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【完結】左手にティアラ、右手に…?!  作者: 慧依琉:えいる


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左手にティアラ、右手に…?!【前編】



ここ、マデレーテ皇国はとても小さな国だった。国王と王妃は揃って住民と共に畑仕事をするようなとても気さくな王と王妃だった。二人の間には王子が二人と末っ子の姫が一人いた。王子たちは両親と共に畑仕事にも出ていたが、姫は蝶よ花よと育てられたために少々我がままに育ってしまった。




「またお兄様たちは畑ですの?!」


「ヘーゼル姫様。夕刻には皆さま戻られますのでそれまで暫くお待ちください。」


ヘーゼル付きの執事がそう言ってヘーゼルを宥める。もはやこれが日常と化していた。



「畑仕事ってそんなに楽しいのかしら……………。」


ヘーゼルがそう呟くが


「姫様。何事も楽しいばかりではございません。」


執事が諭すようにそう言った。



「そうね、あんな仕事なんて平民に任せればいいのだわ。」


「姫様!〝あんな仕事〟とはあまりにもの言いようでございますぞ。」


「どうして?私達王族は城で過ごせばいいのでしょう?」


ヘーゼルはかなり甘やかされてきた。まだ物心がつく前はヘーゼルも手伝うと言っていたのだが、余りにも幼すぎて「ヘーゼル様には別のお仕事がございますよ。」と言って遠ざけてきたのが間違いだったのだろうか…。執事はそう思うと頭が痛くなってきた。


「ヘーゼル様。王族とは国民あっての王族ですぞ。それを努々お忘れなきよう…。」


執事の言葉はどこまでヘーゼルに届いたのかはわからない。




そんなある日、ヘーゼル10歳の時、隣国ストラーダ帝国が突然攻め入って来た。


小国マデレーテには軍隊などないからあっという間に攻め落とされてヘーゼルの父と母、二人の兄たちは拘束された。ヘーゼルはまだ12歳にもなっていなかったことと、女であることから拘束からは免れたが東の塔へと監禁されることとなった。


国民はほとんど無事だった。ストラーダがすぐに王族のみを捉えたからだ。そして王族に続く貴族の家門長も彼等に捕らわれた。



国王が「国民へ手を出さない」ことと引き換えに自分が名乗り出たからだ。






東の塔



ヘーゼルは身の回りの世話をする侍女が一人だけつけられて質素な暮らしを強要された。


「どうして?お父様やお母様は?お兄様たちは?会いたいよぉ…。」


侍女のガレッタにそう言って泣きつく日々が続いた。ガレッタはその都度ストラーダ帝国によって囚われたことを説明するが理解したくないのだろう。


「ねえ、どうしてご飯がこんなに少ないの?今までのようなご飯じゃないの?」


「ねえ、どうしてお部屋がこんな所になったの?私のクマちゃんは?」


「ねえ、どうしてドレスがないの?こんな平民みたいな服を着なくちゃいけないの?」


ガレッタは姫の質問をゆっくりと時間をかけて何度も丁寧に説明していった。



「ねえ、どうして…。」


今までの環境がガラリと変わったのだから姫が戸惑うのは仕方のない事だった。



そんなガレッタに支えられながら2年が経過し、ようやくヘーゼルも事態を受け入れて、もうガレッタに質問する事はなくなった。


「ねえ、ガレッタ。お父様とお母様、そしてお兄様たちは今頃どうしてるのかな…。」


この質問には流石のガレッタにも答えられなかった。理由は既に皆処刑されているからだ。あの日、拘束されてから三か月後には既に4人は処刑されていたのだ。国民たちは静かに涙していた。ヘーゼルにとっては衝撃が大きいだろうと思ったガレッタはその事を伏せてきたのだ。


〝あの時、12歳以上の王族ということで姫様は免れた。だが、今や12歳になった姫様は奴らにどんな仕打ちを受ける事になるのだろうか…。〟


ガレッタは皇帝がこのまま姫の存在を忘れていて欲しいと願った。





そんな時、姫に東の塔周辺1キロ以内であれば自由にしていいとの皇帝からの命令が出た。

周りは森に囲まれている。そこで自然死を狙っているのか?とガレッタは疑った。だが伝令は姫に直接伝えるということだったので姫に黙っていようにも出来なかった。


あの日以来、初めて塔の外に出る事を許可されたヘーゼルは飛び跳ねて喜んだ。



「ねえ、聞いた?ガレット!1キロ以内だったら自由に外に出てもいいんですって!」



姫のその喜ぶ顔を見たガレッタは姫に注意する事が出来なかった。


「ようございましたね。姫様。」


そう言うしかなかったのだ。そして伝令は付け足した。



「姫様に一人、護衛がつきます。必ず外に出る時は伴って下さい。」


「護衛?……いいわ。それでも外に出れるのは嬉しいもの!」


2年半ぶりの塔の外の世界にヘーゼルはワクワクしていた。



その日、早速外へと出ることにしたヘーゼル。


「ねえ、ガレット。この辺りの地理って知ってる?」


「申し訳ございません、姫様。」


「なあ~んだ。知らないのか。」


ヘーゼルはガッカリした。そんな彼女の前に一人の青年が現れた。



「あ!そこの君っ!」


ガシッと彼の服を掴んだヘーゼル。青年は振り向いた。



揺れる黒髪、赤い瞳…うわぁー綺麗なひと……………。



「何か用か?チビ。」


「────!」



〝な…!なに?ものすごく口が悪いし態度も悪くない?〟



「この辺の地理に詳しい人、探してるんだけど……………。」


「………………。どこに行きたい?



