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引退兄妹

これはVRMMOじゃないです。


あれから三年の月日がたった。

ここはアーバン王国の首都に近いそこそこ大きい都市デゥーガン、なかなか自然と調和して発展したいい都市だ。


もう住み慣れた感のある街だが、初めてきた時は都市の景観に驚いたものだ。世界樹?って言ったら通じるかな、まぁただの大きい樹らしいけど都市の中心に生えているからね。


そこから大通りの少し離れた、商店街の一角に俺の自宅兼仕事場がある。

これまで結構苦労した。お店を出すのにあんな準備と金が必要だなんて知らなかったし、現実の奴らも苦労してたんだな、今更ながら感じるよ。


「お兄ちゃん!お店開くよ〜」

返事をして準備を始める。俺はこれでも店長という身分があるのだ。ゆくゆくは二号店、三号店・・・夢は尽きないな、クックック


妹とこの場所に来てから三年、今もこの先も、もう戻るつもりはない。



◇ ◇ ◇ ◇



妹が俺をVRMMORPG「The Memory of Story」を勧めて来たのは二十歳の春頃だった。


俺の影響でVRMMOに浸かってしまった妹はその眠れる才能?を開花したようで寝る間を惜しんで費やした結果、トップランカーといっても過言ではない存在になっていた。戦闘狂やで


そのVRMMOは正直レベルアップと戦闘要素しか楽しめなく、俺は早々に飽きてしまい唯のコミニティツールと化していた。


だが妹は俺と一緒に遊びたかったらしく、しつこく狩りに誘ってくるので流石にウザくなって来てしまい、違うゲームでなら遊んでやるよ。とついつい言ってしまった。


その事を覚えていたようで、なんと今のトップランカーの立場を捨てまで今話題沸騰中の新作通称MoSを一緒に始めようと勧めて来たのだった!

そんなに俺と遊びたいのか、ハッハッハこいつめ。


調べたところMoSはまだβテスト中のようだ。情報量が凄い豊富で、それだけ反響があると。おらwktkしてきたぞ


中には既存のVRMMORPGを越えた、とまである。動画を見てもとても自由度が高く世界観が作り込まれている。


話は逸れるが俺は自他共に認める批判家だ。


ゲームの設定が少しでも理想から外れると批判せずには入られない。前のVRMMORPGも炎魔法の主力スキルが弓に模した攻撃で萎えた記憶がある。別に弓使いに成りたかった訳じゃない!


だがMoSはシステムを見る限り物凄く細い。

レベル制も細分化され魔法もMPをシステム上の数値に留めず動かせる”魔力”として使えるようだ。創意工夫が捗るようで一番この話題で盛り上がっている。


ただ使いこなせるのが難しく、敵を倒しても中々レベルが上がらない。そして別に敵を倒さなくてもレベルは上がる?らしい。


調べれば調べるほど、MoSが理想のゲームに近づいてくる。

もう俺は昔にやり過ぎたせいかレベ上げのため一時間も二時間も単調な戦闘、経験値目的の雑魚狩りには飽き飽きしていた。


このゲームにはプレイヤースキルを重視している意志を感じる。β組に乗り遅れても関係なさそうだ。情報はあるしね


そして俺は二人分の特典付き初回版の予約をしたのだった。


◇ ◇ ◇ ◇


二十歳の夏が来た。

今日は待ちに待った正式サービス開始日。朝にネットで工場から出荷して運送業者がたどり着いたのを確認した。抜かりは無い。


「楽しみだね〜お兄ちゃん!」

素麺をすすりながら甲子園の地方大会を見る。母校はとっくに敗退したようだ。現実は厳しい・・・


「お前はいいのか?前のを辞めちゃって」

「まぁ私も結構飽きてたしね。それに消す訳じゃないし〜」


そうか、それなら良かった。こいつはこれでもランカーだから信者がウヨウヨいやがる。俺が辞めさせたとか言われたらどうしよう・・・


「お兄ちゃん、どうするの?前みたいに魔法使いやるの?」


今、思い返してもあの職業は酷かった。爆発(エクスプロージョン)を撃つと三秒の硬直はあるしダメージも他職種と比べれば泣けてくる。おまけに消費MPもアホみたいだった。


