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おじちゃんが見た世界  作者: 蛇炉
11/20

第十一話 おじちゃん、目標を立てる

※誤字・脱字・変換ミスなど多々あるかもしれませんが、ご了承ください。

人間において、何かをなすためには絶対必要なものがある


それは、人によって異なっていたり、同じだったりする



時に、それをなすための力になり

時に、それをなすための支えとなる





それは、目標

まあ、目的と言ってもいいかもしれない。





ある人は、それをゴールだと言い

ある人は、それを夢と言い

また、ある人は、それを持っていないと言う




だが、人には、必ずそれが必要になってくる。


どれだけ口で、「目標なんてない・必要ない」と言おうが、それはかなわないものである。

なぜなら、目標なんてない・必要ないというと言うことは、つまり、”目標を作らない” という目標を既に持っていことになるからだ。


目標を作らないのが目標

なんとも矛盾している。

だが、これは仕方のないことだ。



どうしても、何かをする = 目標を立てる という図式が成り立ってしまう。

人間という生き物は、そういう風に出来ている。
















あなたは、どんな目標を持っていますか?











************









さんざんな目に遭った俺は、メリアスをその辺に転がし、セレドマと巫女に事情を説明した。


メリアスが俺のいた世界で、唯一の知人であること

そのせいで、今までさんざんな目に遭ったことなど、とにかく必死に

さすがに、神様うんぬんの話は伏せた。

喋ったところで、こいつらはどうせ信じないだろうが、わざわざ話すような事でも無い。

一通り話終えると、セレドマはさほど興味もなさそうに、巫女は終始ぼんやりとした様子で俺を見ていた。



・・・こいつら



セレドマと巫女に、軽い殺意を抱いてしまったが、ここで暴れてしまっては意味が無い

俺は、グッとこらえてさらに説明しようとしたが、それをセレドマが制止した。

そして、彼は立ち上がって俺を正面から見据え、口を開いた。




「勇者様の言い分は分かりました。ですが、そこで横になってる方は、間違い無く知っている女性であり、唯一の友人。しかも、先ほど様子からすると、深い仲なのではないんですか?」


「いや、あれは・・・・・・違う」




別に、全然深くない。

むしろ、こっちの状態のこいつは、初めて見てからまだ二回目だ。

・・・二回目なんだがっ!!!

このクソガキは、やらかしてくれるよまったく!!!




「・・・我々にとっては少々非常識ですが、この世界でも挨拶代わりにお互いにキスをする文化がございます。」


「・・・いや、まあ、俺の世界にもそういう奴らはいるけどよ」


「では、なぜそこまで・・・顔色もよろしくないで―――――――」



「ゲロまみれの口でキスされたあげく、お前らに見られたからだよ畜生ッ!!!」



「「・・・」」





止めろ、そんなかわいそうなものを見る目で、俺を見るんじゃないっ!!!

もう笑え!!、いっそ笑ってくれ!!!!




「うぇへへ~・・・おじた~ん・・・もっとぉ~」





お前はお前で、一体何の夢を見てんだッッ!!!!

・・・いいかげん泣いていいかっ?

本当・・・もう泣かせてくれッッ!!!


俺は自分の置かれた状況に絶望し、泣きそうなっていると

わざとらしくセレドマが、大きな咳払いをして話を振ってくれた。

ありがてぇ・・・




「何はともあれ、急いで陛下のものへ行かなければ・・・彼女も連れて行きますか?」


「そうだな・・・・・・・・・はぁ、とりあえず、連れて行く」




一瞬、「ここに置いて行けば・・・」という考えが頭によぎった。

だが、メリアスのことだがら結局着いてきそうだと思ったので、そのまま連れて行くことにした。

すると、メリアスの運搬になぜか巫女が名乗り出た。


だが、見るからにボロボロの巫女に、荷 物メリアス を持たせる訳にはいかない

それに、さっきから顔色がかなり悪い、青くなったり、元に戻ったりと様子がかなりおかしい。

そんな状態の人間に、わざわざ苦労をかける必要はない。


っというわけで、俺はゲロくさいメリアスを背負うと、ゆっくりとしたペースで城へ向けて歩き出した。

余談だが、城へ向かう道中、背後から「ウヘヘッ、フヒッ」と、気持悪い声が聞こえたてきたような気がしたが・・・きっと気のせいだ!!!!


