第06話:猪とバードでの鍛錬
───ダンジョン内
今日も、千秋親子がやってきた。
「今日の鍛錬は、昨日持ってきてくれた雉も怪異?、妖怪にすることができたのでそれも追加するぞ。」
昨日の吸収によってマッドバードという鳥系のモンスターの召喚が可能になった。
今日はそのお披露目である。
「おぉ、鳥か。そういえば御霊蛇様は、四郎丸と感覚を共有することができると聞いたが、その鳥とも行えるのか?」
戦人としては少し気になるところであったらしい。
しかし、今のところそのようなことはできない。
俺が召喚したモンスターに対してできるのは、「"誰"を狙え」というふうに目標を決めることくらいである。
召喚したモンスターは、生まれたときからの習性で人を襲うようになっているのだ。
「いや、無理だな。
あやつらは、生まれたときからの習性なのか、近くにいる生き物を襲うようになってるようだ。
わしは、細かい操作などはできん。
できるのは精々目標を決めることくらいよ。四郎丸を襲え、季光を襲え、というふうにな。」
「なるほど。」
「では、納得したところで、鍛錬を始めるぞ。まずは1羽じゃ」
俺はそう宣言すると、1羽のマッドバードを召喚する。
「しっ!」
「ゃっ!」
季光と四郎丸は、お互いに弓を構え、マッドバードを狙っていく。
しかし、飛び回る相手を狙うことは流石に困難なのか、なかなか当たらないようだ。
しゅっ!
という音と共に、マッドバードが四郎丸を狙う。
「四郎!っ!」
その一瞬、四郎丸に襲いかかったマッドバードを季光がはたき落とした。
そのまま、足で踏みつけマッドバードは粒子とともに消えていった。
「大丈夫か、四郎丸?」
「あ・・、えぇ、大丈夫です父上」
一息ついたところで俺は声をかける。
「どうだったかな?見ている分にはなかなか大変だったようだが」
実際、大変だっただろう。
周囲には十数本の矢が壁に刺さっている。
しかし、そのどれもが有効打にはなっていないのだから。
「いや、思いの外難しいですな。飛んでいる鳥を射るというのは。普段は止まったところを射ます故。」
「私も難しかったです。父上が倒してくださらねば、一撃入れられていたでしょうし・・・」
四郎丸としては、無惨な結果に終わり少しショックだったようだ。
季光としても、今後の目標が見つかりやる気が出ている様子だった。
「しかし、これは骨が折れるな。だが、これを当てられるようになれば戦場でも生かせそうだ・・。」
「季光様!居られませぬか!」
「ん?おぉ、私の部下のようですな。」
どうも季光の部下が外から呼びかけてきているようだった。
「どうした?」
「近隣の者が、猪を仕留めたということでこちらに喜捨したいと」
どうも、近くで猪が取れたらしい。
「では、猪肉はそちらで食べればよかろう。わしには残りの毛や爪、ゴミとなりそうなものを放り込んでくれ。」
「いえ、肉もきちんと奉納いたします。お待ちくださいませ。」
季光はそういうと、一度ダンジョンを出ていった。
「行ったの。四郎丸はどうする?まだ続けるか?」
「はい!続けます!今度は小太刀も使い倒してみせます!」
どうにも、四郎丸の方はやる気があったので、そのまま鍛錬を継続していった。
一刻ほど経つと、四郎丸も5羽ほどは倒すことができ、近くまで寄ってきたマッドバードは安定的に倒せるようになった。
そもそも、そこまで強いモンスターでもないから、そんなものだろう。
しかし、弓単体でというのはまだまだ難しいようで、未だに当てられていない。
そうこうしているうちに、季光が幾ばくかの肉と毛皮、小物などには使えそうにないような細かい歯などを持って入ってきた。
どうにも、これが捧げ物らしい。
「御霊蛇様。こちらが奉納品となります。」
「うむ、感謝するぞ。そこに置いておいてくれ。」
なんか、最近では人間だった感覚が消えてきているように感じる。
昔はもっと・・・・、いやどうだったかな?
「これでまた、明日には猪が出るかもしれんな。その時のための武具も用意しておくのだぞ?あと、ここで生まれる魔物は、外のモノより多少強い故、気を付けるように。」
「はっ、お言葉ありがたく」
その後、今日の飯・・・もとい、奉納品が届けられ(といってもゴミばかりだが)、その日の鍛錬は終わった。
今日倒したのは数匹だったため、2人の能力はほとんど上がらなかった。
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───次の日
「お、やはり出ておるな。猪・・、マッドボアだな。
しかし、これって今のところ全部マッドなんだが、他のってないのかな?」
俺は、最初にスライムが来たので、ゴブリンやコボルトのようなものファンタジー系のモンスターがもっと増えると考えていた。
しかし、どうにも俺が吸収した素材で発生するモンスターの中にはそういったものはおらず、ほとんどが現地産のものばかり。
そのため少し、マンネリになっているように感じた。
「いや、鍛錬はまだ始まったばかりでマンネリという風でもないんじゃが・・・。
わし自身の問題というか・・・うーむ。」
誰に言い訳しているのかわからないが、どうにもダンジョンなのにできることが少ないと飽きが来ていたのだ。
「やはり、もっと大々的にすべきか?
