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後編

 白くぼやけた光景が目の前に広がり、うっすらと見える人影が二つ。

 一つはボク、もう一つは渡瀬。

 いったい何の話をしているんだろう?音なんて聞こえない。

 ボクは泣いてるの?笑ってるの?わからない。

 渡瀬はいったいどんな表情をしてるの?

 目を凝らしたってそんなもの見えない。ただ見えるのは、ボクの胸に抱えてる花だけ。

 その花は、小さなつぼみが今にも開きそうなのに、なかなか開かない。

 だけれど、きっと花が咲いたらとても綺麗なんだろうな。

 それが見たいと思った。けど、そのときに隣に渡瀬が居たらもっと素敵なんだろうな。

 もっと、花を見たくて、渡瀬に近づきたくて、駆け足で二つの人影に向かって進んだ。

 渡瀬は、ボクに気がついたみたいでこちらを振り向いた。だけど、渡瀬の表情なんて見えなかったんだ。……そこで、目が覚めてしまったから。

 いったい、最後に渡瀬はどんな表情をしていたんだろう?

 それがとても気になった。

 

 ◆


 今日はボクの誕生日だ。

 さっき見た夢が頭から抜けて出て行きそうになるのを必死になって食い止めようとしていたんだけれど、どうしても食い止めることができなかった。一つだけ印象として残ったのは、最後に渡瀬の顔が見れなかったこと。もしかしたら、これは何かの暗示なのかもしれない。今日、渡瀬に告白しても断られてしまうかもって言う予感。そんなものが、頭の中をぐるぐる回り続けて、ボクの決心を鈍らせていた。

 そんな感情が渦巻いていても、今日はボクの誕生日。友達からの祝福の言葉をメールで受け取りつつ、『おめでとうメール』に返事を打っていた。

 今日から17歳。特に感慨も無く年をとったという感じ。

 というか、今更誕生日だからどうのこうのということは無いんだけどね。

「とりあえず、レイおめでと。だけどね、もうお昼前だよ?誕生日なのにいつもと変わらないわね~」

 お昼ごはんの下ごしらえをしながらお母さんがニコニコしながら言ってきた。

「ん。ありがと。それより、今日の晩御飯、ハンバーグが良い」

「はいはい、いくつになってもレイはハンバーグが好きだね。腕によりをかけて作ってあげよ~」

 ボクの家は、いつからか忘れてしまったけれど誕生日の日は晩御飯をリクエストしたものを造ってくれるというシステムになってる。

 そして、お母さんの料理はおいしいからこの日が結構楽しみであったり。

「そういえば、昨日買ってきてた服かわいいね」

「あ~、あれね。友達に選んでもらったの」

 そういうと、お母さんは含みのある顔を向けてきて

「友達って、ちょっと前までよく来たりしてた男の子?」

 にやぁ~っとした顔をしてボクの回答を待っている。

「違うってば。真紀っていう子だよ。それに渡瀬とは最近遊びに行ってないし」

「そうなんだ。てっきり付き合ってるんだと思ってたんだけど。レイも隅に置けないなって思ってたんだけどね。残念」

 そういうとお母さんは洗濯物を干しに行くといってリビングから出て行った。

 バタンと音を立てながら扉が閉まる。

 リビングにはテレビの中でしゃべってるタレントの声が響いていた。

 その微妙な空間がボクの決心を鈍らせようとしてくる。

 いつもと同じ日曜日のお昼過ぎの風景。このまま『いつもどおり』に過ごせば、もしかしたら渡瀬との関係も今までどおりで続けることが出来るかもしれない。

 そんなズルイ考えが頭を支配しようとしてくる。

 けれど、本当にそれでボクは満足なの?

 満足かどうかなんて問う必要が無いくらいはっきりしてるんだ。

 なのにどうして決心が鈍るの?

 それも簡単だ。考える必要すらない。決心が鈍る原因は『恐怖』だ。

 渡瀬と今までどおりの関係を壊してしまうかもしれない。渡瀬にボクの気持ちを拒否されるかもしれない。

 たぶん、今のボクにとってそのことがとてつもなく怖いんだ。

 だけど、このまま今日という日を過ぎてしまうとこの気持ちは永遠に伝えられないような気がしてくる。今日は誕生日、ボクにとっては少しだけ特別な日。そんな日に勇気をもらってこの気持ちを伝えないとボクは……きっと伝えられない。

 そう心の中で思っていても行動に起こせないボクは臆病者だ。


 お母さんが作ったお昼ご飯を食べた今現在、時計は13時半を指していた。

 まだボクは行動を起こせないままだけど。

「ほら、レイ。家でごろごろしてるとだめ人間になるよ?散歩にでも行ってきたらどう?」

 同じく、ごろごろしてるお母さんが言ってきた。

「お母さんも、ごろごろしてるじゃん。だめ人間になるよ?」

 ぐるりと寝返りを打って、テレビからボクに向き直った。

「お母さんはね、家事で働いてるから良いのよ。けど、レイはなにもしてないでしょ?ほら、お母さんの勝ち~」

 にこーっと笑うお母さんは、どうみても小学校の子供がするような表情だ。

 …実際は40過ぎたおばさんなんだけれども。言ったら怒られるから、言わないけど。

「はいはい、じゃあ散歩にでもいけばいいんでしょ?」

 半ばやけになりつつも、外に出る口実が出来てしまった。

 揺らいでいた決意が、まだゆらゆらと揺れているのに外に出てしまっていいんだろうか?けど、出かけないことには渡瀬に会うことも出来ないし。

 まぁ、少しくらい外を歩いた方が良い考えが浮かぶかもしれないし、ちゃんと告白する心の準備も出来るかもしれない。

 そう考えると、散歩も悪くないなと思えてきた。それだったら、せっかく外に出るんだから、昨日真紀と買った服でも着ていこうかしら?そんなこと考えつつ、自分の部屋へ戻った。

 さっそく、昨日買った服を取り出してみる。

 ボクには似合わなそうな真っ白なワンピース。こんなのが似合うのなんて、どこかしらのお嬢様とかくらいだ。

「どうして、こんなのを真紀はボクに着せようとするかなぁ?」

 一人で愚痴ってしまう。自分で似合わないとわかってるものをわざわざ着るなんてバカげてる。

 けど、やっぱり友達が選んでくれた服というものはうれしいもので、一度くらい着てあげようなんて考えてしまう。

 やっぱり、今日はボクにとってトクベツな日なのだから、少しくらいいつもと違うことをしてしまっても良いのかな?……今日はトクベツなんだ。だから今日くらい似合わないことをしてもおかしくないよね。

 そう一人で勝手に結論付けて、ワンピースを着始めた。



 現在の時間は2時を少し回ったところ。

 セミの大合唱はすこしだけその音量を落としていた。

 家を出てから大体10分くらい歩いたところ。いつもは自転車で通っているんだけど、久しぶりに歩いてみると結構な距離に感じてしまう。

 そして昨日に引き続き、自己主張が激しい太陽の攻撃が降り注いでいた。

「あ、あつい……」

 お母さんに追い出されるように家を出て、散歩を始めたのは良いんだけど、行き先設定を間違えてしまった。

 どうして、久しぶりに昔遊んだ公園に行こうだなんて思ってしまったんだろう。10分前の自分をけり倒してやりたい気分だ。

 まぁ、目的地の公園は目と鼻の先なんだけどね。

 

