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最終章なので少しだけシリアスになります
十一月になった。
家の外はもうすっかり冬になって来て、コート無しだと外を歩く事もできない。
「……今年も、もう十月が終わったのか」
部屋に掛けられているカレンダーを見て、ふと思う。
気が付いたらあと二ヶ月で来年だ。
年の瀬がすぐそこにまで迫っていた。
「あっという間だったなあ……」
今年は時が経つのが本当に速かった。
ユウが来る前と来た後では、時間の進み方が変わったんじゃないか、なんて思うほどだ。
五月上旬にユウが来るまでの四ヶ月間と来てからの半年だと、間違いなく前者の方が長く感じる。
……そろそろ、年末に帰省する時の予定とか立てたほうがいいのかな。
この調子で時間が過ぎれば、気が付いたらクリスマスが終わっていた、なんてことになりかねない。
年末年始は電車も混むし、速めに予定を立てた方がいいだろう。
去年までなら、いざというときは新幹線の自由席で移動する事もできたけど、今年はそういうことはできないわけだし。
それに、思い返せば夏の時も時間がなくて慌てて用意していた。
それを考えると、今度こそ早めの行動をするべきだと思う。
「……えっと、ユウは」
さっそく相談しようと、カレンダーから目を離して、ユウを探す。
自分の部屋を出てリビングに顔を出すと、ユウはソファに座っていた。
「ユウ、今ちょっと時間いいかな…………ユウ?」
「……」
ユウにいつものように声をかける。
すると、どういうわけか反応がなかった。
「……ユウ?」
「……」
見ると、ユウはただぼうっと何もないところに視線を向けていた。
別にイヤホンをつけているわけでも、何かをしているというわけでもない。
……まただ。一体どうしたんだろう。
ここ数日、ユウがこうなることがある。
たしか、初めてこうなったのは、ちょうど十一月の一日だっただろうか。
「ユウ?大丈夫?」
「へ?真?」
近づいて、さらにもう一度声をかけると、今度は反応があった。
ユウがきょとんとした顔で、何度も瞬きをしながら僕を見上げる。
「ユウ、何かあったの?さっきから上の空みたいだけど」
「……え?だ、大丈夫。何もないよ」
そう言って、手を振りながらユウが否定する。
……大丈夫といっても、流石にぼうっとしている回数が多いと思う。
こうなってまだほんの数日なのに、僕が見ているだけでも十回は超えているはずだ。
それに、こうしている今も、ユウの目は僕からずらされている。
これまでの半年知ったけれど、これはユウが嘘をつく時の癖だ。
それを考えると、今のユウはどう見ても大丈夫じゃなかった。
……もしかして、何か悩み事でもあるんだろうか。
もしそうなら話して欲しいと思う。ユウの悩みならどんな話でも喜んで聞くつもりだ。
「あの、真」
「なに?」
そんなことを考えていると、ユウが小さい声で僕を呼んだ。
「その、あの、ね?」
「……うん」
雰囲気からすると、なにか大事な事を言おうとしているんじゃないかと思う。
僕は聞き逃さないように耳に神経を集中させた。
「その……」
しかし、そこまで言ったところでユウは口を何度かパクパクとして、そして何も言わずに口を閉じた。
「……」
「ユウ?」
聞き返してもユウは何も言わず、俯いてしまった。
ひざに置かれたユウの手が握られて、スカートにしわが出来る。
……本当に、どうしたんだろう。
何かきっかけがなかったか、必死で以前の記憶を掘り返す。
でも、やっぱり心当たりはなかった。
「ご、ごめんなさい。なんでもないの」
「ユウ……」
しばらくして、やっと返ってきた言葉は、そんな誤魔化しの言葉だった。
……やっぱり、何か悩み事があるのは間違いないだろう。
ユウが何に悩んでいるのか知りたいし、出来る限り力になりたいと思う。
でも、俯いてスカートを握る姿を見ていると、無理に話を聞きだすこともできなかった。
……何も出来ない事を、もどかしく思う。
一体ユウに何があったのか、どうしたらいいのか、僕には全くわからなかった。