「……………へっ?」



「………………。だから、どこに行きたいんだ?」



「この塔から1キロ以内ならどこでも。素敵な場所に行きたいの。」


ヘーゼルがそう言うと青年は塔を見て「………………。」黙った。



「いいよ、案内してあげる。」


そ言ってヘーゼルの手を引っ張って森の中へと歩いて行く。

最初スタスタと早歩きだったが、ヘーゼルがついていけないことを察したようでゆっくりと歩いてくれるようになった。


そんな彼の様子を見てヘーゼルは思った。


〝……………。案外優しいのかも……………。〟





そして二人が10分程歩いて森を抜けた所にお花畑が広がっていた。



「わぁー!すごい!こんなに広いお花畑を見るのは初めてよ!」


ヘーゼルの喜びように青年はふっと笑った。




ードキッツ…。


〝な…なによ、笑うとちょっとはいい感じじゃない。〟



ヘーゼルはその青年の事が少しだけ気になった。




「ねえ、私ヘーゼルって言うの。あなたは?」


青年は急にヘーゼルが名乗るからビックリしていた。



「あー、俺は…ブラント。」


「ブラント……………。今日は素敵な場所を教えてくれてありがとう!」


そう言ってとびきりの笑顔でお礼を言った。



────ドキッ!



ブラントの胸が一瞬高鳴ったが、本人もその事には気付いていなかった。


その日以来、何度かブラントがやって来ては近くを案内する事が多くなった。



「ねえ、ガレッタ。ブラント様ってどこの方なのかしら…。よくこの辺りを通られるけど…。」


「まあ、姫様。私めは知りませんよ?あれだけ仲良くしてらっしゃるのにそういうお話はされておりませんの?」


「ええ……………。何だか聞いちゃいけない気がして……………。」


「姫様よりも身分の高い人と言えばストラーダ帝国の王族くらいしかありませんわ。」


「ストラーダ帝国の王族……!私達をこんな目に遭わせた張本人。いつかここから出れるようになったら本格的に復讐してやるわ!」


「姫様……………。お気持はわかりますが、命あってこそ。復讐など怖いことはもうお忘れになって。」


ヘーゼルはガレッタの顔を静かに見た。



〝本当はそれがいいのかもしれない。それに私の命も全てストラーダ帝国の手にある。どこかに売り飛ばされるかもしれない……………。〟


ヘーゼルは怖くなって身震いをした。





それから4年、ヘーゼルは16歳になっていた。その間もブラントは頻繁にヘーゼルの元を訪れては森の外れへとヘーゼルを連れ出してくれた。


そんなある日、ストラーダ帝国の皇帝が病に倒れたとのうわさが東の塔にも伝えられた。


「姫様、これはチャンスです。どうやら第一皇子は父王に対して不満を持っていたとのこと。あの侵略も反対していたということですし、このまま第一皇子が帝位に就けば姫様の自由が確保されるかもしれませんね。」


「そしたらここを出て自由になれるの?」


「かもしれないって話ですよ。じっとその時を待ちましょう。」


ガレッタの話にへーゼルは静かに頷いた。





その半年後、皇帝は回復することもなく逝去したと伝わってきた。城は葬儀の準備で忙しいのだろう。ドタバタとした数日後、新しい皇帝が帝位を授かるための式典を行われると漏れ伝わった。


そして東の塔にも伝令が来て、

「漏れ聞いているかと存じますが、姫様にも新皇帝即位の式典に出席するようにとのご命令です。つきましてこちらのドレス一式が新皇帝から姫様へと……………。」


そう言って伝令がドレス一式を部屋に入れた。


「当日は塔の前まで馬車を用意するように申し付かっております。昼過ぎまでにご準備完了をお願いします。」


そう言って伝令は去って行った。



侍女のガレッタは箱を開けて驚いた!


「どうして姫様のサイズがおわかりになったのだろうか……………。」


そんなガレッタを横目にヘーゼルは久しぶりにキラキラしたドレスを見て心が躍った。


「素敵だわ!新皇帝ってどんな人なのかしら…!それにしてもどうして私に…。」


「新皇帝はきっとヘーゼル様を捕虜や人質としてではなく、被侵略国の姫として丁重に扱わって下さいますよ。」


「そうなのかしら…。酷い扱いをされないのなら何でもいいわ。」



ヘーゼルは今の生活にも慣れて来たのでどうだっていいという気持ちもあったが、久しぶりに見たキラキラしたドレスを見たらその日が待ち遠しくなった。







ご覧下さりありがとうございます。前編・後編に分けて書くのは初めてなので上手く書けるか心配。

短い中に全てを詰め込むのは相変わらず苦手です。

さて、ヘーゼルはこれからどうなっていくのでしょうか。後半にご期待下さい。

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