 小さいときによく遊んだ公園は、昔と全然変わっていなかった。

 小学生くらいの子供たちが元気にはしゃぎまわってるのがよく見える。もともとそんなに大きな公園ではないんだから見えて当たり前なんだけど。

 数少ない遊具には少年少女たちが群がっていて、さながら戦場のようだ。

 ボクは、日陰になっているベンチに腰をかけてその様子を見ていた。

「ほんと、子供って無駄に元気よね」

 気がついたら、言葉が口から零れていた。

 子供たちの保護者が近くにいたんだけども、ボクの発言を特に気にした様子は無い。

 子供たちの保護者たちは日陰には入らずに、日向でおしゃべりを続けている。

 こんなに暑いのにどうしてそんな風にしゃべっていられるんだろう?そんな疑問が頭をよぎったんだけども、どうでもよくなって考えるのを辞めた。

 さんさんと光り輝いて降り注ぐ太陽、耳をつんざくような大きな大合唱をするセミの鳴き声、何処までいけそうな気がしてくる青空。

 どれもこれも、夏という季節を精一杯放ち続けている。

 だけど、ボクの心はこの太陽みたいに輝いていないし、ボクの感情は驚きや感動の音なんて久しく鳴らしていないし、ボクの気持ちは何処にもいけない大雨ばかりが降っている。

 夏とは全く逆の位置にボクは存在してる。

 原因は何か?

 その質問に答えるのは簡単だ。

 原因を取り除けば良いんじゃないか?

 それが出来たら、とっくにしてるよ。出来ないから、こんな格好の悪い気持ちを引きづり続けてるんだ。

 葉山麗、お前は何がしたいんだ?

 ……ボクは何がしたいんだろう?

 一人、自問自答。結局自分の気持ちは自分でさえも把握していない。

 ここに来たら、何か結論が出るかもって言う期待はあった。けど、実際は家で一人考えているのと変わらない。環境を変えたって、ボク自身が変わっていないんじゃ何も変わってないのと一緒じゃん。

 はぁ、心の中で一つだけ大きなため息をつく。

 ふと、視線を上げると、さっきまで日陰だったところに太陽が当たっていた。

 そこには、色とりどりの草花が元気に咲き誇っている。

 黄色っぽい花を咲かせている草花が目に入った。

 これは、ニッコウキスゲ、ボクの好きな花の一つ。

 一つの花は一日でしぼんでしまうんだけど、一つの茎にたくさんつぼみがあって順番に咲いていくって言う花。

 『明日があるよ』って励ましてくれてるみたいで好きだ。

 たしか、この花も渡瀬の家の店においてあったような気がする。

 ほんと、渡瀬の家の見せにおいてる花は、ボクの好みの花ばっかりだ。

 初めてあの店を訪れたときもそうだった。あれは、去年の夏休みごろだったと思う。

 高校1年生になり、今までの自分から抜け出したくていろいろしていたんだけど、何をやっても空回り。だんだんボクの周りから人が離れていっていた時だ。

 あの時は、全然花に興味は無かったんだけど、渡瀬の店の前を通ったんだ。……あのときは渡瀬の家だなんて知らなかったけど。

 そしたら、ほかの花屋とは違って花が輝いて見えたんだ。気のせいかもしれないけれど、そのときのボクの目には確かに輝いていたんだ。

 そして次に目に入ってきたのは、その花を楽しそうに育ててる加奈子さんだった。まぁ、加奈子さんは渡瀬のお母さんだったんだけどね。

 気がついたら、ボクは加奈子さんに話しかけていた。どんなことを言ったのかまでは覚えていないんだけど、とても優しくボクの話を聞いてくれた。

 たぶん、そのときのボクの話し方もぶっきらぼうですごく嫌な気持ちにさせたかもしれないけど、それでもちゃんと最後まで聞いてくれて、ちゃんと答えてくれたってことがボクにとってはとてもうれしいことだった。

 それからだったかな?加奈子さんのところに出入りし始めたのは……。

 いろいろあったんだけど、加奈子さんのススメで花に話しかけて、人と話す練習もしたっけ。いろいろと、花の勉強もして自分で育てる喜びとか楽しさとかをいっぱい教えてもらった。

 めげそうになったこともいっぱいあるんだけど、やっぱりボクも人並みに楽しい高校生活を堪能したい。その一心でがんばってた様な気がする。

 その頑張りに目を留めてくれたのが渡瀬だ。始め屋上に呼び出されて告白されたときは、馬鹿にされたような気がしたし、笑われてる気もしてた。けど、あいつの真剣な気持ちとかがあいつの言葉一つ一つから伝わってきて、本気でボクのことを好きになってくれたんだと感じた。

 もっと渡瀬のことが知りたくてボクからお昼ご飯を食べに行こうって誘ったんだったっけ?そこでもいろいろ話したなぁ、渡瀬の嫌いな食べ物とか嫌いな食べ物。

 どうしたらもっと人と楽しく過ごせるようになるかとか。確かあのときに、毎週どこかへ出かけながら人と接する練習しないか?って提案してくれたんだっけ?

 毎週出かけるようになって、渡瀬としゃべるようになって、そのお陰でボクは2年生になってから、友達が出来るようになったんだ。ほんと、渡瀬には感謝してる。この気持ちは本当だ。

 けれど、2年生になってボクに友達が出来たように、あいつにも新しい出会いがあった。それが三浦だ。

 ゴールデンウィークが明けたくらいから、三浦が渡瀬にくっつくようになってきて、とにかくイライラした。

 ボクは、どこか油断していたんだろうね。渡瀬を好きなる人がほかに出てくるはずが無いって、けど、魅力の無い人ならボクも好きにならないはずなのに。

 三浦の出現がボクの気持ちを加速させたんだ。渡瀬が痺れを切らして、また告白してくるのを待っているつもりが、いつの間にか、渡瀬の気持ちがボクから離れていた。

 まったく、笑えない話だよ。一番大事で一番欲しかったものをいつの間にか無くしてしまうなんて。

 それでも、渡瀬は優しい奴で一昨日みたいにボクを気にかけてくれている。

 そういう渡瀬の行動が、ボクにまだ気があるんじゃないかって言う期待をさせてくる。だけど、渡瀬の普段の行動を見ていたらボクに気がなくなったのは一目瞭然だ。だけど、ボクが渡瀬を好きだっていう気持ちは、変わらなかった。むしろ、加速度的に肥大化を繰り返して、もうどうしようもないくらいに膨れ上がってしまってる。

 ボクはこの気持ちをどうにかしないと壊れてしまう。ストーカーなんて犯罪じみたことなんてしないけど、それでもこのままじゃ何処にもいけない。せっかく渡瀬がボクに開いてくれた道はたくさん有るのに、ボクが立ち止まっていたらなんにもならない。

