この手が届く限り
少し文の構成を変えてみました。見やすくなっていたら幸いです。
ご指摘の方御座いましたら、是非感想でお答えください。
かなり助かります。
出口をみつけるといってもどうしたらいいものか・・・。
オレ達は今、完全に手詰まりとなっていた。あれからオレ達はとりあえずテレポートするために魔方陣にのり、もとの湖の上の足場にもどってきた。そして、出口を見つけるため探索を開始したのだ。しかし、それから10分探そうが20分探そうが出口は見つからずついには一時間もたってしまった。
完全に詰んでいる。オレは次第に焦りを、かなり表情に出てしまっていた。そのたびに、フェリスが手を握ってくれるのが心強かった。安心する、冷静に考えられる。
落ち着け。冷静に考えよう。オレは何かを見逃しているはずだ。ここにくるまで特にヒントや手掛かりはなかったはずだ。オレがもうすでに手にいれているという可能性は?
思考を加速させる。フェリスと出会うまでは何もなかった、テレポートされるまでもなにもなかった。その後、大量の金貨とアイテムを手にいれた・・・。
鍵と、コンパスと、ベルトと・・・。
ん・・・?まてよ。コンパスの性能ってどんなんだったっけ。たしか大事なことが書かれてたはずだ。
オレは急いで魔法袋からコンパスを取り出す。そして心眼のスキルを発動させた。
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名前:願いのコンパス
説明:自分が願うものの方向を示す。
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は、はは。これが丸々答えになってるじゃないか。オレはコンパスに今願うもの 出口を想像しコンパスをみる。コンパスは湖の奥に生えている一本の木を指し示した。
あそこか。よし、早速向かおう。
「フェリス、出口を見つけた。行こうか」
「わかりました、行きましょう!」
木のところに行くまでそこまで時間はかからなかった。早速、オレは木に触れてみる。今回もテレポートか、となると頭から落ちないように注意だな。
すると魔方陣はまったく出てこなかった。かわりに、地面が突如揺れだす。
「ねえねえカイト、私嫌な予感がします」
「奇遇だな、オレもだよ」
その瞬間、地面からいくつもの水の柱が空めがけて吹き出してきた。もちろん、オレ達の足元からも・・・。
「「ああああああああああああああああああああああああああ」」
吹き飛ばされる。尋常じゃないぐらい高く。まてまてまて、これフェリスのステータスじゃ死ぬぞ!?
オレは急いでフェリスをこちらに寄せ抱き寄せる。お姫様抱っこのようにして、腰に力をいれ衝撃にそなえる。その直後、轟音と同時に地面に着地する。
幸い、フェリスには怪我はなかった。オレはというと、うん。
滅茶苦茶いてええええええええええええええええ。
やばいってこれ、見た感じじゃ大丈夫そうだけどぜってえ骨おれてる。
「大丈夫、回復」
フェリスはお姫様だっこのままオレを回復してくれた。痛みがどんどん引いていく。おれた骨が治っていくのがわかる。
「ありがとう、フェリス、。たすかっ・・・た」
オレはお礼を言おうと腕の中のフェリスの方を向く。そして今更ながら気づいてしまった。オレ達は今水に飛ばされてきた・・・。つまり、今は水浸しの状態だ。もちろん服もびしょ濡れな感じで・・・。
オレは驚愕してしまった。
フェリスの服は透け、肌にピッチリ張り付いているのである。恐らく、あの脱出方法を考えた人物は天才だろう。
「どうかしましたか?カイ・・・ト」
フェリスはオレの視線に気づいて自分の胸に視線を向ける。その直後、顔を真っ赤にしてオレに強烈なパンチをくらわせてきた。
「ばかあああああああああああああああああ」
オレは鼻血を流しながら華麗に空中で回転を決め倒れこんだ。気持ちよかった。・・・嘘です滅茶苦茶痛い。ステータスが高いなら痛くないと思うのだけど!!
その後フェリスは避けようのない出来事だったと機嫌をなおしてくれた。
まあ、回復はしてくれないけどな!
「ここが、外の世界・・・」
フェリスは外の世界に興味深々のようだ。
降り立った場所はオレが落ちた場所と少し離れたところだった。とりあえず、索敵を使って安全を確保しなきゃだな。そうだ、索敵は千里眼になったんだった。
オレは索敵と同じように頭のなかで周辺の地形をイメージする。すると索敵のように情報が入ってくる・・・訳ではなかった。
索敵の範囲は体感だが自分を中心とした100メートルだった。しかし今は1キロ位に範囲が増えている。相変わらず森の中には魔物の反応がない。
これならオレの村の方まで見えそうだ。オレは意識を村の方に向ける。
村にはいくつかの反応がみえる。住民達の反応だろう。
その時オレは違和感に気づいた。村にすごいスピードで反応が迫っている。その反応は1つや2つではない。10・・・20・・・40!?おいおいまじかよ!しかも、この速さ。あの狼じゃないか!?
