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おじちゃんが見た世界  作者: 蛇炉
1/20

おじちゃん世界を手に入れる?

誤字・脱字などあるかもしれませんが、ご了承ください。


✳タイトルを少し変えました、内容等に特に変更はないので、ご了承ください

俺は夢の世界が大好きだ。

夢といっても至って普通、誰でも見るような夢なのだが、俺はこの世界が大好きだ。

この世界の出来事は、現実に限りなく近くて、本当に起こるかもしれない。

しかし、あくまで起こりそうであって、実際は不可能だ。

自分しか見ることの出来ない、もう一つの世界。

いろんなものが輝いて、色鮮やかな世界。

俺はこの世界が大好きだ。


だが、この世界はいずれ消えてしまう。

〈目を覚ます〉と言う現象により、この世界は一瞬で消えてしまう。

消えてしまうと、現実の世界に戻されてしまう。

毎日代わり映えのない、つまらない世界へ・・・。
















**************













――――――――ピピピピピピピピピピピピピピピ!!!











部屋の中に、耳障りな機械音が鳴り響いた。

俺は無意識に頭上に手を伸ばし、その辺をガサガサと漁った。

そして、手にコツンッと何かが当たる。

俺は、適当にバシバシとそれを叩いた。

すると、耳障りな機械音はピタリと止み、部屋に静けさが戻ってきた。

俺は、のそのそと布団から這い出し、手に持っている物体を見た。



AM7;45



(・・・あと5分、あと5分)


俺は、手に持っていたそれを持ったまま、力なく枕に顔を沈めた。

そして、意識が再び闇の中に溶け始めた。



「おじちゃ~ん!朝だよ!」


「ぐえッ!」



しかし、奴は突然部屋のドアを勢いよく開くと、俺の上に飛び乗ってきた。

そして、うざったい声のトーンで俺をゆすって起こそうとしてきた。



「おいクソガキ、俺はあっちの世界へ旅立つんだ、邪魔すんじゃねぇ」



俺は、背中に乗っかっている奴にそういうと、そのまま眠りにつこうとした。

しかし、奴はそれを許さない。



「おじちゃ~~ん。お~き~て~よ~!!!」



奴は俺の言うことなど気にもせず、身体の上で飛んだり跳ねたり転がったりと、どんどん行為がエスカレートする一方で、俺はそのたびに悲痛の声を上げた。


(はぁ~、面倒くさい。)


