結末
僕は面接で今日の出来事を話した。
実際に起こったことなのでスラスラと言えたし、面接官にも興味を持ってもらえたように見えた。
初めて面接で手応えというものを感じた。
そしてめでたく僕は面接に受かり、会社に就職することができた。
コンビニのアルバイトも今月いっぱいで辞める。
来月からは新天地で正社員として働く。
上司、同僚、飲み会、出会い…
不安なこともあるが、ワクワク感も大きかった。
僕はアルバイトに向かう為、いつものように電車に乗った。
夕方はやはり少し混む。
今日も座れないが20分立っているくらいはもう慣れっこだ。
YouTubeでも観ようかな。えっとスマホスマホ…
…げっ、スマホ忘れてきたのか?バイトの休憩中することがない、最悪だ。
いや、でも今の俺はこんなことでは落ち込まない。
何て言ったって俺は来月から一つ上のステージに行くんだ。
スマホを忘れたことにすら気付かず仕事をバリバリやって上司からの信頼は厚く、同僚からも尊敬され、女子からはモテて…
よし、来月までに美容院に行き髪を切って、ヘアワックスと香水を買って、お洒落な服を買う。
まぁ今ある金で出来る範囲でだが……んっ?
…あのワンピース、どっかで見たような…
あっ!
ピンクのワンピースにロングストレートの髪。
間違いない、あの時の彼女だ。
そうか、あれから約二週間。
電車に乗れるようになったのか。良かった。
どうしよう、僕に気付いてくれないかな。
この前連絡先交換出来なかったし。
ちょっと近付いてみようか…
僕は少しずつ彼女に近付いて行った。
三秒かけて一歩、三秒かけてまた一歩、周りからは不審に思われていたかもしれない。
すると彼女が動き出した。
あっ、また離れてしまう。
そう思った時だった。
彼女が五十代くらいだろうか?白髪混じりの中年男性の前にスッと入って行った。
僕は気になり、今度は素早く彼女の近くへ歩み寄った。
彼女が自分の右手を後ろへ動かしたのが見えた。
僕は彼女の右手が見える位置に移動した。
そして僕は自分の目を疑った。
彼女の右手は中年男性の股間にあった。
慣れたような手つきで、リズムよく右手を上下に動かしている。
中年男性は最初は戸惑っている様子だったが、声は出さず、ほどなくして目をゆっくり閉じた。口は半開きのままだ。
一分も経っていないだろう、彼女は自分の右手を元あった位置に戻した。
中年男性は目を開けた。先ほどより少し息を荒くしながら彼女の背後に一歩近付いた。
そして男性の手は彼女の太もも、さらにスカートの中へ…
今日は彼女の横顔がはっきりと見えた。
彼女はゆっくり目を閉じた。男性の行為に全く抵抗することなく、息を荒くしていた。
僕は何か変な夢を見ているのだろうか。
とにかく一刻も早くここから逃げ出したかった。
でも足がなかなか動かない。
次の駅に到着するまで彼女が目を開けないことだけをただただ祈っていた。