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19 こっちがいいかも

なんてことを話したら、また先輩方の炎が上がった。


「凱旋から最初の巡業が、恋人のところってのが、また。公私混同も甚だしいわ。」


「求婚者を侍らせた夜会に出てるけど、やっぱり、本命はカービング伯爵って話だものね。国一の美青年だし、宝石鉱山で潤ってはいるしね。降嫁したら辺境暮らしになるんだけど。」


「あら、辺境領の奥様は1年の半分以上、王都にいらっしゃるわよ。元巫女姫なら、いくらでもいいわけがたつじゃない。」


「今の歌姫が本当に可哀想。引き立て役にしかされてなくて、あれじゃ経験にならないわ。でも、今のままじゃ、私たちも協力したくない。神官様の前で、不敬になっちゃうけど、セシリア姫やローズも追い出されたままなんて、納得いかないもの。」


巫女姫選定で次点だったセシリアは、公爵家だというのに未だ社交界に出てこない。


3位のローズは婚約者だった外務大臣の子息に、ロメリア様と共謀してアリシア様への嫌がらせを行なったという理由で、婚約を破棄されて、国外に出てしまった。


なぜかアリシア様と仲の良かった歌姫たちも国外に出てしまっている。

そして、わたしは辺境に送られている。


中央神殿に残っているのは、歌唱の指導がうまい、ディーバのみ。

中央神殿は人手が足りず、大変な思いをしているはずだ。


「だけど、神官長様からも要請もないし。巫女姫の奔放な振る舞いを注意されないのかしら。だとしたら、ガッカリだわ。申し訳ないけど、わたしも協力できない。」


わかります、その気持ち。

神官長様への忠誠心が篤いわたしですらそうですから。

期限があるから頑張れます。


「あら、神官は辞めるつもりなの?アリエッティ。」

「だって、割に合いません。それに、あの巫女姫様が、来られるんですよ?エチュア神殿だけはありえません。」


「でしたら、引退されたのちは、ぜひガイネへ。美しい歌姫は我が国の男にとっては垂涎の的。私がぜひにとご紹介したいものがたくさんおります。」


ペヤン様から声をかけられて、いつのまにか、主役がテーブルまで来ていたのに、気づいた。


ロメリア様!素敵!女神だわ!


「おめでとうございます。ロメリア様、ペヤン様。」

「ありがとう!女神の意思を継ぐ姫さまたちより、ぜひ祝福を頂きたく。」


ペヤン様が言い終わる前に、後ろの従者がヴァイオリンを弾いた。


賛美歌の一節。


結婚の式で歌われる一番有名な賛美歌。

先輩歌姫たちが自然と歌い出す。


完璧なハーモニー。

なんて気持ちいいのかしら!


歌の終わる直前に、わたしに従者からヴァイオリンを渡された。

わたしは、ロメリア様の代で作られた賛美歌を奏でた。

セシリアが作曲した、ロメリア様のための曲。


歌姫は代々、当代の巫女姫のために曲を捧げる。

傑作と言われたロメリア巫女姫のための賛美歌。

これを歌いこなせるのは、ロメリア様に傅いた、私達の代だけ。だけど、この会に参加できたのは私のみ。


ロメリア様が、朗々と歌い上げる。


低音から高音まで、力強い響きで歌うのが、ロメリア様。

この歌い方に憧れて、一所懸命、発声を真似したけど、やっぱり無理だった。


わたしだけでは伴唱は無理なので、ヴァイオリンで伴奏して、歌い終わると、招待客が、わあ!と歓声を上げた。


歌姫にふさわしい、ロメリア様の歌唱力。


久しぶりに胸が震えた。


「ありがとう。アリエッティ。」

ロメリア様、そんなに泣くと化粧が崩れます。


本来ならば、国中を上げて祝福しても良いくらいの先代巫女姫の結婚式。

それをこんなふうに、隠れるように祝わなければいけないなんて。

この代償は高くつくわよ。あの国の貴族たちは。


旦那様のペヤン様は、うっとりした目で、ロメリア様の歌う姿を見ていた。

心の底から、女神のように思っていらっしゃるのが、よくわかった。


ロメリア様のような偉大な歌姫を、大事にしない国なんかより、ここにいた方が絶対に幸せになれる。


わたしも、神官辞めたら、こっちに来ようかしら。真剣に考えるくらいガイネの街は楽しかった。



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