第十四話 おじちゃん、お姉さんに任せる その2
もう少し、おねーさんのターンが続きます!!!
さてさて、三人に出来るだけ簡潔に、短くこれから行うことを伝えてみた訳なのだけれど・・・・
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
『・・・・・・・・』
三人そろって、何ともいえない顔で私を見ているのです。
・・・・オオジ君は、見てるって感覚しか伝わってこないんですけどね?
それにしても・・・・ああっ、なんていい感情なのかしらっ!!!!
これは、これは三人とも強い “疑惑” に “不信感” っ!!!!!!
もう、私ちょっと昂ぶってきました~~~~~!!!!!
『・・・・・それで?、どういうことか説明しろよ
別に、俺らの感情が食いたくて言ったんじゃねぇんだろ?』
声を掛けてきたのは、やはり私との付き合いが長いオオジ君でした。
私は、思考が飛躍して、行動を起こし、自己完結をしてしまうことが多いようなのです。
自分ではそんなつもりは無いのですが・・・・まあ、オオジ君が言っていたのだから、間違いないのでしょうね?
彼、自分以外の人間観察は得意ですからねぇ~
おっとっと、話しが逸れましたね
私の言ったことへの説明でしたよね??
私は、自分の中でまとめた考えを、どうすれば分かりやすく伝えられるか考える
この手のことはとても苦手なんですよ、私
「ちょ、ちょっと待ってください。どうして突然そのような事を?」
言葉を考えて居ると、いつの間にか復活していたセレインちゃんが私にそう聞いてきた。
あらまあ、説明・・・・・出遅れちゃいました
どうしましょうか????
・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面倒だから、実行した方が早くないですかね?これ?
『待て待て待てまて~~~~~~~ッッ!!!!!!』
(あ~ん、頭の中で大きな声出さないでくれます????
・・・・・だって面倒くさくありませんか??)
『知るかっ!!!、何の説明もなしで振り回される俺らの気にもなれ!!!!』
(あ~あ~、毎回聞いてます、毎回考えてます、毎回申し訳ないと思ってます~~~~~!!!!!)
私はさらに面倒くさい男の説教に、両耳を塞いでしまいたくなりましたが、塞いだところで直接頭に響くので、否が応でも話しを聞かなくてはいけません。
私は、しょうが無いので彼におおよその話を道すがら話すと言うことで、何とか納得してもらった。
さて、問題はメリアスちゃんとセレインちゃんだけど・・・・・・
「ま、待ってください!!! ガリセウス様は、現在私たちの出国についての話しを各役人達と詰めているはずで――――――」
「そうなんですかぁ・・・・・・・それは、かなり好都合ですぅ~」
「なっ・・・ええっ!?」
私は、セレインちゃんの反応に内心舌なめずりをしつつ、なんとか微笑み程度で抑える事が出来ました。
本当に美味しそうな子ねぇ・・・・・
後で絶対にご相伴にあずかりましょ!!
『いや、させねーからな!?、お前マジでいい加減にしろっ!!!・・・・あと、事情話せ』
(ふふふっ、そんなに焦らないでほしいわ・・・・・行ってみれば、嫌でも全部分かるわよ?)
『・・・・・・・・・チッ』
私の言葉に、随分不機嫌そうな顔でただ睨み付けてきているが、何も言わないところ見ると、成り行きを見守ってくれるようですね。
彼、なんだかんだ言って私に自由行動を許してくれるのよね~
お人好しというか・・・・素敵な男性と言うか・・・・・
ま、まま、まぁそれでも!!
私がこんな状態なのは彼のせいでもあるんだしぃ??
これくらいの自由は当然もらっても良いと思うんですけどねぇ!!!
私がそんな事を考えて居る間に、先ほどオオジ君の記憶から拝借した物と同じ造形の扉が見えてきた。
どうやら、あそこがこの国の王と話した部屋で間違いないでしょう
私は、後を着いてきていた二人を振り返って確認してみる。
二人は、一様にこれから私が何をするのか分かってないらしく、何ともいえない顔でこちらを見ていた。
特に、メリアスちゃんは僅かに口がへの字に曲がっており、睨んでいると言っても過言じゃない表情をしていますね。
もう、随分嫌われちゃってますね
「あ、あの・・・・・勇者様?本当に、本当の本当にガリセウス様に会うおつもりですか??」
「ふふふっ、心配しなくても大丈夫ですよぉ?
