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終わり良ければ総て良し

掲載日:2026/01/01

短編です。

 昨日、上司にしこたま怒られた。自分のミスが原因だから、何の反論もできなかった。悔しい想いと共に、迷惑をかけた申し訳なさと、良い歳をして上司に怒られた情けなさ、怒られたことへの衝撃からくる悲しさ、ありとあらゆるマイナス方面の感情が一気に押し寄せてきた。

 今日が休みでよかった。思う存分、愚痴って泣ける。そう思って、今日の午前中は、思う存分暴れてやった。そうして落ち着いてきた私は、スマホを操作して、その日の内に、美容室を予約した。

 やっと肩を通り過ぎるくらいまで伸ばした髪を思いっきり切ってやった。美容師さんも驚いていた。でも、後悔はない。短髪の私も、なかなかに良い。

 翌日、職場の規定に反しない程度のおしゃれな服に身を包み、職場の規定に反しない程度に爪を塗って出社した。

 けど、ランチ前になっても、誰も声すらかけてくれない。時々視線を向けてくれる人がいたけど、誰も話しかけてはくれなかった。

 少し落ち込みながら、仕事を進めていると、昨日私をしこたま叱ってきた上司が、また私を呼んだ。

「お前さ、何回言えばわかるわけ?ここの数字ズラすなって言ったよな!?なぁ!!」

 私は消え入りそうな声で、“すみません”と言うしかできなかった。

 ランチの時間を越えて怒られ続けて、私は朝までの気分が一気に沈んでしまっていた。ランチの残り時間はあと十分。おにぎりだけでも食べたいけど、コンビニに買いに行っていては、それだけであっという間に午後の業務時間になってしまう。

 仕方ない、今日は空腹のままで過ごそう。

 そう決めて午後の業務が始まって一時間。急に空腹感に襲われた。

 それはそれは激しい空腹感。キーボードを叩く音の中に腹の音が響き渡る。仕方なく引きだしの奥にしまっていたチョコレートをこっそり口に入れて、耐える。

 ようやく午後の業務が終了した。上司は外回りだか何だかで夕方に出て直帰したから、今日はもうこれ以上怒られることは無い。

 しかしせっかく髪を切って、おしゃれな格好をして気分を上げていたのに、今日は一気に地獄まで気分が落ち込んだ。

 同じミスを何度も繰り返す自分に腹が立つ。しかしそれはそれとして、腹は減る。今日はどこかに寄って帰ろうかな。料理をする気力もない。それかコンビニで弁当でも買って帰ろうか。

 そんなことを考えていると、隣の席の同期がこちらを振り向いた。

「ねぇ、今日の服、可愛いね」

「え・・・」

「髪も、短いのも似合うんだね、いいじゃん。じゃ、また明日~」

 それだけ言って、彼女は荷物を持って行ってしまった。

 しばらく経って、じわじわとその言葉が効いてきた。褒められていない爪まで、今はもう愛おしい。

 一日の最後、たった一言もらうだけで、私の気分は急上昇していた。

 今日は気になっていたイタリアンにでも寄って帰ろうかなんて、自分にご褒美を与えたくなっていた。



——終わり良ければ総て良し——

オリジナル作品です。

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