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遭遇


大樹の下で休憩する。木漏れ日がなんとも綺麗で気分はピクニックだ、素晴らしい。



ディートハルトによると座りながら休憩すれば回復ボーナスがあるそうで、大森林に行くなら飲料水ぐらいは持ってた方がいいとアドバイスがあった。



魔力の少量回復効果のある、清められたレモン水を飲みながら今後の話をする。



「そうですか、レジェは生産職がやりたいのですね。悪くないと思います。」

「おう、正直な所戦闘は余り得意じゃないからな。今は良いけれど、レベルが上がるときつい」



妹には以前から話はしてあり、手伝ってあげる。と、ありがたいお言葉も頂いている。



「私も微力ながら協力しますよ、いつかレジェがお金持ちになるのを見越して投資してあげます。」

ラブも嬉しいことを言ってくる。素材集めには困らなそうで、期待には答えないとな。



しばらく休むと魔力が回復し、大樹の奥に進む。足場が悪く中々疲れるが我慢だ。



上を見ると樹木の上に果樹があるので、魔術を駆使し下に落とす。さながらミニゲームのようだが上手く行かず何個か地面に落ち、傷付いた果樹とアイテムが劣化してしまった。



「見つからないね、指輪。」

「う〜ん・・・完了出来ない依頼はないと思いたいが、これで落ちている指輪なんて探すのは無理だよな。」



足元は雑草が茂って樹木の根がはり、とてもじゃないが探せば見つかるような場所じゃない。



それでも先に進めば、何かイベントかエンカウントが発生するんじゃないかと思いながら歩き続ける。とっても足が痛い。



「中に入ればプレイヤーの一人や二人居ても不思議じゃないのですが、一人も見当たらないのは不思議ですね?」

「だな。大森林に入る前は結構見かけたけど、中に一人もいないのは変だ。」



皆んな左側の道に行ったのだろうか?それともあの狼の大群にやられたか、逃げて先に進めなかった?



疑問を残しながらも大森林の奥深くへと向かって行き、三人は猿や狼だのでレベルは15まで上がっていた。



「!お兄ちゃん、あそこに川があるよ!」



妹に言われた方角を見ると、確かに樹木がない場所がある。よかった、もう終わり見えない探索は色々と限界だった。これで何もなければ帰ろう。



近付くとやはり開けている場所は川があり、川原の砂利の大きさを見るに中流域のようだ。



河川に出ようとすると、川の真ん中に居る黒い物体が視界に。全力でしゃがみ込み草木に隠れる。



「くまさんだ。」

「熊だな。」

「熊ですね。」



そこには野生の森の熊さんがお食事のために蜂蜜では無く、魚狩りをしていた。幸い後ろ向きなので俺たちは見つかっていない。



「バックアタックのチャンスですが、どうしますか?闘いますか?私は大丈夫ですけど。」

「熊にしてはデカいけど、周りも敵は居ないし結構川原も広いみたいだから行けるだろ、遠距離から初撃入れて距離取りながら追撃すれば。」



妹もくまさんは慣れてる、リスペクトしてる。

と、謎なことを言ってるが三対一だし、援護すれば問題ないだろう。この距離なら逃げれるしな。



「初撃はレジェが入れますか?河川ですし、派手に火魔法使っても大丈夫ですよ?」

「マジか?遠慮しないぞ!丸焦げにしてやるぜ。」



声が大きいです、と嘆息するラブリエさん。

いかんいかん、少しエキサイトしてしまった。土魔法も悪くは無いが地味なのである。



許可を頂いたので深呼吸する。最大限の攻撃を入れるため集中し魔力を練り上げる。

意識しているとその瞬間、いきなり魔力が膨張するのを感じた。今だ!



「バーニングッ!」



膨張した魔力は杖から飛び出し、背後から熊に襲い掛かる。瞬間にこちらに気付いたようだがもう遅い。燃え上がれ!



接触すると魔力は爆発音を鳴らし炎上する。

熊の断末魔に似た轟く悲鳴が響き、衝撃の風が草木を吹き飛ばした。なんだこれ?