 だから、ボクはこの気持ちの結末がどういうものであれ、受け入れないといけない。

 ……ああ、そうか、ボクは結末を知るのが怖いんだ。

 だから、今もこうして逃げてる。今日はボクにとってトクベツな日なのだから、勇気を振り絞ろうって昨日決意したはずなのに、逃げちゃってたんだ。

 馬鹿だなボクは……自分の気持ちから逃げた結果が今の状況なのに、学習能力が無いんだ。

 ふと、自分の思考から現実に目を向けるとニッコウキスゲがこっちを見ているような気がした。

 ……そうだね。明日があるもんね。ボクがんばるよ。

 そう心で呟いて、次にとるべき自分の行動を決めた。

 


 公園に着てからいったいどれくらい時間がったんだろう?この公園には時計というものが存在していないので、確かめる術が無い。

 無いって言っても、公園には無いという意味で、自分のもっている携帯電話の時計を見れば時間を知ることくらいは出来る。

 まぁ、今ボクはこの時間を楽しんでいるんだから、わざわざ現実に戻るような行為をするつもりは無いんだけどね。

 遊んでいた子供たちが、親にお菓子をねだって公園から出て行ったのがついさっきだから、たぶん3時を過ぎた頃なんだろうと思う。

 ボクが公園に着いたのが2時すぎだから、大体1時間をこの公園で過ごしたことになる。

 結構飽きっぽいって言うのを自称しているんだけど、1時間もベンチに腰掛けてボーっとしているなんて、ボク自身が驚きだ。

 太陽も2時過ぎに比べたら幾分傾いていて、ベンチに被っていた影もその範囲を広くしている。

 

 さて、1時間もここに座って何をしていたか?

 自分自身、大したことをしていない。遊んでいる子供たちを眺めて、軽く癒されたような気がする。

 自分の子供なんて生んだことも育てたこともないから、親の気持ちなんてわからないと思うけど、見守るっていう行為が少しわかったような気がした。

 そして、花壇に植えられた花を見ていた。

 よく見ると、最近植えられたらしく、土の色も新しい土を足したのか、色がまだ馴染んでいない。

 それでも大事に植えられたのがわかるくらい、丁寧に植えられていた。

 そして、そこから渡瀬を連想して、今の自分の気持ちを整理していたんだった。

 結局のところ、答えなんて初めから決まっていたのかもしれない。だけど、その答えが導き出す結果を知るのが怖かったんだ。それに、再確認したことがある。

 それは、ボクが渡瀬を好きだって事。

 この恋がどんな結末を迎えようとも、ボクはそれを受け入れる。

 たとえこの気持ちを受け取ってもらえなくても、そこからボクは歩き出さなきゃいけないんだから。

 このまま立ち止まってちゃいけないんだ。

 自分自身に気合を入れて、自分の両足に力を入れて立ち上がろうとしたその時、公園の入り口に二人分の影が伸びていた。

 

 これを偶然と呼ぶんだろうか?

 会いに行こう、そう思っていた相手が、今目の前に居る。

 けど、その隣には……三浦が居た。

「あれ?葉山さんじゃん!奇遇だね?何にしてたの?」

 左右二つの三つ編みを揺らしながら、わざとらしく首をかしげる。

 その隣で、目を丸くしている渡瀬が居た。

 少し……いや、かなり動揺した表情の渡瀬。それはそうだ。ボクとの約束を蹴ってまで、三浦と会っていたんだから。

 ボクと渡瀬に特別な関係なんて無くても、後ろめたくなるのは仕方ない。

 それに、ボクだってショックを受けてる。

 そりゃ、多少予想は出来ても、実際目の前で見せ付けられたらかなり胸が苦しくなる。

「ん~?渡瀬君と葉山さん、見詰め合っちゃって何してんの?」

 かなり、うざく話しかけてくる三浦。心なしかすこし、イライラしてるみたい。

 けど、そんなの全く気にならないくらい、ボクの心は静まっていた。

 ボクは、前に進みたいだけなんだ。渡瀬がどう思っていても関係ない。ボクは、ボクの為に伝えたいんだから。

 渡瀬は気まずそうに、口を開いた。

「いや、その、なんていうか、ごめんな」

「何で謝んのよ。別に、ボクはとやかく言うことじゃないし。」

 何に謝っているのかも、わかってる。

 けど、ほんとにそんなの今はどうでも良かった。

 そして、ボクが口を開きかけたときに、三浦がかぶせてしゃべっていた。

「そうそう、葉山さんがとやかく言う筋合い無いよね。今、二人の世界に入ってたみたいで、私が邪魔みたいになってたけど、実際邪魔なのは葉山さんなんだよ?はやく、渡瀬君を解放してくれない?」

「なに言ってんだよ。別に邪魔とかじゃないだろ?そんな言い方はないと思うぞ?」

「邪魔だから、邪魔って行ってんじゃん。ほら、花壇に花を植えるんでしょ?早くしようよ」

 そういうと、三浦は渡瀬の手を引いて花壇まで歩いて行こうとしていた。

 渡瀬はこっちを向こうと必死だったけど、強引に連れて行かれていた。

 三浦の言ったことは、確かに正しい。今、この状態を見ればどちらが邪魔者かなんて、一目瞭然だ。今のボクはただの邪魔者。確かに邪魔者だ。だけど、邪魔者には邪魔者なりに考えや気持ちがある。相手の言ってることが正しいからといって、引き下がれない。今のボクは、引き下がっちゃいけないんだ。

 それに、この花壇を造ったのが渡瀬だと聞いてやっぱりと思っていた。

 こんなにも、暖かくて、優しくて、花たちが生き生きと咲いているんだ。

 この花壇を造ったのは、とてつもなく優しい人。それが、渡瀬だと分かって安心した。

 この人を好きになって良かった。

「確かに、ボクは邪魔だよ。それは分かってる。わかってるけど、一つだけ言わせてほしい。」

 渡瀬と三浦が同時に振り向く。

 文句を言おうとする三浦だけど、この言葉だけは邪魔させない。

 これは、ボクのけじめ。ボクのスタートの合図。

 ボクは、お腹いっぱいに吸い込んだ空気一気に吐き出して、力いっぱいに叫んだ。

「渡瀬が好きだ!!!」

 やっと言えた。

 やっと渡瀬に伝えたいことが言えた。ずっとずっと言いたくて、けど言えなかった事。『好き』という言葉。この言葉をもっと素直にいえていたらこんな結末にはならなかったのかもしれない。けど、こうなったのも自分が悪いんだから受け入れないといけないよね。どんな返事が来るかなんてわかりきってる。だけど、ボクはそれを受け入れるだけの覚悟をしてるつもりだ。

 だけど、次に口を開いたのは、渡瀬では無かった。

「そうなんだ。だけど、残念ね。渡瀬君は今、私と付き合ってんの。だから、葉山さんは失恋ってこと!あははっはは、いきなり叫んじゃってばっかみたい」

 頭から冷水をぶっ掛けられた気分。高ぶっていた気持ちが、一気に地底深くまで沈んでしまった。

 渡瀬のカノジョなのだから、それくらい言う権利がある。だけど、こういうのは渡瀬の口からちゃんと聞きたかった。覚悟していたはずなのに、ココロが苦しくなる。ふと浮かび上がったイメージは、夢で見たボクが抱えていた花が枯れていくイメージ。……そうか、あの花はボクの恋心だったんだ。

「そっか、そうだよね。あんなに一緒にいたもんね。うん、わかった。ごめんね、デート中に。」

 泣くな。泣くな!

