第三話 神との対面・その3
「では最後に――この子を連れて行ってはくれませんか?」
この子と言って、女神は視線を少女から黒猫に移す。当の本人――黒猫は、前足を腰に当ててドーンと構えている。
「あなたの過ごす日常は、きっと楽しいものになると、私は確信しています。その世界を、私も見てみたいのです。制約によって、授けられる能力の数が決まっています。ですが、それにこの子は長年私の使い魔をしていたので、あなたに授けられなかった能力を授けることができます」
ふむ、と少女は考えた。もふもふが来てくれるのは大歓迎だし、能力を与えてくれるとも言っている。こちらにマイナスはない。
「いいよ。でも、君はいいのかい?」
少女は快諾したが、一応本人の意思を確認する。
「君ではない。吾輩はケット・シーである。名前はマダナイ」
「え? 名前はまだ、ないのか?」
「何を言っている。吾輩の名前はマダナイだと言っているのである」
「ああ。マダナイが名前なんだね。今理解したよ」
何とも分かりにくい名前だ。けれど、案外、女神も洒落が効いている。おそらく地球を覗いたときに決めたのだろう。
「マダナイからの承諾は得ています。マダナイに授ける能力は、『気配・魔力察知』と『第六感』です。そして、能力を授けたことで、この子は神獣となります」
マダナイの額に手を当て、能力を授けたのだろう。一瞬ピカッと光った。見た目は小さな黒猫から、少女の腰の高さまで大きくなっている。頭の上には小さな王冠が乗っており、白のもこもこがついた赤いローブを羽織っていた。これが神獣の証だとでも言うのだろうか。
「……終わったのかい?」
「はい。この子は無事、神獣になることができました。末永く、可愛がってあげて下さい」
「もちろんだよ!」
大きなもふもふを連れて行けるなんて、なんてラッキーなんだ!
少女はホクホク顔である。
「転移先は街の近くにしますね。大陸や国の説明などはマダナイから聞いて下さい」
「分かった。分からないことがあったら、マダナイ君に聞くよ」
「女神よ。世話になったのである」
「ふふ。いいのですよ。あなたをイリスと名付けます。では、よい人生を――」
その言葉を最後に、少女の意識は遠のいていった。
次回は3/21に投稿します!