・・・

・・・・・・もうやだこの女













********















ようやく城に戻ってきた俺たちは、鎧や盾(俺はもう装備してないが…)を返却し、多少身なりを整えてからアルのいる謁見の間へ足を運んだ。

セレドマ曰く、今回の状況報告をして、次の夜に向けて色々な話し合いをするらしい。


部屋に入ると、アル以外にも数人おり、アルの座る玉座の下、階段の始まり辺りにアインとミズチが立っており、そこから少し離れた壁際に、普通のやつより幾分かマシな格好をしたおっさんが数人いた。

おそらく、おっさんたちは貴族とか重役とかその辺の奴らなんだろう・・・


俺たちは、とりあえず事前に聞かされていた動きと言葉を言って、その場にひざまずいた。

すると、これまた事前に聞かされていたねぎらいの言葉をアルから賜った。


この後、さらに貴族や重役から一言 (クソ長かったけどなっ!!!) をいただき、そのまま事務的な報告を済ませる。

そして、現地を駆け回っていた “せい騎士きし” たちや戦っていたものたちの話を聞き、アル・静騎士・巫女 だけが残り、ほかは解散ッ!!・・・ってことになっている。


貴族たちのどうでもいい一言も終わり、報告も問題なくすんだようだ。

そして、とうとう俺たちが話す番が回ってきた。

アルは、一度俺たちの顔を順番に見て、最終的にセレドマを見て、また形式張った賞賛とねぎらいの言葉をいった。

ある程度しゃべると、一度言葉を切り、大きく息を吸い込んだ。




「――――――さて・・・静騎士 セレドマ よ、此度の夜はどうだった?。

 何か、私に報告すべきことはあるか?」




アル問いかけに、セレドマは何も言わず黙っていた。

すると、突然貴族たち辺りがザワザワとし始めた。




「・・・ギリッ!!」

「ちょッ、落ちつてよアイン(笑)」




貴族たちの態度がよほど不快だったのか、目の前からなかなか大きな歯を食いしばる音と、それをなだめる声が聞こえてきた。

本来なら、ここでセレドマがすぐに「問題はない」的なことを言って解散なんだろう

だが、今回は何も言わない。

だから、貴族たちも不審に思ったんだろう。




(・・・大丈夫なのか?あいつら騒いでて)


(ゆ、勇者様ッ!! 私語は慎んでくださいッ!!・・・まあ、無理もありません。

 本来なら、セレドマ隊長が問題ないことを伝え、そのまま私たち以外は席を外す予定だったので)




巫女がそういうと、セレドマは腹を決めたのか、静かに報告を始めた。

内容は、セレドマが魔物との交戦するより前のことと、俺たちと合流し、魔物と交戦し、ここに至るまでの話だった。

貴族たちは、その話にさらにざわつき始め、アインとミズチは僅かだか驚いていたように見えた。

一方、アルの方は、玉座から僅かに体を起こし、難しい顔で顎をなでていた。


途中、俺がどうしていたかとか、巫女がどうだったとか・・・とにかく、嘘偽りなく話されてしまった

それを聞いて、俺は自分が情けなくなり、気がつくと顔を伏せていた。

すると、俺の視界にさっきまでなかったものが映り込んでいた。




『おはよう、おじちゃん!!!・・・それで、今どういう状況?』




いつの間にか目を覚ましていたメリアスが、顔の下にいた。

正確には、俺が頭を下げるとちょうど真下に来る位置に、メリアスの頭があった。


おいおい、こいついつの間にここに来た

さっき、この部屋の近くにある控え室に転がしてきたのに・・・


すると、突然メリアスがフッと鼻を鳴らした。




『正真正銘の神である私が、片時だっておじちゃんの側を離れる訳がないよ

 こうやって、ほかの人には見えず、さらに、声を出さずとも私の言いたいことを伝える事だって出来るのさ!!!!』


(・・・そ、そうか)




