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おじちゃんが見た世界  作者: 蛇炉
3/20

第三話 驚愕

誤字・脱字があるかもしれませんが、ご了承ください。

人は醜い。



他人を蔑み、他人を貶め、他人を受け入れない。

これは、他の生き物でも言える事だが、人間という生き物は特にこれが強い。



考え方が違う、見た目が違う、言葉が違う、生き方が違う。



こんな些細で当たり前のことで、人は簡単に他人を迫害し避けようとする。

何をするかわからないから、何を考えているのかわからないから、何を嫌うのかわからないから。



「相手を気遣う」という行動を口実に

人は人をを遠ざける。



相手のことをわかろうとせず、相手の考えを知ろうとせず、相手を理解しようとせず。


人は、ただただ自分の目が届かない方へと他人を追いやるのだ。







遠く、暗く、冷たく、閉ざされた
























孤独という名の闇の彼方へ







































*****************














「――――――ッ!!!」



俺は息苦しさから反射的に体を起こた。

目が覚めて最初に復活したのは音。

一定の間隔でうるさい音が聞こえてきた。

しかし、それが自分の呼吸音だと気付くのにそれほど時間は掛からなかった。

体からは、驚くほど汗が出ており、顔も、服も、今俺が寝ていた布団もぐちょぐちょになっていた。



「俺は、うなされてたのか・・・?」



額の汗を乱暴に拭いながら、俺はビシャビシャの布団から這いだした。

そして、枕元に置いてる目覚ましを掴み、針が指し示す数字を見た。

反射的に頭の中で数字を時間に変換する。




AM8;55




(もうそんな時間になっていたのか・・・。)


俺は時計を元の位置に戻し、のっそりと体を起こした。

その時、びしょ濡れになっている服が体に張り付き、とても不快な思いをした。



「・・・風呂入るか」



俺はそう呟くと、フラフラとした足取りで階段を下り、風呂場へと向かった。

しかし、妙なことに風呂場へ向かうのに随分時間が掛かった。

まだ頭がはっきりと働いて無いせいなのだろうか・・・?

そんな事を考えているうちに、風呂場へ着いた。

俺は湯船のフタを開けた。


(確か、昨日の残り湯が・・・。)


俺は無造作に、手だけを湯船につっこんでみた。

水が残っていれば、手に冷たい水が俺の手に当たる。

無ければ、湯船の底に手は到達する。

しかし、俺の手に触れた感触はそのどちらでもなかった。




もにゅっ




「・・・もにゅっ?」



俺は首を傾げながら、手に当たったそれを適当に動かしてみた。

しかし、いくら動かしても水らしい感触はない。

それどころか、俺の手が当たるのは生暖かいもにゅっとしたものしかない。



「なんだこれ・・・?」



俺は不審に思い、手を湯船から抜き、中を覗き込んでみた。

すると、そこには自分の目を疑いたくなるようなものがあった。


・・・いや、いた。




「ヴヴヴヴェェァァァ・・・・」




ゼリー状の真っ黒な物体が、はき出す様な音を立ててうごめいていた。




「・・・うわっ、何これ」




俺は驚きすぎて、妙に落ち着いたリアクションになっていた。

すると、ゼリー状の物体がウネウネと波のように動き始めた。

動きは徐々に激しくなり、グチョグチョと嫌な音を立てている。



「うっわ・・・本当に何これ」



俺はとりあえずフタを閉じようと、ゼリー状の物体に背を向けた。

その瞬間




「ヴギギギギギッ・・・・!!!」




奇妙な音とともに、ゼリー状の物体は湯船から俺目掛けて飛び出してきた。



「はあっ!?ちょっ、まっ!!!」



俺は咄嗟に手に持っていたフタを盾に、ゼリーから身を守った。

ゼリーは、ビチャッと嫌な音を立ててフタに衝突した。

そして、フタからどろどろと黒いゼリーがボタボタと床へ垂れ落ちた。



「な、なんなんだこのゼリーは・・・」



俺はフタにこびりついたゼリーを見ながらそう呟いた。

すると、遠くからドタドタと騒がしい足音が聞こえてきた。




「離れてくださいッ!!」




慌てた様子で姿を現したのは一人の女だった。




「・・・誰だお前?」


「早く!!、・・・いいから盾捨ててくださいッ!!」


「は?」




突然何を?



