第09話:ダンジョン生活の準備
───ダンジョン内
「!」
短い呼気と共に、季光は左右に避けマッドボアを翻弄する。
その横から、四郎丸が木刀を手に突きを放ち・・・ドシャっ
マッドボアは魔石を残し土塊へと帰った。
「四郎丸もそろそろ1人でも土猪は倒せそうだな」
今日は、既に土猪を40匹は狩っている。
2人の連携をみると、かなり洗練されたものになってきているし、土猪の討伐も危なげがない。
「そうでしょうか・・?」
四郎丸自身は、まだ余り自信がない様子だが、十分に土猪程度なら十分に狩れる程度の能力は手にしているだろう。
倒し方もわかっている以上、1人でも十分にいけるだろうと思う。
だが・・・
「しかし、武器が保たんな、これでは。」
そうなのだ。
倒せてはいるが、それも武器あってのこと。
素手や足も使い、武器の消耗を減らしているからこそ成り立っているが、
今のままでは消耗が多すぎて訓練というわけにはいかないだろう。
それに、これから人が増えるとなれば、なおのことだ。
そう。
俺はダンジョンに招く人間の数を増やそうと考えている。
千秋家を強化するという意味合いもあるのだが、それ以上に、ダンジョンとして活動したいという思いがあるのだ。
あと、純粋に暇だというのもある。
「えぇ、今日だけでも6本。流石に消耗が酷いですな。」
「・・・そういえば、折れた刀は今まで持ち帰っていたよな?」
「?えぇ、持ち帰っておりますが・・・?」
「そうだな・・・、少し待て」
言葉を切り、俺はダンジョンメニューを開く。
そこから宝物生産の画面にとび、貯蔵品の中から鉄と少量の炭素を選択。
「ふっ!・・・ぬっ・・・おっ・・・・・。こんなものかな?」
俺は、宝物生産能力を使用し、刀の製作を行った。
時間は10分程度。
一本の刀が出来上がる
刃長は二尺三寸(約70cm)、蛤刃の鎬造りだ。
外側は純鉄に0.7%の炭素を加えた高炭素鋼とし、中心に向かってグラデーションを描くように炭素量を減らし、芯は0.1%以下とする。
この力を使って刀を作れば、折り返しの必要がない。
無地肌の刀が生まれる。
それは非常に強力だが、美術品としての価値はほぼなくなるだろう。
だが、それこそが彼らに与えるべき刀だ。
「これをやる」
俺は、彼らの前に宝箱に入れた刀を生み出す。
疑問を覚えつつも、2人は宝箱を開け刀を手に取ってくれた
「これは・・?」
地肌のない刀。
形状は刀であっても、刃紋のない刀はどう見ても不自然に映るのだろう。
普段から、刀を見慣れている季光からすると、かなり奇妙な刀として映ったようだ。
「お主に与える刀じゃ。これはお主が今まで使っておったものより遥かに頑丈で折れにくい。
戦さ場で使うのにこれ以上のものはあるまい」
極めて工業的な品だ。
ナノレベルで炭素量を調整された最硬の刀とも言える。
これに勝る品は未来にしかないだろう。
「ありがたく頂戴いたします。」
「もう一つ告げておく。折れた刀はこちらで吸収し、お主らに与える刀の材料にもできる。
これからは、ここに打ち捨ててゆくがよい」
「それは、誠に忝く。」
「ありがとうございます!」
「うむ、それともう一刀じゃ」
俺は、小太刀も作り、今度は四郎丸に渡す。
「ありがとうございます!!」
「うむ、これからも精進せよ」
四郎丸と季光は俺に対し、再度頭を下げ感謝してくれた。
と、俺はそこで今日の本題を告げる。
「明日からの訓練だが、そろそろ土猪を卒業しても良いじゃろ。」
「卒業ですか。では、次は何を?」
「新しく召喚できるモンスターが増えたでな。色々混ぜていこうと思うんじゃが・・、まぁ人型の魔物じゃと思う取ればよい」
「人型の・・・、なるほど」
何を理解したのか知らないが、ゴブリンとかコボルトなんて一度見ないと理解できないだろうと思い、説明を端折ることにした。
「それと、鉄も供物として持ってきてはくれんかの。鉄ならなんでも良いぞ」
折れた刀だけでなく、鉄なら本当になんでもいいのだ。
そうすれば、鉄製品も俺の力で作れるだろうし。
「鉄・・、ということはそれで何か・・・あ、いえ、なんでもありませぬ」
「作ってやる。まぁ、鉄を使えば色々と作れるものが増える故に安心せい。
じゃが、そのまま渡してやるのは今のうちだけじゃと思うておれよ?」
俺は、ダンジョンだ。
今のように作ったものを直接渡すというのは、流石にやりすぎのように思うのだ。
やはり、ダンジョンとして試練を乗り越えた者だけに渡すといった形にしていきたい。
「と、いいますと?」
少し焦ったように、季光が俺に問いかける
「何、簡単なことじゃ。ワシは、この穴の下にさらに大きな施設を作っていく。
そこに隠したものを見つける、もしくは強い魔物を倒すなどすれば手に入る様にしていくつもりじゃ」
「なるほど、鍛錬も兼ねて、ということですか。しかし、それでよろしいので?」
こういった形では、どう考えても俺が利を得ていないと思ったのだろう。
少し心配そうに聞いてくる。
「うむ、問題ない。とはいえ、今日明日でいきなりというのは無理じゃ。
今晩からゆっくり作ることになる故、楽しみにするが良い。」
そうして俺は、ダンジョン制作に乗り出すことになった。