 そう思っても、目からは涙が止まらない。

 覚悟していた痛みが、ズタズタにボクのココロを傷つけていく。もう届かない渡瀬を実感して悲しい気持ちがココロを支配する。

「三浦!なに言ってんだよ!」

 渡瀬、今更焦っても遅いよ。 

 もう、ヤダ。

 もう、こんな顔、渡瀬に見せたくない。こんな泣き顔なんて見せたくないよ……

 ボクは、渡瀬の言葉なんて聞かずに家に向かって走り出していた。

 

 ボクは、失恋した。

 けど、これでボクは次に向かって歩き出せる。

 今日は、力いっぱい泣こう。明日から、笑って過ごせるように。

 そう、明日があるんだから。

 ……そう思おうと思った。けど、そんなの綺麗事だ。

 どれだけ、前向きに考えようとしても、涙が次から次から溢れ出してくる。

 どれだけ、前向きに考えようとしても、悲しい気持ちがあふれ出して止まらない。

 どれだけ、どれだけ……どれだけ渡瀬を想っていてもこの気持ちは届かない。

 それが、とてつもなく悲しかった。

 


 家に帰ってすぐに自分の部屋に引きこもった。

 泣き顔なんて親に見せたくなんか無いし。

 昼真っから引きこもり、健全な高校2年生のすることじゃないね。

 けど、ボクは今外に出ることなんて出来ない。

 一度決壊したダムは、中の水が全てなくなるまで流出する水を止めることは出来ないのと一緒でこの涙を止めるのも無理だ。

 今日はこのままでいいや。

 とりあえず、いろいろ疲れた。

 ボクは、そのままベットに横になって眠ってしまっていた。

 

 ボクの目を覚まさせたのは、携帯電話のバイブレーション。

 腫れぼったいまぶたをこすり、誰からの着信かも確認しないまま電話に出た。

「もしもし」

「あ、やっとでた!今レイの家の近くの公園にいるんだけど、渡瀬君がいるんだよ!今がチャンスだよ!ほら、早く来て!三浦が近くにいるけど、それは私が何とかするから」

 そっか、まだ真紀に報告してなかったんだった。

「まだ居たんだ。せっかくだけどごめんね。今日のお昼の3時くらいに告白して玉砕してきたところなんだ……ごめんね」

 自分で言って、また傷ついた。ほんとボクの心は弱りきってるみたいだ。

「はぁ~!?嘘でしょ!?絶対何かの間違いだよ!!ちょっと渡瀬君に聞いてみる。だから、レイも早やく公園まで来て」

「ちょっと待ってよ。振られたって」

 ブチっと電話が切れた音がした。

 ボクの返事も待たないで切るなんて……

 これじゃ、『行きたくない』なんて言ってられないじゃない。

 振られたところに、また行くなんて、精神的にもきついんだけど。

 それに、たぶんまだ三浦も居るし……

 それでも、行かないといけないんだろうな……

 鉛のように重たくなった体を無理やりに起こしていく準備を始めた。

 ふと、時計を見ると午後5時半、あれから2時間半も眠ってたみたいだ。

 渡瀬に告白するために真紀が選んでくれた服も、そのまま寝てしまったから、しわまみれだ。

 こんなの真紀に見せたら怒るんだろうな。渡瀬には見せたし、こんなしわになっててももう良いかな。

 どうせ、もう可愛い格好をしても、こっちには振り向いてくれないの確定だし。

「お母さん、ちょっと友達と公園で話してくる」

 そうお母さんに声をかけて玄関を出た。

 玄関においていた自分の自転車にまたがる。

 外は夕方になりつつあるけど、まだまだ日が高い。

 小さいときは、まだまだ遊べると思っていたけど、こうなってしまえば太陽が沈むのはすぐだ。

 まぁ、暗くなる前には家に帰りたいとか考えていたりする。とりあえず、待たせるのも悪いから急いで公園に向かいますかね。

 

 お昼ごろは歩いて10分くらいかかった公園だけど、自転車で行けば5分とかからない。

 夕方の少し涼しくなった風が頬を掠めていくのがすごく気持ちが良い。

 なんだか、お昼にあった出来事が夢見たいな気分になってくる。

 結果がどうであれ、受け入れなければいけない。覚悟はしていたつもりなのに、受け入れたつもりなのに、涙は止まってくれなかったけど。

 それでも、ボクなりにけじめはつけたつもり。

 だから、渡瀬に会うのもちょっと怖いけど、でも、逃げ出しても仕方ないし。これからは一つの恋の終わりとして胸にしまって、友達として渡瀬と付き合って生きたいし。

 まぁ、ボクなりに出した結論なんだからしっかりと自分自身で受け入れないとね。

 だから、みんなの前では泣かないようにしないと……

 そんなこと考えながら自転車を運転していたら、あっという間に公園についてしまった。

 そして、公園には似つかわしくない怒声が響き渡っていて、入っていって声をかけるなんて出来ないくらいすごい剣幕で怒鳴ってる真紀がいた。

「どうして、どうして渡瀬君は何にも言わなかったの?!どうして君は大事なことを言わないままで居られるのよ!?」

「どうしてって言われても……」

 すごい剣幕で怒る真紀に、申し訳なさそうな顔をしている渡瀬。

 一目見れば瞭然だ。真紀は、ボクが告白して渡瀬が断ったことを怒ってるんだ。

 でも、仕方ないじゃない……。渡瀬はもうボクのことは好きじゃないんだから。なんとか止めたいんだけれど、中に入れる雰囲気でもない。しばらく、様子を見ることにした。

「真紀?そんなに怒ること無いじゃない。どうせ、私が言わなくても渡瀬君が言ってたんだから。ね、私たち付き合ってるもんね」

 何度聞いても胸が苦しくなるセリフ。二回目だというのに1回目よりも悲しくなる。

「渡瀬君がそんなだから、レイも三浦も勘違いするんだよ?わかってる!?」

「真紀?私は勘違いなんてしてないよ?だって、渡瀬君は私が『付き合ってる』って言っても否定しなかったもん」

「だから、そこが渡瀬君の悪いところなの!どうして?どうしてそうレイに言ってあげなかったの?」

「だからそれは…」

「三浦が居たから言えなかった?向けられている好意をむげにして三浦を傷つけたくなかったから?ふざけんじゃないわよ!!あんたのその態度のせいでどれだけレイを傷つけたと思ってんのよ!?レイ電話越しでもわかるくらい涙声になってたのよ?あんたにわかる?レイがどれだけ苦しい思いをしてたか!」

