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おじちゃんが見た世界  作者: 蛇炉
8/20

第八話 おじちゃん、戦う

※誤字・脱字が多々あるかもしれませんが、ご了承ください

人は、たった一言でとんでもない勘違いをする生き物だ。



自分に“悪気が無い一言”が、相手は“悪意がある一言”と感じてしまっていることもある。

自分の“てきとうな一言”が、相手は“誠実で的確な一言”と感じてしまっていることもある。



これは、様々な要因があると思う。

私は、この勘違いが“相手が持っている自分の印象”で決まると考えている。

一度そう印象づけられてしまうと、よほどの事が無い限りそれは変わることが無い。



例を挙げてみよう


仮に、貴方が二人の人物に全く同じことを言われたとしよう。


片方は、貴方の意中の人

もう一人は、そこまで仲良くもない(むしろ嫌いな)人


そのどちらからも、本気で「好き」と言われたとしよう

意中の人であれば、天にも昇るような幸福を感じるだろう

だが、もう一人からそう言われれば、「ただの嫌がらせ?」や「冗談やめてよ」と言うだけだろう


では、二人の違いはなんだったのか?

私は、違いが生まれたの“貴方のその人に対する印象”だと考える。


いかに、イケメンで運動が出来、勉学に長けているとしても、自分が“気にくわない”と思えば、その人には好意を抱けない

逆に、正反対の人物でも、自分が“この人はいい”と思えば、その人に好意を抱くだろう。


違う例を挙げよう


ここに、二人の人がいる

彼は、スポーツ万能・容姿端麗の人格者である。

だが、彼は進んで口を開こうとせず、人と交流をとるのを苦手としている人間だった。


もう一人は、不良のような見た目である。

だが、彼は誰にも気さくに話しかけ、いつもおもしろおかしいことをする人間だった。



さて、どちらの人が人に好まれるでしょうか?

答えは簡単


人それぞれです



この二人の印象は、顔や能力で決まりません

その人が“いい人だ”と思えば、どちらもその人にとっては“好ましい人”だ





さて、ここで皆さんに質問を投げ掛けてみたい。






貴方は、自分の不用意な一言で大変な目に遭った経験・・・ありますか?



















*****************










メイドの案内の元、正門まで連れてこられた俺は、凄まじい怠惰を感じていた。

門につくなり、大量の鎧が俺に近寄ってきて、「勇者様!」だの「我らの希望!!」だのと、うれしそうに沸き立ったのだ。

幸い、メイドが人にらみすれば兵士たちは黙り込んだが、それでもざわざわとしていた。

メイドによると、こいつらはこれから街に繰り出して、市民の避難・魔物の撃退を目的に動く奴らのようだ。



(うるせぇ~・・・)



