1.打算ありのプロポーズ
「結婚しないか」
「…は」
アランが持っていた箱ごと床に落とした。
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アランは元助手で同じ研究室の後輩だ。グロリアは学院を卒業したあと、そのまま研究職について先日ようやく自分の研究室を持てることになった。
引っ越しが終わらない上に急ぎの仕事が入ってめちゃくちゃな部屋をアランがぶつくさ言いながら片付けている。
アランは研究室が離れてもこうやって世話を焼きにくる。
研究に夢中でボサボサでもヨレヨレでも側にいてくれる数少ない人間だ。
とはいえ、グロリアも伯爵家の人間なので身なりがどうであろうと婚姻の案内は来る。
もう何枚目かの実家からの手紙を積まれた書類の中から見つけて溜息をついた。
爵位は兄が継ぐことになっているが、父はいつまでも独り身な事が気がかりらしい。
ーー仕事を続けていいって人なら結婚してもいいんだけどなあ
顔を顰めていると、怪訝そうな顔をしたアランと目が合った。
「あ」
アランは研究棟の女の子達から人気だが、特定の誰かは作らないタイプだ。理由はわからないけど、条件次第では半年くらいなら婚約者になってくれるのでは?
性格の不一致で婚約破棄したとなれば、父もしばらく無理強いはしないだろうし、求婚も減るだろう。
良い案を思いついたとニヤニヤしながら口を開いた。
「結婚しないか」