俺が首を傾げた瞬間、突然両手に生暖かいものが触れたのが分かった。

俺は慌てて両手を見ると、フタを覆うようにゼリー状のものが俺の腕にまとわりついてきていた。



「うおっ!!、きめえぇ!!」



俺はフタを放り投げようと腕を思い切り振ったが、ゼリー状ののもが接着剤の様な役割をしてフタが全く離れなかった。



「な、なんだ?!、離れねぇ!!!」


「そのままジッとしてくださいッ、私が何とかします!!」



叫ぶように女がそう言うと、女は所へ駆け寄ってきた。

そして、懐から妙な小瓶を取り出すと、それを思いっきり振りかざし俺の手に叩きつけた。

それにより、中に入っていた真っ白い液体がゼリー状のものにかかった。




「グヴェギゲギャバヴァアアアアァァァァァァアアアッ・・・!!!!!!」




悲痛な叫びとともに、白い液体がかかった箇所から煙が出始め、ゼリー状のものがすごい速さで溶け始めた。

耐えかねたのか、ゼリー状のものは一カ所に集まり、激しく形を変え始めた。

何が始まるのかと見ていると、突然ゼリー状のものはピタリと動かなくなった。

それを見て、女はまた小瓶を取り出し、今度は叩きつけずに中身の白い液体だけをかけた。

すると、ゼリー状のものは激しい溶解音とともに跡形も無く消えてした。



「溶け・・・た?」


「違います、消滅させたのです。」



女はそう言うと、振り返って俺の方を見てきた。

すると、女突然目をカッと見開いた。

そして、数度瞬きをすると目の色が変わった。

それは、まるで獲物を狙う肉食獣のような鋭いものだった。

俺はそんな女の目を見て、身の危険を感じた。

すると、女は数歩俺の方へ近づいて来た。




「ま、待て!!話せば分かる!!」




俺は後ずさりながら、そういった。

しかし、女は止まるどころか徐々に歩く速度を上げていた。

しかも、女は俺に近づくにつれ、口がつり上がっていき、やがて綺麗な三日月になった。




「ままま、待て、待てって!!!。さっきのは本当に事故で、俺は何もしてない!!。」



俺は焦燥感に駆られ、口早にそう言った。

しかし、女は止まる気配が無く、むしろ何か言う度に表情が不気味に歪んでいった。

俺はそれを見て瞬間的に直感した。






捕まったら殺られる






しかし、そう思った瞬間だった。

背中に堅いものが当たったのが分かったのは

俺は、横目で背後にあるものを確認した。

そこには、やはり風呂場の壁があった。

俺は他に逃げ道は無いか探したが、此処は風呂場の隅。

右にも左にも逃げられない。



(し、しまった!!、逃げられない!!)



俺はそう思った瞬間、目の前に迫ってきている女が異様に怖くなった。

ジリジリと距離と詰めてくる女

俺は冷や汗をダラダラ流しながら、必死に考えた。


(逃げ道・・・逃げ道・・・いや、とにかくこいつから離れる方法をっ!!!)




「・・・ああ、すばらしい」




突然口を開いた女は、ユラユラと手を持ち上げ、俺の方へ伸ばしてきた。




「ひぃっ!!、た、頼む待ってくれ!!!」


「ずっと・・・この日が来るのをお待ちしていました。」




女は、既に俺の目と鼻の先まで近づいてきていた。

すると、女は懐に手を忍ばせた。


(ああ・・・ダメだ・・・)