俺は、苦笑いを浮かべながら兵士どもの間を抜けていった。

それだけで、俺のやる気はかなりそぎ落とされ、もう部屋に帰っていたい気持ちになった。

だが、それを目の前に居るメイドが許してくれるはずも無い




「勇者様、鎧や武器はこちらにございます」


「・・・ああ」




メイドが示した先に、無数の鎧と武器が乱雑に置かれていた。

俺は、ガチャガチャとそれを適当に選んで、身につけた。

とりあえず、動きづらいのは嫌なので、胸当てに小手、それによく分からんがスネのところにつける鎧だけを選んだ。

武器は、先ほどの話を聞く限りだと、打撃武器は論外だ

なら、剣か?とも思ったが、切っても効果が薄そうなので、守りに徹する盾を選んだ。

それも、そのなかでも大きめの物を選んだ。

すると、メイドが俺を見て首をかしげていた。




「・・・なんだよ」


「いいえ・・・それでよろしいのですか?」


「魔物ってのは何でも吸収するんだろ?、だったら動きやすい方がいいだろ?」


「いえ、その・・・仰るとおりなのですが・・・」




歯切れの悪い反応をするメイドに、俺は若干のイライラを感じたが、どうせ戦争だの争いの初心者である俺には、何を言われてもよく分からない

何も言われないのなら、スルーしていいだろう。


準備がすんだ俺は、巫女の姿が見えないのに気がついた。

すると、これから戦うので着替えているとメイドから知らされた。

それを聞いた俺は、適当な壁に寄りかかりそっと目を閉じ、巫女が来るのを静かに待つことにした。


しばらくすると、一人の兵士がガシャガシャとうるさい足音を立てて俺の方近づいてきた。

俺は、巫女が来たのかと思い目を開けてみると、目の前にはでかい漢がたっていた。

漢は、俺よりいくらかでかいのか、まっすぐ前を見ている俺の視界には、鎧に包まれたでかい体しか見えなかった。



(なんだ、巫女じゃねぇのか・・・)



俺は、周りに興味を無くしたので再び目を閉じた。




「・・・おい、お前」


「・・・」


「お前だ!!!この勇者もどきめっ!!!!」




ドスのきいた低い声が響き、ザワザワしていたのが一瞬で静まりかえりかえった。


・・・おっ?

静かになったぞ?


俺は、やっと視線を上げた。

すると、そこには俺より頭二つ分ほどでかく、豪快なひげを生やしたかなり強面な漢が立っていた。

そいつは、顔を少し歪ませながら俺を見下ろしていた。

何をにらんでいるのかと思って、俺は少し周りをキョロキョロと見渡してみたが、周りには誰もおらず、間違いなく俺をにらんでいた。




「・・・俺のことを言ってるんだよな?」


「当たり前だ!!!この偽物が!!」




漢はそう言いながら、そのでかい顔をズイッと近づけてきた。

強面が近づいてきたので、俺は顔をしかめながら体を斜めに引いた。

すると、漢はさらに顔をゆがめた。




「お前、随分と余裕があるな・・・これから死にに行くとは思えないなぁ、若造」




漢が挑発的にそういうと、先ほど静かになったはずの兵士たちが、再びザワザワと騒ぎ出した。



なんだよ、せっかく静かになってたのに・・・

・・・しかし、このおっさんなんなんだ?

俺に突っかかってきてるが、何もした覚えないぞ?



俺は、目の前で俺を睨み付けている漢を見ながら、首をかしげて見せた。

すると、漢はフンッと鼻を鳴らし、近づけていた顔を離した。




「まあ、お前のような若造は・・・せいぜい後ろで怯えていろ」




・・・な、なんだとぉ?


まったくその通りだ!!!


やっぱり、俺みたいな奴は後ろで隠れてた方がいいよな!!!

でもな、俺にはおっかない監視様が居るんだよ・・・

出来ることなら・・・




「・・・出来ることなら、是非そうさえてもらいてぇな」




俺が素直な感想をつい漏らしてしまった。

俺は、慌てて自分の口を手で押さえ、素早くメイドの方を見た。

すると、メイドはこちらを見ていたが、それ以外特に何も無かった。



よ、よかった~

聞かれてなかったようだな。



俺は、心の底からホッと胸をなで下ろした。

すると、先ほどまで遠ざかっていた漢が、また俺の方を向いているのに気がついた。



なんだよ、まだなんかあるのかよ・・・

早くどっかいけばいいだろ



俺、漢は俺の方へ近づいてきて、今度は眉間に深いしわをつくっていた。




「貴様ぁ・・・俺様を馬鹿にしてるのか?」




今にも掴み掛かってきそうな勢いで、漢は俺にそう言ってきた。

俺は、めんどくさいのに絡まれた・・・と思いつつ、丸く収まりそうな言葉を探した。




「いや、俺が言ったのは本心だ・・・俺は、後ろで怯えているくらいが丁度いい」




俺がそういうと、周りにいた兵士が全員息をのんだ。

それは、目の前の漢も例外ではなく、両目を見開いて俺をじっと見ていた。



・・・なんだ?

変なこと言ったか?



