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黎明のリベルニオン  作者: モチ太郎
Ⅰ 『開幕の襲来』
12/34

0 1 0 魔の襲来


 “外敵”の接近を知らせる警報音と激しい地鳴り。

 二人は上空から接近する巨大な魔力反応に気付き空を見上げた。


「なんだ、これ……」


 機工都市ルフス・上空。


 夜の闇に紛れてこの都市の上空に接近していたソレはゆっくりと降下し都市全体を覆っている魔法防御壁に接触、凄まじい轟音と共にソレは防御壁を覆い始めた。

 色は黒、形状は不明だが粘度の高い液体のようで防御壁にピッタリとへばりついている。


 それを眺める、男が一人。


「俺が賜った力のひとつ……お味はどうかね機工都市」


 山岳の村を漆黒に染め上げた、あの男だった。

 だが彼が従えていた異形の化け物の姿が見えない。


「まずは第一波をどう乗り越えるか、見物だなァ」




 機工都市ルフス・防衛部隊本部。


「くそっ……この数の魔物の接近に気付かんとは防衛システムは何を!」

「感知機工からの情報では突然……上空に現れたと……」


 機工都市を守る千里を見渡す監視の目“防衛システム”をかいくぐりこの物体は突如上空に現れた。


「属性不明……!外壁の防衛機工による魔法攻撃効果無し!このままでは都市全体があの物体に飲み込まれます!」

「都市内防壁を展開、必ず魔物が攻め込んでくるはずだ。備えろ」

「あの上空の物体はどう対処しますか……!」


「我々第一部隊で対処する、それでよろしいですかリンク様」

 そうロイが言うと、遠隔会話魔法によってリンクの声が本部に送られた。


『それで頼む、俺はこれから一つ心当たりに“ちょっかい”かけに行ってくるから四番ゲートの魔法防御壁の解除よろしく』

 彼にとってこれは乗り越えられるモノと捉えているのだろう、緊急時だというの普段通りの口調で命令を出すリンク。


 命令から数秒、機工都市ルフスの五つの出入り口のうちの一つ、四番ゲートを塞いでいた魔法防御壁が一時的に解除される。


 都市上空の巨大な魔力反応の裏に隠れて小さな魔力が多数、この都市に向かってきているのを感知するとリンクはその中で一番大きな魔力を探し出し、その場所へと全速力で向かい始めた。



 無事リンクが都市外に出たことを確認した防衛部隊本部ではすぐさま部隊の編制、配置が行われた。


「感知機工によるとこの都市に接近している魔物の数はおよそ二千体……!防衛機工によって迎撃可能ですが上空の物体の影響で魔法防御壁の出力が低下しており、食い止められるのは良くて半数……その残りは……!」


「構わん、我々で仕留めるぞ。

 避難勧告急げ、第五部隊、後方支援部隊は正門へ迎え。居住区防護壁の展開も忘れるな」


「了解であります!」

「“ル・アイアスの壁”展開開始!」


 居住区や施設への被害を抑える為、都市の正門から中央の巨大な塔“機工式魔法障壁制御塔”をつなぐ大通りの両脇に巨大な壁が魔法と機工によって展開されていく。 


 そして、大通りには地属性の防御魔法“土門”が道を遮るような形で出現、数は四。

 神剣を保管して十数年……これが最悪の事態を想定し構築された機工都市ルフスの最大の防御体勢。



 土門第一の壁を守護する第五部隊が正門前に到着すると、新たな伝達が入る。


「魔物の軍勢!外壁防衛装置・魔法射出装置αの迎撃を掻い潜りおよそ九百体が正門付近に接近!」

「正門の耐久値徐々に低下……!あと数十秒で会敵します!」


「ついに来るか……」



―――――



 機工都市ルフス・正門前。


 

 第五防衛部隊総数四十。

 後方支援部隊総数五十。


 第五部隊は魔法を得意とする後方支援部隊とそれをサポートする近接戦闘部隊によって編成された防御力に優れた部隊。

 防衛部隊が装備する大型の盾“タワーシールド”がズラリと並ぶ様は鉄壁と呼ぶに相応しい。


 隊長は本部からの接近警告を受けて後方支援部隊に指示を出す。


「第一から第二魔法射出隊、魔法詠唱開始!」


 後方支援部隊の第一魔法射出隊が火属性魔法の詠唱を開始する、続いて第二隊も詠唱開始。

 第一隊は簡易的な詠唱で発動できる魔法を、第二隊はそのワンランク上……“中級”の魔法を唱える。


 あと数十秒。


 正門に亀裂が走る、外より魔物の唸り声や悲鳴、ありとあらゆる魔の者の音がその亀裂よりこちらに漏れてくる。

 先陣を切る防衛部隊の面々の額に汗が流れ表情が強張る。



 あと十秒。



 正門に小さな穴が開き、瓦礫が地に落ちる。

 その穴から見える魔物の瞳から感じられるものは殺意だけ、知性的なものは何も感じられなかった。


 武器を握る手に力が籠る、今から対峙する存在に気圧される者もいた。

 だが、誰も逃げ出そうとはしない。全てはこの都市の為……皆恐怖心を心に抱いていても決して撤退の二文字だけは頭には無かった。

 


 あと、三秒。






 

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