俺は、楽しそうに暴れている奴ごと布団を引き剥がした。

奴は、「キャー」とかいいながら布団の中に埋もれ、しばらくもぞもぞと布団の中でもがいていた。

やっと布団から這い出してきたと思ったら、奴は俺を見て嬉しそうに笑顔を浮かべた。

そして、奴は俺の方に近づいてくると、袖を掴んでグイグイと引っ張ってきた。



「早く朝ごはん~~~。僕お腹ペコペコなんだよ~~~。」


「あ~、わかったわかった。うぜぇから先に行ってろ。」


「とかいって、僕が行ったらまた寝ようとするクセに」



俺はクソガキに心を読まれてしまい、小さく舌打ちをした。

そして、ボリボリと頬を搔きながらあくびをすると、仕方ないから一階にあるキッチンに向かった。

俺はささっと朝食を作って食わせてやると、クソガキは嬉しそうに朝食をほおばった。

面倒だから、自分の分は後で作ることにした。



「ぷはぁ~、おいしかった。ご馳走様。」



満足そうにそういったクソガキは、自分の食器を流しに持っていくと、そのまま玄関代わりに使っている木の板をどけた。



「おじちゃん、僕は先に外に行くね。すぐ来てね。」




子供はそう言うと、楽しそうに鼻歌を歌いながらパタパタとあわただしい足音を立てながら外に出て行った。

やっと出てったか。

俺は大きなあくびをして、居間の柱にかけてある時計を見た。



AM7:55



まだこんな時間かよ・・・

俺は先ほど出て行った玄関の板をにらみつけた。



「・・・寝るか」



俺は、そろりそろりと階段を上って自分の部屋に戻ろうと、一段目に足を乗せた。

その瞬間だった。



「おじちゃん、外着はそこでしょ?」


「・・・・・・・・わかってるよクソガキ。」



クソ、感の良い奴だ。

俺は観念して、外用のチョッキを羽織ると、ニコニコしながら俺を急かしてくるクソガキと一緒に外に出た。







==========







俺の名前は、大路おおじ 智秋ちあき


25歳だ。

もう一度いう・・・25歳だ。

断じてオジサンじゃない。


住んでるところは、人里は慣れた森の中。

食い物は、その辺にあるから困ってないな。

主に、野草だの木の実だのを採って生活している。

たまに動物を捕って食ったりもするかな?。

飲み水は、近くの湖や雨水溜めたりして確保してる。

生きていくには何の不自由もない。

むしろ、人嫌いで自然好きの俺にはぴったりの暮らしだ。

だが、最近俺は悩んでいる。

それは――――――



「おじちゃんおじちゃん!、早くお話聞かせてよ!!」



こいつのだ。

このガキは、突然ここにやってきた・・・俗に言う“迷子”だ。

本人は「違う!、自分の意思でここに来たんだよ!!!」といっていたが、俺からして見たら完全にただの迷子だ。

話によると、こいつは近くにある横穴に住んでるらしく、適当に歩いていたら俺の小屋を見つけたらしい。

本当に勘弁してもらいたい。



俺は人嫌いなんだが、特に嫌いなのは“子供”なのだ。


この、相手を疑おうとしない態度。

ずうずうしく生活に干渉してくる無邪気な思考。

好奇心旺盛で穢れを知らない目。

普通の奴なら「かわいい」とか「和む」とか色々あるだろうが、俺からして見れば「災厄」だ。



おいおい、そんなキラキラした純粋な目で俺を見るな。

あ~、本当にめんどくせー

何で俺がこんなことに・・・


俺はあからさまにめんどくさそうな顔をガキに見せ付けてみた。

しかし、ガキは相変わらず楽しそうな笑顔を向けてくるだけで、特に気にしている様子はない。

・・・はぁ、視線がイテェな。


俺は観念して、おとなしく前の続きを話し始めた。




俺がガキに聞かせているのは、普通のやつには到底理解できない話だ。

・・・あ?、どんな話かって?