俺は軽く周りをキョロキョロと見渡してみたが、その全員が俺を見ており、どいつもこいつも漢と同じような感じだった。

俺は、居心地の悪さを感じたが、巫女が来るまでここを動くわけにもいかないので、また目を閉じて、巫女が来るまで極力周りを気にしないようにした。

すると、すぐに小走りでこちらに近づいてくる音が聞こえてきた。




「お、お待たせしました!!」




巫女の声が聞こえ、少しホッとして目を開いた。




「・・・」




巫女の声が聞こえてきた方を見てみたが、そこにはブカブカな純白のローブに身を包んだ巫女がいた。

まるで、大人の服を着ている子供のようだった。




「勇者様、それでは参りましょう!!」


「・・・ん?、ああっ、お前動きずらくねぇかそれ?」


「だ、大丈夫です!!!、すぐ丁度良くなりますから!!!、とと、とにかく参りましょう!!!」




巫女は、恥ずかしそうにローブの襟を握ると、そのままローブを引きずりながら扉の方へ掛けていった。

すると、目の前で舌打ちが聞こえた。




「いいか若造、俺たちの邪魔にだけはなるなよ?」




まだいたのかと思いつつ、漢は俺に捨て台詞をはくと、そのままガシャガシャとやかましい音を立てながら、兵士中に消えていった。

結局、何が言いたかったのか分からないまま、俺は巫女の後を追った。











**********











「お二人とも、準備はよろしいですね?」




メイドは俺たちの顔をゆっくり見ながらそう問いかけ、俺と巫女はコクンと頷いた。




「では、私たちはこれから事態の収束を目指し、街へと向かってください。1~3班は住民の避難・4~5班は被害状況の確認・報告を私にしてください。残りの班は私とともに魔物の進行を食い止めます。勇者様と巫女様も各班のお手伝いをお願いします。では、行動開始」




スラスラと指示を飛ばすメイドに、兵士達は短く返事を返していき、次々と門をくぐって外へと飛び出していった。




「では勇者様、巫女様、私たちも参りましょう」




メイドにそう言われ、俺と巫女は一つ頷いて返事をし、兵士達の後を追うように門の外へ飛び出した。

その瞬間




きゃああぁぁあああ!!!!!!!



                       たすげでぐれぇえええぇぇええ!!!!!!



         クソ、今助けるぞ!!!



待て、そっちへ行くんじゃない!!!!

            ぎゃぁあああぁぁぁああああ!!!



                              他に生存者は!!!

                                  まだ家の中に!!!



オラオラ!!!!!さっさと運び出して次ぎ行くぞ!!!

                

                    応ッ!!!






な、んだこれ・・・


街に出た瞬間、人々が目まぐるしく移動し、叫び、怒鳴り声を上げていた。

ある者は助けを求め、ある者は人を助け、ある者はがれきに埋もれ・・・


おびただしい人、人、人・・・

せ、戦場ってこんなにやべぇのか!!!

お、俺はどうすれば



俺は、何をすべきか辺りをキョロキョロと見渡してみたが、どこもかしこも兵士と一般人が入り乱れ、駆けつけようとしても、俺より早く兵士が駆けつける。

俺は、ただその場に立ち尽くし、おろおろとすることしか出来ていなかった。


そんな中、一つの小さな白い塊が、人の間を縫ってどんどん離れていくのを目にした。

その塊は、どんどん人の波を抜けていき、俺の視界から何度も消えては現れを繰り返していた。




「み、巫女!!!ちょ、ちょっと待てって!!!!」




白い塊を見失う前に、俺は人の間をかき分けながら白い塊の後を追いかけた。
















**********















「クソ!!!結局見失っちまった!!!」




悪態をつきながら、俺は家の壁をがつんと殴りつけた。

それのせいで、手につけている装備がガシャンとやかましい音を立て、俺は顔をしかめた。



(クソ、あいつ足早すぎるだろ・・・)