「……」

 とうとう渡瀬が黙ってしまった。

 ボクとしては三浦と渡瀬が付き合っていないってことが驚きだ。あんなにずっと一緒にいたのに付き合ってないなんて……

 そして何より驚いたのが、真紀が声を上げて怒ったところを始めてみたから。真紀はどんなに怒っても声を荒げてるところなんて見たことが無い。

 あんなに温厚な子がここまで声を上げて怒鳴ってくれる。ボクは良い友達持つことがうれしくて仕方なかった

 話にひと段落着いたみたいな沈黙があたりを支配していた。

 ボクの為に怒ってくれた真紀のお陰でボクの心はだいぶと軽くなっていた。

 真紀にお礼を言いたい。渡瀬から本当の答えを聞きたい。

 その一心でボクの足は真紀たちのところへ向かって歩き出そうとしていた。けど、突然の笑い声でボクの足は立ち止まっていた。


「あっはははは、真紀も馬鹿じゃないの?」

「いきなり笑い出してどうしたの三浦?」

 三浦の突然の豹変。

 三浦本人以外全員が驚いていた。

 三浦の笑い方は嘲笑というのが一番しっくり来る笑い方だ。真紀とは全く違う笑い方、人を馬鹿にするような笑い方。ボクはこの笑い方が嫌いだ。

「だってさ、渡瀬君も馬鹿だし真紀も馬鹿だから」

「はぁ?なに言い出すのよ。意味わかんないんだけど」

「それを言うなら私のほうが意味わかんないよ。どうしてさ、振った相手と振られた原因を作った女の手伝いとかしてんの?誰がどう見ても、葉山さんより真紀の方が全然魅力的じゃん。渡瀬君もそうだよ、どうして真紀を振ったの?」

「私が振られたのなんて関係ないじゃない!渡瀬君は好きでもないこと付き合う気が無かっただけだよ。ね?」

「俺は、好きじゃない奴と付き合う気は無いんだ。だから、田原の告白も断ったし、三浦とも付き合ってない」

 初耳だった。真紀が渡瀬に告白してたなんて。かなり動揺した。ボクの動揺をよそに、三浦の話は続いていた。

「ふ~ん、その割には私との会話とかかなり楽しんでるよう見えたけどね。話しかければすぐ時間を作ってくれるし、相談があるって言って休みの日に誘ってもちゃんと相手をしてくれた。これならすぐに落ちると思ったんだけどな。残念、なかなか渡瀬君は落ちなかったね。まぁ、別に落としたところで私にメリットなんてないんだけど」

「なに言ってんの?あんた渡瀬君が好きだからずっと一緒にいたんじゃないの?」

「なにそれ、ありえないでしょ?全然好みじゃないし。というか、真紀からは感謝はされても怒られる筋合いなんて無いんだからね。真紀の代わりに葉山さんと渡瀬君に仕返ししてあげたんだから」

「そんなの頼んでない!!どうして余計なことするの!?私は振られて、ちゃんと諦めた。レイとは友達だから、レイの恋はちゃんと見守りたかった。別にレイを恨んでなんか無い!」

「私はね。渡瀬君と真紀が付き合うのが良いと思うのよ。だけど、どれだけ真紀を勧めても渡瀬君は全くなびかない。真紀の魅力のわからない馬鹿は、私が精神的に叩き落してあげようと思ったのよ。付き合ってあげてひどい降り方とか使用とか考えてね。まぁ、私にもなびかなかったけど」

 なに言ってんの三浦。

 三浦に対して怒りが浮かんできた。渡瀬にひどいことをするなんて許さない。

 渡瀬はずっとニコニコして笑ってて、やさしさで周りを幸せにするような奴なんだ。そんな渡瀬の辛い顔なんて見たくない。涙なんて流させたくない。

「別にそんなこと言われても、俺は三浦に対して怒りなんて浮かばないよ。他人がどう思おうと俺は俺の考えで動いてるだけだし」

「お優しいことで、逆に私がやられていたら怒りでどうにかなりそうだけどね。私ね、真紀の事が好きなの。もちろん異性としてではなくて友達として。だから真紀が渡瀬君に振られて泣いてるのを見過ごすことが出来なかった。それがどうしても許せなかった。渡瀬君には全然仕返しできなかったけど。葉山さんには充分出来たからもう私は満足かな。学校で葉山さんとは話をさせない作戦もうまくいってたみたいだし。」

 ボクのことなんかどうでもいい。どうして渡瀬はそんなひどいことを言われても平気なの?ボクは、君の悪口を言われるだけではらわたが煮えくり返る思いなのに。

 さっきまで怒鳴っていた真紀も、突然の三浦の告白に黙ってしまうし。

 多分、次渡瀬にヒドことを言われてしまったら、ボクは我慢できずに三浦に手を上げてしまうかもしれない。

 それくらい、頭にきている。

「おい、それどう意味だ?もしかして、今まで相談とか言って話しかけてたのは全部、葉山への嫌がらせか?」

「今更気がついたの?やっぱり馬鹿ね。そんなの当たり前じゃない。私の大事な友達の真紀を泣かした奴にささやかなる復讐よ。まぁ、それも昼間に済んじゃってもう良いかなって思ってるんだけど。普段無表情のクセに顔を真っ赤にしながら突然「渡瀬が好きだ!」とか叫んじゃってさ、聞いてるこっちが恥ずかしいよ。ほんと馬鹿だよね。それに、私が付き合ってるって言ったときの顔なんてやばかったよね。この世の終わりみたいな顔になって泣いちゃってさ、ほんと」

 そこから先の三浦の言葉は聞こえなかった。

 パンッ

 何かがはじかれるような音がした。

 少し遠くてもはっきりとわかる。三浦が渡瀬に叩かれたんだ。

「俺には仕返しでも何でもしてもかまわない。だけど、葉山を馬鹿にするとか、傷つけるようなことは絶対に許さない!」

 渡瀬の怒った声が公園中に響く。

 どうして渡瀬が怒るのよ?ボクがわらわれているだけなのに……

 そんなことされちゃったら、ボクは渡瀬のことあきらめ切れないじゃない。渡瀬の気持ちが、まだボクのほうを向いているっていう勘違いしてしまうじゃん。

 三浦にビンタなんて、男の子が女の子に手を上げるなんてしちゃだめじゃん。そんなの渡瀬らしくないよ。

 いろんな言葉が、頭の中で渦巻いてぐるぐると回っていて混乱しているんだけど、一つだけ確かなことがある。

 それは、たった一つだけだけれども、ボクを想う言葉を聞けたってこと。ボクの為の行動、それだけでうれしくて仕方が無い。

「ほんと、渡瀬君は馬鹿だよね。今更私を殴ったところで、葉山さんの心の傷は消えないって言うのに」

 そう吐き捨てるように言うと、三浦はボクが入ってきた入り口とは逆方向の出入り口に向かって走っていった。

「ほんと、渡瀬君はレイのことになると不器用になるよね。今の渡瀬君は優しさのかけらも無いよ?全く、はじめからそういう風にしておけば、誰も傷がつかなかったのに。とりあえず、三浦のフォローは任せておいて。君のお姫様がお待ちかねだよ。」

