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元バイトと剣士の師弟生活  作者: 眠り鼠
第1章 バイトからの転職
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第1章 4話 隠す少女

「だぁ〜、やっと終わった〜」


 今日は稽古3日目。もう腕が限界なんですけど......


「よく頑張りました。さあ、これで今日の稽古は終わりです。明日も頑張りましょう!」


 そんなことはいざ知らず、風雅さんは今日もとっても辛い稽古を展開してきた。素振り100回を3セットにスクワット100回、その後風雅さんと対戦して......勝てるわけないのに......

 でも、明日の稽古を休むための理由を考えてきたんです!


「あのっ!もうそろそろ腕が死にそうなんで、明日あたり一緒にどこか出かけませんか?ほら、パトロールも含めて」


 名付けて「パトロール作戦」!パトロールを理由に稽古を休むと言う完璧な作戦である。


「確かにここ最近稽古ばかりでパトロールしてませんでしたね......」


 うんうん!


「わかりました。明日は一緒にパトロールしましょう。俺があげた木刀も持ってきてくださいね!ちょうど実習ができるかもしれません」


「えっ、いや、パトロールだけじゃないくてショッピングにも......」


「では明日は9時に駅前のカフェに集合でお願いしますね!」


「あぁ、はい。よろこんで......」


 ショッピングにも行きたかったのに......この人はこういうところがもうちょっと良くなればいいのに......


「有栖さん、風雅、稽古が終わったんならいつも通りお茶でもしないかい?いいお菓子が手に入ったのだけど」


 私の萎えた心をお菓子で優しくハッピーな気持ちにしてくれるこの人は、風雅さんの親代わりでもある織部 ヨシさんだ。毎日稽古終わりに美味しいお菓子を用意してくれるので感謝し足りないぐらいだ


「へぇ、また異世界のお菓子?まぁ食べるけど、有栖さんは時間ある?」


「はい!今日は休日ですし、バイトやってないんで暇人ですよ」


「じゃあ風雅、台所に置いてあるからとってきておくれ」


「はいはい。とってきますよ」


 風雅さんは台所に消えていった。これって弟子の私がとりに行くべきだっだのだったかな......


「ねぇ有栖さん?」


「へっ?!はいっ!」


「本当に風雅に弟子入りしてくれてありがとうね。あの子、あんまり人と関わらない子だったから、正直弟子ができたって言われた時はすごく嬉しくて」


「いえ、こちらこそ。私が弟子入りを頼んだんですから私の方が世話をかけてます。ヨシさんにも毎日お茶をさせてもらって感謝してます」


「そんなことで感謝しなくても、お菓子はみんなで食べた方が美味しいからね。そんなことより有栖さん、風雅のことどう思ってるんだい?」


「えっ?!それってどういう......」


「とぼけないでよ。風雅のこと好きなんでしょ?」


「えぇっ?どっからそんなことになってるんですか?!いや、まあ顔は好みですけど......」


「でしょう?親バカじゃないけどあの子、顔は悪くないと思うのだけどね〜」


「はい。でも、気遣いがちょっとないっていうか、女子の気持ちがわかってないというか......」


「そうなの?例えばどんなこと?」


「さっきなんですけど、私はショッピングに一緒に行くのが目的で、パトロールは後付けの理由だったのに、風雅さんはパトロールが目的で、ショッピングに行く気ないみたいですし......」


「それはいけませんね。風雅にも後でしっかり言っとかないと」


「俺に何を言っとくんですか?俺がいない間に悪口言うとか傷付きますよ......」


「いやいや!風雅さんの悪口とか言ってませんから!ただちょっと買い物もしたいなーって話をしてただけですから」


「まあ、いいですよ。そんな苦し紛れな言い訳しなくても......」


「そんなこと言わないでくださいよ〜」


 拗ねてしまった風雅さんとそれをなだめる私、そしてそれを見て微笑むヨシさん。

 今日もみんなでお菓子を頬張る。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ふっ、今日の私は完璧!」


 そう、この私、広瀬 有栖が待ち合わせ時間の15分前に来たのだ。私の人生において約束の時間を守ったことすら少ないのに、15分前に来るとかありえないぐらいだ。


「これなら風雅さんもまだ来てまい。私が先に来てドヤ顔で迎えてやろう......」


 自信満々で集合場所のカフェを覗くと


「おっ!有栖さんが時間を守るとは成長しましたね」


「なんでいるんですか〜!!」


「えっ、だって集合の30分前に来るのが俺の中では普通なんで......」


「じゃあ、約束の時間ごと30分前にずらせばいいじゃないですか!」


 めっちゃ悔しい。剣じゃ勝てなくても、時間ぐらいでは勝ちたかった......


