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おじちゃんが見た世界  作者: 蛇炉
2/20

第二話 悪夢

誤字・脱字があるかもしれませんが、ご了承ください。




『僕が作った異世界をあげるよ』


 



メリアスが突然口に出したのは、普通じゃ到底考えられないような言葉だった。


異世界を・・・くれる?


俺は言葉の真意を探ろうと、メリアスに視線を向けた。

メリアスは特に変わった様子はなく、嘘を言っている様にも見えない。

かといって、それが本当なわけがない。

仮にも一つの世界だ。

そんな、ありえないものをこんな簡単にもらったりできてたまるものか。


俺は、色々な考えを頭の中でめぐらせながら何か納得しそうな考えを探った。



「・・・あの、おじちゃん?。そんなにジロジロ見られると・・・その・・・」



メリアスはそういって体をもじもじと動かし始めた。

何事かと思ったが、すぐに自分に非があることに気が付いた。



「ああ、悪い悪い。でも、ありえねぇから。」



俺はそれだけ言うと、また考えをめぐらせた。

隣でわいわい何か言っている声が聞こえるが、気にしない気にしない。



「話し聞いるのおじちゃん!!、マジで度肝抜かせるよ!!!」



何を言ってるんだこいつは。

あ~うるせぇうるせぇ



「まったく、これだからガキは」



俺は思わず、口に出してそういってしまった。

その瞬間、何処かでブチリッと何かが引きちぎれる音が聞こえた。

そして、どこからかすさまじい殺気があたりに充満し始めた。


(な、なんだ?)



「ガキガキうるさいな。」



すると、すごく近くで身の毛もよだつ様な恐ろしい声色の声が聞こえてきた。

俺は反射的に身をかがめ、周りへの警戒を強めた。

そして、メリアスに注意を促そうと振り向いて、やっと声の主が誰かわかった。



「そんなに私はガキですか・・・?」



メリアスだった。


(うわお、マジですか。)


俺は少し安心したが、メリアスの発する殺気が尋常じゃない。

メリアスの髪の毛は、怒りで逆立っており、目は相手を射抜くような鋭い物になっていた。

さっきまでの明るかった女の子はいない。

ここにいるのは、人間の皮を被った鬼だ。



「私だってね、本当はこの姿気にしてるのよ。こんなちんちくりんで無能な子供の姿なんて。」



メリアスは、ぶかぶかの作業着の襟をつまむと、それをひらひらと揺らしながらそういった。

すると、メリアスはため息を長めに吐き出だすと、ブカブカの裾を引きずりながら歩き始めた。



「いいわ、百聞は一見にしかずね。ちょっと着いて来て。」



そういって、メリアスはこれまたブカブカの袖をパタパタと振って手招きをしてきた。

俺は黙って付いていくことにした。


・・・いや、正確には黙って付いて行くことしかできなかった。

本能で、断ろうものなら恐ろしいことが起こりそうな気がした。


メリアスは、ヒョコヒョコという効果音が丁度よい感じの歩き方をして森の中をどんどん進んでいく。

距離が離れるぎると止まってこちらを振り返り、俺がある程度の距離まで追いつくとまた歩き始める。

止まっては待ち、また歩き出す。

それの繰り返しだ。



「きゃいっ!!」



ビタンッ!と大きな音を立ててメリアスが転んだのが見えた。

メリアスは、しばらくそのまま固まっていたがゆっくりと立ち上がると俺のほうを見て大声を張り上げた。



「ど、どうよ!!おじちゃんが追いつけるように待ってあげたよ!!」



その声は、涙を必死に堪えているのかわかった。


まあ、あれだけ豪快にいったら泣くよな。

やっぱ、服乾くの待ってりゃよかったな~。


俺はそんなことを考えながら、メリアスの後を付いて行った。



「ぴゃっ!」



あ、また転んだ。

うわ~、あれは痛い。



「うぅ~、泣いてな、なん、なん、んい、いもん!!!」



メリアスはそういうと、目をごしごし擦りながらまた進み始めた。


(・・・見てて可哀想になってくるな)


俺は少しだけそう思っていると、今度は切り株に引っかかって転倒した。

メリアスは倒れたまま動かなくなり、やがて、微かに鼻をすする音とシャックリの音が聞こえてきた。

俺は、そんなメリアスを見てとても心配になってきた。


(・・・迷うんじゃね?)