だめだこいつ、早く何とかしねぇと・・・

いやいや、今はそんなことどうでもいい

とりあえず、こいつも来たんだったら、ある程度説明しとくか・・・


俺は、セレドマが報告を続けている後ろで、メリアスにここであった事をザックリと説明した。

メリアスも、珍しく真剣な表情でそれを聞いていた。

説明し終えると、メリアスは口を真一文字に引き結び、うーんとうなり声を上げた。




『なるほどねぇ・・・おじちゃんの中見てたから、省かれてたところも大体わかったよ。

 けど、そうかぁ~ 人型出ちゃってたかぁ~ どうしようかなぁ・・・』


(・・・お前その様子だと、魔物の事や生態なんか、全部知ってそうだな)


『まあ、それは、ほら、別世界とはいえ私も神。

 ある程度なら知識として入ってるよ・・・まあ、他言は出来ない決まりだから教えられないけどね』


(なんだそれ?、口封じでもされてんのか?)




すると突然、メリアスはあからさまに目を泳がせはじめ、何も言わなくなった。


・・・ほう?

前に懲りたと思ったが、しらを切る気か?

いいだろう、ならば俺にだって考えがある。


俺は、メリアスをまっすぐ見据え、少しだけ表情を無くし、そして語り出した。




(なるほど、わかった。つまりお前はこう言いたいんだな? 「俺なんかには到底理解できないだろうし、言っても無駄だから話すのはやめよう」・・・どうだ?図星だろ?)


『え、あ、いや、そんな、えーっと・・・』


(お前の考えはよーくわかった。つまりお前は、「所詮、全知全能である神の言ってることを、これっぽっちだって理解できない」っと?)


『そ、そんな事思ってな――――』


(いいってわかってる。そうだよな~、お前からみたら、所詮俺なんて低脳で無様なにんげんだもんなぁ~・・・話の程度も低くて、俺と話すの面倒だよなぁ~、いや~悲しいわぁ・・・俺、悲しいわぁ)


『いや、だから、そんなこと思って――――』


(いいんだ!!、お前が何も話してくれないのも、俺と話すのが面倒なのも、全~部わかってる。

 そうだな、そうだよな~。

 その証拠に、今直接話してないからな~、なんか頭の中に声が響いてるだけだからなぁ~

 直接話したくないレベルだからな、もう手遅れだな。

 ・・・今まで、悪かったな。

 これからは、俺もお前と極力話さないように気をつけるから、もう俺とはな―――――)





『『だから、そんなこと思ってないっ!!!!!』』


「ファッ!?

 ばっ!!、おまっ、うるせぇっ!!」




突然声を荒げたので、俺は慌ててメリアスを怒鳴り、口をふさいだ

そして、すぐに俺は後悔した。


そ、そういえば・・・

メリアスの声、俺にしか聞こえてなかったんだっけ・・・

ってことは、今でかい声を出したのは、俺だけな訳で――――


顔をそろりとあげてみると、この場にいる全員が俺を見ていた。

当然、俺がいま口をふさいでいるメリアスは、こいつらに見えていない。


うわ、痛い痛い

全員の視線が痛い


中でも、アインがヤバイ

先ほどまで貴族たちに向けていた敵意が、すべて俺に向けているのだ。


うっわ~・・・この世界の人間って角が生えるんだぁ~

し、知らなかったなぁ~・・・


顔を引きつらせながら、俺はダラダラと流れる汗を片手でぬぐった。

すると、アルは顎から手を離し、まっすぐに玉座から俺を見下ろしていた。


あ、俺終わった?




