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常緑樹

作者: 愬羅


「はぁ…」


暖かな木漏れが差し込む午後、

自室の窓から外をみながら僕小さな溜め息をつく。

暖かな日差し、澄んだ空、澄んだ空気、そしてあお…。


秋も深まり、周りの樹々は色付いているというのに、


その樹はまだ碧々《あおあお》とした葉をつけている。

あの頃と変わらず…


「かずや…」


不意に口をつく愛しい人の名前…

だが、返事はない…彼はもういない…。

部屋の情景も、窓から見える風景はあの頃と何ひとつかわらないのに…

ただ、貴方がそばにいない…

あの日、寒かった…。

雪が降るんじゃないかって、そしたら外に出るの嫌だねって、

あなたはそう言ってたね?

でも、その横顔は言葉の反面、凄く嬉しそうだったの覚えてる…

そんな和也かずやの子供みたいなところ大好きだった…。

ずっと、ずっと…

一緒にいられるって信じてた…未来永劫



でも、永遠なんてどこにもなかったんだよね?

だって現にこうして貴方は私の前からいなくなった…


貴方は消えてしまった。

あの日、降り出した雪がうっすら積もっていて…

寒いから嫌だという貴方をムリヤリ連れ出して買い物になんか行かなきゃよかった。

思えばあの日が最後だったね。

二人でこの常緑樹を見たのは…

私たちを離ればなれにしたのは赤…

薄く積もった雪によく映える真紅の

…血液


たくさん…

たくさん…


道路を染めた…


あか…



和也はもうこの部屋にはいない…

二人の思い出の詰まったこの部屋には、

私一人、独りぼっち…


《和也…愛してる》


だから、帰ってきて…

一人にしないで…

窓の外はあお

あの頃と変わらない碧…

大好きな風景。

大好きな和也…

どちらも手にいれたいって思うのはワガママ?

でも私の願いは一つだけ…



《かずやに帰ってきてほしい》



二人の思い出の詰まったこの部屋に…

神様…

もしいるんなら…


お願い…

彼に、和也に…


もう一度逢わせてください。

もう一度和也とこの景色を見させてください。


これは涙?私の涙?頬を伝う暖かい…



【ガチャ】


玄関の扉を開ける音?

足音が近付いてくる…

聞き慣れた足音…


和也?


貴方なの?願いが通じたの?神様はいるの?…

最後の扉(部屋の)が開く…。


【キィッ】


「おかえりかずや!」


貴方が一瞬とまどう。


陽菜はるな…ただいま」


でも、私の大好きないたずらっ子のような笑顔で貴方はいってくれた。


「泣いてんの?陽菜?」


そういいながら和也はその大きな手で僕の涙を拭ってくれた


「かずやぁっ」


たまらず和也に抱き付いた…

もう一度逢えたら言いたいことはたくさんあったのに、

思いが溢れて…何一つ言葉にならない


「どうしたんだよ?一体…」


そういいながら和也は私を強く抱き締めてくれた。

泣きじゃくる私をまるで子供をあやすようにずっと…


「かずや…かずやぁ〜」


上手く言葉がみつからない。


「馬鹿だなぁ。そんなに泣くなよ。

どうしていいか分からなくなるだろ?」


そういうと和也はキスをくれた…

優しくて、懐かしくて…


深ぁい…


大好きな和也。


ただもう一度貴方に逢いたかったんだ。

逢って伝えたかったんだ



《今でも貴方を愛している》



って。



「陽菜、コーヒー飲む?」


「うんっ」


炊事、洗濯すべて私がやってたけど、

コーヒーだけはいつも和也がいれてくれた。

それがなんだか嬉しくて、

よく和也にコーヒー作ってもらったっけ…

和也がいれてくれたコーヒー、

大好きなあの窓の前で飲もうか…

そう思って窓辺に向かう。


「陽菜、お前ほんとにそこ好きだな?」


「だってここ暖かいもん。それになんか落ち着く…」


「猫みてぇだな。だから、ずっとここにいたのか?ここで待ってたのか?俺を…」


「そう。かずや、この部屋からいなくなっちゃうんだもん。ずっと待ってたのに…」


そこから先は言葉にならない。

言いたかったのはこんなことじゃない。


「悪かったな…

もっと早くこの部屋に帰ってくればよかったな…」


違う、貴方が悪いんじゃないっ


「かずや…」


貴方の悔しそうな顔を見ているのが辛くて

和也の首に両腕をまわした



《愛してる…アイシテル》


「抱いて…」


和也は私を抱いてくれた。

こんな私を愛してくれた

あの頃と変わらない貴方の腕、唇、瞳、髪、

貴方のからだ


すべてが愛しくて涙が止まらない幸せな時…

でも、終わる時は来る…

そう、永遠なんてないのだから…。


ー朝ー


「陽菜?」


目を覚ました貴方が私の姿を探す…。


「かずや、こっち来て」


私は大好きなあの窓辺に貴方を誘う…


「あぁ、綺麗だな…」


目を細めて貴方がいう


「綺麗なみどりね…」


しばらく二人で窓の外を眺めていた


「かずや…ありがとう、帰ってきてくれて。」


「ん?」


「うれしかったよ?かずやと出会って、愛したこと…幸せだった。」


「突然なに言い出すんだよ?」


「ずっと言えなかったの、そばにいすぎて…

 おかしいよね。失ってから気付くなんて…」


「ま、仕方ないんじゃねぇの?俺もそうだったし」



「だからなんだとおもう。思いだけが残ってしまったのは…」


「…それ以上は…聞きたくねぇ」


「私の体はもうないのに・・・」


「やめ…ろ」


「あの日私は、この大地から消えた・・・」


「やめてくれっ」


「聞いて、かずや。」


「っ・・」


「もう時間がないの…

 かずや、愛してた…ううん、今でも愛してる。

 貴方と最後にこの景色を見られてよかった。

 もう、思い残すことなんてないわ。」


そういいながら、私の体…こころは薄れていく


「かずや、泣かないで?

 私は消えるけど、いつでも貴方のそばにいるから。

 さよならはいわないよ。かずや…」



《愛してる》



私の消えた後に、貴方と一輪の花。

貴方がグラスに水を入れて窓辺に置いてくれた

私の大好きな窓辺に…。

澄んだ空、澄んだ空気、そして木漏れ日の中のあお…。


もうすぐ冬がくる周りの樹々は冬仕度をしているというのに、

その樹はまだ碧々とした葉をつけている。











処女作品だったりします(´ー`A;) アセアセ

微妙なとこは読み流してください(´_`。)

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