そう、森で一番怖いことは迷うことだ。


・・・あ?メリアス?

しらん、勝手に転んで泣いてんだろ?

そんなことより、いまどの辺だ。

結構歩いてきたが・・・


俺は、メリアスそっちのけで空を見た。

しかし、ここは木々が密集しており、日の光がまったくといっていいほど届いていなかった。

俺の体内時なら昼飯時って感じがするが、なんせ朝飯を食ってないからあまり当てにできない。


(せめて太陽が見えたらな・・・)


俺は空を覆っている木々をにらみつける。

すると、突然服を引っ張られ、俺はそのままひっぱられたほうを見た。

そこには、鼻と目を真っ赤にさせてシャックリをしているメリアスがいた。



「おじちゃん・・・おんぶして。」


「嫌だめんどくさい。」



すると、メリアスは顔をゆがめて唸り声を上げ始めた。


うわ、脅しだ。脅してきやがるこのガキ。


俺は今にも泣き出しそうなメリアスをなだめるため、とりあえず頭に手を置いた。

そして、置いた手をゆっくり動かした。



「わかったわかった。おんぶしてやるから泣くな。」



そういって頭から手を離すと、俺はメリアスに背を向け、しゃがみこんで背中を差し出した。

すると、メリアスは嬉しそうに俺の背中に飛びついてきた。



「ちょっ!!おま、危ねぇな。」



メリアスがしっかりしがみついたのを確認し、俺はゆっくり立ち上がると歩き出した。



「おじちゃん!そこ真っ直ぐね!!」


「はいはい。」



メリアスは俺にどんどん指示を飛ばし、俺はそれにしたがってどんどん森の奥に入っていった。



「へへへ~」



突然背中が生暖かくなり、メリアスの笑い声が聞こえてきた。

俺はあまりの気持ち悪さにブルリと体が震えた。



「お前、何して―――。」


「おじちゃんの背中・・・あったかいよ」



そういってメリアスは、俺の背中に顔を当ててゆっくり動き始めた。


・・・何なんだ一体。

本当に、人間ってわからないぜ。


俺はそんなことを考えながら、淡々と歩き続けた。














=================














「あ!、あれあれ。あれだよおじちゃん!!。」



メリアスは身を乗り出して前方を指差した。



「暴れんな!落とすぞ!!」



俺は悪態をつきながら、メリアスが指差した先を見た。



「・・・この場所は」



俺は自分の目に映ったものを見て体が硬直した。

一瞬、見間違いかとも思ったが間違いない。

そこには、俺が異世界に言ったときに放り込まれた洞穴があった。

俺が止まったのを見計らって、メリアスは俺の背中から飛び降りると、洞穴のほうを指差した。



「この先だよ!!、さあ早く行こっ!!」



メリアスは俺の手をグイグイ洞穴のほうへ引っ張ってきた。

俺はメリアスの手を乱暴に振り払い、目の前に広がる洞穴を睨み付けた。



「・・・おい、どういうことだ。」



自分でも驚くくらい低い声が出た。

俺のその言葉に、メリアスは表情一つ変えることなく返事した。



「だから、僕が作った異世界をあげるんだよ。そのためには、まず世界を見てもらわないと。」



メリアスはそういって再び俺の腕をつかもうと手を伸ばしてきた。



「触るなッ!!」



俺は手を振り払い、怒鳴り声をあげた。

メリアスは振り払われた手をなでながら、身を縮めてこちらを見た。



「・・・どうして?、なんでそんなに怒ってるの」



メリアスの顔には怯えの色がはっきりとあった。

おそらく、俺はそうとう怖い顔をしてるんだろう。

だが、俺自身にもなぜここまで怒りを覚えているのかわからない。


ただ、この場所に居たくない。

ただ、ここには二度と近づきたくない。


そんな気持ちが俺の中を埋め尽くしている。



「・・・やっぱり、まだ怒ってるんだね。」(ボソリッ)



メリアスがボソリと呟いた。



「・・・怒ってるだと?どういうことだ。」



俺は問い詰めるようにメリアスに聞いた。

しかし、メリアスは暗い顔をしてうつむくだけで何も言わない。



「おい!メリアス!!」



俺はメリアスの肩をつかもうと手を伸ばした。

・・・いや、伸ばしたはずだった。






ガシッ!!