別に、問題になるような事は言うつもりはありませんしぃ、するつもりもありませんよぉ?」
そう、私は別に問題になるような事をするわけではありません。
私はこれから――――――
―――――――――面白いことをしに行く のですっ!!!
そして、私は勢いよく目の前に鎮座している立派な扉に向けて、強化され肥大化した腕で、思いっきり拳を叩き付けた。
拳は、扉に当たる瞬間に僅かに手首をひねり、正拳突きの要領で繰り出して見たのだが、私の拳を受けた扉は、「ゴウンッ、ゴウンッ・・・・」とまるで鐘のように響き、そのまま何事もなかったかのように私の前にそびえ立ったままだった。
・・・・・・・あら?
思ったよりも頑丈な設計なんですね??
「あ、ああ、あわわわわ・・・・・・・・」
「うわぁっ!!!!、み、巫女ちゃんしっかりしてっ!!!
こんなところで気絶された困るよ!!!、どど、どういうことさ!ちあきちゃん!!!」
「どういうことと言われましても・・・・・面白くなりそうっだったので、何となくやりました」
私はそう言って、扉に叩き付けたままの拳をどけ、再び振りかぶった。
それを見て、慌ててメリアスちゃんがワタワタした様子で私の前に躍り出た。
「ま、まま待ってよ!!!、そんなことしなくても普通に開けば良いじゃないか!!」
「今・・・・重役の方々が会議を行っているのですよねぇ?、いくら勇者の私でもぉ、簡単に話しを聞いていただけるとは思えないんですぅ・・・・・・違いますかぁ?」
私は、普通、ポッと出の・・・・別世界の人間を、そう易々とこの国の重役達にあわせる様な事は、まず無いだろうと思っています・・・・・といいますか、実際そうでした。
なので、急ぎで話しを通したいときはこの手に限るのです。
「なっ、何て物騒な考えをっ!!!!それに、仮にも王様が居る部屋だよ!?
そう簡単に壊せるわけが――――――――」
メリアスちゃんがそう言いかけた時だった。
ビキッ ビキビキキッ!!
「へっ??」
「あら??」
妙な音が聞こえ、私とメリアスちゃんがほぼ同時に声を上げていた。
音のした方へ、ゆっくりと顔を向けてみると、私が先ほど殴った扉から聞こえてきていた。
よく見ると、扉に小さなヒビが無数に走っているのが分かった。
・・・もしかして、時間差ですか??
私がそんな事を考えて居ると、ヒビが急速に扉の表面を駆け抜け、あっという間に全体に・・・・
そして―――――――
ビキビキッ!!!!
ガラガラガラガラガラガラガラガラ・・・・・
「「・・・・・・・・・」」
「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」
「上手くいきましたぁ、てっきり手加減し過ぎて失敗したのかと思いましたぁ・・・・・・あらぁ?」
部屋のなかに視線を向けてみると、そこには数人の重役のような方々とお茶くみ係のようなメイドが複数人、妙に豪華な服を着た男、それに、三人の鎧を着た男が三人いた。
しかも、面白いことに、騎士の一人が重役っぽい人を締め上げてますね?
これはいけない!!
急いで混ざらなければっ!!
そう思い、私はなかに入ろうとして、僅かですけど抵抗のようなものを感じました
どうやら、この部屋には結界のようなものが張られていたようです
まあ、仮にも王がいる部屋なのだから、当然の備えと言えますかね?
そんなことより・・・能力解けちゃいましたね
腕がいつの間にか元のサイズに戻ってますね
あーあ、折角増やしてみましたのに・・・・・もう細くてフニフニな枝みたいに・・・・
「ちょっ!(笑)、これは流石にとんでもないね(笑)」
「笑イ事デハ無イゾ!!、今スグアノ女ヲ取リ押サエルゾッ!!」
「・・・セレイン、なぜここに?」
あら?
騎士の方々動き出しましたね?
名前は、確か・・・
えーっと
アイン、ミズチ、巫女の親父・・・・・でしたっけ??
