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恋煩いにはソレが効く  作者: 久留まえび
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「航大に晃太の相談したのちょっと後悔してたけど、図らずとも晃太に会えちゃったのは大感謝だわ」



晃太たちと別れて航大と正門まで向かう。

航大は「散々惚気といて後悔すんな」とツッコんだ後しばらく思案してから、あぁ、と合点がいったように頷いた。



「お前のコータくんってあの子か、いま繋がったわ。やたらデカい子いるなと思ってたけど、なるほど」

「えー気付くのおそ…」


あと私のコータくんではないし…。




「ハスミはああいう顔が好きなのね」

「顔だけじゃないけど顔はマジで好き」



本人がいないのをいいことに、晃太の顔面の良さについて熱弁を振う。その間航大はずっと死にそうな顔をしていたが、明日香も晃太成分を過剰摂取しているので少しでも発散させておきたい。持つべきものは気兼ねしないでいいオトモダチだ。



一方的に喋り倒した達成感に一息つくと、ふと思い出したように明日香が口を開く。



「念のためだけど、さっきの子に晃太と私の話漏らしたりしないでよ」

「しねーよ」



そこまでノンデリではないと渋い顔をする航大。

元来明日香は慎重なタイプだ。航大を信じていないわけでないが、念には念を入れておきたい。

きっと晃太は周りに言ったりしていないだろうし、ましてや苦手であることを共有しているバスケ部の同期には絶対バレたくないだろう。


私はいいけど晃太のためにね、と言い聞かせながら歩いているうちに正門に到着する。

目当ての人物はすでに着いていたようで、こちらに向かって大きく手を振っていた。















これは一種のグロシーンなのでは、と晃太は不穏な感想を抱いた。

さっきの表情からしてきっと明日香は航大に好意を寄せている。しかしどうやら航大には恋人がいるらしい。

というのもあの後手持ち無沙汰になってしまいとりあえず正門に向かっていたら、ちょうど航大に走り寄る女性とそれを受け止める航大、その横に佇む明日香という現場に遭遇したのだ。

2人を見つめる明日香の視線は……きっと羨望の眼差しなのだろう。

自分の思い違いであってほしい。だが明日香の目は、自分が明日香を見るそれと一緒だ。



一旦整理させてほしい。

俺は明日香が好きで、多分明日香さんは航大さんが好きで、でも航大さんには恋人がいる、よく見る三角関係だ。

だとすると2人がイチャつくこの現場は明日香さんにとって苦行なんだろうが、俺にとっては航大さんのことを諦めてもらえるチャンスでもある。

自分勝手な願いに呆れつつ、とにかく目の前の2人が早くどこかへ行ってくれることを祈りながらでうろうろと時間を潰すのであった。









「明日香さん」



航大たち2人を見送り、待ち合わせまで少しあるなと思っていたタイミングで待ち望んでいた相手の声が降ってきた。



「あれー早かったね!」

「待ちきれなかったんで」



ンンッこの子は私を喜ばせるのが上手いんだから…


いつもの無表情がすこし強張っているようにも見えるが、晃太も少しは緊張してくれたらいいのにと思う私の妄想だろう。



「ちょっと早いけどもう行く?」

「そうっすね。今日はどっちにいくんすか?」



事前にメッセージで送っていた候補のうち少し距離がある方のカフェを選ぶ。今日の目当てはチーズケーキだ。

ちょっと早く出れたから、とは言ったけれど実際は少しでも長く晃太といれたらいいな、なんていう下心。己の浅ましさに心臓がドキドキする。

そんな明日香をよそにいいっすね、と軽く同意して晃太は歩き出す。



「俺たぶんチーズケーキ食べたことないです」

「えー意外!チーズケーキしか食べてなさそう」

「明日香さんの中で俺ってどんな人間なんですか…。ロールケーキが1番好きなんで、果物入ってるやつ」



ええ〜〜かわいいがテロすぎる。

心の中でしっかりメモを取りつつ顔が崩壊しないように必死で取り繕う。今の顔面めちゃくちゃキモイだろうな〜。



「明日香さんはなにが1番好きですか」

「うーーんタルト生地かな」

「タルト生地」



全然ケーキじゃねえなと心で突っ込む晃太をよそに「ケーキにするならプリンタルトみたいにシンプルなやつが1番好きだなー」と続ける明日香を微笑ましく思ってしまう。

知らぬ間に口角を少し上げながら



「じゃあ明日香さんの誕生日には、タルトが食べられるお店に行きましょうね」



なんて言うのであった。







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