しっかり考えてみろ。どうやったら皆が喜ぶか。」


「………………わかった。」


そしてその日の夜、ヘーゼルは遅くまでかなり考えていたようだ。





翌朝昨日と同じ時間の畑で


住民たちはヘーゼルが来ることを願って待っていた。


だが時計は無情にも約束の時間を過ぎてしまった。



「ダメだったか…。」


「ああ、また明日出直そうか…。」



そう言って皆が帰ろうとした時だった。




「────待って!」




その声はヘーゼルだった。


住民たちは声に振り向くとそこにはドレス姿ではなく、畑仕事をするのに適した格好をしたヘーゼルがいた。



「姫さま!」



住民たちは一斉にヘーゼルに駆け寄った。




「姫さま、よくお似合いです。」


「ふふっ、そうでしょ!この凛々しい姿、お父様たちにもお見せしたかったわ。」


ヘーゼルが明るく言い放ったが住民たちは眉がピクリと動いた。



〝きっとまだ悲しいでしょうに、無理をなさってるのだわ…。〟



「よし、それでは今日から畑仕事を始めよう!いいですか?姫さま。」


「ええ。ただし、その〝姫様〟呼びはやめてね。ヘーゼルって呼んでちょうだい。」


「そんな、恐れ多い……………。」


「ハハハッツ」



そうして畑仕事を通して身体を動かし、知識を得たりでヘーゼルは悲しんでばかりいられなくなった。








そして4年後の20歳になった年




「ヘーゼル様っ!どうしてまだその恰好なんですか~~~~~っ!?」


ここは城の敷地内ではなく住民たちの畑だ。

住民たちはヘーゼルがいる事自体に驚いていた。

農具を持った姫。



「あら、私は父たちが愛した畑をこれからも愛していくつもりよ?」



その姿は4年前の泣きじゃくっていただけの少女の姿ではなかった。




「何を言ってるんですか~~!今日は結婚式でしょうが!」



「あっ!」



「ヒィィィイ~~~~!お忘れだったのですか?!」


ヘーゼルはビックリするほど頷いていた。




遠くから


「ヘーゼル様ーっ!」



とヘーゼルを呼ぶ声が聞こえる。


それはこんなことだろうと思ったブラントが寄越した迎えの馬車だ。





「やはりな。お前のことだからきっとここだろうと思ったぞ。ほら、早く行くぞ。」


ブラントは既に準備万端!引きずられるように馬車に乗り込んだヘーゼル。

馬車の中で侍女たちが待ち構えていた。



「姫さま、準備しながら移動しなくては間に合いませんわ。お覚悟を!」


「嘘っ!?」


助けを求めるようにブラントの顔を見るが…。


「自業自得だ。」


ブラントにもそう言われて覚悟を決めるヘーゼルだった。



流石に着替えをブラントが同乗するわけにいかず、馬車と並走するための馬に乗ってくれた。




そして式をあげるための王宮の広間に着いた時

すっかり見違えるほど整えられたヘーゼル。


ここに着くまでのドタバタ劇を知っているブラントは笑いを堪えるのが大変なようだ。



「ほら、行くぞ。」


「はい、旦那様。」



「……それ、いい響きだな。」


「でしょ?終わったら畑に行っても…。」


「ダメだ!」


「え…なんで…。」


「結婚式が終わって畑に行く新婦がいるか!」



ブラントは真剣に怒っていた。



「はぁー、どこまでも畑が好きだな、ほんとに…。」


「あなたからの紹介でしてよ?ふふふ。」


「はいはい。ほどほどにお願いしますよ、奥様。」


「はーい、旦那さま。」



こうしてブラントは皇帝でありながら妻には滅茶苦茶甘い人物として後世にまで語り継がれたとさ。



「右手にティアラ、左手に…農具だもんな。」


ブラントの困難はまだまだ続くのであった。









────完────






ご覧下さりありがとうございます。畑仕事をバカにしていたヘーゼルですが、最終的には見事に畑命の人になりました♪

もっとブラントの溺愛っぷりを表現出来ればよかったですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