 そういうと真紀はこっちをむいてウィンクをしてくれた。というよりも、ボクが来てたのに気がついていたんだ……、そっちのほうが驚きだ。

 真紀は、そのまま三浦が消えた出入り口に走っていってしまった。

 ものすごく気まずい渡瀬との二人っきり。

 今までは、この二人という空間が心地よかったんだけど、いまはさっきのやり取りを見てしまった後だし、なんか妙な緊張が張り詰めていた。

「その……聞いてたのか?」

 渡瀬はボクに向き直り問いかける。

「うん。まぁ、聞いてたかな?」

 少し申し訳なさそうに目を伏せながら渡瀬は口を開いた。

「ごめん。傷つけるつもりなんて無かった。けど、結果的に傷つけてしまってた。ほんとに、ごめん」

「そんなに謝らないでよ。けど、本当に辛かった。三浦と渡瀬が付き合ってるって聞いて本当に辛かった。けどね、さっきボクの為に怒ってくれたじゃん、だから帳消しにしてあげる」

「謝っても謝り足りないくらいひどいことをした。葉山に許してもらっても俺が俺を許せないよ……。だから、もう葉山とは会わない。ホントは、葉山に会えないのは物凄く辛い。だけど、傷つけてきた相手なんかに葉山も会いたくないだろし……」

 気がついたら想いっきり右手を振りかぶっていた。

 ゴンッ

 さっきとは全く違うとっても鈍い音が響いた。

 目の前で渡瀬は鼻を押さえながら悶絶してる。

 というか、あまりの不意打ちでなんにも準備が出来ていないまま殴られたものだから、そのまま後ろに倒れて転げまわってる。

「なに芋虫ごっこしてんの?子供じゃないんだからそんな遊びか足したらだめだよ?」

 葉山は目に涙を貯めながら抗議をしてくる。

「誰のせいでこうなったんだよ!?ていうか、平手打ちじゃなくてグーパンチかよ!?」

「当たり前よ。馬鹿な子は馬鹿だから叩かれてしつけされないと覚えないでしょ?痛みと一緒に今回のことを覚えておきなよ。そしたら、少しは賢くなれるんじゃない?」

「ひど!いまのはかなり酷いぞ!俺なんでそんなに邪険に扱われてんだよ……って、原因は俺か……それじゃしかたない……な」

 さっきまでのテンションはどこかに飛んでいったみたいで一気にしょげ返る。

 ほんと、馬鹿だ。それにボクは、こういう風に、何でもかんでも自分のせいにして、不幸の主人公を気取る奴が大嫌いだ。

「渡瀬」

 いつの間にか立ち上がっていた渡瀬を呼ぶ。渡瀬はうつむいている状態から、こっちに向き直る。

 素直な奴だ。無防備な相手を殴るのには少しだけ抵抗を覚える。けれど、今はそんな余裕ボク自身に無いのだからこれは仕方のないこと。

 ゴスッ

 さっきのよりもさらに鈍い音が公園内に響き渡る。

 といっても、音が引くいためかそれほど広がってないけど。

「うぐっ……」

 一テンポ遅れて渡瀬の悲鳴が響く。

 ボクの右ストレートが葉山のみぞおちにクリーンヒットしたから。というか、全力でお見舞いしてあげたからだ。

「本当に馬鹿よね。なにいじけてんの?俺のせいだから?俺に会いたくないだろって?」

「だってそうだろ、泣くくらい酷いことされたのにまた会いたいとか思う奴いないだろ」

「いるわよ!こ・こ・に!!ボクの気持ちを勝手に決めるな!!悪いと思うなら、酷い事したい以上にうれしい事をしてよ!!ボクに会えないのが渡瀬にとって辛いって?べつに渡瀬が辛かろうがかまわない。けどね、ボクにとって渡瀬に会えないって言うのが一番辛いの!!ものすごく辛いの!!まだボクに酷い事したいの!?このドSの変態野郎!!」

 渡瀬はお腹の痛い身を忘れたかのように、猫が驚かされたかのように目をまん丸にしていた。

 自分が言っている意味を自分自身実感してきてかなり恥ずかしい。けれど、ここで恥ずかしがったりしたら全然格好がつかない。

 なら、ここは勢いでやり過ごすしかない。

「女の子にここまで言わせてんのに、何か言うことないの?もしないとか言うなら、ヘタレ決定だからね!」

 ここで、一呼吸間に挟む。恥ずかしさのあまり、意味不明なことを口走ってしまっていた。

 すぅ~はぁ~、まずは深呼吸。良し、ちゃんとボクが言葉にしなくちゃいけないんだから

「……なんか意味不明なこと言ってた。待たせてたのはボクだったよね……あのさ、渡瀬。ずっと待たせてゴメンね。それでさ……昼間の答え聞きたいんだけど……」

 渡瀬の瞳にはとても暖かい色が浮かんでいた。ボクを安心させる色。ボクを安心させる空気。そんなものが渡瀬の周りには満ち溢れていた。三浦が現れるまでの空気。とても懐かしい。

 ボクの恋心の花を育ててくれた、その空間。さっきまでは、枯れかけていたボクのココロの花がいつの間にか、元気になっていて、今にも花を咲かせようとしている。

「こうして言われると、答える方って物凄く気恥ずかしいものなんだな。」

 そういうと、物凄く照れくさそうに笑っていた。

 そんな渡瀬の表情一つでボクのココロはとても揺れる。なんていうか、……キュンってなる。

 そんな、ボクはお構いなしに渡瀬は話を続ける。

「俺の気持ちは、あの時から全然変わらず、葉山が好きだ。この状況で俺から言うのはおかしいかもしれないけど、付き合ってくれないか?」

 ボクがずっと待ってた言葉。けど、ボクが行動を起こさないと言われない言葉。

 初めからボクが素直になっていれば、この言葉をもっと早く聞くことが出来たのかもしれない。けど、今はもうそんなことどうでもいいんだ。

 ずっと、ずっと欲しかった言葉を言ってくれたんだから。

 けど、渡瀬は馬鹿だ。態度ではすぐわかるくらいに示していたつもりなのに。

 それでも、ボクはこの馬鹿が好きだ。

 それはもう、隠しようも無いとてもとても大切な気持ち。

 なら、ボクはどうするか。そんなのもう決まってる。

 ボクは、渡瀬の胸に飛び込んでいた。

 渡瀬はそんなボクを優しく包み込んでくれた。

「まってたよ、その言葉」

 ボクの心は温かい気持ちでいっぱいだ。

 今までずっと育ってきた、ボクの心を暖かくしてくれる大事な花。

 ボクの中で育っていた小さなつぼみだった恋は大きな花を咲かせていた。

「もう離さないで、寂しくしないで、ボクだけを見て」

 いままで感じていた不安感が口からこぼれる。

「俺のお姫様はわがままだな。これからは、そんな不安感じることなんて無いくらい、楽しくしてやるよ。うっとうしいくらい一緒にいてやる、うざったくなるくらい葉山だけを見てやる。嫌がったって離してなんかやるもんか」