なんで、あの方だけセレインちゃんのお父さん呼びなのかしら?
まあ、おおじ君の記憶だし、細かいことはどうでもいいですよね?
そんなことを考えていると、いつの間にか目の前に全身甲冑の騎士が、ちょうど私目掛けて腕を伸ばしてきていた
名前はたしか、アインでしたか?
それにしても・・・・
あらあらまあまあ
随分と―――――――――――遅い動きですね?
私は、迫り来る甲冑の手を半歩体をずらしてよけ、そのままくるりと体を捻って騎士の脇へ
そして、そのまま伸ばしたままの腕にしがみつき グリッ と後ろへ捻ってやった
すると、面白いほど上手く行ったらしく、騎士はそのまま勢いよく倒れ込み、私に組敷かれるような体勢で地面に沈んだ。
私は、あまりのあっけなさに固まりそうになりつつ、そのまま立ち上がってこないよう、騎士の背中に乗り、腕を真っ直ぐ伸ばさせてガッチリ間接を決めてやった
すると、何故か背後から「ブフォっ!!」と誰かが吹き出した音が聞こえてきた
「流石アイン(笑)、見事な動きですね(笑)」
「グ、グヌゥッ――――――キ、貴様何ヲスル!!
離セッ!!!、私ノ腕ヲ離セッ!!!」
「でもぉ、離したら貴方、私を捕まえようとするじゃないんですかぁ?」
そういって、私は腕を曲げてはいけない方向へ押してやると、面白いくらい騎士がジタバタと苦しみ出した
あらあらまあまあ
何て良い“苦痛”を感じるのかしら
ふふっ、思わぬ収穫ですね
私、大感謝ですっ!
「ま、待て!待つのだそこの女!!
今、アインをつぶしてしまえば、魔物との対抗手段が減ってしまう!
詫びなら代わりに私がする。だから、今は勘弁してもらえないだろうか?」
私が密かに楽しんでいると、突然立ち上がった男が私に頭を下げながらそう言ってきた
・・・確か、あの方が “アル” だったかしら?
ずいぶん整った顔立ちだし、豪華な服ね
それに、明らかに周りからの扱いが丁寧
今も、セレインちゃんのお父さんが背中に庇うような位置にいるようですし、さっきから、とんでもない “殺意” と “警戒” を私に向けてる見たいですね
おそらく、私より一回りほど強いですかね?
まあ、そんなことより―――――――
「・・・アインさんで合ってますかぁ?、とりあえず私も話を進めたいのでぇ、腕を離しても捕まえないって約束してくれませんかぁ??」
「ナッ?!、フザケタ事ヲーー!!!!
誰ガソンナ約束ヲ――――――」
「あーはいはい(笑)、僕が代わりに押さえとくから(笑)安心して離れて良いよ(笑)」
「ミ、ミズチ!オ前何ヲ言ッテ―――――グガァァァァ!!サッキヨリモ数段痛ミガァァァァッ!!!」
「うわっ辛ッ!!!(笑)、こんなの押さえてたの君(笑)」
「ミズチッ!!!、後デ覚エテイロヨォォォォォッ!!!」
随分騒がしいが、まあ、とりあえず落ち着いて話せるようには鳴ったようですね
さてさて、アルさんの方は準備良いんですかね?
まだまだ私のターンは終わってませんから・・・ね?
「・・・おい小童―――――――なぜ女になってる。
それに、これはいったいなんの真似だ。
返答次第で、静騎士セレドマの名を掛け、お前を消さねばならん・・・セレインに嫌われたくないがな(ボソ」
あらまあ
どうやら、私がおおじ君の体を一時的に借りてるのがバレているようですね
それに、最後にボソッと可愛らしいことを言ってましたね
ああー、いいです。
とってもいい “殺意” と “悲しみ”です!!
特に“悲しみ”の度合いが大きくて粘っこくていい!!!
「おとうっ―――――セレドマ様、お待ちください!!
これには事情が―――――」
「・・・・・・なぜ貴女がここに?