「・・・勇者よ。

 確かに今、私は声を荒げたが・・・何か、まずい事があったか?」


「えっ、あっ、いやっ・・・」




うっわ、なんだこれ

奇跡的に話つながってるし!!!


どうする、何も聞いてなかったぞ?

ここで、適当なこと言って誤魔化せるか?

・・・いや、無理だろ


アルの言動から、何かしらの事柄に対して、アルが怒鳴ったのはわかる。

だが、それが何に対してだったのかわからん。

適当に話を盛ると、後々面倒な事になりかねねぇし・・・

うっわ、どうするどうするどうするどうす―――――




「ちょっと待ってよ。おじちゃんは今、あなたにじゃなくて私に言ったのよ?」




一人慌てていると、突然隣から上がった声

すると、俺に集まっていた視線が、一斉に声の主の方へ向いた。

俺も釣られて隣を見ると、そこには、先ほどまでここにいなかったはずの人物が悠然と立っていた。

そいつは、俺のお下がりでサイズが全く合っていない作業着を着た、見た目は美しい女

そう、メリアスだ。




「キ、貴様ァッ!!!!、一体何処カラッ!!!」

「ありゃりゃ、いつのまにか見知りらぬ女が紛れ込んじゃってるね(笑)」




メリアスを見た瞬間、アインとミズチが帯刀していた剣を抜き、素早く階段の前に陣取った。

アインは、今すぐにでも斬りかかってきそうな勢いで

ミズチは、少し様子をうかがうような姿勢で

それぞれ、メリアスをにらみつけていた。


その様子に、メリアスは慌てる様子はなく、視線はただ一点をまっすぐ見つめていた。

その先にいるのは、玉座に座るアル

アルもまた、慌てた様子はなく、突然現れた(様に見える)メリアスを見下ろしていた。


一触即発な雰囲気の中、最初に口を開いたのはメリアスだった。




「えーっと、ガルセウス君だったっけ?・・・さっきかなり興味深いこと言ってたよね。

 確か、“私に出来る事なら、全身全霊を持って事に当たらせてもらう!!”・・・だっけ?」




メリアスがそういうと、アインとミズチが僅かであるが体を揺らした。

アルも、無表情だった顔に、僅かだが驚きの色を見せていた。

だが、すぐにそれを引っ込め、メリアスを見る目を細めた。




「・・・いつから聞いていた。

 そもそも、私がその質問に答えると?」


「うん、思ってるよ。 それに、これは大切なことじゃない?

 ガリセウス君が、今の言葉をその場の勢いで言ったんじゃない・・・ってね」




メリアスは、ニヤリと口元をゆがめると、首をかしげながらアルにそういった。

その様子に、既に抜刀していたアインが一歩前に出てきたが、アルに名前を呼ばれ、渋々と言った様子で元の位置に戻った。

アルそれを確認すると、再びメリアスを見下ろした。




「・・・違いない。

 私は―――アル・セフィール・バルカ・ヴェコ・ガリセウス三世は、そこにいる勇者 ”おおじ ちあき”に、出来うる限り、力を貸そう。」




アルの宣言に、先ほどまで惚けていた貴族たちが、ふたたびザワザワと騒ぎ出した。


・・・まあ、さすがの俺もこれの異常さは理解できる

一国の代表が、個人に全面協力するって言ってるんだからな。

あいつ、そんなこと言ってたのかよ


そんなことを考えていると、クイクイッ と袖を引っ張られたのでそちらを向いた。

すると、メリアスがニッコリと笑顔を浮かべていた。


・・・あー、これはあれか?

わざわざ、聞いてくれたのか?

まぁ・・・ありがとう?


俺は、少し小さく頷いてみせると、彼女は顔をパアッと明るくさせると、そのまま腕に抱きついてきた。

俺は片膝をついた姿勢のため、抱きつくというより、寄りかかっていると言った方が正しいかもしれない。


・・・いや、メリアス

お前今、とんでもない格好だからな?