「は?」


「だったら!!無理やり連れて行くまで!!!」



メリアスがそう叫んだ瞬間、右手が引っ張られ俺の体が前のめりになり、そのまま視界が真っ暗になった――――。



























===============






















俺の望む世界は、誰もが平和に暮すせかい。

楽しいことは分け合い、ともに笑顔を浮かべる。

苦しいことにはみんなで協力し、助け合って乗り越える。


それは、誰もが一度は考えたことのあるかもしれない世界。

だが、それは不可能だ。


どんなに笑いが絶えなくても、一方で涙を流し悲しみにくれる人はいる。

いくら苦しみから逃れても、一方で同じ苦しみを味わう人がいる。

楽しいことがある反面、絶対にあるのは苦しいことだ。


人が生きるということは、それらを乗り越えていくということだ。

どうして、人はこんなにも生きずらいのだろう・・・














――――――それは、誰にもわからない。




















「はあっ!!!」



俺は叫びにも似た声を上げて飛び起きた。

額には汗が滲み、息も荒くなっていた。

俺は深呼吸しようと顔を上げた。

そして目の前に広がっているものを見て、心臓が跳ねた。

そこには、薄暗くて何もない世界が広がっていた。

あたり一面、木や草、風もない、生き物の気配すら感じない。

ただの平野、それもとても荒れ果ててしまっている荒野だ。

俺は自分の目を疑った。


(ここは・・・)


俺は立ち上がり、辺りを見渡した。

しかし、どっちを向いても何もない。



「間違いない。ここは、俺が前に来た異世界。」



俺はそれを口にした瞬間、得体の知れない恐怖を感じた。

勝手に体が小刻みに震え、奥歯がガチガチと音を立て始めた。

俺は自分の肩を抱え、必死に落ち着こうとした。



「大丈夫だ、大丈夫だ、大丈夫だ、大丈夫だ、大丈夫だ、大丈夫だ・・・」



自分を落ち着かせるために何度も何度も一つの単語を連呼した。

前に来たときは、少しの好奇心があったからなんともなかったが、ここがどういうところか知ってしまった今は、恐怖心だけが俺の体を支配していた。



「くそっ!、冗談じゃないっ!!なんでまたこんなところに!!」


「そんなにいやだったの?いい世界だと思うんだけどな~」



突然近くで聞き覚えのある声が聞こえてきて、俺は辺りを見渡した。

しかし、視界には人の姿は映らなかった。



「・・・は、はは。ヤバイな、とうとう幻聴までしてきやがる。」


「いやいやおじちゃん。幻聴じゃないから、それ紛れもなく僕の声だから。」



まただ!!

メリアスが近くにいるのか!!

俺は再び周りを見たが、結果は先ほどと変わらなかった。



「こっちだって、ほらちょっと上向いて。」



俺は声に従い、まっすぐ上を向いた。

しかし、上にはどんよりと薄暗くて真っ黒な雲が空を覆っているのが見えるだけで、メリアスの姿はない。

俺は眉を顰めて、目を細めたり逆に見開いたり色々してみたが、やはりいない。



「・・・おじちゃん。もしかしてふざけてる?」


「メリアスか!!どこにい―――。」

「ここだけど?」



俺が叫ぼうとしたら、突然目の前に誰かの顔が現れた。

俺は突然出てきたことに驚き、思わずしりもちをついた。



「っ~~~!!!イテェ・・・」


「おじちゃん、何してるの?」



俺は自分の尻をさすりながら何とか立ち上がり、文句を言おうとメリアスのほうを見た。

しかし、俺の目に映ったのは見知らぬ女だった。


(あいつ、俺のことからかってんのか?)