・・・異世界トリップ。



・・・

・・・・・

・・・・・・だよな~。


普通なら相手にしないだろうな~。

むしろ、こんな話を話したら間違いなく変人扱いだろ?。


だが、俺は一つのうそもついていない。

俺が言っていることはすべて真実だ。



まあ、かなりざっくり話すなら。



俺が18のころ、この森で迷った所に一人のババァが来て、俺を洞窟に拉致ってったんだよ。

それで、俺はそのまま洞窟の中に放り込まれて、気がついたら異世界ってことよ。



・・・まあ、ぶっ飛んでるよな話的に。

洞窟に入っただけで異世界とか、普通の奴なら信じない。


だが、子供やイカレタやつは別だ。

俺は一度だけこれを話したことがあるんだが、そいつは楽しそうに俺の話を聞いてたよ。

俺はそれが嬉しくてな。

そこで見たなぞの生物や、不思議な技術や力のこと、終いには固有名詞や自分の身に着けた力のことなんかも事細かに話しちまった。


それがいけなかった。


俺はその後、そいつに軟禁されて色々調べられたよ。



「おじちゃんどうしたの?暗い顔して・・・」



気付くと、俺は黙り込んでしまっていたらしい。

クソガキが俺の顔を覗き込んで、心配そうな声で俺を見ていた。


ああ?、なんだよクソガキ。

顔が近ぇよ。


俺はがきの顔をぐいと引き離すと、「何でもねぇよ」と手を軽く振って答えた。



「ねぇねぇおじちゃん、その力ってどんな力なの?」


「んん?、そうだな・・・相手の脳みそを内側からズタズタにするんだよ。」


「ええっ!!!!」



俺が適当なことを言ったら、ガキは目を真ん丸にさせてでかい声で叫び声をあげた。

そして、少し震えながら自分の頭を両手で覆った。



「何やってんだ?」


「守ってるの」


「さっきの嘘だ、俺にはできねぇ~よそんなことは。」



すると、ガキは頬袋をパンパンに膨らまして俺の方をたたいてきた。



「あ~イテェイテェ。このままじゃ俺の肩が抜けちまうぜ~。」



俺はあからさまに痛がるフリをして、ガキが落ち着くまで適当に反応しておいた。



「おじちゃんのバカッ!!、変人ッ!!、もじゃもじゃ頭~~~!!!!」


「はいはい、俺はバカで変人のもじゃもじゃ頭・・・って誰が変人だクソガキッ!!!!」



俺はガキの頭をスコーンッと一発入れてやると、ガキは頭を押さえてその場に蹲った。



「~~~~ッ!!」



ガキはプルプルと震えながら、必死に何かを堪えている様だが、不意に俺を見上げてきたとき、ぽろぽろと涙を流しながら俺を睨んできていた。


やべ、泣かしたか?

くっそ、めんどくせぇ。


俺は頭をがりがり搔きながら視線を逸らした。



「・・な、なに・・に・・する・する・るん・だよぉ~~~」



ガキはシャックリ交じりにそう恨めしそうに言うと、ついに泣き出してしまった。


あ~あ~あ~。

うるせ~。


俺は両耳をふさいでどうするか考えていたが、俺が何かする前にガキは突然ピタリッと泣き止んだ。



「どうした?」


「・・・・来る」



ガキは突然真剣な表情でそういうと、俺の服をがっしりと握りとんでもないことをしてくれた。



「☆〇■※Х§~~~~!!!」


「うわっ?!、お、お前!!、ちょっ!!、向こうでやれ~~~~~!!!!!」



ガキは、泣くのを我慢しすぎて気分を悪くしたようだ。

胃の中にあったものがあたりに撒き散らされた。

しかも、俺の服に思いっきり・・・。





もうまじ、勘弁してくれよ。













=====しばらくお待ちください=====











夏のムンとした熱気を含んだ風が、洗濯した俺の服をなでる。

森の中なのも起因し、風はよく吹くのだが日差しが入ってこない。

乾いても、少しジメッとした感じがするかもしれないな。



俺の服は、あいにくあれしかないから、汚れたら脱いで洗うしかない。


つまり、俺は今半裸だ。

パンツ一丁のすばらしい格好で服が乾くのを見守ってるぜ。


ついでに、デロデロになったガキの服も洗ってやった。

こいつもあのままじゃ臭くて堪らんからな。

はじめは嫌がったが、適当に言いくるめて服を脱がせた。


しかし、そのとき初めてきずいたんだが・・・



「ううっ・・・ヒック・・・もうお嫁にいけない・・・」



こいつ女だったのか。

気付かんかった。


ガキは俺の部屋から持ってきた布団に包まって、ずっと泣きじゃくっている。


知らなかったとはいえ、無理に服を脱いでもらたからな~

一応女だしなこいつ・・・


俺は少し申し訳ない気持ちになったが、そんな気持ちはすぐ何処かに飛んでいってしまった。


(きっとあれだ、この気持ちは生暖かい風に持ってかれたんだな・・・うん・・・。)


俺は斜め上をボーッと眺めながら、ソヨソヨと髪を揺らす風を感じていた。

すると、隣でガキが俺のことを涙目で見つめてきているのに気が付いた。

睨んでいるわけでもなく、かといって好意を向けているわけでもない。

あえていうなら・・・無表情?



「おじちゃん、・・・責任とってよ。」


「俺はロリコンじゃない。それに、俺に責任はない。」



俺がそう即答すると、ガキは顔を真っ赤にさせて立ち上がった。



「おじちゃんが無理やりやらせたんじゃないかっ!!!」


「知るかっ!!!お前がゲロッたからだろがっ!!!!」


「僕のこと殴ったのが悪いんじゃないか!!!この変態!!!」


「ああ?!、っんだとクソガキ!!!今すぐもう一発殴ってやろうかゴルァッ?!」



俺は思いっきり暴言を吐いてから、片手を高く上げて威嚇した。

ガキは見事にひるみ、布団の中にすっぽりと頭まで隠れた。

よし、これで静かになるだろう。

しばらくの沈黙の後、俺は隣にいるガキの言葉を聞いた。




「・・・ロリコン変人」(ボソッ)