ゼェゼェと荒い呼吸を繰り返しながら、身体を壁にもたれさせた。

ここまで、白い塊を必死に追いかけてきたせいで、通りには兵士も一般人の姿がなく、どこをどう走ってきたかも覚えていない。

もちろん、ここの土地勘も無い・・・



俺は今、完全に“迷子”だ。



見上げた空は、黒くよどんだ雲で覆われていて、夜だというのに星の一つも見えやしない。

見渡す限りの黒、クロ、くろ・・・切れ間なんてものは見当たらない。




「・・・寒いし暗いな」




誰も居ない空間で、ポツリとそう漏らした。

元の世界なら、綺麗な空と白い雲が木々の間を縫って見えてんだけどなぁー

遮るものの無い方が綺麗な空が見えるはずなんだが・・・


(・・・帰りたい)


俺はため息を吐きながら、パッと顔を上げてみた

すると、俺の目の前に真っ黒ででかい何かが“ベチャッ”と音を立てて降ってきた。

最初は、目を丸くしてそれを見ていたが、すぐにそれが何かを理解した。




「・・・ヴァぁアア!!!!!!」


「魔物っ―――うわっ?!」




形を取り戻した魔物は、すぐさま俺の方へバッと飛びかかってきた。

俺は、とっさに身体を屈め横っ飛びをして回避すると、魔物は俺が寄りかかっていた壁に衝突した。

半液状の魔物は、自らの身体辺りに散らしながら、石づくりの家屋の壁を見事に粉砕した。

がらがらと壁の残骸が魔物に降り注ぎ、それを次々とその黒い身体に取り込んでいった。




「クソ、マジかよっ?!」




悪態をつきながら体勢を立て直し、盾を構えつつ魔物から数歩距離を取った。

その間、魔物は建物のがれきをどんどん取り込み、ゆっくりとした動きで壁から出てきた。

すると、魔物の身体に妙な変化が現れた。


魔物は、常に形を変えているものだと思っていたが、今目の前にいる魔物は違った。

しっかりとした楕円形で、クロはクロでも少しだけ白く濁っていた。

個体差があると言っていたから、そういうものかもしれないが・・・


そんなことを考えていると、“ズズッ、ズズッ”と重苦しい音を立ててこちらを向いた。

そして、魔物は身体を小さくゆがませた。




(来るか?)




俺は、盾の影に身体を隠すように体勢を低く構え、いつ飛びかかって来ても対処できるようにした。




「・・・ヴァァアァアァアァアアアッッ!!!!!!!!!!」




雄叫びにも似た音を立てた魔物は、勢いよく俺の方へ飛んできた。

自分よりでかい物体が、ゴウゴウと風をうならせながら突進してきた。




(はやっっ!!!!)




とっさに正面構えていた盾をとっさに傾け、瞬間的に身体をかがませた。

その瞬間、全身に凄まじい衝撃が走りった。

今まで経験したことのない、激しい衝撃だった




「うっ!!!・・・っの野郎がぁあああッッ!!!」




倒れそうになる体を無理矢理引っ張り上げ、ぶち当たった魔物をそのまま斜め上方向へ飛んでいくよう、斜めに構えた盾で受け流した。

魔物は突進してきた勢いのまま、俺の頭上を飛び越えて遙か後方へと飛んでいき、地面に突き刺さるように地面に突き刺さり、綺麗に舗装されている道を数メートルほど滑って行った。




(な、なんだ今の威力・・・洒落にならねぇ)




受け流した時の格好のまま固まっていた俺は、遙か後方で地面に突き刺さっている魔物の姿を見て、ゴクリと生唾を飲み込んだ。


・・・正面から受け止めてたらやばかった

間違いなく、俺の体がこの道路みたいになってた・・・


茶色い地面が綺麗な半円型にえぐれているのを見て、俺はブルリと身を震わせた。




(まあ、何はともあれ・・・魔物は始末した。あとは、巫女と合流するできればーーーーー)



「危ないッッ!!!」

「うおっ?!」




声が聞こえたかと思うと、グラリと体制が崩れた俺は、よろよろとその場に片足をついてしゃがみ込んだ。

その瞬間、俺の頭上すれすれをものすごい早さで何かが通り過ぎていった。

そして、俺の目の前に黒い塊が突き刺さった。


あ、危ねぇぇえええ!!!!

すれた、髪の毛少しすれたぞ!!!