一匹だけでもかなりやばいのにあれが40匹?このままじゃまずい!
「フェリスッ いきなりで悪いがオレの村に行くぞ!理由は移動中に話す!かなり急いでいる。オレが肩車するからのれ!!」
「わ、わかりました」
オレはしゃがみこみフェリスを乗っけるとがっしりと太ももを首にホールドする。
「よしいくぞ!!舌を噛むなよ!」
せっかく手にいれた力だ、オレの手が届く限り・・・運命を変えてみせる!!!
オレは全力の速さで森を駆け抜けるのだった。
オレは今、全力で森を駆け抜けている。地下の空間から抜け出し、周辺の安全を確保しようと千里眼を発動したら村の方に大量の気配が迫っていることに気づいたからだ。
それが人間ならまだよかったのだが、あの禍々しいオーラは恐らく魔物だ。おまけにただの魔物じゃない。このスピードを出せるのはあいつしかいない、あの狼だ。このままでは村人は一方的に蹂躙されてしまう。
オレはこのことを走りながら、肩車しているフェリスに説明をする。
「なら、急がなきゃですね!」
フェリスははりきっているようで、両手でガッツポーズをしている。落としそうで滅茶苦茶怖いから手は離さないでくれるとありがたいのだが・・・。
オレは仕方なく、本当に仕方なくフェリスの太ももを首により密着させることにした。このままじゃ落ちちゃうからね! その後、ガッツポーズしていた拳を頭に振り落とされたことは予想できていただろう。
全力で木々の間を駆け抜け進む。以前に狼の魔物から逃げていたときも全力で走っていたが、今はそれよりも比べ物にならないぐらい速い速度で走っている。おまけに、息があがることもなくなっていた。この調子ならもうすぐで村に着くはずだ。
村が見えてきた! それと同時に、オレは門で倒れている人影を発見する。彼は恐らく村で門番をしていた兵士だ。
「くそっ、遅かったか」
その兵士は首から腰にかけて胸を切り裂かれており、血は止まることなく溢れでていた。かなりの重症だ。しかもけが人はこの人だけじゃない。千里眼を発動し周囲を索敵すると、弱々しい気配を4つと消えかけている気配を2つ発見した。全員この村で武器の扱いができる者だった。恐らく、皆が逃げる時間を稼ぐために足止めをしていたのだろう。
「フェリス、君の出番だ! いまからそこの小屋にけが人を集めるから回復をしてやってくれ」
「わかりました!任せてください」
フェリスの回復は血の量は元に戻せないとしても、あのけがなら元に戻せるだろう。
オレは全力で駆け出し、急いでいるので多少手荒になってしまったがすべてのけが人を小屋に集めた。
「フェリス、あとは頼む!オレは中央の広場に行く!」
返事を待つことなく走り出した。だんだんと中央の広場が見えてくる。オレは千里眼を発動させて現在の状況を確認する。
住民は狼共に囲まれ、逃げ道を失っていた。次第と肉眼でも確認できるようになってきた。村の男達が鍬や斧を持って、狼を牽制しているがじりじりと距離を詰められていく。やられるのは時間の問題だろう。
何とかして狼共の注意をひかなければ・・・。
オレは数歩さがってから助走をつけると、全筋力を足に入れ踏み込んだ。直後、何メートルも高く空に飛び上がった。踏み込んだ地面に深いクレーターが出来るほどだ。そのまま5秒ほど宙に浮いたまま狼供の真上に到着する。
1人の男が狼に体当たりをされ武器を落とし吹き飛ぶ。その近くには小さな子供達がいた。狼供はその子供に飛びかかろうとするが1人の女性が武器を拾い立ちふさがった。
子供を喰うために女性に飛びかかろうとする狼に狙いを定め、オレは全体重を乗せ着地するのだった。
...怖い、怖いけど私がやらなきゃだめなんだ!