しかしなぁ・・・。スライムだけ狩らせるというのも・・・」
ダンジョンを体験してもらうのは構わない。
正直、今の俺は洞窟でしかなく、よくあるダンジョンもののように物理的なコアは存在していない。
そのため、別に誰が侵入してこようとも、恐れるわけではないのだが・・・
どうせダンジョンに入ってもらうのなら、楽しんでもらいたいのだ。
単に、宝箱だけ出して「はい終わり」というのは、性に合わない。
「とすると、やはりモンスターの種類を増やさねばならんな・・・。
それも、スライムより強くボアより弱い程度がいいのだが・・」
悩めども悩めども答えは出ない。
欲しい魔物はわかっている。
しかし、現状項目に出ていない以上、俺ではどうしようもないのだ。
「やはり、ダンジョンといえば人間を食らうもの・・。人間の死体もある程度は吸収せねばならんのだろうな・・・」
元人間であるため、やはり吸収するには抵抗がある。
一度、それでうまいとでも感じてしまえば、俺は本当の怪異になるかもしれない。
正直、それだけはごめんだ。
だが、ダンジョンとしては・・・
俺は、人とダンジョンの意識の狭間で葛藤していた。
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「四郎丸、季光。今日もようやった。」
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◻︎基本構成と状態
・名称:千秋 季光
・種族:人間
・年齢:34歳
・ランク:G
・状態:魔力器官稼働・疲労(中)
◻︎ステータス
・HP(耐久力):31/31(↑1)
・MP(魔力):4/4(↑1)
・STR(攻撃力):15(↑1)
・DEF(防御力):15(↑1)
・RES(魔法耐性):7(↑1)
・SPD(速さ):17(↑2)
・LUC(運):7(±0)
◻︎保有スキル
・スキル:熱田流剣術(Lv.2)
・スキル:弓術(Lv.3)(↑1)
・スキル:軍略(Lv.2)
・スキル:魔力感知(Lv.1)
・スキル:泥酸耐性(Lv.0)
・スキル:動体視力(Lv.0 New!)
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◻︎基本構成と状態
・名称:千秋 四郎丸
・種族:人間(子供)
・年齢:10歳
・ランク:G
・状態:魔力器官稼働・疲労(大)
◻︎ステータス
・HP(耐久力):20/20(↑2)
・MP(魔力):7/7(↑3)
・STR(攻撃力):7(↑1)
・DEF(防御力):8(↑3)
・RES(魔法耐性):9(↑1)
・SPD(速さ):13(↑6)
・LUC(運):11(↑1)
◻︎保有スキル
・スキル:魔力感知(Lv.1)
・スキル:土魔法耐性(Lv.0)
・スキル:泥酸耐性(Lv.0)
・スキル:回避(Lv.0 New!)
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「はい、ありがとうございます」
「本日も良き鍛錬となりました。」
マッドボアも出せるようにはなったが、それはまだ告げていない。
俺としては、まずマッドバードから対処できるようにと考えてのことだった。
そして、あれから今日までの7日間は、マッドバードでの鍛錬を重点的にさせてもらった。
将来のダンジョン稼働に向けての準備、という側面もある。
ダンジョンに挑む者たちにポンポン死なれるというのも寝覚が悪いからだ。
「うーむ・・・、季光の方は、次回から猪にしようか。四郎丸は、まだダメじゃ。
今のお主ではあっという間に逝ってしまうからの。」
俺は、次の戦闘訓練では、猪を出すことを決めた。
季光の方は伸びが鈍化ということもあり、そのように決めた。
どうにも、適正レベルのようなものがあるように感じる。
昔のゲームのように、ただただ雑魚を倒せば経験値が入って強くなるという甘いシステムではないようだ。
「え〜、そんなぁ・・。」
「仕方なかろう。お前はまだ子供だ。
俺が今まで同じ鍛錬だったのは、こういった戦闘に馴染んでいなかっただけなのだぞ?」
「その通りじゃぞ?お主はまだまだ、子供なのじゃ。
というより、強くなる機会が主の父よりある分、お主は昔の季光より強かろうに。
それ以上は贅沢じゃぞ?」
季光の子供の頃より、今の四郎丸の方が余程か強いだろう。
それは、ダンジョンシステムを使っているのだから、当然だ。
「あ・・・、わかりました。では、僕、私は明日からもバードですか?」
「そうじゃの。それで弓の修行を積むといい。もしかすると、そろそろ大人用の弓も引けるやもしれんしな」
そういうと、四郎丸もそれが楽しみに思えたようで、最後は喜んで帰っていった。
「みやこの『泥まみれ魔物図鑑』公開だよ!
魔物の弱点から、神さまの設計ミスまで全部書いちゃった。
"X"の固定ポストから見に来てね!」