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───御霊蛇ダンジョン
「行ったか。」
2人の帰りを見送った後、俺はダンジョン制作に取り掛かることにした。
「メニュー、メニュー、と」
ダンジョンメニューを開き、
◻︎ダンジョン御霊蛇
・魔物生産
・宝物生産
・ダンジョン改装
・ダンジョン階層変更
・ダンジョンマップ
・地図
・貯蔵品目一覧
・内蔵魔力値:576000/578000
・分霊創造:進捗度1%:保有数:0
・化身創造:進捗度1%:保有数:0
ダンジョンの階層を最初に増やすことにする。
「とりあえず、最初は五層だな。」
ダンジョンを5階層まで先に増やしておく。
「お、3時間か、結構掛かるな。あ、ラッキー」
完成までの時間は掛かる様だが、完成する前でも改装はできるようだ。
なので、俺はそのままダンジョンの改装に取り掛かる。
「とりあえず、一層から、と。ここは安全地帯でいいな。鍛錬用の空間にしよう」
今千秋家の2人にしているように、第一層は鍛錬用の空間として広大なだけの空間にしておく。
光源は、魔力で光る苔(光苔)だ。
名称は俺がつけた。
「一層はこんなもんだな。」
俺は二層に取り掛かった。
二層のテーマはシンプルに"チュートリアル"だ。
というか、五層まではチュートリアル層だな。
おっと、言うのを忘れていた。
階層を増やすには一層ごとに掛ける2倍で増えていくシステムのようだ。
第二層は100の魔力が必要だったが、第三層を作るには200だった。
第四層は400、第五層は800だったわけだ。
ただ、どうも、単純に階層を増やすだけが機能じゃない様な気もするんだよな・・・
メニューには"階層"が単独である。
改装やモンスターなどと同じ様にな。
階層を増やすだけの機能だと、わざわざ独立させてシステムを組む意味がないんだよな・・・
まぁ、システムを組んだのは俺じゃないし、そもそも、PCみたいにシステムを軽くする考えなんてないかもしれんしな。
その辺は、俺の妄想でしかない。
改装機能では、階層を増やすほかに、今は階段の設置などができる。
階段の種類も変えられる。
この階段というのはあくまでも比喩で、次の階層へのワープ装置も階段の種類に入っていうようだ。
だから、石階段以外に縄梯子やワープ装置、落とし穴なんてのもここには含まれている。
改装の方の罠にも落とし穴があるが、どうも別枠のようだ。
いきなり、階段を突飛なものにしても仕方ないので、1番材料が豊富な石で製作した。
第一層の広さは200m×200m
サッカーコート4つ分はある広さだ。
これに合わせて、第二層も作っていく。
第二層のテーマはチュートリアル層の罠編だ。
ここには、迷路と簡単な罠が設置される予定だ。
ただ、致死性の罠は一切設置しない。
チュートリアルでしなれるわけにもいかないし、そもそも罠なんていうのに慣れてないだろうしな。
迷路の方も、行き止まりが4、5あるだけの簡単なものだ。
現代人でも1日あれば解けるだろう。
罠に関しては、致死性のものがないだけで、種類を多く配備する。
そうすることで、どんな罠があるのかを知ってもらうつもりだ。
例えを上げるなら、
・麻痺毒の入った沼
・床の苔に紛れさせた足掛けロープ
・粘着床
・胸まで埋まる底あり沼
・矢ではなく泥の塊が飛んでくる泥罠
・水の降ってくる天井罠
・室温0℃の寒いだけの部屋
・室温40℃の暑いだけの部屋
・落とし穴(高さ40cm)
などなど。
足止めや嫌がらせに特化したものが設置されている。
だが、ダンジョンを知っている者であればわかるかもしれないが、これらは将来のための訓練場でしかないのだ。
本格的なダンジョンなら、これに毒霧や剣山付きの落とし穴なんてのもザラに出るだろう。
だが、ダンジョンに慣れない者たちにそんな罠を体験させても意味がない。
だからこそのチュートリアルだ。
ここで本格的に訓練してもらうことで、100階層のような広大なダンジョン設営ができるようになる。
今からそれが待ち遠しいが、その前にちゃっちゃと二層を完成させてしまうか。
「二層の完成は・・、お、階層増加時間が増えてるな。3時間27分か。1時間くらい増えたのかな?」
どうやら、階層増加に時間が加算されるらしい。
「なら、次の階層も作るか」
そうして、俺は三層四層と作っていく。
三層もチュートリアル層だが、こちらはモンスター層にしようと考えている。
チュートリアル層モンスター編、だな。
第三層は300m×300m
東⚪︎ドーム2個分だな。
ここではたくさんの種類のモンスターと戦ってもらう。
基本的に一本道で、途中途中に大部屋がある様になっている。
ー⬜︎ー⬜︎ー⬜︎ー
みたいな感じだな。
この大部屋に、一種類ごとのモンスターを配置する。
マッド系が中心で、今はまだムダも多いが、20種くらいとは戦わせたいと思ってる。
これが第三層。
「完成まであと4時間ほどか・・。これ以上は訓練に響くな。明日にしようか」
───こうして、俺は初めてのダンジョン設計を終えたのだった
「みやこの『泥まみれ魔物図鑑』公開だよ!
魔物の弱点から、神さまの設計ミスまで全部書いちゃった。
"X"の固定ポストから見に来てね!」