俺は辺りを見渡し、メリアスの姿を探した。



「メリアス!!どこ行きやがった!!出て来い!!」


「何言ってるのさ、僕はさっきからここにいるじゃないか」


「お前じゃねえよ!!」


「だから、僕がメリアスだって!!!」


「はあ?」



俺は眉をひそめた。


何言ってやがるこの女。

いきなり出てきて、自分がメリアスだと?

ありえねえ、まず年齢が違いすぎるだろ。

どう見てもお前俺と同い年くらいだろ。


俺は心の中で目の前にいる女い色々突っ込みを入れた。


・・・まあいいか、何はともあれ人に会えたんだ。

そうだ!メリアスのことこいつに聞けばいい!!


俺は手をポンッと叩くと早速聞いてみることにした。



「すまないが、この辺で7歳くらいのブカブカの服着たチビを見なかったか?」



俺がそう聞くと、女は眉毛をピクリッと動かし、一瞬だけ険しい表情をしてすぐに呆れたような顔になり、俺を見ながら大きなため息を吐いた。


何だこいつ?今の特徴じゃわかりづらかったのか?



「あのさ、おじちゃん。僕確か言ったよね?あの姿は仮の姿で気に入ってないんだって・・・しかも7歳児のチビってなんなのさ、あれでも一応年齢は8歳だよ。それに、ブカブカだったのは作業着がおじちゃんのだったからでしょ?」



女は愚痴にも似た言葉をスラスラと俺に向かっていってきた。


な、なんだ?

こいつ何者だ!!


俺は何歩分か女から距離をとる。

そんな様子をみた女は、またため息を吐き出した。



「しかたないか。まったく、おじちゃんは用心深いね。」



女はそこまで言うと、突然身をかがめ、そのまま後方に飛び上がって空中で綺麗に一回転した。

地面に着地すると、そこに女の姿はなく、代わりにメリアスが自慢げな顔をして立っていた。



「メリアス!!は?!、どっから・・・」


「だから、さっきのグラマラスでかわいい女の子が僕だって。」



俺は目を白黒させながらメリアスを見た。


わ、訳がわからない。

さっきの女がメリアスだと?

こんなクソガキがさっきのクソ女?


俺はメリアスをジッと見ながらさっきの女との共通点を探した。

まず、髪の色。

メリアスは黒髪だったが、さっきの女は少し茶色かったよな・・・。

仮に、同一人物だとして、今の一瞬で変色したってのか?

ありえねえ、物理的にもありえねえ。

他はどうだっけ?

そうだ、服装。

メリアスは俺が貸してる作業着を着てる、さっきの女は確か・・・作業着着てたな、うん。

どっかで見たことある作業着着てると思ったが、ずいぶん小さそうだったよな、特に・・・いや、思い出すのやめよ。

他にはなんかあったか?



「ジロジロ見てるけど何?できれば元に戻りたいんだけど。」


「いや、お前とさっきの女の共通点を探してるんだが・・・作業着しか一致してるところがない。」


「待ってるのめんどくさいから戻るね。」



メリアスはそういうと、指をパチンっと鳴らしてみせた。

すると、メリアスの体は見る見る大きくなり、さっきの女が姿を現した。



「ま、マジかよ・・・」


「はあ、おじちゃんって本当に人を信じない人だね。」



女(メリアスか。)は、自分の額に手を当ててやれやれと首を振った。


(嘘だろ、こんな女がメリアス?)