嬉しいのはわかったから、とりあえず俺から離れろ?、な?




「さて、では改めて問おう。女、お前は何者だ?」


「えへへ~、おじちゃんが褒めてくれたぁ/// ねーねー、私だってやれば出来るでしょ?、ね?」


「・・・もう一度聞くぞ?、お前は何者だ」


「へへ~、今の私だったら・・・おじちゃんの役に立ててるでしょ?、少しは意識してくれるでしょ///」


「・・・・・・”おおじ ちあき”?」


「あー、いやっ、こいつは~・・・あ~、さっきから人の腕にッ!!!!、お前の話してんだから、少しは聞きやがれバカ野郎ッ!!!」




メリアスの暴走のせいで、矛先を向けられた俺は、何とかこいつを正気に戻すためにかなりの時間を要した。

後で聞いた話だが、その間、周りにいた貴族たち、巫女やセレドマ、アインとミズチまで俺たちを冷ややかな目で見ており、アルだけは、頭を抱えて深いため息をついていたらしい・・・


何とかメリアスを正気に戻した後、改めてアルから質問があり、怪しい人物ではないと理解してくれた。

そして、この後滞りなく報告は終わりを迎えた。




「うむ、話は終わりだな。皆のものよ、此度はよくやった。今日はもう部屋に戻り、おのおの疲れ切った心と身体を休ませてやると良い・・・」




アルは、玉座から立ち上がって宣言すると、この場にいる全員が恭しく頭を垂れた。

・・・まあ、俺とメリアスは下げてないけどな




「ねーねー、一つだけいい? なんだか、部屋に戻って休めって言ってるみたいだけど、私はどうすれば良いの? まさか、部屋が用意されてる訳ないよね?」




部屋を出て行こうとしていたアルに、メリアスが質問をした。

アルは、少しだけ不思議そうな顔をしたが、すぐに返事を返した。




「お前は”おおじ ちあき”の連れなのだろう? ならば、おおじちあきの部屋に行けば良い。お前もそれで問題ないだろう?」


「もちろんっ、おじちゃんもそれで良いよね?」


「・・・へいへい、わかったよ」




嬉しそうな顔のメリアスに、俺はため息を吐きつつ、適当にヒラヒラと手を振って返事をした。


どうせ、俺が断ったところで結果は変わらないだろう・・・。

アルの一言で、結局俺が面倒を見ることになる


それに、メリアスは見てくれは変わったが中身はガキのままだ。

誰かが面倒を見ないと不味いだろうしな・・・




俺が了承したことを確認し、アルは背を向けて今度こそ部屋を後にした。

それから、アイン、ミズチ、貴族たち、セレドマの順に部屋を出て行き、残ったのは俺たちだけになった。

俺は、堅苦しかった空気から解放され、その場で大きくのびをした。

そして、そのまま大きなあくびをした。


はぁ・・・やっと終わったか~

なんか、もう、ものすごい疲れた。

ああ、色々ありすぎたな今日は・・・

面倒なやつに絡まれたり、魔物と戦ったり・・・メリアスが出てきたり

今日起きた出来事を思い出すと、さらに疲れが増したような気がする。

もう、心身ともに疲れているのかもしれない。


だが、これでやっとゆっくりでき――――――




「おじちゃーーんっっっ!!!」


「ゴフッ!!」




俺の思考を遮るように、突然何かが腹に突進してきた。

言うまでも無くメリアスなのだが、あまりに突然だったため、思わず口から空気が漏れた。


・・・な、なんだ?

何がしたいんだマジでこいつは?


訳がわからずメリアスをにらみつけていると、メリアスは頬ずりしながら俺を見上げてきた。

そして、何か言う訳でもなく、ただニッコリと笑いギュッと顔を腹に押しつけてきた。


・・・いや、本当になんなんだこいつ?



(ふふふ、私は神様だよ?)



