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11表


 デパートに行った日から五日が経った。

 あの日から僕とユウの間に一つ変化があった。


 ユウと一緒に外に出かけるようになったことだ。

 学校が終わった後一緒に買い物に行ったり、映画に行ったりするようになった。


 今日も買い物に行って来た所になる。

 行ったのはスーパーだが、夕飯を一緒に考えるのは楽しかった。


 映画に関しても家族以外と行くのは初めてで少し緊張したけど十分に楽しめた。

 先日決めた新しいことをする、という目的についても順調で、清清しい気分だ。

 まだ七月も上旬なのに幸先がいい。

 順風満帆ともいえる。


 でも、ここで一つどうしてもやらなくてはならないことがあった。

 僕が学生である以上仕方のないことが。




 ◆


 


 カレンダーを見て、残りの日数を確認する。

 今日が七月の第二金曜日で、残りの日数は……大体二週間くらいか。


「そろそろだなあ」

「え?何が?」


 呟いた僕にユウが質問する。

 そういえば言ってなかったか。


「もうすぐ学期末試験が始まるんだ」


 その日をカレンダーで指差してユウに説明する。

 学生の夏休み前の最後の難関、学期末試験が二週間後に迫っていた。

 

 ……そろそろ勉強しないとなあ。


 大学の試験は点が取れないと問答無用で単位を落とされる。

 留年したくなかったら事前に準備をしておく必要があった。


「うん、明日から本格的に勉強しよう」


 勉強の予定を決める。

 別にこれは早くない。これまでの僕を考えるとむしろ遅いくらいだった。

 前回までは確か三週間前くらいから準備していた。


 それが今回ここまで遅くなったのは……やっぱりユウがいるからだろう。

 子供みたいで恥ずかしいことだけれど、ユウと一緒にいるのが楽しくてついつい先延ばしにしてしまった。


 ついさっき、明日から、なんていったのも未練だろう。

 本音を言うならばもう少しユウと一緒に遊びに行ったりしたいと思う。


 ……でも、単位を落としてユウに情けないところを見せるのも嫌だった。


「……頑張ろう」


 この前の一件で情けないところを見せたのだ。これ以上は見せられない。

 試験なんて通るのが普通だし、ユウにはあまり興味はないかもしれないが、それでもだ。


「明日から勉強するの?」

「うん、そうしようと思ってる」


 そう覚悟を決めたとき、ユウが話かけてきた。


「えっと、試験勉強って大変なの?」

「……どうだろう。でも遊んでいる余裕はあまりないかな」


 大変か、と言われると返答に困る。

 大学入試とかと比べると楽だし、中学生くらいの試験と比べれば大変だろう。

 でもしばらくは勉強にかかりきりになることは確かだった。

 今日のように一緒に買い物くらいなら出来ても、一緒に映画を見たり、ということは出来なくなる。


「そうなんだ……」

 

 ユウが少し寂しそうな顔をする。

 止めて欲しい。そんな顔をされると決心が鈍る。


「でも今日は大丈夫なんだよね?」

「それは……うん、そうだね」


 肯定する。ユウは何かしたいことがあるんだろうか。


「じゃあ、この前買ったお酒を飲まない?」

「お酒?」


 そういえばデパートに行ったときに買っていた。

 ユウがお酒を飲んだことがないと言ったから買ったんだった。


 うん、いいんじゃないか。

 ユウといっしょにゆっくり出来るのも今日を境にしばらくない。

 最後にお酒を飲んでぱっとやるのもいいかもしれない。


 ……あれ、考えてみれば家族以外と一緒に酒を飲むのも初めてか。

 そう思うと夜がすごく楽しみになってきた。


「じゃあ、今日夕飯のときに飲もうか」

「うん」


 こうして、ユウと一緒にお酒を飲むことが決まった。

 後に僕が微笑ましく思い、ユウが後悔することになる一夜が始まったのだった。

 

 

 


 

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