それに、なぜこのような蛮行を勇者殿に許したのです。
これは――――― “暗殺” ととられても可笑しくない事態なんだぞ?」
「―――――ッ!!!」
セレドマさんのお説教に、セレインちゃんが唇を噛んで押し黙ってしまった
そうですよね、これ普通なら大事件ですよね
なんとか庇おうとしてくれましたけど、流石に無理ですよね
――――――まあ、そうじゃないと困るんですけどね?
「――――――私、暗殺に来たんですよぉ?」
「「「「「「・・・・はぁ?」」」」」」
私の発言に、全員が揃って間抜けな顔をした
うーん、これはイマイチね
全員驚きすぎて逆に感情が薄い――――――水に炭酸を少しだけ混ぜた感覚ね
「ミズチッ!!!」
「はいはいっ!気にせず突っ込んでねっ!」
掛け声とともに、後ろからものすごい速さで二人が私目掛けて疾走してきた
さっきから笑ってる方は、私の右側面から真一文字に
全身甲冑の方は足音を轟かせ、凄まじい力を感じさせる剣にて私の左の太ももから右肩口へ袈裟斬りに
対する私は、特にアクションを起こす気はなく、ひたすら正面で驚いている“男”へ視線を向けていた
私の身体に、その刃が届くか届かないかというところで、やっと男が動いた
「待て!
アイン、ミズチ、早まるなッ!!!」
男が叫ぶのと、私に迫っていた刃が何かに弾かれるのは、ほぼ同時だった
二人の剣は、弾かれた勢いで宙を舞い、それぞれの足元の地面へ綺麗に突き刺さった
別に、私は特になにもしていない
やったのは―――――
「セ、セレドマッ・・・!!!」
「げっ、セレドマの旦那・・・(苦笑)」
「・・・少々焦りすぎだぞ、若造共が」
そう吐き捨てると、セレドマは首だけを左右に動かして二人を見た
アインは不機嫌そうに舌打ちをし、ミズチは手をヒラヒラさせながら続けた
「いや、だってね?暗殺に来たって言ってるし、とっとと捕まえないとダメじゃない?」
「わかっている。だが、ここは王の意志を最優先させるべきところだぞ?
王は、“早まるな”と申された。
瞬時にそれに従うのが、我々騎士だ」
セレドマがそういうと、ミズチは両手をわざとらしく上げ、苦い顔をした
アインも、納得したのか唸り声をひとつあげ、大人しくなった
「ありがとうございますぅ、これで、ゆっくりお話出来ますねぇ?」
私はわざとらしく呑気にそういうと、先程からこちらを見ていた男へと視線を向けた
「・・・それで、私の暗殺とは、一体どう言うことだ
返答次第で――――――わかっているな?」
男の言葉に合わせ、セレドマが私の首に剣を突きつけてきた
どうやら、不穏なことをすれば斬られてしまうようですね。
・・・・・少々物騒な雰囲気になりましたけど、
ふふっ
概ね予定通りですね。
さて、あとがつかえていますし、さっさとやっちゃいますか?
私は、ニヤリと口を歪め、そのまま話始めた
「勘違いしてますぅ、私が暗殺するのは、あなたではありませんよぅ?――――――そっちにいる方ですよぉ?」
私はそう言って、端の方にいた一人の女目掛けて、剣を投げつけた
あっ、剣はセレドマの剣をもぎ取って投げました!!
ナイフとかそういう危ないのは持ってなかったんですよ??
剣は、真っ直ぐ女にむかい、そのまま避けるまもなく剣は女の腹へ吸い込まれるように突き刺さった
女は無表情のまま自らの身体に突然飛来した剣を見下ろし、カッっと目を見開いていた。
でも、その程度で終わると思わないでくださいね?
「かッ・・・・・ひゅうっ?!」
女が何事か言おうとしたのか、口を開いた瞬間突然女は何かに吹っ飛ばされるように体を“くの字”にさせ、後方の壁へと叩きつけられた
ここまで、約5秒ほどの出来事です
私がここまでする間、状況についていけずに全員固まっていたが、いち早く我に帰ったのは、私の目の前にいるセレドマだった
「小娘ぇ!!楽に死ねると思うなよ!!!」
「さーて、極めつけですね?」
私は、激昂するセレドマを無視
そのまま能力を構築―――――出来ませんでした
そういえば、結界は生きてるんですよね?