俺は両目をギュッと瞑り、来るべき痛みに備えた。

しかし、いつまでたっても痛みは来なかった。

俺は不信に思い、ゆっくりと目を開いた。




「・・・あれ?」




目を開いた先に、女の姿はなかった。

俺はキョロキョロと周りを見てみたが、何処には女はいなかった。




「私は・・・」


「うおっ!!下?!」




俺は慌てて声のした方を見ると、そこには綺麗な土下座をした女がいた。




「よくぞ・・・よくぞっ!!、お目覚めになってくれましたっ!!」




がばっと顔を上げてそう言った女は、既に涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。

そして、そのまま両手で顔を覆い、ポロポロ泣き始めてしまった。

俺は訳が分からず、目を白黒させた。




「――――さま~!。いきなり走りだして、どうしたんですか?」




そういって突然、風呂場の入り口から女がひょっこりと顔を出した。

そして、俺と土下座してる女を交互に見た。




「・・・え~と、これってどういう?」


「俺にも、なにがなにやら・・・」




俺は両手の平を上に向け、肩をすくめて見せた。

すると、土下座してた女が立ち上がり、入り口にいる女のほうを見た。




「ミイナ、今すぐ伝令をお願いします。“我らの希望が起きられた”と」




それを聞いた女は、顔に驚愕の色を浮かべ俺を見た。

そして、「かしこまりました!!」と頭を下げるとすごい速さで廊下へ出て行った。




「すみません。あれに悪気は無いのです。どうか、お許しください。」



そういうと、女は俺に深く頭を下げてきた。

俺は慌てて顔を上げるように言うと、女は顔を上げた。

しかし、その顔には眩しいくらいの笑顔を張り付いていた。




「ああ・・・なんてお優しいのでしょう。さすがです。」




女はうっとりしたような顔でそういうと、また頭を下げた。

今度は先ほどよりも浅いが、わずかに角度がずれただけで大した変化は見られない。



「では、参りましょう?」



女はそういうと、右手を差し出してきた。

俺は、どういうことか困っていると、女は何かに気が付いた。

すると、クスクスと笑い俺に言った。



「大丈夫です。私はそこまで脆くはありません。普通に触れていただいて結構ですよ?。」



そういって女は、俺の手を両手包むように握ってきた。

突然そんなことをされ、俺は反射的に手を振り払ってしまった。

やってしまったと思い謝ろうとしたが、女は一瞬だけ驚いたような顔をしすぐに笑顔に戻っていった。




「手をつなぐのはイヤなのですね・・・では、私が先導いたしますのでついてきてください。」




女はそういうと、ゆっくりとした足取りで先に風呂場を出て行った。


(なんだ?どういうことだ?)


俺は頭の上にはてなマークをたくさん浮かべられそうな顔をしたが、とりあえず付いていくほうがいいだろうと女の後を付いていった。














===========





女の後を付いて行く俺は、ここが自分の家ではないことに気が付いた。

確かに要所要所は俺の家に似ているが、廊下の長さ、扉の大きさ、部屋の数、そして一番の違いはここが木造建築ではなく、ねずみ色をした真四角の石でできていることだ。

さらに、途中にいくつかある窓の外を見てみたが、俺の目に映るのは緑豊かな木々ではなく荒れ果てた荒野とボロボロの家々だった。

風呂場に行くときに見ているはずだが、寝ぼけていたのかまったく気が付かなかった。

そんなことを考えながら歩き続けていると、不意に女が一つの大きな扉の前で止まった。

そして、俺のほうを振り返ると「少々お待ちください」といって扉を少し開けて中に入っていった。

俺は嫌な予感がした。



「・・・このでかい扉もしかすると、あれか?」



俺はゆっくり首を上に上げながら扉を見た。

扉は天井近くのところまであり、軽く5メートルくらいはあると思う。

しかも、扉の装飾が明らかに他の扉と違う。

扉のふちに金色の波みたいな模様、一定感覚ではまってる宝石みたいな石、扉のど真ん中に何かのマークが大きく描かれていた。



(この扉、妙に豪華なんだが・・・)



俺は扉をジロジロ見ながらそう考えていると、扉が重たそうな音を立ててわずかに動き、わずかにできた隙間からさっきの女が出てきた。



「お待たせしました。どうぞ、お入りください。」



そういって、女は先ほどよりも広めに扉を開け、部屋の中に入るよう促してきた。

正直入りたくないが、断る理由も無い。

俺は恐る恐る部屋の中に入る。

そして、部屋の中を見て、俺の予想が的中したのが分かった。

部屋の中は、普通じゃ考えられないくらい広く、学校にある体育館の何倍も広い。

天井や壁のあちこちには、高そうなものがキラキラのケースみたいなのに入れられて飾ってある。

そして、俺の正面には、祭壇のようなものがあり、その頂上には、二人の鎧を着た人物と、その間にでかい椅子が置かれており、そこには一人の人間がどんと腰を据えて座っていた。

もちろん、祭壇も椅子も、座ってる人までもがキラキラの装飾が施されていた。


(うわっ・・・目が痛い)


