ゆるゆらふわり。トンボの帰り道
秋風があくびをして
私の髪を撫でた
ゆるゆらふわり
誘われて
トンボが耳の横をかすめる
不可思議な動きを目で追って
どこへ行くのかと
眺めて仁王立ち
草木たちが帰れ帰れと
はやし立てる
トンボは赤い太陽に向かって
消えていった
ゆるゆらふわり
カサカサと
コンビニの袋が音を立てる
自転車のカゴに
ざっと詰めて
太陽に背を向け
ペダルをこいだ
あとはただ
影絵のような自分が
映し出されるだけだった
覆いかぶさってくる風が心地よい
あのトンボも
さぞかしご機嫌だっただろう
帰路はこうでなくては
せっかくの夕日がもったいない
気付かせてくれてありがとう
お前は家に着いたか
名もなきトンボよ