「爆発は浪漫だ!これは譲れん。」


そもそもあのゲームは何処かおかしい。最初にあの魔法を覚えた時はほとばしる興奮を抑えながら爆発による音響外傷対策でイヤーマフまで用意していたのに音が爆発と比例していなかった。これだからなんちゃてRPGは「あ、ホームラン!」


打たれた三年生投手の顔を見る。昔は何平気そうな顔してんだとか思ったが今では分かる。あれは経験の顔なんだ。


「小杉、今年も駄目そうだな・・・」

テレビに映る男の顔を眺め、ため息を吐く。こいつはちょっとした知り合いで三年間ずっと応援していた。心の中で


「う〜ん 昨日も一緒に狩りしてたしね」

「甲子園はそんなに甘くない。全く仲間が可哀想だ」

まぁこいつの居る高校は県でも有数の進学校らしいし、投手一人の力で勝ち上がったって評判なんだけどね。


「そういえば小杉君もMoS買ったって言ってたよ。試合終わったら来るかなぁ?」

「うん、そこはそんな気がしてた。あいつもこれが終われば野球から解放されるからな」

信者はどこに潜んでいるか分からん。だが妹は渡さんぞ!


その後小杉はお返しにとばかりにホームランを打ったのだが、自援護も虚しく二対一で負けてしまった。打点お前だけかよ


下位でドラフトに乗らないか心配である。プ、プロになったって妹は渡さんぞ!(震え声)


「あ、そうそうちゃんと香坂さんは誘ったの?」

マイ シスターが何か怖いことを言ってくる。


「いやさ、MoSってやっぱり値段が高いじゃん?だからVR初心者が最初に始めるのはちょっと・・・って思うわけよ?」

「え!誘ってないの!お兄ちゃん信じられない!?」

「う、VR機を買ったとは噂で聞いたけどさ、あんまり話しかけづらいしね?会話も少ないし、お前とは仲が良いんだろうけど」


はぁ〜と首を振るマイ シスター。おお神よ、私を見捨てるのですか・・・

「MoSを買ったとはそこはかとなく言いました、よ?」

神はそれを聞くとそれなら大丈夫、となにやら許容範囲内だったようだ。私は救われた!


それからネット上でβ情報の最終確認をし、ついに待ちに待ったその時がやって来た。

「MoS、ゲットだぜぇ!」「ぴっぴかぴー!」

妹様はネタが古い。ちなみに鼠の方が俺ね。知らない?


まず最初にこのVRMMORPGはスタートを三ヶ国から選べる。

東のチィナタン国は東洋風

西のアーバン国は西洋風

北のゲオルギーク国は北欧風


他にも色々と国があるようだが、最初はこの三ヶ国からしか開始出来ない。実際は三ヶ国ともそこまで遠くはないらしい。

妹は西か北かで悩んでいたみたいだが、俺が寒いのは嫌だって言ったらすんなり西で決まった。


さて後はこのゲームの最終目的である。

タイトル名が記憶の物語だけに、世界に幾千もの人の記憶の書が散らばっているとのこと。用はそれを探し出し解読しシナリオを攻略する!のが目的。


勿論報酬が有るけれど、βテストてはその物語が中々面白いらしい。7つの玉を集めれば願いが叶う的な物や、5つの呪われた秘宝を破壊しないと恐怖の悪魔が復活するなどなど。


攻略するに情報を公開するものや偽の情報を公開するもの、内容が似てるけれど所々違いどちらが本物か分からない記憶の本もあったとか。

ゲームを始めるのにワクワクするのは久しぶりかも知れない。


いざ!未知の世界へ・・・

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