まったく、直接消したかったんですけど
私は少し残念に思いつつ、予定を変更して女目掛けて疾走した
そして、勢いをそのままに、壁に張り付いている女の顔目掛けて拳を叩きつけた
だが、ここて大きな誤算が生じた
それは―――――
「よくも、台無しにしてくれたね」
思ったよりも、彼女が平然としていたことです
私は、とっさに拳を引き、大きく後ろへ飛んだ
それと同時に
女も自分の体を釘付けにしている剣に手をかけ、グリグリと剣を引き抜こうとしていた
「せっかくプレゼントしてあげましたのにぃ、抜いてしまうのですかぁ?」
「はっ!!、白々しいこと言いやがって!」
女は悪態をつくと、ようやく体から剣を抜き、それをまるでゴミでも掴むように持つと、渋い顔をした
「うわっ、よく見たらこれあの化け物オヤジの剣じゃん
・・・本人に返すわ」
そう言って、ダーツのようにその剣をセレドマに向かって投げた
まだすぐ飛来した剣は、見事にセレドマの顔面に向い、そのまま空中で制止した
「やりー、ダメ元で投げてみたら、あいつよけねーから刺さったわ」
女は、ポッカリと大きな穴の空いたお腹を抱えてゲラゲラと笑いだした
・・・・・・・こいつ、何なんでしょう?
さっきから、感情の起伏が無い?
こんなに笑ってるのに・・・何の感情も発露していない??
うわぁ~、何ですかそれ・・・
こいつ、生物として終わっていますね?
「最っっっっっっ高じゃん!!寝首かこうと思ってたら、こうもあっさり片づくとか!!!
いやぁ~、やっぱりこの人間の姿って色々便利だわ~!!!
うーん、それじゃあ、面倒だけど・・・・・・・本丸いっとくかな?」
私がどん引きしながら目の前の女を見ていると、女は突然訳の分からない事をいって、グリッと音が聞こえそうな勢いで首だけを“アル”の方へ向けた。
すると、先ほどまで固まっていたアインとミズチが素早く“アル”の前に躍り出た。
女はそれを見て、心底嫌そうな顔をして、二人を睨み付けた
「・・・・・・あのさぁぁぁぁぁぁあああああっ!!!
そこの鉄くず持ってる二人ィィィ、邪魔なんだけどぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「フンッ!!、オ前ノ様ナ輩ガ、ガリセウス様ニ触レヨウナド、100年早イワッ!!!」
「まあ、一応ね(笑)ガリセウス様に手出しさせるわけないよね(笑)」
女の叫び声のような問いかけに怯むことなく、二人の騎士は立派に主の盾としての役割を・・・・
本来の自分の役割を実行するために動いていた。
ああっ、そうですか
あなたたちは、そういう考え方ですか・・・・
その姿は、大変素晴らしいと思います。
その姿は、大変立派だと思います。
でも、私はその姿を――――――――――認めるわけにはいかない
「まあ、人間の盾がいくら増えても変わらないんだけどさぁ・・・・・
吸収で得られる情報ってくじ引きみたいな物だからさぁ~???
君らみたいな不純物が増えれば増えるほど、ほしい情報が手に入りづら―――――――くぴっ!」
上機嫌に話し出した女の言葉は、頭を貫かれたことで中断された。
さてさて、問題です
女の頭を貫いたのは、誰でしょう??
正解は~・・・・・
「まだしぶとく生き残っていたようだなぁ・・・・・魔物ぉ!!!!」
そう、セレドマです!!!!!
彼は、頭から大量の血を流し、それでもなお衰える事が無い強い意志を目に宿し、魔物を睨み付けていた。
もちろん、女の頭を貫いたのは、先ほど返された自らの剣だ。
「ぴぅ・・・ぴぃ・・・・ぐぴぃ??」
女は、頭に剣を突き刺されたまま、カタカタと不自然な動きでセレドマの方を向いた。
あらあら
これは、まずいのでは??
私がそう思ったのもつかの間、突然素早い動きで体勢を低くした女は、そのまま拳を無造作に振り上げ、適当な動きでセレドマに叩き付けた。
セレドマは、それによって驚くほど吹っ飛ばされ、先ほど私が剣を投げつけた時と似たような現象を引き起こしていた。
「ぴぃ――――――――うおぉっ!?、治った!!!