「よーし、動くなクソガキ。今すぐ布団ごと縛って川に捨ててやるぜッ!!。」



俺は布団ごとガキを抱え込むと、そのまま近くのつたを使って布団をぐるぐる巻きにしようとした。

当然、ガキは暴れるわけで、俺の顔をけったり噛み付いたりと多種多様な攻撃方法をしてきた。

ひとしきり暴れまわったガキはぐったりと地面に倒れて荒い息をしていた。

かく言う俺も、肩で息をしながらガキを捕まえていた。

当然俺の圧勝なのだが、クソガキは往生際が悪く、大人しくさせるのだけで大変だった。

また暴れると面倒だから、近くにあったツルを使って布団ごと縛り上げ、ギリギリ足が着かないくらいの木から吊るして身動きが取れないようにした。

その姿はまるでミノムシのようで、正直笑えた。


・・・というか笑った。

指差しながら思いっきり。



「おろしてよ!!!おじちゃん、大人気ないよ!!!!」

「うるせぇクソガキ、お前はそこでおとなしくミノムシやってろ」



俺がそういうと、クソガキはムッとした顔をして俺を睨み付けてきた。



「クソガキクソガキって、僕にはちゃんと“メリアス”って名前があるよ。」



すると、クソガキ・・・メリアスっつったか?はプイッとそっぽを向いた。

顔を横に向けた勢いで、メリアスはゆっくりと回り始めた。

止まろうとジタバタしているようだが、動けば動くほど余計に状況は悪化した。



「僕にこんなことして、ただで済むと思ったら大間違いだよ。」


「ああ?何があるっていうんだよ。」



すると、メリアスはニヤリッと怪しい笑みを浮かべた・・・と思う。

正直、回ってるからはっきりとわからん。



「こう見えて僕はとある国の・・・・ちょっと事情があt・・・・もし本当の姿・・・・ぃちゃんなんてイチコロだよ。」



メリアスは得意げに話しているが、くるくると回っているせいでほとんど理解できなかった。

俺が微妙な表情をしているから、それがわかったのか、メリアスも微妙な表情を浮かべた。



「・・・おじちゃん。止めてくれない?」


「俺にメリットがない。嫌だ。」


「僕の大切なものあげるから。」



俺はそれを聞いて少し考えをめぐらせた。


大事なものだあ?

どうせその変に落ちてた葉っぱとか石だろ?


俺は自分の中で確認するようにそう言ったが、メリアスのさっきの断片的な話を思い出した。


たしか、“何処かの国の何か”とかってたはずだ。

もしかすると、こいつはいい身分の貴族なのかもしれない。

そう考えると、大切なものってのも期待できるんじゃないか?。


そこまで考え、俺はもう一度メリアスを見た。

メリアスは、下を見ながらきょろきょろと首を動かしている。

どうしても地面に降りたいんだろう。



「・・・」



俺はそんな様子を見て、あることに気がついた。


(これ、誰かに見られたらマズイな)


俺は冷静な思考で考え始めて、やっとそれに気付いた。


子供を宙吊りにしているうえに、こいつは服を着ていない。

はたから見たら、俺はただの変質者でメリアスはかわいそうな被害者ってことになるな。

・・・・ヤバッ!それだけは勘弁だ!!!



俺はそこまで考えると、慌ててメリアスをおろしてやった。

そして、俺はメリアスに待っているように伝えると、急いで家の中に戻り、メリアスの着られそうな服を探した。

当然あるのは俺の服なのだが、できるだけ小さいものを探した。

そして、衣装タンスの奥に昔使っていた作業器用のつなぎを見つけた。


(これでいいか?、・・・あ~めんどくせぇ!!とりあえずこれ着せとけっ!!)


俺は心の中で悪態をつくと、つなぎをタンスからむしりとると、家を飛び出した。



「おら、服乾くまでこれ着てろ」



俺はつなぎをメリアスに差し出した。



「?、これなに?」


「昔俺が使ってたつなぎだよ。」



メリアスはそれを聞くと、つなぎに顔を近づけ匂いをかぎ始めた。



「臭くねーよ!!もし臭ったら古いからだ!!!」



俺は半ばキレながらそういうと、メリアスはしぶしぶといった感じで俺のつなぎを持って家の中に走っていった。

俺は大きなため息を吐いて、頭をボリボリとかいた。


(・・・あ~めんどくせぇ。これだから人間相手にするのは。)