俺は女に視線を向けてみたが、あまり見ることができなかった。

・・・くそ、ちゃんとした服貸すんだったぜ。


今のメリアスは、作業着が肌にぴったりと張り付いたような状態になっており、体のラインがはっきりとわかった。

いくら俺の服とはいえ、俺が子供のころの作業着だそりゃ小さいに決まっている。


俺はなるべくメリアスの顔以外を見ないように気をつかいながら話を進めることにした。



「メリアス。お前、何で俺をこの世界に引きずり込みやがった。」



俺がそういうと、メリアスは俺のほうを見てにやりと笑った。

まるで待ってましたといわんばかりの笑みだ。



「それは当然、この世界をおじちゃんにあげるためだよ。」


「説明になってない。それに、俺に渡すだけなら俺をここに呼ぶ必要はないだろう、口約束でも契約書にサインだの他にも色々あったはずだ。」



俺がそういうと、メリアスはまた嬉しそうににやりと笑った。



「いやいや、おじちゃんにはそんなことより直接見てもらったほうがいいと思ってここにつれてきたんだよ?それに、本人が来ないと意味がないんだ。」



メリアスは数歩俺のほうに近づいてきた。



「おじちゃんがこの世界を正しい方向へと導くんだから・・・ね?」



そういってメリアスは俺の頬に手を当ててやさしくなでてきた。



「どういう意味だ。・・・やめろ。」



俺はメリアスの手をつかみ、俺の顔から引き剥がした。

すると、メリアスは突然俺に寄りかかるように体を近づけてきた。

俺は一瞬だけ心臓が飛び跳ねた。


(なっ?!、何だこいつ!)


俺は、引き剥がそうとメリアスの肩をつかもうとしたら、とんでもないことをメリアスは口にした。



「おじちゃんには、僕のパートナーになってもらうんだよ。“神である僕”のね」


「は?!、え?・・・はあ?!」



俺は思わず二度声を上げて、メリアスを引き剥がした。



「あ~ん、おじちゃんつれないな~。」


「おまっ!、パートナー?!、しかも、神だあ?!」



俺は声が裏返るくらいの勢いでメリアスにそういった。

すると、メリアスは何かに気が付いたのか目を見開いた。



「そういえば説明してなかったね、僕、神様やってます。そして、おじちゃんはそんな僕に気に入られた唯一の人間、いわば、選べれし人間です!!!。」



メリアスは、胸を張ってビシッと俺を指差した。



「・・・」



俺は話しについていけず、何も返事をすることができなかった。

すると、何を勘違いしたのかメリアスはさらに続けた。



「そして、僕はいつの間にか愛着が湧いた・・・というか好きになったおじちゃんと別れたくないと考え、おじちゃんを僕のパートナーとして迎え入れることに決めました!!!。おめでとう!!これでおじちゃんも神様です!!」



メリアスはそこまで言うと、パチパチと拍手をしながら笑顔で俺を見た。


(俺が・・・神だと?)


俺は心の中でそう呟いて、一つの感情が浮かび上がってきた。


ふざけるな

俺が神様だと?、冗談も大概にしろ。



「さあ!、僕とおじちゃんの幸せな世界を作るため、僕の申し出を受けてよ!!」

「お断りしますクソ神様。」



メリアスがめちゃめちゃ格好つけてそういったのに、俺は即答した。


当然だ。

受けるわけがない。

そんなことより、俺は今すぐもとの世界に帰してほしい。


俺は元の世界に帰してもらえるようにと、メリアスのほうを向いて見ると大変なことになっていた。



「・・・なんで、僕の誘いを・・・プロポーズを、こ、断る?・・・しかも即答?・・・ぼ、僕・・・私は、私は・・・フラれたの?・・・どうして?なんで?・・・理解できない・・・」



両手両膝を地面につけて、すっごいショックを受けて落ち込んでいた。

どうやら、断られるとは思っていなかったのだろう。

断られたのが理解できないのだろうが、俺は逆に、なんでさっきので断られないと思っていたのが理解できない。



「メリアス、いいから俺を元の世界に戻してくれ。こんな胸糞悪い世界にこれ以上居たくない。」



俺はそういってみるがメリアスはまったく聞いておらず、独り言をぶつぶつといい続けていた。


(うわぁ、めんどくせえ。)


俺はそう思いながら、とりあえずメリアスの頭を撫でてやった。

すると、メリアスは突然黙りこみ、顔を上げて俺のほうを見た。


(うわ、泣いてる・・・しかも鼻水出てる。)


