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新天地へ

気がついたら白い空間に立っていた。

先ほどVR機側の設定を終え、ベッドに横たわりソフトを起動したばかりだ。


つまりもう此処は、VRMMORPG「The Memory of Story」の中って事か。身体を確認するが、違和感はない。


『マインドルームへようこそ、名乗りなさい』


目の前に”名前を入力して下さい”と文字入力画面が出る。


「えーと、”レジェリウス”」

音声入力ボタンを押しながら喋る。


これは英語も余り知らなかった頃に発音が気に入って名前を決めてから、ずっとMMORPGではレジェと呼ばれていた。


もうこの年では流石に伝説とは名乗れなく、少し変えて人の名前っぽくしたのであった。


続いて”設定して下さい”と鏡が表示される。

うん、俺の顔やな。別に今の顔が嫌いなわけでは無いし若干輪郭を変え鼻を変え髪型を変えてと。


そうだ!身長を少し伸ばそう。少し10センチ位かな?少しだろ?おい、笑えよ。

三十分ぐらい気がすむまでいじり、決定する。


その後、システムのチュートリアル的な操作方法の説明があり粗方理解出来たとは思う。アイテム収納は無限ではない、とのこと。


『レジェリウス、迷える魂よ、降り立つ地こそ理想の世界である事を祈ります』


そうして俺はこの世界へと旅立ったのであった。



◇ ◇ ◇ ◇



「ようこそ、アーバン王国へ」

目を開くとここは部屋の中のようで、足下を見ると精密な魔方陣らしきものが輝いている。


「貴方の来訪を歓迎いたします。手続きを行いますのでこちらへどうぞ。」

と、事務員的な女性の人に案内される。部屋を出て無言でついて行くが、この人はNPCか何かだろうか?


NPCとはNon Player Characterの略であり、つまり中の人は居ませんよ〜って事なのだがMoSのNPCはとても高度な人工知能を採用しており、人との見分けがつかないとか。


案内されていると建物の広場に出る。サービス開始日だからか人が多く、感覚は小規模な空港に居るみたいだ。また部屋に案内され市役所的な受付に座る。


「ええと、まずお名前を伺いいたしますね。」

「・・・レジェリウス、です。」

「はい、事前申請された書類は確認出来ましたので、入国手続きの署名をお願いします。」


と、英語に似た謎の言語の書類を渡される。まぁ日本語訳の概要があり見たところ唯の入国手続きのようだ、署名する。


「ありがとうございます。さて別の話になりますが現在、アーバン王国では、来訪者の方々に準国民登録を奨励しております。」


「準国民登録?」


「はい、登録から一年間は税金等が免除されまして、様々な施設が利用出来ます。登録された方々には資金提供も行っております。」


なるほど、日本語訳の資料を見る限り二年目から税金を吸い上げる魂胆が伝わってくる。だけど悪い話ではないかも?


その後、国内での注意事項や役立つ情報を色々と聞かされ、こちらも色々聞く。この国の名物は焼き芋と自然公園らしい。


「手続きはこれで以上です。アーバン王国は貴方の幸運をお祈りいたします。何が有りましたら気軽にお越し下さい」

事務員の人の可愛い微笑みに釣られ、こちらも微笑んでしまう。名前はアルヴィナさんだそうだ。


建物から出ると、そこは広場で賑わっており欧州的な街並みが囲んでいた。人が多いあのデカい龍の彫刻はハチ公が如き存在なのだろう。


準国民登録には別の役所に行かないとならないらしく、いつでも登録出来るようなので後回しでいいか。


さて、VRMMORPGに限らずMMORPGで肝心なのはまず”何をするのか”である。目標や目的がないと身内や知り合いと会話するだけで終わってしまうのだ。俺は


別にRPGだからまずレベルを上げる為にモンスターを狩れば良いのだが、別に廃人になるつもりはない。


このゲームはかなり自由度があるようなので、俺の目的は密かに憧れてた何かを生産し、自分の店舗を作ることを重点に置いて活動して行こうと思う。丁度狩り馬鹿も居るしな。


その馬鹿はどこにいるかな・・・システムで妹宛に位置情報を飛ばす。このシステム、個人情報の関係か勝手に相手の場所を調べることは出来ないため発信制になっている。


遠距離通信も道具が必要になるらしく、通信手段がデフォルトで備わって無いのは少し苦労しそうだ。


「お兄〜ちゃ〜ん!」

我が妹よ、叫ばなくても分かる。皆んな見てるだろ。やめろ恥ずかしい。


抱きついてくる妹を剥がし、顔を見る。こっ、こいつ顔変わってねぇ!これだからデフォで美人は!ふんだらら!


妹は肩まである藍色の髪を翻し、その歳ではそこそこある胸を張り腰に手を合わせる。


「お兄ちゃん、なんかイケメンになってるけど直ぐ分かったよ。だから遅かったんだね。」

「う、うるさい、俺は凝り出すと止まらないんだ。仕方がないことなんだ。仕方が・・・」

「そんなことよりお兄ちゃん、ステータス見た?」


妹に言われ、まだステータスを見てないことに気がつく。システムで確認する。


MoSは自己ステータスを10段階に分けており、平均5が一般成人男性の能力らしい。初期ステータスは平均から誤差が0〜1ぐらいだそうだ。


ネーム:レジェリウス

レベル:1

アビリティ:一瞬の輝き(Short-lived glow)


筋力(STR):4

器用(DEX):6

敏捷(AGI) :4

知力(INT) :5

幸運(LUK):7

体力(VIT) :3


俺の体力が風前の灯火な件について。幸運が訪れるのはいいがVITは生命力じゃないのか?異常状態に簡単になりそうだな・・・


「見た?それでアビリティはどんなのだった?なんかβテストではなかったんだって」

「まじか、何か一瞬の輝きって書いてあるぞ」

「一瞬の輝き?なにそれ、詳細がなぞれば分かるから見てみて!」


一瞬の輝き(Short-lived glow)

効果発動時全ステータスが2倍になる。効果はランダムで発動する。


「すご!え、なにすごくない!?お兄ちゃんヤバすぎそれチート!お兄ちゃんはチートだった!?」

「落ち着けよお前、発動はランダムじゃん。しかも一瞬と来た、使えるのかなこれ・・・」

「あ〜確かに、それじゃあ使い所を選べないね」


若干がっかりするものの別に悪いアビリティではない、意図しない所でこれに助けられる時もあるだろう。問題はどれ位の頻度で発動するか、だな。


「お前のアビリティは何なんだ?」

「私?私のアビリティは無限の集中力だって。集中してると能力にボーナスが掛かるみたい。倍とかじゃないよ」


おう、らしいアビリティがついたもんだ。なにせこいつは一つのことに集中とトンデモないからな。MoSでもそこそこ活動するだろう。


「それでこれからどうする?一緒に狩りいく?」

「狩りに行くにもまだ武器も持ってないだろ。お前、金持ってるのか?」

「あ〜持ってない・・・よ」


不思議である。経験で言えば普通のMMORPGは初期装備で武器はあるし、お金だって少額だけど有りはした。


「これは準国民登録しろって事か。流石に一文無しじゃやってられないわ」

「そうだね〜別に素手で殴ってもいいけど、効率悪いしね。」


決してツッこまないぞ俺は。ちなみに初期装備として衣類一式は貰っている。種類が多くて驚いたもんだ。


そうして役所に妹と行き、手続きを行い資金も提供して貰った。借りるのかと思いきや貰えるのか、太っ腹である。


役所からこの国にして約十万円ほどを手に入れ、俺たちは武器屋へと商店街に向かったのであった。

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