俺は思わず目を細めた。

すると、ガシャンッと背後で音がした。

振り返ってみれば、丁度さっきの女が扉を丁寧に閉めていた。

そして、女は体をこちらに向けると深く頭を下げた。

すると、祭壇の頂上の椅子に座ってる人が口を開いた。



「よくぞ来た。さあ、もっと近くに来い」



そういって椅子に座ってる人は、手招きをした。

俺は偉そうなそいつの態度にムッとしたが、俺の予想が正しかったら反抗しないほうがいいと思い黙って祭壇の近くまで移動した。

すると、椅子の両端にいる鎧の二人がジロジロと俺を見てきた。



「・・・フムフム、ナルホドナ。コイツガワレラノ希望トナルノカ」


「なんと・・・貧弱でヒョロそうなですな~(笑)」



片方はあごを撫でるようにそういい、もう片方は思いっきりバカにしながら笑いやがった。



「アイン、ミヅチ止めろ。口を慎め」


「ハッ!」

「御衣(笑)」



椅子の人に言われ、二人は短い返事を返した。

・・・相変わらず笑ってるけどなこいつ。

俺が笑ってるほうを見ていると、椅子の人が口を開いた。



「悪い奴らではないんだ・・・大目に見てくれ」


「・・・いいけどよ。誰だお前?」



俺は単刀直入に聞きたいことを言った。

すると、入り口のところにいる女がピクリと体を震わせ、鎧二人がすごい勢いでに睨み、腰にある剣の鞘えと手を移動させた。



「止めろといっている。二度言わせるな」



すると、鎧の二人はゆっくり鞘から手を離し、元の格好へ戻った。

しかし、俺への視線は変わらず警戒をしていた。


(あ~、この感じからすると・・・やっぱりこいつって)


俺は一連の反応から椅子の人がどんな奴なのか大体の予想をつけた。



「申し送れたな。私の名は“アル・セフィール・バルカ・ヴェコ・ガリセウス三世”だ。ここの自治をしている。」


「・・・はぁ~、やっぱりか」



俺はクソ長い名前と役職を聞いて、がっくりと肩を落とした。

やっぱり、王様的な奴だったのか・・・



「オイキサマ。ガリセウス様ニ向カッテソノ態度ハナンダッ!!」


「さすが、私たちの希望様だね(笑)」



片言のほうが今にも飛び掛ってきそうだった。

もう片方の鎧は今にも腹を抱えて笑い出しそうだった。



「よいといっているだろうッ!!、口を挟むなッ!!」



王様的な奴が突然大声でそういうと、二人はピタリと口を閉じた。

そんな二人を見てため息を吐いた王様的な人(もうアルでいいわ)は、俺のほうを見て再び謝罪した。



「すまない。最近二人は気が立っているのだ。許してほしい。」


「だから、別にいいって。俺も悪いしな。」



俺は適当に手を振って返事すると、二人はピクリと体を震わせたが、今度は何もしてこなかった。

それは感じとったアルは、少し不満そうな顔をしたがすぐに無表情に戻り俺のほうを見た。



「それで、“おじちゃん”だったか?」


「ブッ!?」



突然あだ名を呼ばれ、俺は思わずふきだした。

俺はアルをにらみつけながら言った。



「誰から聞いたか知らねぇけどな、俺の名前は――――」


「だから、“おじちゃん”だろ?」


「だから違うって!!俺の名は“大路智明おおじちあき”だ!!」


「・・・?、あってるじゃないか。」



アルは首を傾げながらそう言っていた。

こ、こいつら・・・耳おかしいんじゃねぇか?

俺はなおも反抗をしようとしたが、アルが片手を挙げるとさっきか笑いやがるほうの鎧が一歩前に出てきた。

そして、横に下げている袋から一つの巻物を取り出し、それをアルに手渡した。



「では、これより任命式を始めようか」


「は?、任命?、何のだ?」



俺はそういったが、アルは俺を無視して巻物を縦に広げ、それを読みはじめた。



「我らの前に良くぞ参った。我は汝の力を信じ、汝の人柄を信じ、ガリセウスの名の下に、我は“勇者・・”の力になることを誓おう。セグミミス」



アルは長々と仰々しい感じで分を読み、最後に片手を挙げ、あいてる手を胸に当てわけの訳の分からないことを言った。

そして、俺はさっきの文に不吉な単語が混じっていたのを聞き逃さなかった。



「待ってくれ・・・今、俺のことを“勇者”とか言わなかったか?」



聞き違いであってほしい。

お願いだ、違うって言ってくれ。

しかし、アルは不思議そうに俺を見ると首を縦に振った。



「確かにいったぞ、“勇者 おじちゃん”よ」






・・・




・・・・・・




・・・・・・・・・・








なんだとッッ?!





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