 渡瀬はやさしくボクの不安を拾い上げて、消してくれる。

 ボクの待っていた言葉をくれる。

 うれしいって言う気持ちでボクの心はいっぱいになって満たされていく。

 悲しい気持ちが涙のダムを決壊させるように、うれしい気持ちが涙のダムの許容量を超えてあふれてくる。

 今まで流した涙とは全然違う。暖かい気持ちがあふれた涙。

 何でだろう、すごく安心する。

 ボクは優しさに包まれたまま、うれしい涙を流していた。

「渡瀬って、たまに物凄く気障になるよね。けっこうキモイよ。……まぁ、そういうところも好きだったりするけどね」

 ボクの一言多い言葉にも嫌な顔一つもしないで、笑っていてくれる。

 そんな些細なことがすごくうれしくて、ぎゅっと抱きしめる。

 渡瀬もボクと同じように力を込めて抱きしめてくれる。

 今のボクは、この世界の誰よりも幸せかもしれない。



 ボクは今、渡瀬と一緒に自転車を押しながら歩いていた。

 目的地は渡瀬の家。どうして向かっているかというと、渡瀬が来てほしいからとの事。

 いきなり加奈子さんに紹介とかされるんじゃないだろうか?

 そんな一抹の不安を抱えながら渡瀬のほうを見る。

 さっき三浦にビンタしたときの怖い顔はどこかへ行ってしまっている。

 いつものにへら顔。このいつもの顔がとても安心する。

「まぁ、なんていうんだろ。とりあえず、いろいろごめんな」

「え?なにいきなり謝ってんの?何に対して謝られているのか心当たりがありすぎてどれかわかんない」

「えっ?そんなに俺、葉山にあやまることあるの?!」

「いきなりテンションあげないでよ。なんかうざいよ?」

「なんかすんごく俺嫌われてない?さっきまで、顔真っ赤にしながら俺に抱きつきながら泣いてたくせに」

 ドスッ

 とてもとても鈍い音が薄暗くなった住宅街に響き渡った。

 そして例の如くお腹を抱えてうずくまる渡瀬。

「まったく、どうして渡瀬はそんなに殴られるのが好きなの?やっぱり、Mな感じで変態さんなの?」

「……俺は、殴られたくて殴られてるわけじゃない!変態にしないでくれよ」

 最後の一言はもう泣く寸前くらいな感じで鬼気迫るものがあった。

 だけれど、ボクに恥ずかしいことを思い出させるほうが悪い。

 あれは人生最大の失態だ。あんな少女漫画のような行動をとるなんて自分でも信じられない。

「べ、べつにあんたの為に殴ったんじゃないんだからね!!」

「いやいや、葉山そんなキャラじゃねえし。というか、絶対自分のためだろ」

 たまには、正直に言っておかないとへんな勘違いされちゃうよね?

「……渡瀬が恥ずかしいこと言うから」

 たぶん、今ボクの顔は真っ赤になってると思う。

 まぁ、周りはずいぶんと暗くなってるし、見えては無いと思うけど。

 そう思いながら、渡瀬のほうを見る。

 するとどうだろう。渡瀬のほうが顔を真っ赤にしていた。

「うん、今の葉山はさっきまでとのギャップで破壊力抜群だ。」

「意味わかんない」

 意味は分かってるけど、かなり照れる。

 はいはい、渡瀬はそう呟いてボクの隣を歩いていた。

 それから、ボクらは渡瀬の家に着くまで無言だった。

 だけど、その無言はとても心地が良い空気で、ただ一緒に居られる、それがすごくうれしかった。


 渡瀬の家について、10分くらいがたっただろうか。

 一度店の奥に入り、戻ってきた渡瀬の手の中には一つの花が咲いていた。

 それはそれはとてもとても綺麗でかわいい花だった。

「はい、これ。葉山にプレゼント。今日、葉山の誕生日だろ?」

「あ、ありがとう」

 その花を受け取る。

 その花は、ボクがずっと欲しくて欲しくてたまらなかった花の胡蝶蘭。

 その美しさに目を奪われたのはいったいいつだっただろう。

 だけど、やはりというか、高校生のボクがおいそれと帰るような値段ではなかった。

 一時期アルバイトも考えたものの、両親のアルバイト禁止という厳令によりあえなく敗退。

 お小遣いを少しずつためて買おうと思っていたんだけれど。

 欲しいものを好きな人がくれるって、ものすごく幸せなことだと思う。それに、ボクのココロはまた、ふわりふわりと舞い上がってしまった。

 それこそ、今ここで渡瀬に抱きついてしまいたいと思ってしまうほど。

 まぁ、実際に抱きつくなんて恥ずかしいこと今は出来ないけれど。

「あのさ、どうしてボクの誕生日知ってたの?」 

 ボクの質問に渡瀬は頬を掻きながら答えた。

「田原に聞いたんだ。やっぱり、好きな人の誕生日には何か送ってあげたいもんでしょ」

「けど、胡蝶蘭って結構良い値段するんじゃない?」

 そう、胡蝶蘭は高いのだ。それも、高校生がおいそれと買えるような値段じゃない。

「そうなんだよ。おかんに値段聞いてびっくりしたよ。そのおかげで、店の手伝いで土日がつぶれて全然葉山と遊びにいけないし、学校じゃ三浦がずっとしゃべりかけてきて葉山のところに行きにくいし」

「もしかして、土曜日、日曜日に遊びにいけなくなったのって、お店の手伝いしてたから?」

「そうそう、そのとおり。ほんと参ったよ。まぁ、おかげでちゃんと葉山にぴったりの花を渡せてよかったけど」

 そういうと、またニコッと笑ってくる。

 ボクは、勝手に想像して勝手に嫉妬して、勝手に渡瀬のことを決め付けていた自分が恥ずかしい。

 ほんと、馬鹿だよね。ちょっと聞いたらすぐわかることなのに。

「胡蝶蘭は可愛くて、綺麗だけど、ボクは全然そんなんじゃないよ」

 そうこれは、本当のこと。ボクの心の中はずっと乱れてすさんで目も当てられない状態だ。

「なに言ってんだよ。葉山はずっとずっと輝いてるよ。胡蝶蘭のように綺麗だよ。ずっと見てきた俺が言うんだ間違いないよ」

「それでも、ボクの心の中なんて渡瀬にはわかんないでしょ?渡瀬が思うような良い子じゃないんだよ。ボクは……」

「葉山がどう思っていても、俺の目には葉山は見た目者だけじゃなくて、心もすんごく綺麗にしか写らないよ。というかな、友達ができはじめてもっと綺麗になったと思う。心から楽しいって言う気持ちが伝わってきてこっちまでうれしくなってくるくらいだよ」

 ほんとこの男は恥ずかしいことをスラスラと言って来る。

 だけど、ボクだって女の子だ。こんなこと言われたら、うれしいに決まってんじゃん。

 それも自分が好きな人に言われるなんて、ほんと……夢見たい。

「ん?どした?いきなりうつむいて?もしかしてうれしすぎて泣いちゃった?」

「そんなわけないじゃん!渡瀬はデリカシー無いってよく言われるでしょ?ほんとサイテー!」

 顔を上げたボクは頬に暖かいものが伝ってるのを感じた。

 というか、それを隠すためにうつむいてたんだけれども。

 すまなさそうに謝りながら笑う渡瀬。

 どうしてこの人を好きになったんだろう?

