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黎明のリベルニオン  作者: モチ太郎
Ⅰ 『開幕の襲来』
14/34

0 1 2 邂逅・少女鮮血


 機工都市ルフス・都市外。

 高い鉄の壁に囲まれたこの都市を一望できる切り立った断崖、都市で使われている結晶媒体の元が取れる結晶洞窟入り口付近。

 そこに男は居た。


 都市上空に漆黒の物体を降らせ、魔物を侵攻させた襲撃の首謀者。

 二柱のひとつ、神話時代叛逆を起こし世界を破滅へと導こうとした“死の神”を崇める異端のカルト集団“黒い月”のメンバー。


 そして――。


「エギル……さん?」


 元・都市防衛部隊副隊長だった男。

 エギル・シンフォル。


「久しいなファルネイルの子。

 出来損ないの憑依士……名前は確か、そう。ソアだったな」



 黎明のリベルニオン

  012【邂逅・少女鮮血】



 ―――――


 数分前 都市襲撃まであと一分。

 結晶洞窟。


「ふぅ」


 ソアは常日ごろから行っている日課“夜の秘密の特訓”のため、都市から少し離れた場所にある結晶洞窟に来ていた。


 ここは機工都市ルフスが魔法の自立、及び自動化のために使用する水色の結晶が取れる洞窟で彼女にとっては良い修行の場でもあった。


 後方支援部隊は都市の防衛以外にも新たな魔法の生成、機械に適応した魔力の流れを作り出す等の魔法、魔力に関する研究を行っている。


 ので、魔力の理解を深める為に魔力コントロールの鍛錬をおこなうことも一つの仕事。



 “結晶”とは魔力の塊であり強い魔力を帯びた鉱石。

 この洞窟にはその結晶があちらこちらから生えており洞窟内部の魔力の流れはかなり複雑で不規則な変化をつけながら流れている。

 故にここは魔力コントロールの鍛錬には最適だった。


「本当あたしってコントロール苦手だなぁ……感知なら得意なんだけど……」


 右肩を揉みながらぶつぶつと独り言。

 彼女は魔法の理解は得意なのだがそれの根源、魔力を操作するのが大の苦手で幼い頃からそのことで悩んでいた。


「うぉっとと……気が緩んだら酔ってきた」


 結晶の不規則な魔力の流れの影響でこの洞窟内に入ると宙に浮いたような、何処かに吹き飛ばされてしまいそうな、不安定で不思議な感覚に包まれる。


 これは酔いの感覚に似ていてずっとこの場所にいると通称“結晶酔い”を引き起こしてしまう。



 その影響かこの洞窟には結晶採掘者以外で訪れる者はソアくらいなものでこの時間帯はいつも一人だった。


「もういい時間だし、帰らなきゃなっと」


 持ち込んでいた鍛錬に必要最低限の荷物を持ち、洞窟の出口へと向かう。



(ん?)



 その途中でもぶつぶつと鍛錬の見直しやらを呟いていると、ある異変に気が付いた。


 激しい魔力の流れの中にいるにも関わらず外から異質な感覚が流れ込んできたのだ。

 同時に、微かに鼻を刺激する嗅ぎなれない臭い。


 これは、とソアの脳裏で嫌な予感が過る


(血の……臭い?)


 鉄のような臭い、洞窟の入り口へと近づくにつれてその臭いは濃く、酷くなっていく。


「ひっ」


 思わず声を漏らしてしまうソア、彼女の目の前に広がっていたソレは惨劇と呼ぶに相応しい光景だった。

 臭いの元は結晶洞窟の至る所に飛び散った血、結晶にもおびただしい量の血液が付着して青く神秘的に光っていた結晶は血によって赤い光を放っている。

 更に一つ、地面に転がる謎の物体。


「だ、え……なに、これ」


 都市周辺警備隊の装備品を身に纏った物体。

 理解が追いつかずまじまじと観察してしまったソアはそれが何だったのか気付いてしまった。




 四肢を切断された“人”だということに。




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