Prologue 始まり ―第一次神話大戦―
神話の時代。
死の神の陰謀により始まった第一次神話大戦。
この戦いの行く末はこの世界を創造した神。
生の神“シルフレッド・レヴィーアルデント”。
死の神“キリス=シルベルベッティア”。
その二対の神の力を授かった、二人の神剣使いに委ねられた。
空は黒く、月は紅く、大地は死に絶えた。
「やがて世界の全てがそうなる」、と死の神の剣・ルシエイドを振るう男は言う。
「絶対に僕が阻止してみせる、その為に全てを捨ててここまできたんだ」
それを聞いたルシエイドを振るう男の口元が歪む。
「戦友を捨て、真なる友を捨て、妻を捨て……次はなァにを捨てるつもりなんだ?哀れなヤツ」
「お前をこの世界から斬り捨てる」
「笑わせる、その偽善者傲慢怠惰の塊……。ァア、やっぱ才能あるよお前……!!!」
一つは神々しく。
一つは禍々しく。
神剣の光が両者を包み込み、流星となって二つは激しくぶつかり合う。
神の化身と化身が衝突する度に世界に響く轟音と衝撃。
戦いは三日三晩続き、世界を死が包もうとしていた時。一筋の光が空を割って、大地に差し込んだ。
それが終戦の合図だった。
「ハァ――……ハァ――……」
地に伏せる死の化身。
「見事斬り捨ててみせたなァ、世界の歪みヲよォ」
「……まだそんなことを言う力は残っていたんだな」
「ク、クハ……!! 当然だ、この結果も結末も余《俺》は知っていた……!!
これは壮大なる神の計画の、その序章に過ぎんのだからなァ……!!」
「……」
「クク。この世界は歪むように出来ている、あの神が、この世界を不可視なる淵より覗い、ている、限り。
お前らに、真の平穏は訪れん……フハハハハハハ――ガッ――……!!」
「もう、黙れ」
死の化身の腹部に突き立てられる、生の神の剣・レヴィア。
「最後に、教えてくれや……。“命”を奪うのは、楽しいかぁ……? レイ――エス――……」
命が消えていくのを実感しながら満足気に笑みを浮かべる死の化身。彼の命が潰えたと同時に使い手を失った死の剣・ルシエイドは神剣レヴィアの力によって粉々に砕け散った。
「これで、終わった……」
乾ききった、生命の居ない大地に一人佇み、黒く染まった空の切れ目から差し込む光を眺める。
身体に残った力を振り絞り、ゆっくりと口を開く。
「終わったよ、ソア。
心残りはあるけれど、それは君に任せるよ……僕はもう疲れ、た――」
―――――
それから千年後。
生命の過半数を死に追いやった神話大戦を生き延びた種族達は各自が独自の文明を築き、皆が希望を胸に、平和に暮らしていた。
――明日を生きる“死者”を除いて……。
不可視なる淵より神の計画は再始動する。
緩やかに、しかし確実に世界を蝕んでいく“死”と“闇”。
世界の命運は当代の神剣使いに託された――。
黎明のリベルニオン Ⅰ
神剣解放