宿屋の娘ナタリーはそう自分を奮い立たせ、目の前の恐怖と向き合っていた。
私は今、震える手で鍬を構え目の前の唸り声をあげる狼と対峙していた。なんでこうなってしまったかというと本当に一瞬の出来事だった。
カイトさんに森の調査を頼んだ私は、なかなか戻ってこないカイトさんに少し心配をしつつも帰りを待っていた。しかし、やっぱり心配になった私は少し森の様子を見に行こうと村の入り口にある門から出ていこうとした。そして、見つけてしまったのだ。狼の群れがこの村をめがけて走ってきていることに・・・。
私はみんなに注意しようと、大声で村を走り回った。みんながそれを聞くと、何人かの男の人が足止めをしに向かっていってくれてその隙に村の反対の門から逃げることになった。私も村のお婆ちゃんに手を貸しながら必死に逃げていた。しかし、村の中央の広場に出たところで状況は変わった。
狼の群れは足止めを抜け、私たちのすぐ後ろにまで迫っていたのだ。そして、先に反対の出口にたどり着いた人もこちらに戻ってきた。
なんと、反対側からも狼が迫っていたのだ。武器を扱える男達は、私たちを守るため一番端に立ち狼を牽制する。しかし、狼は1人の男に突進を仕掛けその隙に子供を拐おうとしてくる。
私の体は勝手に動いていた・・・。飛ばされた男の人の武器を手に取り、近寄ってきた狼に向け構えていた。狼はそんな私に喰らいつくために機会をうかがっている。
足が震えた。手は怖くて武器をしっかり持ってはいられなかった。
狼はそれを機会だと思い飛びかかってきた。もう駄目だとおもった・・・。こんな運命受け入れたくないけど、逆らうことは出来ない。そう思ってしまった。
恐怖のあまり涙がでてきたが切り裂かれるその瞬間まで目はしっかりと開けておこうと決心する。しかし、狼に私が切り裂かれることはなかった・・・。突如、爆発音が聞こえ視界が砂埃に覆われる。そして、砂埃が開けた先に映っていたのはバラバラに肉片が吹き飛ばされていた狼とその上に着地していたカイトさんだった・・・。
オレは狼に着地すると同時に、近くにいた一匹の狼の首をつかんで地面に叩きつける。顔は一瞬のうちに粉砕され狼は簡単に絶命した。今度はその狼を他の狼に何度も何度も叩きつけた。
叩きつけられた狼はその体を凹ませあっという間に3匹も命を絶たれていた。ここまでするのに僅か5秒。うん、いいペースじゃないか!
村人はオレのいきなりの登場に混乱していた。そして一番始めに口を開いたのは、狼に飛びかかられそうになっていたナタリーちゃんだった。
「カ、カイトさん!?どうしてここに・・・ってその力・・・ぇぇえ!?」
滅茶苦茶混乱してた。オレは今話しても理解できないだろうと考え、簡単に話すことにした。
「みんな、助けにきたぞ!そのままじっとしていてくれ、すぐ片付ける」
村人達はありえないと信じていない様子だった。まあ、それが当たり前なんだけどな。
オレは1つのスキルを試すことにした。試そうとして試していないあのスキル・・・武器召喚だ。おそらく、この召喚というのは勇者の武器を呼び出すことのことだと思う。オレは右手に剣をイメージしてスキルを発動した。すると、右手は光だしその光は次第に強くなっていき剣の形を構成していった。
そして、出来たのは金色に輝く剣だった。刀身は美しく研ぎ澄まされ、神秘的なその剣の存在感は素人のオレでもかなりの業物だと理解できた。
オレはさっそく剣を振り、狼を両断しつつ心眼を使った。
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名前:勇者の剣
説明:間を討ち滅す剣。この剣は勇者の成長と供に強化される。
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ほう、勇者と共に成長する剣なんておもしろいな。そう関心しつつ、オレは横から飛び出してきた狼の首をかわしてそのまま左手で首を掴み剣で首をはねる。
その首を今度は前方の狼の腹に全力で投げ、その体に穴を開ける。
残る数は、10・・・15・・・17。
狼共はオレに真正面から挑むのを無意味だと思ったらしく今度は標的をオレから村人にかえた。狼は一斉に村人達に飛びかかる。まずい、間に合わない!狼共の爪は無惨にも村人達を切り裂く・・・ことはなかった。
「光壁ッ」
オレは咄嗟に光壁を発動した。狼共の爪は透明な壁に遮られ村人達は1つも傷がついていなかった。
そう、光壁の能力とは光の壁を作り出し、敵の攻撃を防ぐスキルだったのだ。なぜかわからないが、能力がわからなくても咄嗟に発動しなきゃ不味いと思えた。
オレは狼に突進し切り捨てる。そのままの勢いを使うためにオレは目の前に斜めに光壁を設置して、それを踏み台にすると宙返りの要領で後ろの狼を串刺しにした。そのまま、近くの狼の尻尾を掴み全力で地面に刺さったままの剣めがけて振り回した。剣にぶつかると狼の上半身が勢いよく吹き飛んだ。
これを、同じ要領でもう3体上半身を吹き飛ばす。
残りは・・・10体!