メリアスの行動の意味がわからず混乱していると、突然頭の中に声が響いてきた。

少しエコーの様なものがかかっているが、その声は紛れもなくメリアスの声であった。

だが、俺にくっついているはずなのに、なんで声が・・・



(おじちゃん以外に聞かれちゃ不味いから、こうやって話しかけてるんだよ?

 まあ、セレインちゃんには聞かれてもいいんだけど・・・万が一を考えて、ね?)



メリアスはそういうと、顔をあげてニッコリ笑った。

どうやら、俺の考えてることはそのまま伝わっているようだ。

すると、メリアスはクイクイッと顎で左右を指すと、また顔を俺の腹に埋めた。


・・・どうやら、誰か居るみたいだな。

左右ってことは・・・柱の裏とかか?



(わかんない、私も万能じゃないから・・・でも、出来たらこのまま動かず、声をなるべく出さないで?

 セレインちゃんには、もう事情を説明してるから)



そういわれ、俺はチラリと巫女の方を向くと、左右を少し気にしながら俺に微笑み掛けていた。

どうやら、本当らしい・・・




(えへへ、だからこのまま演技して欲しいな。

 話はすぐすむから、適当に巫女ちゃんと話しでもしててくれない?)



なるほどな

俺と巫女で適当な話をして、他の奴らの意識をそらすのか。

だが、一体誰が、何の目的でこんなことをしてるんだ?



(そういうのも含めて、これから話すよ。だから、怪しまれない程度に・・・お願い)



それを聞き終えたのとほぼ同時に、微笑んでいた巫女が話しかけてきた。

それから、巫女と話しながら、頭の中に響く声に意識を向けた。

っといっても、基本的に巫女が一人でしゃべり、俺が相づち程度で返事をするだけだった。

たまに、メリアスから指示が出て、まともに返事をする事もあったが、基本的には黙ってメリアスの話を聞いていれば十分だ。


最初の方は、魔物の特徴というか弱点的な話をしていた。

まあ、これは魔物自身がベラベラとしゃべってくれていた内容とほぼ合致していた。

ただ、弱点は”純物”意外にもあることがわかった。


例えば、太陽の光

分厚い雲が常に上空を覆っているこの世界では、まず使えない。

だが、この世界の朝の時間帯だけは僅かに雲が薄まるようで、その影響で魔物の動きが僅かだが弱くなるようだ。


この世界の“夜”より“朝”の方が魔物の活動が弱いのは、これが関係していそうだ。

他にもあるそうだが、この世界にそもそも存在してないので、話すだけ時間の無駄らしい。

その後も、メリアスの知る限りで魔物の特徴や成り立ちなんかを聞き、話しが一段落付いた

すると、突然メリアスがピクリッと身を振るわせた



(うーん、まだ言わなきゃいけない事がるんだけど・・・場所を移した方が良いかも)



