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6 大人って誠意のない謝り方するのねー(棒

「そんなにおかしい?だって神官だし。」


そもそもわたしはこんな王宮に呼ばれるほどの身分じゃない。ドレスを着て参加するような立場じゃない。


「だって舞踏会よ。巫女姫だって、ドレスで出るのに。」


「神官長様は司祭服よ?」


「神官長様はね。そりゃ、神殿の長なんだから正服で出るでしょ。ドレス、もらえなかったの?」


「誰に?ああ、カービング卿?もらえるわけないじゃない。ていうか、もらったら酷い目にあうんじゃない?」

あ、そうかー。とディーバが眉をしかめた。


ほんとはヨシュア様からドレスの打診はされたけど、お断りした。


ここは断る一択でしょ。


ヨシュア様から贈ってもらったドレスで、アリシア様の前に立つなんて、処刑してくださいって言ってるようなものでしょう。

前例があるからね。


わたしの選択が間違ってないとは思うけど、そんなに変な目で見られると凹むわよ。


ここにいる歌姫たちは純白のドレス。

白のドレスに肩に付けられた小さな花束が歌姫たちの目印。招待を受けている歌姫はこのまま、舞踏会に参加できて、ダンスもできる。


ディーバは歌姫たちの歌の指導をしているけど、既に結婚して神官ではないから、落ち着いた色のドレスに歌姫と同じ花束をつけている。髪も結い上げて夜会でも浮かないようにしている。


こんな感じをみんな期待してたんだろうけど、すみません、空気読めなくて。


あ、だから、ヨシュア様が怒ってたのかー。言われなきゃわかんないよ。

だって、招待客として参加するの、初めてだもん。


王都のタウンハウスを出発するとき、ヨシュア様が変な顔したのが、いまわかった。


恥かかせちゃったんだね。ごめんなさい。帰ったら謝らなきゃ。


自分が恥をかく分には別に気にしないんだけど。ご領主様にかかせるわけにはいかないものね。


次はちゃんと、用意します。

換金しやすいものにしよ。だって、神官は貧乏なんですの。


歌姫の一人が気を使ってお茶を出してくれた。


「ありがとう、でもお気遣いなく。すぐに、帰りますので。」

「え?舞踏会でないの?」

「出ませんよ。このかっこで何するの?それに明日から長旅だから早く寝たい。」


カービング領まで馬車で15日。明日からまた、長旅だ。

「えー!!何しに来たのよ!あなた!」


「国王陛下にご挨拶に来たじゃないの。」


「レッティモンさんの新作はもう見たの?あなた、編曲してたじゃない!まさか、またカービングのタウンハウスに入れてもらえないとか?!それならうちに来なさいよ!それか、中央神殿に言えばいいじゃない。宿代なんて払う必要なんてないんだから。エチュア神殿の神官なのよ。あなたは!そうよ、神殿の宿舎に泊まって、この子たちを指導してくれたらいいのよ!」


「アリエッティ様、そうしてください!」

おっと、食いつくなぁ。

けど、ディーバ、知ってたんだ。

やっぱり普通じゃなかったのね、あの対応。


神官として派遣されるとき、どうやってカービング領に行けばいいですか?と中央神殿に問い合わせたら、カービングのタウンハウスに行け、と言われた。何の疑いもせず、素直にタウンハウスに行ったら屋敷に入れてもらえなかった。


ヨシュア様はご不在で、主人不在の家に勝手に上り込むな的なことを言われて、仕方ないからその足で中央神殿に聞きに行った。


ずっと神殿の宿舎だったからそんなに荷物はないけど、一応、お年頃の女なのでそれなりの荷物はある。


それに楽器も譜面や、調律道具やその他諸々。

合わせたら馬車一つ分くらいにはなったから、借りた馬車にそのまま乗せて、とりあえず神殿まで行ったんだけど、そこからカービングまでは頼めないし、第一、わたしが払うのー?と思って。


そしたら、顔見知りの神官様が青筋立てて怒った。

神官を迎えるのに領主の馬車が迎えに来ないなんて、非常識だって。


最初はわたしに怒ってるわけじゃないから、と思ってたけど、なんだか、侍女はどうしたとか、護衛はどうしたとか言い出して。


そんなこと知らないし、いませんって答えたら、女一人が遠方まで行くのに、護衛も付けないなんて、馬鹿か!って怒られて、ムカついたから、もういいです、って出て行って、勝手に宿をとった。


今考えたら神官様のおっしゃることは、その通りなんだけど、巡業ならいざ知らず、一瞬前まで、深窓の姫のはずの歌姫なんだから、知らなくて当然なんです。


だれか教えてよー。


だれか教えてーってことが多すぎて、人生って理不尽過ぎってことにようやく慣れてきました。今日この頃。


そのあと、どうやって頼んだのかわからないけど、近衛騎士の一人が護衛について、カービングからは馬車が手配されてきて、カービングの執事にすごーく嫌な感じで謝られた。で、叱ってきた神官からも、ぶすってした感じで謝られた。


大人ってこんなに誠意のない謝り方するんだーって怒りよりも驚き。


ほんともう、ここ、1年くらいで一気に大人って汚いもんだってことを勉強させていただきました。お腹いっぱいです。

歌姫って、ほんとに大事にしてもらってたんだなぁ、って改めて思いました。


でもね、5年たったら神官やめようて決意させるには、十分な対応でしたわよ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] まだまだ物語は始まったばかりなのに先が楽しみになる展開ですね。 これまでの登場人物もなかなかに個性的で、一筋縄にいかない感じが好きです。 一度諦めたところからアリエッティ嬢がどう変わってい…
[良い点] 気になって一気に読ませていただきました。 [一言] まだ6話までしかないのが残念です。 もっと一気に読みたい、そう思わせてくれるお話でした。 更新を楽しみにしていますね。
[良い点] めげたりめげなかったり [一言] 読み始め! 中々ままならないねぇ。 慕われる状況もあるようだけど、 幸せに結びついてないのでムズムズ。 続き待ち!気になります〜
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