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黎明のリベルニオン  作者: モチ太郎
Ⅰ 『開幕の襲来』
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0 0 7 夜、実戦演習場にて


 夜。

 防衛部隊が訓練で使う実戦演習場。


 ドーム状の建物で内部は起伏のない平面な空間となっており、地面は自動で修復される治癒魔法が組み込まれた土で形成され派手な訓練にも耐えられる作りになっている。

 基本実戦演習が無い時間帯にここを使う場合は事前に予約をしなくてはいけない予約制で最大二時間まで無償で借りることができる。


 昼の会議で選ばれた者の一人としてこの“ルフスエアブレード”を授かったディアス。

 あの時はおちゃらけてはいたが会議の後彼は真剣にこの剣の扱い方、そこから編み出せる戦略を考えていた。


(戦闘中に僅かに魔力を流しながら相手の動きを呼んで攻撃を捌く……でもこの剣の機能なら捌くよりも前にこちらの攻撃を相手に叩き込むことも……)


 手首をしならせながら剣を振るいいつになく真剣に考え込むディアス。


「まっ実際に一回やってみるか」


 振るうのを止め臨戦態勢を取る。

 右手の剣にゆっくりと慎重に身体の内側より魔力を流していく。


 手を伝わり柄から剣に装備された特殊な機関へ、ごく少量の魔力が機関へ伝わった途端右手に感じていた剣の重さがフッ、と消えた。

 突然の変化に対応できなかったディアスは右手を僅かに動かしてしまった。


 その時。


「うぉっ!?」


 剣が地面に勢いよく突き刺さり砂埃が舞う、あまりの速さに振るった自分が驚き魔力のコントロールを乱すディアス。

 そのまま魔力は次々と剣に流れ込んでいき、突き刺さった際に発生した振動を激化させ剣を離したのにも関わらずひとりでに動き始めた。


「やっべッ!!!?」


 地面を跳ね、その衝撃でまた機関が反応――。

 切っ先をディアスに向け一直線に飛翔した。


 咄嗟に彼が得意とする氷属性の魔法『氷結壁』を前方に展開させ剣を防ぐ、剣は送り込まれた魔力が底を尽きたのかそのまま地面を転がり大人しくなった。


「あ、あはははは……これはなかなかヤバイ代物をよこしたもんだ……」


 転がった剣を拾い上げ苦笑いで剣を眺めるディアス。



 それから一時間後、なんとか扱えるようにはなってきたようで防衛部隊で叩きこまれた剣術の基本の型、それを魔力を流し込みながら行っていた。


 速度にまだ身体が追いつけていないようでどことなくぎこちない動きだが手からすっぽ抜けて自分を貫こうとしてくるようなことは無かった。

 これなら次の日には使いこなせそうだ、そう考えていたディアスの名を誰かが呼んだ。


「やっほ」

「っとと……おぉ、レイル!」


 神剣研究所での仕事を終えたレイルだ、様子を見に来たのだろう。


「リンクさんとごはん食べているときに話を聞いてね、ちょっと差し入れを」

 紙袋を持ち上げニッと歯をみせて笑う。

「めっちゃありがてぇ……魔力使いっぱなしでもーくたくたでよ……」


 剣を鞘に収め、レイルから紙袋を受け取る。中身は冷たく冷えたルフスアップルジュースとサンドイッチ。

 早速ディアスはルフスアップルジュースに口をつけ乾いた喉に流し込んだ。


「っかー!運動の後のコイツぁ格別だぜ!サンキューなレイル」

「うんうん。訓練の方は順調?」


「ボチボチってとこかな……剣を振るうのには慣れてきたけどコイツで剣術を使うってなるとまだ難しいな……」

「なるほどねぇ、あ……そうだ。

 慣れてきたならちょっと実戦形式で訓練してみない?」

「突然だな、どうした急に珍しい」


 サンドイッチを頬張りながらきょとんとした顔でレイルを見る。


「いやそれがさ……ソアに運動不足なこと指摘されちゃってさぁ。いい機会だし久しぶりに一勝負しませんかっと」


 レイルは勢いをつけて立ち上がりディアスから数歩離れて服についた土を払う。


「確かに久しぶりだな、まぁいいけどこっちは慣れてない武器だし怪我してもしらねーぞっと」


 サンドイッチ最後の一口を口に放り込みルフスアップルジュースで流し込むとディアスは同じように立ち上がりレイルに視線を向けた。


「よっし!じゃあ武器取ってくるね」

「おう」


 小走りで備え付けの武器庫に向かうレイルの背中を眺めディアスは小さく微笑んだ。


(久しぶり、か……お前から誘ってくるなんてやっぱ変わったなぁ)


 昔、神剣で親を亡くし塞ぎ込んでいたレイル。

 幼いディアスからみてもその姿はとても痛々しくて放っていけなかった。


 それから数年暗くて、俯き気味だったレイル。

何をしてもどんよりした空気が漂っていてまるで死んでいるかのようだった、気分転換に何かを誘っても断りはしないが心此処に有らずといった感じでチャンバラごっこをしていた時、ディアスは案山子を相手にしているような気分になっていた。


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