メリアスはそう言うやいなや、パッと俺から身体を離し、ニッコリと笑うと今度は巫女へ飛びついた。




「えっへへ~、そんなこと言ってるけど・・・本当は私の事好きな癖にぃ~」

「えっ?、そ、そんなことは―――――」


「も~う、照れちゃって~ ・・・本当は私と (性的な意味で) 仲良くしたいんでしょ~?」

「へっ!?、え、いや、ちがっ―――――」


「い~からい~から、詳しい事・・・・部屋で話そうね・・・・・・・

 ほら、行こー行こー!!!」



「ええっ!?、あっ、ち、ちょっと待ってくださいよ!!!」




メリアスは、巫女の言うことを無視し、引きずるように部屋を出ようとした。

俺は、突然奇妙な行動に自然と顔を顰めていたが、すぐにメリアスが最後に言ったことを思い出し、納得した。


そうか、部屋に戻ってから続きを話すってか・・・

とすると、これは演技か

なら、俺もある程度のってやるか


俺はそう思い、はぁ とため息を吐き出した。




「おいおい、待てお前ら。

 女二人だけで何を話すってだよ・・・男の俺が居た方が、色々捗るだろ?」




わざとゲスい笑みを浮かべ、俺は巫女を引きずるメリアスの後を追った。

俺の言葉に、巫女が騒ぎ出したが、俺とメリアスを交互に見ると抵抗するのを止め、静かになった。

どうやら、巫女も察したようだ。


俺たちは謁見の間を出て、俺の部屋ヘと向った。

聞き耳を立てていた奴らが、移動中に何かしてくるか? と周りを警戒していたが何事もなく部屋にたどり着くことが出来た。

部屋に着くなり、メリアスは素早く周りを確認し、俺が部屋に入ると同時に扉を閉めた。

そして、俺と巫女の方を見てコクンッと頷いて見せた。

どうやら、もう大丈夫なようだ。

自然と安堵の息を吐き出していた俺は、その場にドスンと腰を下ろした。

振り返ってみると、巫女も足を折って脱力していた。




「ははは、二人ともお疲れ様。

 ・・・少し休憩してから続き話そっか」




メリアスは俺たちの様子を見て、そう言ってくれたのでその言葉に甘えることにした。

俺は、身体を投げ出して床に大の字に寝転がった。

俺の視界には、とても見慣れた部屋の天井があった

まだ二日もたって居ないのだが、どうも懐かしく感じてしまった。


部屋の天井は、森の木から自分で木材を切り出して、表面削ったりしたっけ・・・

確か、電球を通してる板

あそこは、天井を作ってからコード通す穴を開け忘れた事に気付いて、それを通すために無理矢理ぶち抜いたって聞いたな。

俺はそれが気になって、そこに細かい木片をはめて、不格好だが補強したんだったな。

まあ、この世界ではなく元の世界での話しだが・・・


でも、ここの天井も、そんな感じになってるんだよな~

変な偶然もあるもんだ




「おじちゃん、何か勘違いしてるみたいだから言っておくけど―――――」


「分かってるよ。ここは俺の部屋じゃねぇんだろ?、それくらい分かってる」


「あっ、うん、なら良いんだけどさ・・・なんか、ごめんなさい」




突然謝ってきたので、俺は顔だけを起こしてみると、メリアスは少しだけ暗い顔をしていた。

扉の前で、自分の右腕を抱いて俯いていた。

すると、なぜか知らないが後ろにいる巫女も暗い顔で俯いていた。


・・・・・・

・・・はぁ、なんでこんな空気になってんだよ




「落ち込んでる暇があるなら、帰る方法を考えてくれよ。

 俺は、一刻も早く帰りてぇんだからな・・・だから、変に気遣うな」




場の空気に耐えきれず、そう吐き捨ててメリアスの様子を伺った。

メリアスは、俺の方を控えめに視線を俺に向けていた

だが、すぐに視線を外し、力なく笑ってお礼を言われた。


はぁ、気にすんなって言ったつもりなんだが・・・通じてねぇなこれ

おいおい、さっきまでテレパシーみたいな事してただろ?

その時みたいに、俺の考えくらいくんでくれよ



俺は、あげていた頭を元に戻し、再び天井を見上げた。



・・・・・・そうだ、俺は帰るんだよ





元いた世界に・・・






























あいつがいた家・・・・・・・





















俺は気がつくと、天井に向かって手を伸ばし、その手をギュッと強く握っていた。







このとき俺は “必ずあの場所へ帰る” と強く心に誓った。







後にこの誓いが、大路おおじ 智秋ちあき・・・基おじちゃんにとって、この残酷な世界を生き抜くための重要な目標の一つになるのだった。


しばらく更新が出来なくて済みませんでした。


まだ話しは続く予定なのですが、近いうちに更新が難しい環境になるかもしれません

ですが、空き時間を見つけて地道に続きを書きたいと思っています。


もし、この小説を読んでくださっている皆さんが、寛大な心で更新を待っていただけるなら、私は全力で完結まで話しを書いていこうと考えています。


またしばらく更新できないかもしれませんが、今後ともよろしくお願いします。

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