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18表


 これは僕個人の持っているイメージだけれど、大学生の夏休みといえば旅行だと思う。

 

 高校生の頃と比べるとお金を持っているし、社会人と比べると休みが多いので時間にも困らない。

 国内旅行はもちろん、その気になれば海外に行く事だって簡単にできるだろう。

 大学生のうちに海外に行っておけ、なんて言葉は誰でも一度は聞いたことがあるんじゃないだろうか。

 

 実際、僕の通っている大学でも休み明けにはどこそこに旅行に行った、なんて話題をよく耳にする。

 去年もハワイに行っただとか、遊園地に行っただとかをよく話していた。


 毎年休み明けは、横でそんな話を聞いて僕自身の夏休みの虚無さを痛感して悲しくなっていたものだ。

 あの時は一人ぼっちの悲しさが倍にも感じられた。


 ……とまあ、そういうわけで、僕にとって夏休みに旅行に行くというのはちょっとした憧れなのだ




 ◆




「旅行なんだけど、どこがいいかな」


 向かいの椅子に座ったユウに見えやすいようにパンフレットをひろげ、机に置いた。

 大学生の夏休みに、という題名のパンフレットで、そこには遊園地や温泉街などの数多くの観光地の情報が書かれている。


 実家から帰ってきて三日。

 落ち着いてきたので、前々から考えていた旅行の計画を立てようと思い、このパンフレットを大学でもらってきた。


「……色々あるんだね」


 ユウがパンフレットを見ながら言う。

 ここ数日、どこか様子がおかしかったけど、もう大丈夫なようだ。

 

「どれが人気があるの?」

「オーソドックスなのはこの辺かな」


 ページをめくり、テーマパークが書かれたページを出す。

 関東にある日本最大のテーマパークだ。

 このパンフレットにも大学生に一番人気だと書いてある。


「……へー」


 ユウが興味深そうに覗き込む。

 ここには家族で行ったことがあるけどなかなか楽しめた。

 きっとユウも楽しめると思う。


「……って、こ、ここはだめ!」

「そ、そう?」


 突然顔を赤くしてユウが首を振る。


 ……まだ大丈夫じゃなかったか。


 帰省の時の電車から、ユウはたまにこんな風に様子がおかしくなる。

 一昨日なんて顔を両手で覆って全身を捩ったりしていた。


 ……一体何があったんだろう。

 一度聞いたときも顔を赤くして押し黙っていたし、よくわからない。


「こ、こっちがいいと思う」

「これって、温泉?」


 ユウが指差したのはすこし西にある有名な温泉地の記事だった。

 ……温泉かあ。


 少し趣味が渋い気もするけれど、いいかもしれない。

 僕は走り回るよりものんびりする方が好きだし。


 記事には浴衣姿で足湯に入る写真が載っている。どうやら浴衣で温泉街を散策したり出来るらしい。


 ユウと一緒に足湯をめぐったり土産物屋を見て回るのは楽しそうだ。

 ……それにユウの浴衣姿を見てみたいという気持ちもある。


「ここにしようか」

「う、うん。それがいいよ」


 パンフレットに折り目をつけて、忘れないようにする。

 ……せっかくだしいい旅館を予約しようかな。ユウには内緒で。

 見ると、少しお高いが部屋に貸切の露天風呂があるような部屋も書いてあった。


 ユウが知ると遠慮して安いところがいいと言いそうだ。

 でも僕としてはいい旅館でユウと一緒に楽しみたいのである。


「よし、じゃあ旅行準備をしよう。今から出かけたいんだけど、ユウは何か用事がある?」

「……?大丈夫だけど、何処に行くの?」


 旅行の準備と言えば色々やることがある。

 旅館の手配や交通手段、旅行先の情報の確認、連絡手段の確保、服の準備などが代表的だ。


 そして、その中でも今回、一番最初にする事は前から決めていた。


「スマホを買いに行こうか」


 旅行に行くのに連絡手段がないと大変だ。

 操作に慣れるためにも一番最初に買っておいたほうがいいだろう。



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