表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/74

16 見直してくれてありがとう

戸惑っているわたしに、ヨシュア様は、優雅に笑って、お茶を勧めてきた。


はあ。

終わったの?終わった?


謝罪タイムは終わったらしく、メイド長さんたちは静かに部屋を退室していった。


終わったらしい。


でも、ここからが本題なんだよね、多分。


今までの非礼は水に流しました。

これからアリシア様の巡業を盛り上げてくださいってことだよね。


うん、それはね、もちろん。

わたしはそんな仕事だし。


でもできれば丸投げはやめてほしい。


民に音楽を教えるのと違って、将来の奥方に、歓迎を表すっていう目的があるんなら、アリシア様の好みをよく知ってるヨシュア様が考えてほしい。


じゃないと昨日みたいに不興を買うことになる。

歌姫として同じ教育をうけていても、彼女のことはよく知らないので。


「春の日の祭りでの、演奏、感動しました。騎士たちの士気が上がったのは、あなたのおかげですね。」


行進曲の演技に参加していたのは、半分が領兵の騎士だった。あれで士気が上がったのなら、重畳。


「そんな変化があったなら良かったです。あれは外国の軍隊が閲兵式で行う演技なので。意識統一のためにああいった訓練を行うのだそうです。」


へえ、とヨシュア様が食いついた。

「よく、ご存知ですね。外国に行ったことが?」

「巫女姫の巡業について、二回、行きました。あの儀式はバストマ皇国で行なっていたものです。巫女姫巡業の歓迎式典で披露されました。もっと規模も大きく、200人ほどの隊列で、音楽もオーケストラ並みでしたけど。」


「そんなに大規模なものができるのか。圧巻でしょうね。あの演技を軍の訓練に正式に取り入れたい。指揮官を訓練してもらえますか?」


「かしこまりました。すでにウィルヘルムやジャンは、指導ができるまでになっています。ですが、彼らは指揮官ではないですよね。指揮官となる方を訓練いたします。紹介して下さい。」


行進の練習だけでも、軍団の規律行動は上がるはず。ヨシュア様が近衛騎士を辞して、昨年帰還されてから、領兵は相当鍛えられたよう。


最近ではのんびりと立ってただけだった衛兵も、顔に精悍さが出て、引き締まったのがわかる。


「あの曲は初めて聞きました。あの掛け声も。あれは古語か?カービングに、栄光あれ。かな?」


「曲は元からあったものをわたしが作り直しました。掛け声は古語です。」

「古語なんてよく知っていたね。」


「地方に残る賛美歌にはよく混じってるんです。歌姫は歴史と一緒に古語も習います。さわりだけですが。」

「マナーも?」

「はい。」


元々の身分が高い歌姫は、高位貴族に嫁ぐことも多い。

巫女姫になれば王と同じ扱いを受けるので、歌姫は一律、淑女教育も施される。


「歌姫が淑女教育の最高峰と言われるわけだ。演奏技術といい、歌姫教育がここまでとは。」


見直してくれてありがとう。

今更ですけど。


アリシア様とはそんなお話、しなかったのかしら?


ええ、歌姫の修行はとても厳しいんです。


だから入ってきてから3分の1くらいしか残りません。

巫女姫候補に残れるのはさらに選ばれた者のみ。


人数は決まってないけど、17歳から21歳までの歌姫から候補が決まる。候補に選ばれず、5年に一度の選定に出れないとわかった時点で、歌姫を辞めてしまう者も多くいる。


最近では短期間でいいから、歌姫という経歴が欲しいという人も後を絶たず。

修行になかなかついてこないと、神官様たちも嘆いていた。

歌姫という経歴があれば奏者として楽団に入りやすい。貴族であれば高位に嫁げる。


ていうジンクスを信じてたんだけど。


・・・全国の歌姫志望のみなさん、こんな残念な先輩ですみません。


巫女姫巡業の打ち合わせをするのかと思っていたら、ヨシュア様が意外なことを言い出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