俺はそのまま地面に体を投げ出した。

両手を頭の後ろに滑り込ませ、ボーッと空を見た。

ここは、ちょうど木々がきれいに開けている場所で、健康そうな緑と青が俺の視界に広がる。

たまに通り過ぎる雲は、見ていると時間の流れがゆっくりになっている様な感覚を味あわせてくれた。


(はあ~、そうそうこういうのだよ。俺が安らぐ時間ってのは。)


俺は満足げに息をを吐き出し、ゆっくり目を閉じた。


こんまま寝たいな。

・・・そういえば、まだ朝早いんだもんな。


俺は青の中に太陽が映りこんでいないのを確認した。

おそらく、AM9;00くらいだろう。

メリアスが来る前までは、まだ夢の世界にいた時間帯だ。

俺は小さく舌打ちをして、ごろんと寝返りを打った。



「まったく、めんどくせぇな本当に。」


「何が?」



突然頭の上からあの耳障りな声が聞こえてきた。

いやいや声のしたほうを見ると、やっぱりそこにはメリアスがいた。

俺はわざといやそうな顔をして、体を起こした。



「お前のことだよ。」



そういって、俺はメリアスを見た。

やっぱり俺のつなぎは大きかったようで、裾や袖がかなり余ってズルズル引きずっていた。

首周りも少し大きいようで、まるでお父さんの服を着た子供まんまかよ・・・のようだった。



「・・・大きい」


「我慢しろ、それなら安心だし、寒かったらその上から布団被ってろ。」



俺はそういって布団を投げつけると、自分の服を取りに家の中へ入った。

もしかすると、少し小さめの俺の服が残ってるかもしれない。



「ありがとう」



突然、背後からそんな言葉が聞こえてきて、俺は振り返った。

メリアスは、布団のを羽織ながら少し恥ずかしそうに口元を隠していた。



「気にすんな。俺が困るからそうしただけだ。」



あのまま放置したらまずいし、風邪なんて引かれたらもっと面倒だ。

俺はボリボリと背中をかきながら家の中に入った。

そして、衣装タンスをあさり、何かないか探した。

タンスのちょうど真下、シワシワになって落ちていた服の山にあるものを見つけた。


(・・・ん?、これは。)


俺は気になってそれを引っ張り出してみた。

その服は、昔ふざけて買った仮想用の服だった。

バカ長いマントに長い剣、それに無駄にごつごつした鎧とカブト、そして動きやすそうな短パン。

俗に言う“勇者服”ってやつだ。


(うわっ、こんなのあったのか。)


俺は渋い顔をして、手に持った勇者服を見た。

着るのは勘弁したいが、今の俺はパンツ一丁だ。

こんな格好では外にもいけないし、メリアスつれてこの格好ってのもまずい。


(背に腹は変えられんか・・・)


俺は手に持った勇者服を着ることにした。

もちろん、鎧だのカブトだのは着る気は起きない。

短パンと中のチョッキみたいなのだけだ。

着替えが終わると、目の前の鏡に俺の姿が映った。


・・・うわ、洒落にならん。


俺は鏡に映った自分を見て思わず顔をしかめた。



「これは、誰にも見られたくねぇな。」


「どうして?かっこいいじゃん」


「・・・・・・」



最悪だ。

何でここにいんだよ・・・


俺を見ながらニコニコ笑ってるメリアスを見て、ため息をついた。


ほんとに、ガキってやつは・・・

勘弁してほしい。



「そういえば、さっきの約束だけど。」


「あん?」


「ほら、僕の大切なものをあげるってやつだよ。」



あ~、さっきのことだったがすっかり忘れてた。

あれマジなのか・・・


俺はワザとらしく首をかしげた。



「とぼけないでよ。いいから貰ってよ。約束したし。」


「あ~、いいのか?大事なもんだんだろ?」



ちょっと引き気味の態度の俺だが、内心こうしておけば絶対にもらえるだろうと踏んでいる。


これなら、相手には何の負い目の感じないし、俺もお宝が手に入る。

・・・まあ、どうせ石ころとか良くて金だろ。


俺はそんなことを考えていたが、メリアスの大切なものはそんなものではなかった。









「僕の作った大切なのも、“異世界”をプレゼントするよ。」














・・・・




・・・・・・・






・・・・・・・・・・・・は?

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