27 男運、使い果たしちゃった⁈
オネエさま店員とイチャイチャ話していたら、あまりの気安さにヨシュア様に説明を求められた。
この人は元神官。
神官見習いの時から、一緒に指導を受けた仲間。話し方がちょっと独特ですが、腕は確かですよ。本職は楽器の修理や調律師。
そして、戯曲作家でもある。私の依頼主のときもあるのだ。まだ駆け出しだけど、売れっ子のレッティモンさんも磨けば光る、と判子を押してくれている。
「はあ、いい男ね〜。噂以上だわ。あのアリシア様の噂がなけりゃ、社交界は血みどろだったかもね。毎日、拝めてるあんたが羨ましいわ。それにしても。」
ニヤリ、と笑って私を見る。
「あんた、よく連れてこれたわね。あのアリシア様でも連れ立って町歩きに来たって聞いたことないのに。」
目の覚めるような美形でしょ。連れて歩くのも気分がよろしくてよ。ほほほ。
付いてきたんですのよ。ご自分から。私が心配だそうで、と言ってあげると、鼻をつまみ上げられた。
「ブスのくせに調子のってんじゃないわよ!あんた、今日で一生分の男運、使い果たしたわよ!」
ああ〜やっぱり〜⁉︎なんとなくそんな気がしてた!
「ただでさえオトコ見る目がないくせに、ちょっといい男に囲まれたくらいで調子乗ってんじゃないわよ。ほんっと、ちょろいんだから、あんた。」
ひどい・・・刺さりすぎて、ぐぅの音も出ない。
がっくりと肩を落とすのを、オネエさん店員がニヤニヤ笑って囁いた。
「一人ぐらい紹介しなさいよ。騎士様たち、いい体だわぁ。」
逃げてー!みんな逃げてー!
ヨシュア様ほどでなくても、カービングの騎士たちは中々ないい男。体格はいいし、姿勢も物腰もいい。ヨシュア様の薫陶のおかげだと思う。
お姉さんは鼻が高いです。
と、お姉さんぶって言ってやると、みんなに苦笑された。ヨシュア様にはおだて過ぎだと注意された。
本当なのに。
オネエさん店員にお勧めされた、がっつり系お昼ご飯のお店に向かう前に、ヨシュア様とお別れ。
わたしを早めに屋敷に戻すように、危ない目に合わせないように、としつこく念を推して、去って行った。
「名残り惜しそうだったなー、ご当主様。」
昼間からビールを飲みながら。
今日は特別。
休日だから、1杯までは、と指揮官のゴードンから許可が下りてる。
オネエさん店員が勧めてくれたお店。お肉、おいしー!お野菜もおいしー!
きっと夜がメインなんだろうな。
お酒に合う料理のはず。
いいなぁ。
王都に戻ってきたら、絶対来よう。
「飯に行こうって、神官様が言った時のご当主の顔。めちゃくちゃ引きつってたもんな!」
「背中にガッカリって書いてあったな。」
ゲラゲラと騎士たちが笑う。
そんなに行きたかったのかな?ヨシュア様。
有名なお店だけあって、すごく美味しい。
でも、ヨシュア様はあと3カ月は王都にいらっしゃるんだから、来ればいいじゃないの?
「神官様と行きたかったんですよ!あったりまえじゃないですか!」
はあ?何言ってるの?
「そんなわけないでしょ。」
「正直、どうなんですか?プロポーズまでいったんですか?」
ぐ。肉が詰まる!レオン、なんてことを!
「あのねぇ、ヨシュア様は恋人がいらっしゃるじゃないの。そんなこと言ったら怒られるわよ。」
「「「ええー!?」」」
ええー?って、知らなかったの?有名な話じゃない。こっちが驚くわ。
「誰?誰なんですか?もしかしてカミラ様?ありえない!」
「ちょっと、ほんとに知らないの⁈」
騎士たちは一斉に首を振った。
「絶対、神官様だって。」
「いやいや、カービング卿は巫女姫様の恋人でしょ?有名な話よ?」
えええー⁈と騎士たちがひっくりかえった。静かにー!
「・・・あー。もしかしてあの話。」
「神官様が来る前に言われてた、歌姫がご領主夫人に来るって話、あれって。」
「神官様じゃなくて、今の巫女姫様のことだったのか!」
そうそう。
今更だけど、わかりにくいわね。わたしも一応、歌姫だったから。
「だからいつまでもあんな感じだったのかぁ。」
「いや。それでもやっぱり、なぁ。」
なんか、残念そうに見ないでくれます?慣れましたけど。
「・・・だとしたら、ご当主はあれがご婦人に対して普通ってことか?」
「うへぇあ。」
あはは!何その声!レオン!
「勝てない!俺たち、絶対あのひとの前じゃ、日の目、当たんねえ!」
あ!!分かる、それー!
美形って、ずるいよね!今ならそのネタで、一晩中語れるわ!
店員さん、もう一杯、ビールください!!
・・・一杯だけ、ですね。
はい、すみません。ため息つかないでよ。ジャン。