俺はメリアスの顔を見て少し引いてしまったが、それでも頭を撫でるのをやめなかった。

なんとなく、こうしていないといけないような気がしたからだ。

すると、メリアスは嬉しそうな笑顔を浮かべ、照れくさそうな笑い声を上げた。

普通のやつなら、かわいいとか思うのかも知れない。

だが、俺としては正直いって気持ち悪い。



「へへ、へへへ、おじちゃん優しいんだね。ますます好きになっちゃうよ。」



メリアスはそういって、俺をいとおしそうな目で見てきた。


マジ勘弁してくれ。


俺は耐え切れなくなり、メリアスの頭を撫でるのをやめ、頭から手を離した。

手を離した瞬間、メリアスは甘ったるくて気持ちの悪い声を上げたが、気にしないことにした。



「もう一度言うが、俺を早くもとの世界に帰してくれ。俺はこれ以上こんな胸糞悪い世界にいるのは御免だ。」



俺がそういってメリアスを睨み付けると、メリアスは少し困ったような顔をして顔を背けた。


(・・・そうか、そういうつもりなら俺にだって考えがある。)


俺は一瞬だけやめようとも思ったが、こんな世界に居続けることになるのを思うとそんな考えは吹っ飛んだ。

俺はゆっくりメリアスに近づき、同じ目線の高さになるようにしゃがみこんだ。



「な、なに?。いっとくけど、僕をその辺の人間と同じだと思ったら大間違いだよ。なんたって神様だからね、ちょっとやそっとじゃ何も喋らないよ!!。」


「うるさい口だ。」



俺はそういって、メリアスの後頭部を片手で押さえそのまま顔を近づけてた。



「ッッッ!!!!!!!!???????!!!!!!」



メリアスは声にならない悲鳴を上げていたが、俺は舌の動きを封じることでそれを止ませた。

はじめは暴れていたが、すぐにだらんと力を抜き、求めるような動きにシフトした。


(うっわ、めっちゃがつがつ来るよ・・・)


俺は吐き気を抑えながら、必死にのしかかろうとしてくるメリアスを抑えた。

しばらくそのままでいたが、そろそろ本気で吐きそうな気がしたので、俺はメリアスから離れた。



「あっ///」


「変な声出すな。帰してくれたらまたしてやるから、早く帰してくれ。」


「ふぁ~い///」



メリアスはまるで酔っているような声で変死をすると、ぼんやりしながら何かを地面に書き始めた。

おそらく、まださっきのが効いているのだろう。


(おうぇ、思い出したらまた吐気がしてきた。)


俺は口に手を当てて、顔をしかめた。

本当に何度やってもこればっかりはなれない。

あの、うねうねが気持ち悪い液をまとわりつかせながら動いて・・・

ううっ!、ヤバイ本当に吐きそうだ。


俺は地面に蹲り、必死に吐き気を抑えた。



「できまひたぁ~///」



俺がもだえている間に、メリアスは元の世界に戻るための準備を終えていたようだ。

俺は何事もなかったかのように立ち上がり、メリアスが地面に書いたものを見た。

見たところ、ただの文字の羅列のようだが、遠目から見ると綺麗な六角形をしていた。

すると、メリアスはフラフラとその六角形の真ん中に立ち、俺のほうを見てきた。

そして、両手を広げた。



「つかまってくだしゃい///」


「・・・」



俺は警戒の色を強くしたが、別に危ないことをしようとしているわけではないらしい。

確かに、さっきから頬が真っ赤になってるし、フラフラの酒飲みのような動きをしているが、だからこそ安全だとわかった。

俺は言われたとおり、メリアスにつかまった。

・・・まあ、つかまったと言っても広げている両手を無理やり前に持ってきてそれを掴んでいるだけだが。



「いきましゅ~///」



メリアスの掛け声とともに、地面にある六角形の文字が光り始め、やがてその光は空へ向かって伸びていった。


(なるほど、落ちてきたから今度は上がってくのか。)


俺はそう思いながら上をずっと見ていた。

しかし、一向に体が浮いていく感覚がない。

俺は不思議に思いメリアスの顔を見た、メリアスはまだボーッとした顔をしていたが失敗している感じはない。

そう思った瞬間



フッ




「は?」



突然、足元にあった地面が消え、そのまま俺たちはまるで落とし穴に落ちるような勢いで闇の中に消えていった。





「ふざけんなあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」





俺の叫び声は、闇の中に解けるように消えていき、目の前がまた真っ暗になった。





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