俺は、目の前の地面に突き刺さったそれを見た。

人の頭と同じくらいの丸い物体が、かなり深く地面に埋まっていた。


も、もしこれが俺に当たってたら・・・


想像してみてただけで血の気が引いた。

すると、背後で何かがもぞもぞと動いていいるのに気がつき、俺はゆっくりと後ろを確認してみた。




「ゆ、勇者様!!!ご無事ですかッッ?!」




そこには、必死な様子で俺の体を見る巫女の姿があった。

巫女は、最初にはぐれたときに比べ、所々擦りむいたり切り傷が多く、白かったローブも泥で汚れ、裾がぼろぼろになっていた。




「お前、ボロボロじゃ――――」

「ああ、腕と足がっ!!!、ちょっと待ってください」




そういうと、巫女は余りまくっている自分の袖を両手でつかんだ。

何をするのかと見守っていると、巫女はそのままビリビリッと袖を引きちぎってしまった。



・・・は?なんで?

何で破った?



訳が分からず目を白黒させていると、巫女は破った布を俺の手と足の傷口を布で縛ると、その布の上に手をかざした。

そして、空いてる方の手で懐から何かの小瓶を取り出すと、その中身を布に振りかけた。




「“偉大なる神 万物を創りし神よ 

  欠落せし哀れなこの身に

  完全なる姿を思い出させたまえ”...」




巫女が、何かよく分からんおまじないのような事を言うと、突然俺の傷がズキズキと痛み出した。

思わず顔をしかめたが、すぐに痛みは引いた。




「・・・なんだ?」


「私が治しました。確認してみてください」




そう言われ、俺は乱暴に布を取り払うと、そこにあるはずの傷が綺麗さっぱり無くなっていた。

流れていた血も綺麗さっぱり・・・

俺の血で汚れているはず当て布までどこも汚れた様子は無い。



(ど、どうなってんだ・・・?)



手に持った布と傷があった場所を交互に見ながら、俺は首を傾げた。


・・・これも、魔法ってやつなのか?

それとも、この世界では傷をこの方法で治すのが普通なのか?

っにしても自分の服切り刻むのは・・・普通なのか?

ん?そういえば俺のいた世界でも、応急処置で布を巻く方法もあったような気が・・・んん?


俺は布を見つめながら考えすぎて、自分の中の常識とこちらの世界の常識の境目が曖昧になりかけた。

だが、もしそれがこちらの世界の常識だとすれば・・・なぜ巫女は自分の傷を治さないのだろうか?

すると、巫女は自分の身体にも手を当ててなにやらブツブツと喋っていた。

よく見ると、巫女の手を当てている範囲の傷が次々と消えていっているのが見て取れた。



(・・・なるほどな。治さなかったわけじゃなくて、治す時間がなかったのか)