「・・・お、お兄ちゃん?み、耳が〜」

「び、吃驚しましたよ、何ですかその攻撃力は」



いや、俺もここまで出来るとは思っていなかった。魔術を唱える直前、急に力がデカくなって・・・



さながら爆心地になっている中心に熊は黒焦げになって倒れていた。若干、痙攣してるのを見るとまだ息があるのか。凄まじい生命力だ。



「今のがアビリティの力、なのかな?」

「だろうな・・・なんか神がかったように上手く唱えられたぜ。二倍だとこうなるのか。」



河川に入り熊に近付く。川の流れは穏やかで透き通る美しい綺麗な川で、魚も結構いるから釣りの名所になりそうだ。



とりあえずトドメを刺す、苦戦するかと思いきや呆気なかった。レベルも俺だけ20レベルになっていて、あの熊を倒すとこのレベルになるのか。



「お兄ちゃん!指輪っ!」「あっ指輪ですね。」

熊が光になり消え去ると妹の手元に指輪がエフェクトを効かせて落ちてきた。どんな仕組みだろう。



「俺にはイベントリには熊の肉と牙と皮が手に入ったぞ。ブラックグリズリーって名前らしい。」

「熊から指輪・・・飲み込んでたんですかね?」



ビニールを食べた海亀的な何かだろうか?まぁ依頼はこれでコンプリート。よかったよかった。



帰り道が大変だったのは言うまでもない。帰還の転移書とか無いのかな・・・




◇ ◇ ◇ ◇




大森林から王都へ帰る頃には辺りは夕方になっており、森の中を歩き回ったお陰でくたびれた。



城門で手続きを終え、王都に着いた途端に何故か違和感を感じた。人が少ないような気がする。



だが夕方なのでこんな感じもあるか、と思いまずは依頼を完了されるために俺たちは西の住宅街へ向かったのであった。



「依頼は仲介所で報告するのではないのですか?」

「ああ、通常はそうなんだがこの指輪の落とし物の探査依頼は見つかったら依頼者に直接持っててくれって依頼書にあったんだ。」



依頼者はアルケスタ・クレスポさん。大森林での採集中になくしてしまったらしく、腰を痛め探しに行けないんだとかで西の住宅街に住んで居るらしい。



依頼書の連絡先の住所に向かい依頼者の住居を探す。目標は青い屋根だそうだ、ここだろうか。



「ごめんくださ〜い」

玄関の呼び鈴を鳴らし、来客を告げる。何故か夜になる前に来て良かった、と思ってしまったがゲームじゃんこれ。近所迷惑とか考えてしまう。



しばらくすると玄関が開き中から老人が現れた。

最初はえらい不機嫌だったが、依頼された物を発見したと告げると目を開き急に態度が変り、さあさあ家の中にと案内された。



「有難う、これは今は亡き妻の指輪なのだ・・・」

熊の中から見つけました旨を話すと変な顔をしたが、とても友好的になりいい昔話も聞けた。



「若い探索者達よ、これはささやかな御礼じゃ。」

と老人は小さな木箱から指輪を三つほど取り出した。これが今回の報酬か!正直、結構良いのが貰えるかもと期待していた。



指輪は魔力が込めれたそれなりの品だと言う。装備すると確かに魔力がそこ上がりし、異常攻撃も若干かかりにくくなるとか。



老人に感謝を告げ外に出る。何かあったら相談に来なさいと何かフラグを立てられながら家を後にした。



「得した気分になるけど、ゲームのバランス的にどうなんだ?もうこの依頼は無くなる訳だろ?」

「βテストの情報によると報酬だけが同じな、似た依頼がまた追加されるようですね。」



それなら不公平でもないか。しかしこの依頼、難易度が結構高かった気がする。熊が落とすのは固定なんだろうか?



老人によると、仲介所に行けば金銭の報酬もあるようだ。って依頼書にも得られる報酬は金銭だけしか書いてなかったしな。



三人で仲介所に向かい後は宿屋で別れる流れだろう。しかし今日はよく遊んだぜ、なんせ森をかなり歩き回ったからな。往復で五時間だ。



そうして違和感に気付けないまま、仲介所の広場まで向かった。今起きている騒動を知らずに。

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