第1章 1話 バイトの弟子入り
日常というものは突然に終わるものである。
「......あっ、あぁ」
そして、恐怖を人が体験する時、声すら出すのが辛い。
自分は今......
バイトの本屋さんで銃口を向けられていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私は広瀬 有栖!まあ、特徴のない女の子です!
ここは千代田区の有楽町の駅前の本屋さん。ちなみに私はここでバイトをしてます!レジの前に立ってお金をもらいお釣りを渡す、そんな面白くない毎日を過ごしているわけです。でも、バイト代はなかなかのお値段で一人暮らしでも困らないのでまあ、よしとしています。
衝撃的なことに、今は異世界人も日本に住んでいるような時代です。
しかも、喋る言語や顔立ちも似ているので見分けもつかないぐらいです。
とはいえど、今はみんなで平和に過ごせていますが、10年前には第一次異世界大戦なるものもありました。
それでも日本と異世界は手を取り合い、今のように共に平和に暮らせているんです。
まあ、異世界人が多くなりすぎて、日本人の就職が難しくなっただのと未だに不平不満をいう人もいるんですけど、私は本の売上も上げてくれるし万々歳です。
「はーい。全部で1296円になります」
私はいつも変わらず本のお金を受け取ろうとしたその時、
「ゴラァァ!誰もその場を動くなよ!」
店内に響くドスの利いた声。お客様方の悲鳴。
そして、、、向けられる銃口。
日常が終わった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして今に至るわけです。私は強盗にあっているいうことなのか?しかも異世界の人だし...もう何が何だか、頭が真っ白なんだけど......
「おい、ねーちゃんよ。この店にある金をありったけもってこいや。あと、警察に通報してねーよな?」
「ししし、してまっ、してません」
お金を早く渡さないと殺される......と、私の本能が訴えてくる。早くレジからお金をとりだし強盗犯に渡さないと......
「どっ、どうぞ」
「たったこれだけかよ。まあ、ありがとよ」
強盗犯が出口に向かい始めると急激に頭が回り始めた。どうしよう、自分の命のためにお金渡しちゃった......店長に怒られる?!いや、流石に許してもらえるよね?とりあえず警察に連絡した方が......
そんなことを考えているうちに強盗犯が店から出る直前まで行っている。
あぁ、店のお金が...私の給料が...と、思ったその時、
「何してんの?強盗はよくないよ?」
爽やかで優しい、けどその内には怒りが含まれているような声が聞こえた。
その声の主は強盗犯の前に立ちふさがり刀も持っている。
「なんだよてめぇー。ぶっ殺すぞ!」
やばい。あの人を止めないと!
自分が喧嘩を止めに行こうとした瞬間、その人は目で追えない速さで刀を鞘から抜き、強盗犯に突きつけていた。
この時代に刀を使いこなしている......
すごいかっこいい......
「殺す......か。なら殺してみろよ、強盗犯」
「ひっ、ひぃぃ!」
強盗犯が逃げた。お金は置いていっている。というか、強盗犯弱っ。いや、あの人が強いのかな?
「あ、ありがとうございます。お金まで取り返していただいて」
「いえ、いいんですよ。自分は街を守るのが仕事なんで。強盗犯は逃しちゃいましたけどね」
少し照れて笑っている。さっきまでの強盗犯に対する態度とは打って変わって優しそうな雰囲気だなー。本当にいい人なんだろう。
「あっ、何かお礼でもさせてください!」
「いや、本当に大丈夫ですよ!お礼だなんて。さっきも言いましたけど仕事なんで。 でも、せっかく本屋に来たんでこの本買ってもいいですか?」
「いえっ!ならその本あげますよ!」
「いやいや、買いますって!お金を払わずにもらうなんて......ちょっと悪い気がしますし。お店の人にも怒られるんじゃないんですか?」
「まあ、確かに......じゃあ、お買い上げありがとうございます!648円になります!」
「648円ですね。えーっと600......50円玉どこ?」
50円を払うのを待っていると近くからパトカーのサイレン音が......ん?そーいえば私通報してないのにどうして?誰か騒ぎを見てた人が連絡してくれたのかな?