次々と自分の傷を治していく巫女から視線を外し、俺はキョロキョロと魔物が近くにいないか確認した。

先ほど俺に襲いかかってきた魔物は、地面に突き刺さったまま完全に動きを止めていたので、もう気にしていないが、もしかすると他の魔物を呼び寄せているかもしれない

俺は、建物の影・屋根の上などの死角を注意深く確認した。


すると




「た、助けてk――――――」

「ヴァヴァアアヴヴヴヴヴヴアァァァアァァアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」




一人の巨漢兵士が路地から飛び出し、それを追うようにして魔物が雄叫びを上げながら兵士に飛びかかった。

巨漢兵士は、かろうじてそれをかわすと、俺たちに気がいることに気がつき、こちらに向かってきた。

それをおうように、魔物も凄まじい早さで兵士の後を追ってきた。




「ひぃいッッ!!!、たたた助けてくれぇえええええぃぃッッ!!!!」




巨漢兵士は情けない叫び声を上げ、こちらに向かって必死に手を伸ばしていた。




「・・・おいあれ、俺に絡んできた奴じゃねぇか?」




よく見てみると、こちらに走ってきている巨漢は、城の門で俺に絡んできていた強面漢だった。

すると、向こうも俺に気がついたのか、すごく嬉しそうに手を振ってきた。




「ゆ、勇者様ぁぁぁぁああああ!!!!!!、ど、どうか哀れな私めをお助けくださいぃいいッッ!!!!!」




俺に絡んできていた漢と同一人物とは思えないくらい、情けない声で俺にそう言ってきた漢に、俺はゾッと悪寒が走った。


ま、マジで同じ奴かよあいつ・・・

態度変わりすぎだろ


漢を見て若干引き気味になりつつも、こちらに向かっている以上魔物をどうにかするしかない。




「おい巫女!!!、何か手はねぇかッッ!!!」


「・・・静水を魔物に取り込ませれば、消し去れるとッ!!」


「よしっ、やれっっ!!!」


「はいっっ!!」




巫女は、自分の懐に手を豪快に突っ込むと、静水が入った瓶を取り出し・・・


み、巫女さん?

・・・肝心の中身はどうしたのかな?


巫女が取り出した瓶には、本来入っているはずの静水が入っておらずただの空瓶になっていた。

巫女は、瓶のふたを開け、瓶を逆さにして中身を確認したり、瓶をのぞき込んでみたりしていたが、やはり中身がない。

すると、巫女がニッコリと笑顔を浮かべ俺の方を向いた。




「・・・迎え打つ手がありません、どうしましょうか?」


「・・・よし、おっさん見捨てて逃げるっっ!!!!」




俺は巫女の手を取って回れ右をして、そのまま全力で駆けだした

対抗手段が無いのであれば、魔物の相手をしても吸収されるだけだ

ここはとにかく城まで戻るしか無い

あそこなら、助けを求めるなり静水を取りに行くなり、なんとかなるだろう




「ゆ、勇者様に巫女様!!!!、どうかあの魔物をどうにかしてください!!!、私もう体力的に持ちませんっっ!!!」


「いや、対抗したくてもその手段が・・・てかおっさん足速ぇなっ!!」




いつの間にかおっさんは、魔物の目の前から俺のすぐ隣まできていた。


俺は全力で走っているにもかかわらず、こいつ追いついてきやがった。

さすが、騎士やってるだけあるな




「ゆ、勇者様、ちょっ、速い、です、もう、少し、ゆっくり」




俺のすぐ後ろで、苦しそうに声が途切れ途切れで聞こえてきた。

どうやら、巫女は何とか付いて来れているようだが、足がもつれたりしたら俺も転んじまう。


俺は、首だけを後ろに向けて魔物がどこまで近づいてきているのかを確認した。

魔物は、俺たちに負けず劣らずの速さで追ってきており、周りの家屋の屋根やがれきをどんどん吸収しながら来ているようで、少しだけ魔物の身体が膨れてきているような気がした。



(やべぇな・・・俺一人だったら何とかなるが、おっさんにガキがいるしな・・・)



俺は隣を走っているおっさんと、今にも転びそうな巫女の様子を見ながら何とか魔物から逃げ切る方法を必死に模索した。




「ぎゃっ!!!!」




突然、隣から間抜けな叫び声が聞こえ、俺はそちらを向いた。

すると、そこにおっさんの姿がなく、まさかと思う振り返ると、道ばたでうつぶせに倒れているおっさんがいた。


(こ、こけやがったあのおっさん!!!!!)


