恩師に母さんを殺されたので、無気力やめて復讐します
「おっらぁ!」
野太い声に続いて、キンキンと金属がぶつかり合う音がする。
「うわぁーーん! ママぁー!」
もう2度と動くことはないだろう母親に寄りかかり、何度も声をかける幼子。
そしてーーー
「こんな時でもお前は無気力なんだな」
俺の眼前にいる男は、そう笑いながら俺に向かって話し出す。
「お前が少しでもやる気を出していたら、こんな状況にはなってなかったかもしれないなー」
挑発するように、ニヤニヤ俺の顔を見ながら話しているが、それでも俺の表情は変わらない。
俺は目の前にいるその男にも、さらには燃え盛る自分の家にも目を向けることなく、ただずっと倒れている母親の方に目を向けていた。
母は腹部を大木なようなもので貫かれており、まだ意識はあるものの、いつ死んでもおかしくないような状態だった。
俺はゆっくりと母の方へ歩き出す。
「おいおい!俺は無視かよ!ちょっとは会話しようぜ、シュライ!」
喚き散らすグラン先生。いやグランを無視し、そして通り過ぎて母の元へ。
「母さん」
母さんは俺の声に応えるように、少ししか開いていない目をなんとか開け、そして俺の方になんとか腕を伸ばそうとする。
「無理しなくていいよ、母さん。」
俺はその手を両手で握りしめる。
「シュライ――ごめんね、、お願いだから、、生きて」
そう言うと、母はゆっくりと目を閉じた。
「あーあ、とうとう死んじゃったなー」
ニヤニヤ下卑た笑みを見せる。
「すぐに助けに行けば助かったかもしれないのにな〜、あーあ、お前のせいで死んだなーー」
心底楽しそうに続けるグラン。
その顔を見ても、言葉を聞いても俺の心は動かない。
母さんはどのみち間に合わなかった。そんなことはあの状況を見れば分かりきっている。
ただ理屈ではなく、目の前にいる男を消さなければならないという使命的なものだけが、俺の心に芽生えるのを、俺は確かに感じ始めていた。
「安心しなよ、グラン先生。」
怒りが沸るのとは反対に、俺の表情は柔和なものへと変わっていく。
「あんたも同じ場所に送ってやるからさ」