あ~あ~、やっぱりあのおやじ可笑しいんじゃない!?、生身の人間が何でダメージ与えてくるの??
可笑しいでしょ、どういうこと?」
女はうんざりした様子で自分の鼻を片方ずつ押さえ、フンッ と鼻から血を吹き出し、首をゴキゴキとならしていた。
へぇ~、こいつ・・・・・魔物ってそういう・・・・・ふ~ん
あらあら、どうしましょうか?
正直、私これ・・・・苦手ですね?
まあ、ある程度やれることはやってみましょうか?
『お、おいおいおい、ちあきっっ!!!なにやってんだ!!!
そいつあのときおっさんにやられた魔物だぞっ!!
生身の攻撃はきかねぇぞ!!!』
(あら?、喋らないと思ったら私の心配ですか?・・・・・そうですねぇ、確かにちょっと分が悪いですねぇ・・・・主に、攻撃手段的に??)
『のんきに言ってる場合・・・・・・・・あっ!!!おい、前見ろ前!!!!』
(え?なんですか?)
おおじ君に指摘され、意識を戻してみると、丁度女が私目掛けて拳を振りかぶっているところだった
あっ、これはちょっと・・・・・無理ですね
「あっはっはぁっ!!! 忘れてたけど、そもそもあんたがバラしたせいでこうなったんだしぃぃ??
とりあえず、私と同じ目に遭ってみようかぁぁぁあっ???」
嗜虐的な笑みを浮かべた女はそう言うと、振りかぶっていた拳を私の土手っ腹に深々とたたきつけ――――
「むんっ!!」
「・・・・えっ?、はあっ?!」
―――――――られませんでした!!!!
女の拳が私の体に当たるぎりぎりで、セレドマがその拳を剣で受け止めてくれていた。
女は一瞬惚けた声を上げ、すぐに驚愕の表情を浮かべて叫んでいた。
へぇ~、かなりの手練れですね彼
もしかして、私と同程度の実力がありそうですね・・・・・
まあ、能力抜きで考えて・・・ですけどね?
「ちょっ!!マジでなんなのあんた!!!、私の攻撃を剣で・・・しかもこうもあっさり止めるとか!!!」
「ふんっ、小娘程度の力で、この私が遅れをとるわけがないだろう・・・・そら、さっきのお返しだっ!!」
そう言って、セレドマは剣を振り切り、そのまま女を袈裟切りにした。
女は、苦々しい表情を浮かべ、先ほどよりもすぐに体を再生して大きく後ろに飛んで距離をとった
すると、女はガシガシと頭を乱暴にかいて悪態をついた。
「あああああっっ!!!!!ほんっっっっとうに、邪魔だなあお前ぇぇぇぇぇえええっっ!!!!
おとなしく私に吸収され溶けってよぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!
せっかく、ここのトップを吸収して一度に大量の情報を得ようと考えた私の計画がぁぁぁああ!!
何でこうもうまくいなかいんだぁあああああ!!!!」
「ふん、所詮は魔物だな・・・・そんなに私ばかりに気をとられていると―――――――」
『―――――――“顕現せよ、聖なる光よっ!”』
「―――――・・・・はっ?」
セレドマの言葉を遮るように、突然響き渡ったその言葉に、女の行動が一瞬止まり、次の瞬間―――――
―――――キィィィイイイィィィイイイイィィィイイイイイイインッ!!!!!
―――――視界を一瞬で支配するほどの凄まじい光の奔流が、女を襲ったのだった。
光の奔流は、思わず顔をしかめてしまうほど、耳をつんざく金属音を伴い
時間経過とともに、徐々にその音を増幅させ、数十秒でピタリとやんだ。
光も、音とともに消えていた。
そこには、わずかにえぐれている地面と、そこに居たであろう女だった何かの塊だけが残されていた。
「・・・・どうやら、うまく消し去ることができたみたいです」
まだ回復しきっていない人々の中で、光の奔流を放った当事者――――――セレインちゃん
彼女が、分厚い本に手をかざし、とてもキラキラした笑顔でそう言っていた。
―――――――――・・・・ジュルリ