俺は慌てて急ブレーキを掛けた

その際、巫女に衝突されたが、そんなのほっといておっさんに駆け寄ろうとした。

そのとき、俺の視界にあいつが映り込んだ。




「ヴヴヴヴヴァァァ!!!!!!!!」




魔物が、すでにおっさんのすぐ後ろまで追いついていたのだ。


そんな、あり得ない

いくら早くても、今の一瞬で・・・




「ひ、ひいぃ!!!!!」


「ッ!!おっさんっっ!!!」




おっさんの叫び声で我に返った俺は、全速力でおっさんの元に駆けつけた。

そのあいだ、なぜか魔物は動かず、ただ低く気持ち悪い声でうなるだけだった。

そんな様子に少し疑問を感じつつも、俺はおっさんの元にたどり着いた。

そして、魔物とおっさんの間に割り込むようにして魔物と対峙した。




「おっさん、とっとと巫女のところまで走れッッ!」


「わ、わかりましたああぁぁ!!!!!」




悲鳴混じりの声で返事を返したおっさんは、ヨロヨロと立ち上がって巫女の方へ掛けていった。


・・・よし、あとは俺が逃げる算段だが


視線を前に戻し、まるで壁のようにたたずむ魔物を見た。

魔物は、相変わらず気持ち悪い声でうなるだけで動こうとしない。

だが、表面がグニャグニャと変形し続けており、時折人の腕や顔に似た形に変わり、すぐに形を失っていく



(近くで見ると、本当に気持ち悪いなこいつ)



俺は、盾越しに魔物をじっくり観察していると、とうとう魔物が動きを見せた。

突然、魔物の表面が激しく波たちはじめたのだ。




「な、何だっ!?」




俺は、慌てて数歩後ろに離れて魔物の行動を観察した。

徐々に波はおとなしくなってきたが、まるで何かにつぶされるように形をどんどん平らに変形させはじめた。

つぶれた分、こちらに魔物の体がせり出してきたのでさらに数歩距離をとった。

すると、突然魔物の表面が先ほど同様波たちはじめた。



(いったい何なんだ?、何をするきだ?)



予測できない魔物の動きを警戒しつつ、俺は順調に魔物から距離を離した。


すでに、30~40メートルほどは距離をとれたのではないだろうか・・・

このまま魔物に背を向け、走り出してしまってもいいのではにだろうか?

だが、さっきから魔物の動きが全く読めない、不用意に動けば攻撃をしてくるかもしれない


結局、俺は魔物の動きに注意を払いつつ逃げる機械を伺う今年か出来なかった。




「勇者様ッ!!」




突然呼ばれ、俺は首だけを後ろに向けると、パタパタとこちらに駆けてくる巫女の姿があった。




「なっ、お前逃げなかったのかっ?!」

「加勢しますっ!!!」



俺が言い終わるより速く、巫女は俺の所にたどり着くと、そのまま俺の隣に来た。

俺は何か言おうとしたが、駆けつけてきた巫女はそれを遮るように一冊の本を取り出した。

巫女はそれをパラパラとめくり、とあるページを開くと突然本がふわりと巫女の手から離れ浮かび上がった。



(う、浮いてる)



俺は巫女の目の前でふわふわとしている本を見て、半口を開けていると巫女の表情が一変した。

先ほどまでまっすぐ魔物を睨み付けていたが、今はまるで何か恐れを感じているような表情を浮かべていた。

俺も巫女同様魔物の方へ視線を戻してみた。

すると、魔物には変化が生じ始めていた。

動き事態は変わらないのだが、大きさがどんどん小さくなっているのだ



(どうした・・・体当たりか?)



俺は盾を構え、いつ襲いかかってきても対応できるように身構えた。

しかし、いつまで経ってもは攻撃して来る気配はなかった。

様子を見ている間も、魔物はどんどん小さくなっていき、ついに俺と同じくらいの高さになってしまった。



(いまなら・・・逃げられるか?)



俺は、体勢を保ったまま一歩足を引いた。


魔物に動きは・・・無い



恐る恐るもう一歩引いた



・・・動かない

これは、いけr―――――――





「ヴァアアアァァァァァアアアアアアアァァァァァァァァァアアアアアッッッッ!!!!!!!!!」





それは突然の出来事だった

俺が、身体を半歩ずらした瞬間、魔物が雄叫びを上げたのだ。

肌がビリビリとふるえ、両手で耳を覆わないと鼓膜がイカレてしまいそうな爆音だった。

すると、目の前で突っ立っていた巫女が突然その場で崩れ落ちた

慌てて駆け寄ったが、巫女はガタガタと震えながらただ魔物を見つめていた。

俺も、巫女につられて視線を魔物に向けた。

そして、俺の目に信じられないものが映り込んだ。


それは――――




「・・・人だと」




魔物が、“魔物で無くなっていた”ということだ。





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