「そんなことより、とりあえず外に出てパトロールに行きましょう。今のうちにでも事件が起こっているかもしれません」


「はい、でもどこからパトロールします?町は広いですし」


「まあ、無難に路地裏とかから見て行きましょう。路地裏なら誰も見ていないと思って、悪いことし放題になってます。」


「そうなんですか。確かに好き好んで路地裏に入る人は少ないですよね」


「しかも最近は若い子たちが暴力団に入ってることがあるので、悲しいものです」


「今のご時世、非行に走る子供たちも少なくないでしょうね......異世界の人がいっぱいいる中、悪い誘いをして来る輩もいるでしょうね」


「噂をすればなんとやら、ってやつですよ。ほら」


「おい!早く金渡せよ!」


 路地裏に入ってすぐのところ、風雅さんが指をさした方を見ると、中年の男性が、15歳程度の若者の集団にリンチされていた。なんて無残な......


「って、見てる場合じゃなくないですか?!」


「実習です!有栖さんが止めてください」


「えっ、マジですか?!」


 私が止めるの?でも早くしないとおじさんが......もう覚悟を決めてやるしかない。


「ねぇ、君たち?何してるのかな?」


「あぁ?誰だよ、ねーちゃん?文句あんのか?」


 うわー、マジでいきってるやつじゃん......頭にくるな。ちょっとビビらせてやろう。


「ん?文句あんのかって?あるにきまってるじゃん」


 と言い放ち、木刀を抜き、振り上げて相手に当たりそうな寸前で止めた。すると......


「え......あ......ゆ、許してっ......」


 こいつ弱っ!でもちょっとスッキリした。まあ若干やりすぎだった感はあるけど......


「お、俺たち、こいつの遊びに付き合わされてただけなんです......」


 そういって男は、こんなグループにはいなさそうな、白い髪に細い体つきの少女を突き出した。

 とても悪いことをしそうな子ではないのに、どこで道を踏み間違えたのだろう......


「君がこのグループのリーダー?ならいい?今度から絶対にこんなことしちゃダメだよ?わかった?」


「わかりました。すいません」


 えらく物分かりがいい子だ、なんて思うほど私も馬鹿ではない。どうせその場しのぎのための気持ちのない謝罪だろう。

 とは言えども、これ以上言ってもこの子たちが変わろうとしない限り変わらないのだ。


「さあ風雅さん、違う場所に行きましょ」


 そう風雅さんの方を振り向くと、風雅さんはいつもの優しい雰囲気とは違う、殺気にあふれた雰囲気を放っていた。


「こいつには俺が制裁を下します」


「えっ、制裁って......」


 そこまでやる必要があるのか、私はそう思った。しかし、もう風雅さんは剣を振り上げ、そのまま、あの少女へ当たる......


 と思ったが、剣は投げられ、さっき女の子を前に出した男の顔面スレスレで横にそれ、壁に刺さった。


「おい、お前がこの女の子に指図してるんだろ?そうやって都合の悪い時は誰かを生贄にして、自分は好きなようにやるとか、最低なやつだな。この子を置いてさっさと消えろ」


「ごっ、ごめんなさい!殺さないで!」


 モブキャラが言いそうな捨て台詞を放ちながら去っていく集団を横目に残された少女のもとに近づいていく。


「大丈夫?怪我はないですか?なんであんなグループに入ってーー」


「なんで助けたの?私が悪者になれば全てが円満に終わったのに」


 風雅さんの言葉を遮るように少女は叫んだ。


「私にだって色々理由があるの。何も知らないのに首を突っ込んでくるなんて良い迷惑です」


 それはおかしいと思った。風雅さんはあなたのことを助けたいと思ってこんなことをしたのに、良い迷惑とはあんまりだろう。


「ではこれで。私は帰ります」


「ちょっと!あなたっ!」


「有栖さん!」


「でも、風雅さんの善意を迷惑だなんて、おかしいですよ!」


「それは違います。確かにあの少女は助けてくれとは頼まなかった。だから勝手にやったのは俺で、迷惑と思われるのも当然です」


「そんな......」


 どんどん少女の後ろ姿が遠ざかっていく。

 本当に彼女はあの状況を望んでいるのか?いや、自分からあのモブキャラの身代わりになるような人はそういないはずだ。ならやっぱり、さっきの子は何か深刻な理由があったのだろうか。

 うーん、なんかスッキリしない......


「何か気になってるようですね」


「はい......なんかあの少女、無理してるっていう感じがして......」


「なら、俺に良い案がありますよ」


 風雅さんは自信満々な笑顔でそう言った。


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