「くそっ、あいつらかよ......思ったより早いな」
「えっ......?」
「すいません!5000円札で、お釣りは大丈夫です!
それじゃあ、さようなら!」
「えっ、あ、ちょっと待って!」
お釣りのほうが代金より高いんですけど!?
そう言おうとしたけど
「あれ? いない......」
あの人は風のようにいなくなっていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あの、強盗に遭った日から2日たった。
幸い強盗に店を荒らされたわけではなかったから、すぐに開店できたのだが......
「はぁ......誰だったんだろ。あの人」
私はあの人のことが気になって仕方なかった。
確かに一目惚れかもしてない。そりゃ、自分を強盗から助けてくれし、顔もめっちゃかっこいい。でもそれだけじゃくて、私はあの人の剣技にも魅せられた。
「あのー、この本買いたいんだけど......」
元々剣に憧れてたし......あの人に教えてほしかったなー、名前だけでもちゃんと聞いとけばよかった......
「おいっ!聞いてる?この本買いたいんだけど!」
「えっ、あっ、はい!って隼人さんじゃないですか!
また、ラノベの買いに来たんですか?」
「ん、まあな。この前買ったやつの続きが気になって、今日も買いに来た」
この人はOCPに勤めて、とある事件のあと、私の世話をしてくれた知り合いだ。
OCP。「Organization of Countermeasure Parallel universe」。日本語で異世界対策組織。第一次異世界大戦の際に発足した組織である。基本的に異世界人の事件を担当しているのだが、結果的に人が起こした事件も取り締まっている。
しかもかなり偉いほうらしいです!まあ私からすれば、ただのラノベ好きのお兄さんとしか見えないですけど。
「へぇ、やっぱり面白かったでしょ?本屋のバイトが進めるんだから当然ですけどね!」
「そのセリフ、正社員の人に言われたら納得するけど、バイトに言われても説得力ないわ!」
「はぁ、まあ所詮バイトですよね.....」
「.....?どうした?お前らしくないな。いつものお前なら、バイトはバイトでもプロのバイトですよ〜、とか言うのに」
「いや、実は......」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「なるほどな。それでバイトにも集中できず、そいつも見つけれず、中途半端になっていると」
「そういうことです......なので今の私にはバイトとしてのの誇りが欠けてるんですよ」
「別にいいんじゃないか?そいつが何の仕事してるかしらないけど、弟子入りすればバイトする時間もないしお金も稼げないかもしれない。でも、お前がやりたいようにすれば?お前はまだ若いんだし。お金なら俺も協力するし」
「隼人さん......ありがとうございます」
やばっ、泣きそうなんですけど......
「あっ、なら今のうちからお金が欲しいんでこちらの私オススメのラノベの新刊もどうですか?」
「お前なぁ......まあ、お前のオススメなら面白いんだろうし、買ってやるよ」
「さっすが〜!お偉いさんは違いますな〜」
「ふっ、おだててもこれ以上は買わねぇからな」
やっぱりこの人はいい人なんだよなぁ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その日は隼人さんのおかげでやる気が出ました!いやー、さすが隼人さん!人生の先輩は頼れます!
「さて、バイトも終えたことだし帰りますか。......って」
あの後ろ姿は......まさかっ!
「ちょっと!待ってください!」
徐々に距離が縮まり、疑念が確信へと変わる。
「すいませんっ!どいてください!」
帰宅ラッシュのせいで人がすごい。このままじゃあ、また見失ってしまう。それだけは嫌だ!
私は人生の中で最も頑張って人混みの中を走っただろう。そしてやっとの思いで追いついた。
「あのっっ......すいません!」
「あっ、あの時の本屋の店員さん?どうしました?」
「はいっ......はあっ...これっ、お釣りです」
「あぁ、わざわざすいません!というか、すごい息切れしてますけど大丈夫ですか?」
「いえ......ぜんぜん大丈夫......ですよ。あの、それと頼みごとがっ......あるんですが......」
「はい。何でしょうか?」
「あの、そのっ......えーっと......」
私はいつもそうだ。大事なことを人に面と向かって言うのが苦手で、断られてしまうのが怖くて......
でも、今日は違う。
「あのっ、私を、あなたの......弟子にしてくれませんか!」
私は自分の日常を変える決心をした。