 いや、違うな。

 こういう人だからボクは好きになったんだろう。

 こんなにもデリカシーの無いくせに、大事なところはしっかりと分かってて、こんなにも鈍感なくせに大事なところで鋭くて、こんなにも子供みたいな奴なのに大事なときにはオトナになって、こんなにも馬鹿だから一生懸命にプレゼントを用意してボクを喜ばせようとしてるのに、そのセイでいろいろな勘違いとかさせたりとかしてさ……

「ほんと、渡瀬って馬鹿だよね」

「いきなりなんだよ、デリカシーの無い物言いしたのは謝るけど、いきなりバカっていわれるようなことはしてないぞ?」

「そういうところが、馬鹿なんだよ」

 それきり渡瀬から言葉は来なかった。

 口をつぐんだ渡瀬の顔を見ると、とても穏やかな笑顔をしていた。

「葉山。好きだよ。これからもよろしくな」

「まぁ、そこまで言うなら付き合ってあげないこともないよ?ボクだって鬼じゃないからね。ここまで迫られたら答えてあげないと可哀相だしね……」

 ボクの言葉に答えないまま、さっきと同じ穏やかな笑顔。

 というよりも、ボクの考えていることが筒抜けでにやけてるって言うのが正解かな?

 どうしてそういうところで鋭いのよ。そういうところが、ちょっとムッっとくる。

 けれど、やっぱりこういうことはがんばって伝えないとだめだよね。

「ボクは、ボクが相手を好きで、相手もボクのことを好きじゃないと付き合いたくない。……もう、ボクの言いたいことわかるよね?」

「いいや、全然わからん。だから、ちゃんと言ってくれないか?」

 渡瀬のニヤニヤが変態の領域にまで侵入してる。

 というか、変体オーラが増幅中。

「渡瀬、顔面が……終わってるよ」

「え?!それって、悲惨なくらい不細工って事?マジで!?そんなにヤバイ?」

 バカな奴。そんなわけないのに。

 ボクにとっては何よりもかっこよく見える顔。

 ボクにとって君は何よりも大事なんだよ?

 そういうところまでちゃんと言いたい。けれど……言えない。

 だから。

 ボクは、自分の顔をいろいろといじってる渡瀬の頬に両手を添えて、その唇にそっと自分の唇を重ねた。

 口下手なボクからの最大の意思表示。

 一番大事な君へ送るボクからの最高のメッセージ。

 重ねた唇をゆっくりと離した。

 唇を重ねていた時間は一瞬だったか、それとも1分か一時間か、それすらもわからない。というよりも、時間なんて関係ない。

 ただ、気持ちを込めて君に伝えるメッセージ。

「これが、ボクの答え。ちゃんと受け取りなさいよ」

 ちらっと、渡瀬の顔を見ると、ボクにも負けないくらい顔を真っ赤にして機能停止していた。

 10秒くらいたってから再起動。

「なんか、葉山にスゲー事された気がする。というか、俺のファーストキス奪われちまった」

 口を押さえながらも、うれしそうな顔を全開にしている葉山。

「ボクの初めてを渡瀬が奪ったんだから、ちゃんと責任取ってよね」

 そういうと、渡瀬はいきなりひざまついた。

 よくテレビで中世のヨーロッパとかの物語の中の王子が、お姫様にするように、ボクの手を取り。

「お任せください。お姫様」

 そういうと、ボクの手の甲にキスをした。

 じわり、との部分があったかくなる。

 というか、恥ずかしい。これが、今の感想。

「そういうのちょっときもいよ?」

「……やっぱり?」

「自覚があったんだ……まぁ、渡瀬と居ると退屈しないで済みそう……ううん、違うな。渡瀬と居たら絶対ボクは楽しい日々が過ごせると思う。だってさ、今だってこんなにも世界が輝いて見えるんだよ?明日も絶対楽しいよ」

 素直にそう思った。

 素直に思ったことを口にすることが出来た。

 たしかに恥ずかしいことを言ってるかもしれないけれども、ボクが今思ってることはこれなんだから仕方が無い。

「葉山ってちょっと詩人みたいだね。そういうところも好きだよ」

 渡瀬が言ってくれる言葉一つ一つがうれしい。

 ボクと渡瀬の関係がいつまで続くかわからない。

 けれど、今ボクはこの関係がずっとずっと続けば良いなと思う。

 こんなにもボクの世界を明るく照らして、見るもの全てを輝かせてくれる人なんてほかにいるとは思えない。

 渡瀬にとって、ボクもそうであればもっとうれしいな。

「渡瀬。これからもずっとずっとよろしくね」

 この関係がこれからもずっとずっと続きますように、という祈りを込めて。

「おう!もちろんだよ」

 大好きな君に送るメッセージ。

 これが、ボクの人生最大の誕生日プレゼント。

 これにて、ココロの花完結です。

 ただ、ちょっとだけこの後日談が浮かんだので、また出来上がったら投稿したいと思います。

 ここまでお付き合いいただいてありがとうございました。


 さて、せっかくのあとがきなのでいま思っていることを赤裸々に無駄にお話したいと思います。


 あとがきなんていらないぜ!ッて言う方、いらっしゃると思います。

 戻っていただいても大丈夫です。ここから先は作者の自己満足なので…

 読んでいただいてありがとうございました!感想、評価などがあればよろしくおねがいします。作者が喜びまくりますので!では次回作でお会いしましょう!


 

 戻らなかったということは、私目のおしゃべりに付き合ってくれるということですね。ありがとうございます!

 ではさっそく、始めさせていただきたいと思います。


 まず、このココロの花のですが、冷血王女の続編ということで作成したものです。

初めの構想ではこんなにも長くなる予定ではなかったのですが、あれよあれよといまに伸びまくって、これじゃあ短編には厳しいかな?ということで連載という形になりました。まぁ、不定期でアップになりましたけれども…

自分なりに女の子のココロを考えながら練りこんだ葉山に結構思い入れがあります。もちろん、渡瀬や、真紀、三浦などにも思いいれはあるんですけどね。

 この小説は、一人称だけで構成しているんですけれども、一人の視点では人の動きや、周りの状況などの描写が物凄く難しく、うまく読者様に伝わっているのかとても不安であります。っていうよりも、自分の文才の無さにどれだけ嘆いたことか…。

 それでも、完結までたどり着けたのは、感想を下さったり、お気に入りに入れてくれてる人がいたからです。とてもとても感謝しています。

 さて、まだまだ伝えたい気持ちはいっぱいあるのですが、あまり長々と書いて読者様に苦痛をしいるのはいけないのでこの辺で。

 また次回作、がんばってつくったりしますので、機会があれば読んであげてください。

 上の方でも書いたのですが、感想、評価などあればよろしくお願いします。作者が物凄く喜びまわります。

 

 それでは、ありがとうございました!!

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