オレは、一気に残りを片付けるために、新たに手にいれたもう1つのスキルを発動する。
「光剣ッ」
すると、使っていた剣はより輝きを増していく。そして、その輝きは剣にまとったまま刀身を2倍ほどの長さに変えていく。オレはその剣を力任せに一回転させる。5匹ほどの狼がその光りに巻き込まれたが、その光りに触れた瞬間その体を2つに分けられるのだった。
この光こそ、このスキル。光剣の効果だ。
今度は足元に階段のように光壁を発動し宙へ飛ぶ。着地と同時に2体の狼を切り裂く。残りは3体。
纏まってかからないと負けると察した狼共は、全方向に散らばり3体同時にオレに飛びかかる。オレは、自身の回りに光壁を発動した。
「ギャウンッ!?」
狼共は光壁にそのままぶつかり、間抜けな声と共に地面に叩きつけられる。オレは作業をするかのようにその狼の頭を踏み潰していく。
「ちょっと・・・暴れすぎちゃったかな・・・?」
すべての狼を虐殺し、冷静になって辺りを見回したオレはあまりのグロテスクさに驚愕した。辺り一面血の海だったのだ・・・。しかも、その海には首のない狼と首だけの狼が仲良く転がっていた。そして、一番ショックだったのがオレが返り血で真っ赤なトマトのようになっていたことだ。うぇぇ・・・ばっちい!
オレは1人で汚さと血生臭さに震えていると、村人の中からふと声をかけられた。誰かと思って振り向けば、その声の主は宿屋の娘のナタリーちゃんだった。
「カイトさん、危ないところを助けていただきありがとうございました」
ナタリーちゃんはオレに頭を下げると興奮したようすでものすごい勢いでオレに抱きついてきた。
それにつられて他の村人達もオレに頭を下げる。
ナタリーちゃんは今年で18歳のはずだったが、その・・・。たわわと実った胸があたっていて、とても心地いい感触を感じていた。これまずいって!こんな場面なのにいやらしい気持ちになったら、最悪な奴だと思われちゃう!
オレはナタリーちゃんの肩を掴みやさしく引き離す。
ふう、落ち着けオレ。オレは紳士だ、イケメンなジェントルマンだ。
「ナタリーちゃん。無事でよかったよ、怪我はない?」
すると今度はナタリーちゃんが肩を掴み滅茶苦茶揺すってきた。
「怪我はない? じゃありませんよ!!!なんですか今のは、森に調査に出てから何時間も帰ってこなくて心配になって探しにいこうとしたら狼が急に襲ってきて!みんな必死に逃げたけど追い詰められて!危機一髪のとこでカイトさんがやって来て!全部倒しちゃうってどういうことですか!」
「お、落ち着いてナタリーちゃん。ほら、ひっひっふー」
「バカにしてるんですか!」
ものすごい揺すられてる。やばい、吐いちゃいそう・・・。
すると遠くの方からフェリスが怪我人をつれてやって来るのが見えた。
「おーいフェリス、お疲れさまーー」
「はい、お疲れさまで・・・ってなんですかこの惨状は!?」
フェリスは滅茶苦茶顔をしかめていた。ちょっとショック。フェリスにあんな顔されたら寝込んでしまうかもしれない。
「待ってくれ、そこにいるのは足止めで残ってくれた者たちじゃないか!」
誰かがそう叫ぶと、皆の視線は一気にフェリスへと向いた。
「うっ・・・」
フェリスは多くの視線を向けられてたじろいでいた。これはオレが助けてやるしかないな。
「みんな聞いてくれ!今から説明したいことが 『パキ...』 」
オレが話し出したその直後、何かにヒビがはいったような音が聞こえてきた。村人達は話すのをやめ音が聞こえてきた空を見上げる。
その空は、例えるなら鏡が割れていくようだった。青空にヒビが入っておりだんだんと崩れていく。崩れた先にあったのは深淵だった・・・。怖い、ただ怖い。その深淵には恐怖しかわいてこなかった。
「いやはや、まさかここまでとは私も予想していませんでしたよ。いやーお見事お見事」
声がした、深淵のなかに人が立っていた。
そいつは全身に死のオーラを纏っていた。村人達は恐怖し、中には恐怖のあまり倒れるものもいた。オレとフェリスもまるで石になってしまったかのように怯え、立ちすくんでいた。
やばい、こいつはヤバイ。心臓がまるで全力で走ったあとのように速くなる。フェリスはオレの服の裾をつかんで必死に恐怖と戦っていた・・・。